332 / 430
第二八二話 シャルロッタ 一六歳 使役する者 〇二
しおりを挟む
——ゴウウウッ! という火柱が戦場より離れた場所で巻き起こったことで、両軍は戦場以外でも何かが起きていることをようやく把握した。
「……どうやら別動隊を考えていたのは双方同じだったってことだね」
クリストフェルが頬を伝う汗を手の甲で拭いながら婚約者がいるであろう、遠くに見える炎に目をこらす……クラカト丘陵の中腹付近、彼はそこまで降りて味方を鼓舞し戦いを続けていた。
すでにどれだけの敵兵を倒したか覚えていない……出来るだけ相手を殺さずにひたすらに無力化していくが、もしかしたら逃げ出した相手が再び戻ってきている可能性もなくはない。
すでにその辺りにいる兵士では敵わないほど、彼の剣は鋭く速かったため殺さずに無力化できているが、味方にはそんな余裕がないため殺し殺され、という血腥い戦いがそこかしこで巻き起こっている。
「……何人殺した? いや無理に殺さなくていいものは殺していないはず……」
「は、反逆者めッ!」
「くっ?!」
背後からいきなり怒号と共に白刃が煌めくが、クリストフェルはまるで背後に目があるかのようにその一撃を躱すと、名剣蜻蛉を振るい一刀の元に切って捨てる。
肉を切り裂く感触と共に血を吹き出しながら第一王子派の兵士が絶望に満ちた表情で地面へと倒れるが、クリストフェルはその兵士の死体を見つめながら悔しさに表情を歪めた。
殺してしまった……今の一撃は躱せるはずだったのに、考え事をしていて一瞬だが反応が遅れてしまったのだ。
それゆえに反射的に振り抜いた剣は一撃で相手の胴を切り裂き、絶命に至らしめている……以前の彼であればここまでの剣技は持ち合わせておらず、怪我を負っていたに違いない。
「……すまない、地獄で待っていてくれ」
「うおおおおっ!」
感傷に浸る暇などなく、クリストフェルに向かって複数の兵士が剣を振り翳して襲いかかってくる……彼らは全てイングウェイ王国の民である。
幼い頃よりクリストフェルは王子として最高の教育をうけ、王族としての心構えを教えられている。
民を導き、民を護り、民を従える……イングウェイ王国の王族は連綿と建国以来慈愛と威厳を持ってこの国を治めてきたのだ。
内戦の危機は何度も起きている、だがその度に団結して国を纏めてきた彼らの末裔が今ひとつの玉座を巡って争っているなど先祖は予想していただろうか?
「……手加減できないぞ!」
「うぎゃああっ!」
神速といっても過言ではないほどの剣の冴え……クリストフェルが剣を振るうたびに第一王子派の兵士が倒れていく……疲労と困惑、そして強い罪悪感を抱えながら彼は一瞬で一〇人ほどの兵士を切り伏せて見せた。
人間とは思えない戦闘能力を見せつけられた第一王子派の兵士たちは慌てて後退していくが、それを見た味方の兵士から喝采が生まれるのとは正反対に、クリストフェルの心は少しずつ沈んでいくような気がした。
地面に倒れた兵士たちにも家族がおり、家庭があるだろう……未来があるのだ、それを彼が奪ってしまった気がしてどっしりと肩に重いものが乗ったような気分にさせられる。
「……すまない……」
『……本当は人を殺すのが楽しいのでは?』
「……っ!?」
地面に倒れた兵士たちの死体を見つめながらクリストフェルは呟くが、ふと背後から誰かに声をかけられたような気がして振り返るがそこには誰もいない。
幻聴か……とクリストフェルがホッとしたのも束の間、ピタリとブーツに何かが触れた気がして下を向くと、先ほど倒したはずの兵士の手が彼のブーツを掴んでいることに気がついた。
明らかなる異変にクリストフェルが思わず飛び退くと、兵士の死体がギギギ……とまるで作り物のように通常では考えられないような角度で持ち上がると、彼を見つめた命なき兵士の口元が笑うように歪む。
死霊術か? とクリストフェルが剣を構え直すと兵士の死体はケタケタと笑いながら彼に向かって話しかけてきた。
『……お、王子様はひどいなあ……』
「何を……」
『俺たちをこうやって殺して……血で濡れた手であの辺境の翡翠姫の肩を抱くんだぜ……』
「……!!」
その言葉にクリストフェルは思わず息を呑む……それが図星であったからだ。
今までずっと考えないようにしていた、自分の手がすでに自国民の血で汚れてしまっており、綺麗ではないということに。
だがこれまでの戦いで敵とはいえ少なくない数の自国民を殺してしまっている、仕方ないという気持ちもどこかにあったのだ。
だが、改めて自らが殺した兵士からその言葉を告げられたことで、良心の呵責というものが首をもたげて来るのを感じる。
そしてあの美しいシャルロッタの肩に血塗られた手で触れていいのか、という強い恐怖が心の中に湧き上がっていく……汚れる? ケガレル? 彼女を汚してしまう? あの美しい笑顔を僕が?
「ぼ、僕は……王位に……彼女のためにも……」
『……自分があの女を好きにしたいからって俺たちを犠牲にして』
『どうせあの女を抱く時も、独りよがりに……好き放題にするんだろう?』
『俺たちを殺した時のようになぁ……? 泣き叫ぶ辺境の翡翠姫に思うがまま腰を打ちつけて……』
「……ぼ、僕は……彼女を愛して……」
クリストフェルの心に重くのしかかる恐怖……美しい自らの婚約者の涙を想像してしまい、彼は強い恐怖を感じて震える。
違う、そうではない……自分とシャルロッタはお互いをちゃんと想いあっているとわかっている、初めて出会った時には少し一方的な気持ちだったかもしれないが、今ではそうではないと思っている。
お互いが大事なものだと理解しているからだ……だが、それの思いに自らの心が強く否定する、それは考えても見なかった、言われても気にしなかった言葉。
『ホントウニ? アノオンナノコトヲ、スベテリカイシテイルノ? ドウミテモカイブツジャナイ』
クリストフェルの心に強い猜疑心のようなものが生まれる……その言葉に彼は心臓が締め付けられるような苦しさを覚える。
違う、僕は彼女を理解したい、彼女のことをちゃんと愛したい、そして彼女に認められる存在に……王位を目指すと決めたのは全て彼女の。
だが、それにしても彼の求愛に答えようとしないシャルロッタをどうしたらいいのか、やはり自らの手で持って純潔を奪い、自らのものとするしか……。
そこまで考えたクリストフェルは急に何かがおかしいと、心の隅にあった冷静な自分が告げているような気がしてふと我に返る。
違う、僕は彼女のことをそんなふうに扱いたいわけじゃない、だからこの声は……!
そして、とっさに背後に向かって思い切り剣で切りつける……その一撃で背後にいたものが悲鳴をあげた。
「グキャアアッ! き、貴様……妾の顔を……」
「……お前は確か……」
クリストフェルの背後に明らかに人ではない何かが立っている……人形のように整った顔には彼が振るった剣の一撃により大きな傷が走っており、そこからはドス黒い血液が流れ出している。
美しい姿ではあるがどことなく作り物のような違和感を感じる存在、そしてその背には白亜の翼が広がっており、一見すると天使のような美しさを備えた女性が憎々しげな表情で彼を見つめていた。
その姿には見覚えがある……確か六情の悪魔フェリピニアーダ、だったか? 確かあの時シャルロッタに異変を起こした張本人。
そして先ほどまで自分に話しかけていたと思った兵士たちは物言わぬ骸のまま地面へと倒れたままだった……全てが幻覚だということだろうか?
「……落ちるかと思ったんじゃがの……」
「僕は覚悟をちゃんと決めているよ、人の命を奪うことも、血塗られた手なのも理解している」
「……ク……クハ! クハハッ!」
「……何がおかしい?」
「いやいや、これは失礼した勇者よ……見事なり」
フェリピニアーダはニヤリと歪んだ笑みを浮かべると、切り裂かれた顔を一度手のひらで撫でると、まるでそれまであった傷がなかったかのように修復されていった。
悪魔の存在はこのイングウェイ王国でも歴史上に出てくる怪物として知られており、王家には過去に大陸で起きた事件なども含め、一般の目には触れない書物がいくつか残されている。
王子という立場上、そういった書物に眼を通すこともあったため、クリストフェルは不完全ながらも悪魔についての知識を多少なりとも有している。
「確か、お前は第二階位だったな」
「そう、妾は淫猥なるノルザルツに仕える第二階位、六情の悪魔フェリピニアーダ……天使にも近い存在じゃよ」
人間とは違う別格の存在……決して人の身では対峙してはいけない圧倒的な恐怖を感じてクリストフェルの頬に汗が再び伝う。
だがそんな彼を見てニヤリと笑ったフェリピニアーダはふわりと翼で自らを覆うような仕草を見せると、片方の翼だけを広げた。
クリストフェルの心臓が跳ね上がる……そこに現れたのは紫色の美しい髪と瞳を持った少女、聖女だけが許可された大聖女のローブを身に纏ったソフィーヤ・ハルフォード公爵令嬢だったからだ。
「な……ソフィーヤ……!?」
「……クハ! 運命の再会じゃ……我は低俗な戦いなど興味がなくての、見たいのは全ての絶望なのじゃよ」
「クリストフェル様……」
ソフィーヤは愛するクリストフェルの顔を見ると、儚げな表情を浮かべたまま一歩一歩前に出る……だが彼女の手には不気味な武器が握られていることに気がつくと、彼は剣を持つ手に力を込める。
それは彼女の手に握られるには無骨すぎた、まるで人を殺すためだけにデザインされたような巨大な片刄の斧であり、ドス黒い瘴気のようなものを立ち昇らせている。
だが次の瞬間、巨大な斧をまるで小剣でも振り回すかのようにソフィーヤの鋭い一撃がクリストフェルを襲う。
キャアアアン! という音を立ててお互いの武器が衝突し火花を散らすが……クリストフェルを見ているソフィーヤの顔には張り付いたような笑顔が浮かんでいた。
「……あの女に取られるくらいなら……私のものにするために殿下を殺すッ!」
「……どうやら別動隊を考えていたのは双方同じだったってことだね」
クリストフェルが頬を伝う汗を手の甲で拭いながら婚約者がいるであろう、遠くに見える炎に目をこらす……クラカト丘陵の中腹付近、彼はそこまで降りて味方を鼓舞し戦いを続けていた。
すでにどれだけの敵兵を倒したか覚えていない……出来るだけ相手を殺さずにひたすらに無力化していくが、もしかしたら逃げ出した相手が再び戻ってきている可能性もなくはない。
すでにその辺りにいる兵士では敵わないほど、彼の剣は鋭く速かったため殺さずに無力化できているが、味方にはそんな余裕がないため殺し殺され、という血腥い戦いがそこかしこで巻き起こっている。
「……何人殺した? いや無理に殺さなくていいものは殺していないはず……」
「は、反逆者めッ!」
「くっ?!」
背後からいきなり怒号と共に白刃が煌めくが、クリストフェルはまるで背後に目があるかのようにその一撃を躱すと、名剣蜻蛉を振るい一刀の元に切って捨てる。
肉を切り裂く感触と共に血を吹き出しながら第一王子派の兵士が絶望に満ちた表情で地面へと倒れるが、クリストフェルはその兵士の死体を見つめながら悔しさに表情を歪めた。
殺してしまった……今の一撃は躱せるはずだったのに、考え事をしていて一瞬だが反応が遅れてしまったのだ。
それゆえに反射的に振り抜いた剣は一撃で相手の胴を切り裂き、絶命に至らしめている……以前の彼であればここまでの剣技は持ち合わせておらず、怪我を負っていたに違いない。
「……すまない、地獄で待っていてくれ」
「うおおおおっ!」
感傷に浸る暇などなく、クリストフェルに向かって複数の兵士が剣を振り翳して襲いかかってくる……彼らは全てイングウェイ王国の民である。
幼い頃よりクリストフェルは王子として最高の教育をうけ、王族としての心構えを教えられている。
民を導き、民を護り、民を従える……イングウェイ王国の王族は連綿と建国以来慈愛と威厳を持ってこの国を治めてきたのだ。
内戦の危機は何度も起きている、だがその度に団結して国を纏めてきた彼らの末裔が今ひとつの玉座を巡って争っているなど先祖は予想していただろうか?
「……手加減できないぞ!」
「うぎゃああっ!」
神速といっても過言ではないほどの剣の冴え……クリストフェルが剣を振るうたびに第一王子派の兵士が倒れていく……疲労と困惑、そして強い罪悪感を抱えながら彼は一瞬で一〇人ほどの兵士を切り伏せて見せた。
人間とは思えない戦闘能力を見せつけられた第一王子派の兵士たちは慌てて後退していくが、それを見た味方の兵士から喝采が生まれるのとは正反対に、クリストフェルの心は少しずつ沈んでいくような気がした。
地面に倒れた兵士たちにも家族がおり、家庭があるだろう……未来があるのだ、それを彼が奪ってしまった気がしてどっしりと肩に重いものが乗ったような気分にさせられる。
「……すまない……」
『……本当は人を殺すのが楽しいのでは?』
「……っ!?」
地面に倒れた兵士たちの死体を見つめながらクリストフェルは呟くが、ふと背後から誰かに声をかけられたような気がして振り返るがそこには誰もいない。
幻聴か……とクリストフェルがホッとしたのも束の間、ピタリとブーツに何かが触れた気がして下を向くと、先ほど倒したはずの兵士の手が彼のブーツを掴んでいることに気がついた。
明らかなる異変にクリストフェルが思わず飛び退くと、兵士の死体がギギギ……とまるで作り物のように通常では考えられないような角度で持ち上がると、彼を見つめた命なき兵士の口元が笑うように歪む。
死霊術か? とクリストフェルが剣を構え直すと兵士の死体はケタケタと笑いながら彼に向かって話しかけてきた。
『……お、王子様はひどいなあ……』
「何を……」
『俺たちをこうやって殺して……血で濡れた手であの辺境の翡翠姫の肩を抱くんだぜ……』
「……!!」
その言葉にクリストフェルは思わず息を呑む……それが図星であったからだ。
今までずっと考えないようにしていた、自分の手がすでに自国民の血で汚れてしまっており、綺麗ではないということに。
だがこれまでの戦いで敵とはいえ少なくない数の自国民を殺してしまっている、仕方ないという気持ちもどこかにあったのだ。
だが、改めて自らが殺した兵士からその言葉を告げられたことで、良心の呵責というものが首をもたげて来るのを感じる。
そしてあの美しいシャルロッタの肩に血塗られた手で触れていいのか、という強い恐怖が心の中に湧き上がっていく……汚れる? ケガレル? 彼女を汚してしまう? あの美しい笑顔を僕が?
「ぼ、僕は……王位に……彼女のためにも……」
『……自分があの女を好きにしたいからって俺たちを犠牲にして』
『どうせあの女を抱く時も、独りよがりに……好き放題にするんだろう?』
『俺たちを殺した時のようになぁ……? 泣き叫ぶ辺境の翡翠姫に思うがまま腰を打ちつけて……』
「……ぼ、僕は……彼女を愛して……」
クリストフェルの心に重くのしかかる恐怖……美しい自らの婚約者の涙を想像してしまい、彼は強い恐怖を感じて震える。
違う、そうではない……自分とシャルロッタはお互いをちゃんと想いあっているとわかっている、初めて出会った時には少し一方的な気持ちだったかもしれないが、今ではそうではないと思っている。
お互いが大事なものだと理解しているからだ……だが、それの思いに自らの心が強く否定する、それは考えても見なかった、言われても気にしなかった言葉。
『ホントウニ? アノオンナノコトヲ、スベテリカイシテイルノ? ドウミテモカイブツジャナイ』
クリストフェルの心に強い猜疑心のようなものが生まれる……その言葉に彼は心臓が締め付けられるような苦しさを覚える。
違う、僕は彼女を理解したい、彼女のことをちゃんと愛したい、そして彼女に認められる存在に……王位を目指すと決めたのは全て彼女の。
だが、それにしても彼の求愛に答えようとしないシャルロッタをどうしたらいいのか、やはり自らの手で持って純潔を奪い、自らのものとするしか……。
そこまで考えたクリストフェルは急に何かがおかしいと、心の隅にあった冷静な自分が告げているような気がしてふと我に返る。
違う、僕は彼女のことをそんなふうに扱いたいわけじゃない、だからこの声は……!
そして、とっさに背後に向かって思い切り剣で切りつける……その一撃で背後にいたものが悲鳴をあげた。
「グキャアアッ! き、貴様……妾の顔を……」
「……お前は確か……」
クリストフェルの背後に明らかに人ではない何かが立っている……人形のように整った顔には彼が振るった剣の一撃により大きな傷が走っており、そこからはドス黒い血液が流れ出している。
美しい姿ではあるがどことなく作り物のような違和感を感じる存在、そしてその背には白亜の翼が広がっており、一見すると天使のような美しさを備えた女性が憎々しげな表情で彼を見つめていた。
その姿には見覚えがある……確か六情の悪魔フェリピニアーダ、だったか? 確かあの時シャルロッタに異変を起こした張本人。
そして先ほどまで自分に話しかけていたと思った兵士たちは物言わぬ骸のまま地面へと倒れたままだった……全てが幻覚だということだろうか?
「……落ちるかと思ったんじゃがの……」
「僕は覚悟をちゃんと決めているよ、人の命を奪うことも、血塗られた手なのも理解している」
「……ク……クハ! クハハッ!」
「……何がおかしい?」
「いやいや、これは失礼した勇者よ……見事なり」
フェリピニアーダはニヤリと歪んだ笑みを浮かべると、切り裂かれた顔を一度手のひらで撫でると、まるでそれまであった傷がなかったかのように修復されていった。
悪魔の存在はこのイングウェイ王国でも歴史上に出てくる怪物として知られており、王家には過去に大陸で起きた事件なども含め、一般の目には触れない書物がいくつか残されている。
王子という立場上、そういった書物に眼を通すこともあったため、クリストフェルは不完全ながらも悪魔についての知識を多少なりとも有している。
「確か、お前は第二階位だったな」
「そう、妾は淫猥なるノルザルツに仕える第二階位、六情の悪魔フェリピニアーダ……天使にも近い存在じゃよ」
人間とは違う別格の存在……決して人の身では対峙してはいけない圧倒的な恐怖を感じてクリストフェルの頬に汗が再び伝う。
だがそんな彼を見てニヤリと笑ったフェリピニアーダはふわりと翼で自らを覆うような仕草を見せると、片方の翼だけを広げた。
クリストフェルの心臓が跳ね上がる……そこに現れたのは紫色の美しい髪と瞳を持った少女、聖女だけが許可された大聖女のローブを身に纏ったソフィーヤ・ハルフォード公爵令嬢だったからだ。
「な……ソフィーヤ……!?」
「……クハ! 運命の再会じゃ……我は低俗な戦いなど興味がなくての、見たいのは全ての絶望なのじゃよ」
「クリストフェル様……」
ソフィーヤは愛するクリストフェルの顔を見ると、儚げな表情を浮かべたまま一歩一歩前に出る……だが彼女の手には不気味な武器が握られていることに気がつくと、彼は剣を持つ手に力を込める。
それは彼女の手に握られるには無骨すぎた、まるで人を殺すためだけにデザインされたような巨大な片刄の斧であり、ドス黒い瘴気のようなものを立ち昇らせている。
だが次の瞬間、巨大な斧をまるで小剣でも振り回すかのようにソフィーヤの鋭い一撃がクリストフェルを襲う。
キャアアアン! という音を立ててお互いの武器が衝突し火花を散らすが……クリストフェルを見ているソフィーヤの顔には張り付いたような笑顔が浮かんでいた。
「……あの女に取られるくらいなら……私のものにするために殿下を殺すッ!」
41
お気に入りに追加
851
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる