327 / 430
第二七七話 シャルロッタ 一六歳 野戦 〇七
しおりを挟む
「おおおっ! 楽しいなァ! 昔を思い出すようだ!!!」
「くっ……こんな……」
アンダースが振るう豪剣をクリストフェルが受け流す……剣と剣が衝突するたびに甲高い音と、火花が散るのを両軍の兵士が固唾を飲んで見守っている。
クリストフェルの流麗な剣筋に目を見張るものもいれば、アンダースが放つ一撃はまさに一撃必殺と言っても良い気迫の籠ったものだ。
二人の王子が交錯するたびに両軍の兵士たちからは感心したかのようなため息が漏れ出ている……王族がこのような形で戦うことなど滅多にない。
御前試合などで剣の腕を披露することを好んだものも過去には存在していたらしいが、それでも近年平和に慣れてしまったこの国では、なかなか見られない光景なのだ。
「……あのバカ王子共……ここで決着がついたらどうするつもりなの……」
聖女ソフィーヤ・ハルフォードは親指の爪を噛みながらその様子を見ていた……隣に立つ騎士ディル・アトキンスは目を輝かせて二人の攻防を見つめており、その場にいる全員がこの決闘に注目してしまっているのがわかる。
全く男という奴は……と内心イライラしながらも彼女自身、二人の王子が戦い合えばどちらが強いのか? という疑問は確かに感じている。
もしこの決闘で決着がつくのであれば……それはそれで無駄に兵を損ねることがなくなるため、ある意味最も良い結果を産むことは理解している。
だが……彼女の目的は決着をつける相手が違う、ソフィーヤはこの戦いに乗じて辺境の翡翠姫ことシャルロッタ・インテリペリを抹殺することなのだから。
「……おらんのぉ……敵の陣地にはあの女はいないようじゃのぉ……」
「……本当に? 戦場に出てきていないってこと?」
「うーむ……これはここにいるのはハズレクジであったか……つまらんのぉ」
六情の悪魔フェリピニアーダは片肘を立ててつまらなそうな表情で、戦場の様子を見ていたが飽きたのか欠伸をしている。
彼女の感覚でもこの場に辺境の翡翠姫がいないと感じるのであれば、本当に存在していない可能性が高い。
ならばどこへ……ソフィーヤがフェリピニアーダの顔を見ていると、その視線に気がついた彼女は失笑するとわからないとばかりに手を振った。
「……訓戒者殿が正解じゃったの」
「別働隊として動くって話でしたっけ」
「そうじゃ……混沌の戦士団を効果的なタイミングでぶつけるためにの」
第一王子派では黒衣の戦士団と呼ばれているが、その正体は以前より飼育していた混沌の戦士の部隊である。
それを訓戒者である使役する者が率いて戦場から少し離れた場所に待機させている。
第一王子派の戦略としては主力である彼らの軍勢によりクラカト丘陵に陣を置く第二王子派に一当てした後、効果的なタイミングを測って混沌の戦士団を戦線に投入させるというものだった。
混沌の戦士は捨て駒として良い、というのが使役する者の意見であり、投入時に第一王子派は敵陣から速やかに引くことが求められていた。
『……彼奴等はいくらでも作れる人間さえ苗床にできればな』
そう笑いながら話していた使役する者の表情を思い出し、ソフィーヤは内心ゾッとした気分になる。
第一王子派の貴族達全てが混沌の戦士のことを知らされているわけではなく、そう言った者達は捨て駒になることが確定している。
第二王子派にとっては決戦に等しいこの戦いだが、第一王子派の主流派にとっては都合の悪い連中をまとめて滅ぼすための餌場でもあるのだ。
ソフィーヤの隣に立っているディルのように優秀な実戦指揮官は残すことになっているだろうが……それでも大量の死が確定している戦いなど見たくはない。
「……人の命は安い」
「は?」
「神からすれば人一人の命などゴミのようなものじゃ……気にやむことはないぞ聖女」
内心を見透かしたかのようにフェリピニアーダは微笑むが、その笑みに凄まじく邪悪な意図を感じて背筋がほんの少しだけ寒くなる。
本物の怪物達……自ら呼び出した悪魔ではあるが、今更ながらに彼女が唯々興味があるだけでソフィーヤに従っていることに多少の疑問を感じる。
本心がわからない故に何を目的としているのかがさっぱり不明なのだ……供物も求めず、ただ彼女のそばで助言を行うフェリピニアーダは何を目的としているのだろうか?
だが、考えても仕方がない……聖女とはいえ人の身であるソフィーヤには悪魔が何を考えているのかは理解しようはずもないのだから。
「……あの泥棒猫がいないのであればこの戦いは勝てるのではなくて?」
「そりゃ軽率じゃ、あの王子……素晴らしい才能じゃよ、前よりも強くなっているな」
「クリストフェル様が?」
ソフィーヤの言葉に頷くと、フェリピニアーダは素晴らしいご馳走を目の前にした猛獣のように軽く舌なめずりをすると「欲しいのぉ……」と呟いた。
だがそんな悪魔の様子には気がつかないようにソフィーヤはほんの少しだけ胸が高鳴ったような気がする……彼に対する思慕の心は捨てきれていない。
いつだってあの泥棒猫を追い払って自らの手を取って欲しいと思っているからだ……ソフィーヤ・ハルフォードという女性には、クリストフェル・マルムスティーンという青年が必要なのだ。
聖女である以上、勇者のそばにありサポートをするのが天命である……ソフィーヤが学んだ聖女の伝説にはそう書かれていた。
「……アンダースも十分強いがの、それ……もうそろそろ終わるぞ」
フェリピニアーダの言葉通り、クリストフェルの渾身の一撃がアンダースの鎧に食い込む……それは一瞬の出来事だった。
力任せに振り抜いたアンダースの剣を受け流すと、クリストフェルは刃を滑らすように振るって兄の肩口に一撃を叩き込んだのだ。
バキッ! という鈍い音と共に国王代理の着用する鎧に食い込む蜻蛉の鋭い刃だが、名工が作り上げた重厚な装甲はその一撃に見事耐え切って見せた。
「な、なんて硬い……」
「クハッ! 勇者の器……これほどとはなッ!」
「ぐっ!」
肩口に一撃を受けたアンダースだが鎧のおかげで軽傷にすらならなかったらしく、そのまま拳を振り抜いてクリストフェルへと叩きつけると、騎乗していた馬ごと大きく後退させる。
それはまさに人間離れした凄まじい膂力であり、彼がなんらかの恩恵……この場合は邪悪な者達からの力ではあるが、それを得ていることを如実に感じさせる。
大きく後退したクリストフェルはそれ以上踏み込めずに蜻蛉を構え直して兄の出方を窺い始めた。
それを見たアンダースは肩口についた弟の一撃を物語る鎧の傷を見て口元を歪めると、彼に話しかけた。
「……気に入った、ここで終わらすのは勿体無いな……次は軍略を見てやろう」
「何を……!」
「俺を超えられるのか、才を見せてみろクリストフェル!」
「な、ま、待てっ!」
アンダースは言うが早いかそのままくるりと自陣方向へと馬を走らせていく……追いかけようとしたクリストフェルをチラリと見たアンダースは口もをと歪めると片手をあげて彼に向かって振り下ろす。
その合図を見た第一王子派の陣から一斉に大空に向かって凄まじい数の矢が放たれ、空気を切り裂く凄まじい音を立ててクリストフェルへと襲いかかった。
追いかけられない、と知った瞬間クリストフェルの行動は凄まじく早かった……彼もくるりと踵を返すと、そのまま全速力で愛馬を走らせると、自らの陣営へと一目散に駆け出したのだ。
一瞬でも迷えば彼の体が蜂の巣になってしまったであろうが、その一瞬を見極めたクリストフェルの判断もまた英雄と呼ぶに相応しいものだった。
「く……くそっ!」
クリストフェルは悔しさに歯噛みしつつも左右に馬を走らせて飛来する矢を軽々と避けていく……そのまま彼は丘陵へと差し掛かるが、彼の愛馬であるレスポールは主人の危機を理解しているのか、まるでそこは平原であるかのように軽やかに駆けていった。
その見事な手綱捌きを見た両軍の兵士はまたもため息を漏らす……両者ともに凄まじい技量を見せつけてのけたのだ。
これで感心しないわけがない……どちらかともなく兵士たちは自らの盾や鎧に拳を当てて音を打ち鳴らし始める。
静かに音が広がっていき、次第にクラカト丘陵全体へと響くような音と歓声が巻き起こっていく……両軍はすでに理解している。
戦いはもう直ぐ始まる……第一王子派と第二王子派の決戦がついに始まるのだ。
『イングウェイ王国の栄光に!』
『クリストフェル殿下の栄光に!』
それぞれの陣営で叫ばれる名前は違うが、両軍合わせて二万以上に達する屈強なる兵士たちの声が戦場に響き渡っていく。
足を踏み鳴らし、盾を叩き、鎧に得物を叩きつけながら両軍の兵士たちはその瞬間を待ち望んでいた……戦場を支配する高揚感、そして血みどろの戦が今まさに開始されようとしていた。
クリストフェルとアンダース、両者が自らの陣へと駆け込んだその瞬間……第一王子派の陣営から鬨の声が響き渡った。
『攻撃せよ! 王国の未来は目の前にありッ!』
その声と同時にアンダースを支持する第一王子派の軍勢が一斉に動き出す……一万を超える兵士たちがまるで津波のように前進を始める。
第一王子派の先頭には重装備の歩兵部隊が長槍を携えており、まずは歩兵による馬防柵の破壊を行うのだろう……これは事前に第二王子派により予想されており、その前進を阻もうと弓兵達が長弓へと矢を番えると一斉に弦を引き絞った。
それまで一騎打ちの様子を眺めていたインテリペリ辺境伯、クレメント・インテリペリは腰に差していた剣を引き抜くと陣営に響き渡るほどの大声で味方の兵士へと命令を下し、それと同時に弓兵の手から矢が上空へと一斉に放たれた。
「戦え諸君ッ! 王国の未来を我らが救うのだ!」
「くっ……こんな……」
アンダースが振るう豪剣をクリストフェルが受け流す……剣と剣が衝突するたびに甲高い音と、火花が散るのを両軍の兵士が固唾を飲んで見守っている。
クリストフェルの流麗な剣筋に目を見張るものもいれば、アンダースが放つ一撃はまさに一撃必殺と言っても良い気迫の籠ったものだ。
二人の王子が交錯するたびに両軍の兵士たちからは感心したかのようなため息が漏れ出ている……王族がこのような形で戦うことなど滅多にない。
御前試合などで剣の腕を披露することを好んだものも過去には存在していたらしいが、それでも近年平和に慣れてしまったこの国では、なかなか見られない光景なのだ。
「……あのバカ王子共……ここで決着がついたらどうするつもりなの……」
聖女ソフィーヤ・ハルフォードは親指の爪を噛みながらその様子を見ていた……隣に立つ騎士ディル・アトキンスは目を輝かせて二人の攻防を見つめており、その場にいる全員がこの決闘に注目してしまっているのがわかる。
全く男という奴は……と内心イライラしながらも彼女自身、二人の王子が戦い合えばどちらが強いのか? という疑問は確かに感じている。
もしこの決闘で決着がつくのであれば……それはそれで無駄に兵を損ねることがなくなるため、ある意味最も良い結果を産むことは理解している。
だが……彼女の目的は決着をつける相手が違う、ソフィーヤはこの戦いに乗じて辺境の翡翠姫ことシャルロッタ・インテリペリを抹殺することなのだから。
「……おらんのぉ……敵の陣地にはあの女はいないようじゃのぉ……」
「……本当に? 戦場に出てきていないってこと?」
「うーむ……これはここにいるのはハズレクジであったか……つまらんのぉ」
六情の悪魔フェリピニアーダは片肘を立ててつまらなそうな表情で、戦場の様子を見ていたが飽きたのか欠伸をしている。
彼女の感覚でもこの場に辺境の翡翠姫がいないと感じるのであれば、本当に存在していない可能性が高い。
ならばどこへ……ソフィーヤがフェリピニアーダの顔を見ていると、その視線に気がついた彼女は失笑するとわからないとばかりに手を振った。
「……訓戒者殿が正解じゃったの」
「別働隊として動くって話でしたっけ」
「そうじゃ……混沌の戦士団を効果的なタイミングでぶつけるためにの」
第一王子派では黒衣の戦士団と呼ばれているが、その正体は以前より飼育していた混沌の戦士の部隊である。
それを訓戒者である使役する者が率いて戦場から少し離れた場所に待機させている。
第一王子派の戦略としては主力である彼らの軍勢によりクラカト丘陵に陣を置く第二王子派に一当てした後、効果的なタイミングを測って混沌の戦士団を戦線に投入させるというものだった。
混沌の戦士は捨て駒として良い、というのが使役する者の意見であり、投入時に第一王子派は敵陣から速やかに引くことが求められていた。
『……彼奴等はいくらでも作れる人間さえ苗床にできればな』
そう笑いながら話していた使役する者の表情を思い出し、ソフィーヤは内心ゾッとした気分になる。
第一王子派の貴族達全てが混沌の戦士のことを知らされているわけではなく、そう言った者達は捨て駒になることが確定している。
第二王子派にとっては決戦に等しいこの戦いだが、第一王子派の主流派にとっては都合の悪い連中をまとめて滅ぼすための餌場でもあるのだ。
ソフィーヤの隣に立っているディルのように優秀な実戦指揮官は残すことになっているだろうが……それでも大量の死が確定している戦いなど見たくはない。
「……人の命は安い」
「は?」
「神からすれば人一人の命などゴミのようなものじゃ……気にやむことはないぞ聖女」
内心を見透かしたかのようにフェリピニアーダは微笑むが、その笑みに凄まじく邪悪な意図を感じて背筋がほんの少しだけ寒くなる。
本物の怪物達……自ら呼び出した悪魔ではあるが、今更ながらに彼女が唯々興味があるだけでソフィーヤに従っていることに多少の疑問を感じる。
本心がわからない故に何を目的としているのかがさっぱり不明なのだ……供物も求めず、ただ彼女のそばで助言を行うフェリピニアーダは何を目的としているのだろうか?
だが、考えても仕方がない……聖女とはいえ人の身であるソフィーヤには悪魔が何を考えているのかは理解しようはずもないのだから。
「……あの泥棒猫がいないのであればこの戦いは勝てるのではなくて?」
「そりゃ軽率じゃ、あの王子……素晴らしい才能じゃよ、前よりも強くなっているな」
「クリストフェル様が?」
ソフィーヤの言葉に頷くと、フェリピニアーダは素晴らしいご馳走を目の前にした猛獣のように軽く舌なめずりをすると「欲しいのぉ……」と呟いた。
だがそんな悪魔の様子には気がつかないようにソフィーヤはほんの少しだけ胸が高鳴ったような気がする……彼に対する思慕の心は捨てきれていない。
いつだってあの泥棒猫を追い払って自らの手を取って欲しいと思っているからだ……ソフィーヤ・ハルフォードという女性には、クリストフェル・マルムスティーンという青年が必要なのだ。
聖女である以上、勇者のそばにありサポートをするのが天命である……ソフィーヤが学んだ聖女の伝説にはそう書かれていた。
「……アンダースも十分強いがの、それ……もうそろそろ終わるぞ」
フェリピニアーダの言葉通り、クリストフェルの渾身の一撃がアンダースの鎧に食い込む……それは一瞬の出来事だった。
力任せに振り抜いたアンダースの剣を受け流すと、クリストフェルは刃を滑らすように振るって兄の肩口に一撃を叩き込んだのだ。
バキッ! という鈍い音と共に国王代理の着用する鎧に食い込む蜻蛉の鋭い刃だが、名工が作り上げた重厚な装甲はその一撃に見事耐え切って見せた。
「な、なんて硬い……」
「クハッ! 勇者の器……これほどとはなッ!」
「ぐっ!」
肩口に一撃を受けたアンダースだが鎧のおかげで軽傷にすらならなかったらしく、そのまま拳を振り抜いてクリストフェルへと叩きつけると、騎乗していた馬ごと大きく後退させる。
それはまさに人間離れした凄まじい膂力であり、彼がなんらかの恩恵……この場合は邪悪な者達からの力ではあるが、それを得ていることを如実に感じさせる。
大きく後退したクリストフェルはそれ以上踏み込めずに蜻蛉を構え直して兄の出方を窺い始めた。
それを見たアンダースは肩口についた弟の一撃を物語る鎧の傷を見て口元を歪めると、彼に話しかけた。
「……気に入った、ここで終わらすのは勿体無いな……次は軍略を見てやろう」
「何を……!」
「俺を超えられるのか、才を見せてみろクリストフェル!」
「な、ま、待てっ!」
アンダースは言うが早いかそのままくるりと自陣方向へと馬を走らせていく……追いかけようとしたクリストフェルをチラリと見たアンダースは口もをと歪めると片手をあげて彼に向かって振り下ろす。
その合図を見た第一王子派の陣から一斉に大空に向かって凄まじい数の矢が放たれ、空気を切り裂く凄まじい音を立ててクリストフェルへと襲いかかった。
追いかけられない、と知った瞬間クリストフェルの行動は凄まじく早かった……彼もくるりと踵を返すと、そのまま全速力で愛馬を走らせると、自らの陣営へと一目散に駆け出したのだ。
一瞬でも迷えば彼の体が蜂の巣になってしまったであろうが、その一瞬を見極めたクリストフェルの判断もまた英雄と呼ぶに相応しいものだった。
「く……くそっ!」
クリストフェルは悔しさに歯噛みしつつも左右に馬を走らせて飛来する矢を軽々と避けていく……そのまま彼は丘陵へと差し掛かるが、彼の愛馬であるレスポールは主人の危機を理解しているのか、まるでそこは平原であるかのように軽やかに駆けていった。
その見事な手綱捌きを見た両軍の兵士はまたもため息を漏らす……両者ともに凄まじい技量を見せつけてのけたのだ。
これで感心しないわけがない……どちらかともなく兵士たちは自らの盾や鎧に拳を当てて音を打ち鳴らし始める。
静かに音が広がっていき、次第にクラカト丘陵全体へと響くような音と歓声が巻き起こっていく……両軍はすでに理解している。
戦いはもう直ぐ始まる……第一王子派と第二王子派の決戦がついに始まるのだ。
『イングウェイ王国の栄光に!』
『クリストフェル殿下の栄光に!』
それぞれの陣営で叫ばれる名前は違うが、両軍合わせて二万以上に達する屈強なる兵士たちの声が戦場に響き渡っていく。
足を踏み鳴らし、盾を叩き、鎧に得物を叩きつけながら両軍の兵士たちはその瞬間を待ち望んでいた……戦場を支配する高揚感、そして血みどろの戦が今まさに開始されようとしていた。
クリストフェルとアンダース、両者が自らの陣へと駆け込んだその瞬間……第一王子派の陣営から鬨の声が響き渡った。
『攻撃せよ! 王国の未来は目の前にありッ!』
その声と同時にアンダースを支持する第一王子派の軍勢が一斉に動き出す……一万を超える兵士たちがまるで津波のように前進を始める。
第一王子派の先頭には重装備の歩兵部隊が長槍を携えており、まずは歩兵による馬防柵の破壊を行うのだろう……これは事前に第二王子派により予想されており、その前進を阻もうと弓兵達が長弓へと矢を番えると一斉に弦を引き絞った。
それまで一騎打ちの様子を眺めていたインテリペリ辺境伯、クレメント・インテリペリは腰に差していた剣を引き抜くと陣営に響き渡るほどの大声で味方の兵士へと命令を下し、それと同時に弓兵の手から矢が上空へと一斉に放たれた。
「戦え諸君ッ! 王国の未来を我らが救うのだ!」
40
お気に入りに追加
850
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる