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第二二二話 シャルロッタ 一六歳 煉獄 一二
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「かなりの数を撃退したな……ひと段落というところか?」
「そのようです、今のうちに態勢を立て直しましょう」
メネタトンへと進撃していた魔獣の勢いが落ち着いたこともあって、守備隊を指揮していたソイルワーク男爵とリオンはお互い頷いてから、周りの様子を確認していく。
夥しい数の魔獣の死体の中に数人の兵士の姿をみつけて男爵の表情が歪む……ただその数はそれほど多くないのが救いではある。
これもラッシュ司祭の献身的な治療と戦士リオンの援護により、被害が劇的に少なくなったことにより守備隊の被害が圧倒的に少なくなっている。
「……彼らを弔わなくてはな……おい、頼む」
「はっ!」
「魔獣の血液やまだ息があるものに気をつけてくれ」
リオンの言葉に頷くと守備隊の兵士が少し緊張した面持ちで敬礼をすると走っていく……先ほどまでの戦いだけではないが、リオンの素晴らしい剣の腕を見せていたこともあり改めて彼に対する尊敬の念も強くなっているだろう。
男爵はそんな兵士たちの様子を見ながら、本来であれば部下に欲しい人材だな……と先ほどまでの戦いぶりを思い返しながら思った。
一兵士では勿体なさすぎる腕前であり、守備隊長として街の防衛指揮を任せてもおかしくないような人物だった。
「……勿体ないな、お主なら騎士としても栄達できるであろ?」
「生憎そういったツテもございませんし、それに今の生活は結構気に入っていますので……」
「ラッシュ司祭は教会司祭だったな……任期が終われば別の街へ、か」
男爵の言葉に微笑みながら頷くリオン……妻であるミルア・ラッシュ婦人は元々シンデレラ子爵家の令嬢であり、冒険者となった後にリオンと出会っている。
結婚も子爵家からはかなり難色を示されたらしく、通常よほどのことが無ければ教会司祭の道を歩む貴族令嬢などは存在しないため、男爵のような貴族からしても「訳あり」と理解しており、実際にそのような扱いをするものもいるだろう。
実物を見れば……この二人が素晴らしい能力と人格を持った人物であることはすぐに理解できるだろう……それ故に勿体無いと考えてしまうのだ。
「そうですね、来年にはセアードへと異動する予定でした」
「そうか……あそこの教会は大変だろうな……」
カーカス子爵家の没落によりセアードは辺境伯家の直轄領として運営されており、代官が赴任していたな……と男爵は思いを巡らせる。
元来盗賊組合の力が強い街であり、代官として赴任した人物もかなり苦労するのでは? と囁かれていたが、伝統派の頭領であるトゥールがインテリペリ辺境伯家に協力的なこともあり統治自体には支障が出ていないのだという。
ただ……街の中にはまだ革新派残党も根強く残っており、治安は決して良いとは言い難い場所の一つでもある。
「閣下! まだ息があるものがいます!」
「ラッシュ司祭の元へと直ぐに連れていくんだ!」
男爵と兵士のやり取りを見つつ、リオンは教会へと歩いていく守備隊の兵士たちの数がかなり多いことが心配だった……妻ミルアは教会司祭として赴任してからほぼ休みなく働き続けている。
本音を言うのであれば少し休ませたい……だが大暴走の第一段階が終わっただけであり、これからさらに攻撃が激しくなる。
特に最終段階となればどのような魔獣が出現するかもわからないのだ……今は無理をしてでも守備隊の戦力を維持することしか対応策がない。
「そういえば男爵……本当に辺境の翡翠姫がここに?」
「ああ……意識を失っているが生きている」
「それであの幻獣がいるのですね」
リオンが視線を上げると、城壁の上で用心深く周囲の状況を窺っている美しい黒い毛皮、そして炎のように赤い瞳を持つ幻獣ガルムが座っている。
ふとその姿を見て、どこかで見たような気がするな……とリオンは首を傾げる、あれはどこだろうか? 冒険者引退を決めたあの日の出来事。
恐るべきオズボーン王と共に彼らの勇気をへし折った小さな不死者がいたが、その傍にあのような真っ赤な瞳を持った魔獣がいた気がした。
「……まさかな……それと……」
リオンはその時の記憶が少し朧げになってきているが、だがあの時に出現した不死者は最近思い直してみると、果たして本当に死者だったのか? という疑問を感じていた。
オズボーン王は確かに不死者だった……纏う死の雰囲気が尋常ではなく、触れただけで命を吸い取られるのではないか? と思うような底冷えする恐怖があった。
だがあの小さな少女は本質的には不死者のような感じがせず……生気を感じさせていたような気がするのだ。
それは妻ミルアも最近疑問を感じていると言っていたため、彼も最近はずっと疑問を感じ続けていた……ただ冒険者を引退してしまった彼らにはオズボーン王の宝物庫へと赴くことができないため真実を知ることは難しい。
「……何用ですか?」
「……っ!?」
いきなり背後から流暢な言葉で話しかけられリオンは思わず腰の剣に手をかけたまま飛び退く……いつの間にか城壁の上から彼の背後へと移動してた幻獣ガルムがじっと彼を見つめながら話しかけてきたのだ。
大きさは三メートル程度だろうか? 十分に威圧感のある巨体と美しく艶かしい黒い毛皮……そして炎のように輝く瞳は知的な色を帯びている。
やはり……どこかで見た? とリオンがそのまま固まっていると、ガルムはふっ……と口元を歪めて笑う。
この世界においてガルムは魔獣と同じような扱いをされることも多く、狩猟の対象となってしまうことが多い……それ故に人類とは敵対するケースも少なくない。
「我を見ておりましたか?」
「……あ、ああ……君はどこかであったか?」
「……おっしゃる意味がわからない、それと見られるのはあまり好きではない」
リオンの言葉にガルムは首を傾げて応えると、ゆっくりと踵を返して再び城壁の上へと戻るために歩き始める……そんな幻獣の姿を見て守備隊の兵士たちは慌てて道を開け、人によっては頭を下げる。
戦闘で恐ろしいまでの強さを見せたガルムに敬意を払うのは当然のことと言える……だが、リオンはやはりそれ以上にやはりこの幻獣と昔あった気がする気がして少し疑問を感じる。
冒険者人生はそれほど長かったと言うわけではなかったが、それでも記憶に残るようなことはたくさんあった、なぜかあのオズボーン王の時の記憶だけが朧げに霞がかかったような感じがして納得がいかない。
「……なぜだろう……どうしてあの幻獣を見たことがあると思うのだ……」
「ふんふんふーん♩」
わたくしは上機嫌で手に持った植物を振り回しながら道を歩いていく……植物と言ってもこの煉獄に生えている植物はマルヴァースに咲いているような生半可なものだけではない。
人型をしており「ぎょえええええ」とうめくような断末魔の声を上げるその植物、マンドラゴラをブンブン振り回しながら歩くわたくしの背後に控えるのはシェルヴェンとゾルディアと言う二人の怪物。
シェルヴェンは四足歩行獣の下半身を持ち、トカゲに似た上半身を持つこの世界で最初に出会った人物だが、今は少し気分が悪いのか顔色が悪い。
もう一人のゾルディアは死人のような肌色で象のような鼻と、鋏によく似た腕を持つ人物で、彼は少し困ったような表情を浮かべてからわたくしへと話しかけてきた。
「お前上機嫌だな……それとマンドラゴラを引き抜いて振り回すのはやめてほしい……」
「そりゃーここから出れるってなら機嫌も良くなりますわよ」
ゾルディアの愚痴っぽい声に反応してわたくしは笑顔で振り向くが、それを見た彼ははぁ……と非常に後悔したようなため息を大きく吐く。
ちなみにマンドラゴラはレーヴェンティオラ、マルヴァースにも自生する植物の一種で、地面から引き抜くと叫び声を上げる魔法的な生命を持つと言われる伝説的な植物だ。
引き抜かれる時に発する叫び声は魂に作用し人間はその声を聞くと死んでしまうと言われるが、実はこれ魔法攻撃でしかないのでわたくしのように常時防御用の魔法結界を展開しているような連中にはまるで効果がない。
犬にひかせて……なんて対応策があるけど、そんなことやってるのはまどろっこしいので結界使ってえいや、と言う作戦がわたくし発案で実行されていた。
「勇者時代はこれを金策のためによく集めたもんよ……」
「……いきなり引き抜くからシェルヴェンが死にかけたのだぞ?」
「マンドラゴラの叫び程度で死んだら強者とはいえないでしょ、でもまだうめき声を上げてるのはさすが煉獄産ねえ」
なお今発しているうめき声だけでも体に疾患があるような病人や怪我人は速攻で死ぬので、持ち帰るには一度捻って締めなきゃいかんのだけど、まあそんな奴いないから大丈夫でしょ。
そんなわたくしをジト目で見つつ、少し離れた場所を歩いていたシェルヴェンだが、確かにさっきマンドラゴラを引き抜いた時には泡吹いてぶっ倒れたけど、今はちゃんと魔法防御してんだから大丈夫なようだ。
そんな彼がわたくしへと話しかけてきた。
「……火口についたら火焔鳥を呼び起こすのだが……この世界の火焔鳥は非常に気が荒くてな、おそらくだが屈服させねばなるまいよ」
「ぶん殴ればいいのね? お安いご用だわ」
「……殺すなよ? まああいつらは死んでも再生するが、一度死ぬと復活までかなりの時間を要するぞ」
火焔鳥は破壊と再生を司る幻獣の一種であり、炎の中から生まれ出でそして炎に帰って死を迎えるという輪廻を象徴する存在だ。
火焔教団なんてこの火焔鳥を信仰する連中なんかも存在するくらいその幻想的な姿は美しく、そして儚い存在なのだ。
ただマルヴァースではその存在は信じられているけど、最後の目撃例が相当昔だとかで……実物を見たことのある人はいなかったんじゃないかな。
まあ、そんな幻獣を観れると言うだけでもこの火口へと向かっているのは正直心が躍る出来事だったりもするのだ。
「大丈夫ですわ、どちらにせよわたくしの人生で初めての火焔鳥ですもの……美しいと言われるその姿を目に焼き付けてから帰りますわ」
「そのようです、今のうちに態勢を立て直しましょう」
メネタトンへと進撃していた魔獣の勢いが落ち着いたこともあって、守備隊を指揮していたソイルワーク男爵とリオンはお互い頷いてから、周りの様子を確認していく。
夥しい数の魔獣の死体の中に数人の兵士の姿をみつけて男爵の表情が歪む……ただその数はそれほど多くないのが救いではある。
これもラッシュ司祭の献身的な治療と戦士リオンの援護により、被害が劇的に少なくなったことにより守備隊の被害が圧倒的に少なくなっている。
「……彼らを弔わなくてはな……おい、頼む」
「はっ!」
「魔獣の血液やまだ息があるものに気をつけてくれ」
リオンの言葉に頷くと守備隊の兵士が少し緊張した面持ちで敬礼をすると走っていく……先ほどまでの戦いだけではないが、リオンの素晴らしい剣の腕を見せていたこともあり改めて彼に対する尊敬の念も強くなっているだろう。
男爵はそんな兵士たちの様子を見ながら、本来であれば部下に欲しい人材だな……と先ほどまでの戦いぶりを思い返しながら思った。
一兵士では勿体なさすぎる腕前であり、守備隊長として街の防衛指揮を任せてもおかしくないような人物だった。
「……勿体ないな、お主なら騎士としても栄達できるであろ?」
「生憎そういったツテもございませんし、それに今の生活は結構気に入っていますので……」
「ラッシュ司祭は教会司祭だったな……任期が終われば別の街へ、か」
男爵の言葉に微笑みながら頷くリオン……妻であるミルア・ラッシュ婦人は元々シンデレラ子爵家の令嬢であり、冒険者となった後にリオンと出会っている。
結婚も子爵家からはかなり難色を示されたらしく、通常よほどのことが無ければ教会司祭の道を歩む貴族令嬢などは存在しないため、男爵のような貴族からしても「訳あり」と理解しており、実際にそのような扱いをするものもいるだろう。
実物を見れば……この二人が素晴らしい能力と人格を持った人物であることはすぐに理解できるだろう……それ故に勿体無いと考えてしまうのだ。
「そうですね、来年にはセアードへと異動する予定でした」
「そうか……あそこの教会は大変だろうな……」
カーカス子爵家の没落によりセアードは辺境伯家の直轄領として運営されており、代官が赴任していたな……と男爵は思いを巡らせる。
元来盗賊組合の力が強い街であり、代官として赴任した人物もかなり苦労するのでは? と囁かれていたが、伝統派の頭領であるトゥールがインテリペリ辺境伯家に協力的なこともあり統治自体には支障が出ていないのだという。
ただ……街の中にはまだ革新派残党も根強く残っており、治安は決して良いとは言い難い場所の一つでもある。
「閣下! まだ息があるものがいます!」
「ラッシュ司祭の元へと直ぐに連れていくんだ!」
男爵と兵士のやり取りを見つつ、リオンは教会へと歩いていく守備隊の兵士たちの数がかなり多いことが心配だった……妻ミルアは教会司祭として赴任してからほぼ休みなく働き続けている。
本音を言うのであれば少し休ませたい……だが大暴走の第一段階が終わっただけであり、これからさらに攻撃が激しくなる。
特に最終段階となればどのような魔獣が出現するかもわからないのだ……今は無理をしてでも守備隊の戦力を維持することしか対応策がない。
「そういえば男爵……本当に辺境の翡翠姫がここに?」
「ああ……意識を失っているが生きている」
「それであの幻獣がいるのですね」
リオンが視線を上げると、城壁の上で用心深く周囲の状況を窺っている美しい黒い毛皮、そして炎のように赤い瞳を持つ幻獣ガルムが座っている。
ふとその姿を見て、どこかで見たような気がするな……とリオンは首を傾げる、あれはどこだろうか? 冒険者引退を決めたあの日の出来事。
恐るべきオズボーン王と共に彼らの勇気をへし折った小さな不死者がいたが、その傍にあのような真っ赤な瞳を持った魔獣がいた気がした。
「……まさかな……それと……」
リオンはその時の記憶が少し朧げになってきているが、だがあの時に出現した不死者は最近思い直してみると、果たして本当に死者だったのか? という疑問を感じていた。
オズボーン王は確かに不死者だった……纏う死の雰囲気が尋常ではなく、触れただけで命を吸い取られるのではないか? と思うような底冷えする恐怖があった。
だがあの小さな少女は本質的には不死者のような感じがせず……生気を感じさせていたような気がするのだ。
それは妻ミルアも最近疑問を感じていると言っていたため、彼も最近はずっと疑問を感じ続けていた……ただ冒険者を引退してしまった彼らにはオズボーン王の宝物庫へと赴くことができないため真実を知ることは難しい。
「……何用ですか?」
「……っ!?」
いきなり背後から流暢な言葉で話しかけられリオンは思わず腰の剣に手をかけたまま飛び退く……いつの間にか城壁の上から彼の背後へと移動してた幻獣ガルムがじっと彼を見つめながら話しかけてきたのだ。
大きさは三メートル程度だろうか? 十分に威圧感のある巨体と美しく艶かしい黒い毛皮……そして炎のように輝く瞳は知的な色を帯びている。
やはり……どこかで見た? とリオンがそのまま固まっていると、ガルムはふっ……と口元を歪めて笑う。
この世界においてガルムは魔獣と同じような扱いをされることも多く、狩猟の対象となってしまうことが多い……それ故に人類とは敵対するケースも少なくない。
「我を見ておりましたか?」
「……あ、ああ……君はどこかであったか?」
「……おっしゃる意味がわからない、それと見られるのはあまり好きではない」
リオンの言葉にガルムは首を傾げて応えると、ゆっくりと踵を返して再び城壁の上へと戻るために歩き始める……そんな幻獣の姿を見て守備隊の兵士たちは慌てて道を開け、人によっては頭を下げる。
戦闘で恐ろしいまでの強さを見せたガルムに敬意を払うのは当然のことと言える……だが、リオンはやはりそれ以上にやはりこの幻獣と昔あった気がする気がして少し疑問を感じる。
冒険者人生はそれほど長かったと言うわけではなかったが、それでも記憶に残るようなことはたくさんあった、なぜかあのオズボーン王の時の記憶だけが朧げに霞がかかったような感じがして納得がいかない。
「……なぜだろう……どうしてあの幻獣を見たことがあると思うのだ……」
「ふんふんふーん♩」
わたくしは上機嫌で手に持った植物を振り回しながら道を歩いていく……植物と言ってもこの煉獄に生えている植物はマルヴァースに咲いているような生半可なものだけではない。
人型をしており「ぎょえええええ」とうめくような断末魔の声を上げるその植物、マンドラゴラをブンブン振り回しながら歩くわたくしの背後に控えるのはシェルヴェンとゾルディアと言う二人の怪物。
シェルヴェンは四足歩行獣の下半身を持ち、トカゲに似た上半身を持つこの世界で最初に出会った人物だが、今は少し気分が悪いのか顔色が悪い。
もう一人のゾルディアは死人のような肌色で象のような鼻と、鋏によく似た腕を持つ人物で、彼は少し困ったような表情を浮かべてからわたくしへと話しかけてきた。
「お前上機嫌だな……それとマンドラゴラを引き抜いて振り回すのはやめてほしい……」
「そりゃーここから出れるってなら機嫌も良くなりますわよ」
ゾルディアの愚痴っぽい声に反応してわたくしは笑顔で振り向くが、それを見た彼ははぁ……と非常に後悔したようなため息を大きく吐く。
ちなみにマンドラゴラはレーヴェンティオラ、マルヴァースにも自生する植物の一種で、地面から引き抜くと叫び声を上げる魔法的な生命を持つと言われる伝説的な植物だ。
引き抜かれる時に発する叫び声は魂に作用し人間はその声を聞くと死んでしまうと言われるが、実はこれ魔法攻撃でしかないのでわたくしのように常時防御用の魔法結界を展開しているような連中にはまるで効果がない。
犬にひかせて……なんて対応策があるけど、そんなことやってるのはまどろっこしいので結界使ってえいや、と言う作戦がわたくし発案で実行されていた。
「勇者時代はこれを金策のためによく集めたもんよ……」
「……いきなり引き抜くからシェルヴェンが死にかけたのだぞ?」
「マンドラゴラの叫び程度で死んだら強者とはいえないでしょ、でもまだうめき声を上げてるのはさすが煉獄産ねえ」
なお今発しているうめき声だけでも体に疾患があるような病人や怪我人は速攻で死ぬので、持ち帰るには一度捻って締めなきゃいかんのだけど、まあそんな奴いないから大丈夫でしょ。
そんなわたくしをジト目で見つつ、少し離れた場所を歩いていたシェルヴェンだが、確かにさっきマンドラゴラを引き抜いた時には泡吹いてぶっ倒れたけど、今はちゃんと魔法防御してんだから大丈夫なようだ。
そんな彼がわたくしへと話しかけてきた。
「……火口についたら火焔鳥を呼び起こすのだが……この世界の火焔鳥は非常に気が荒くてな、おそらくだが屈服させねばなるまいよ」
「ぶん殴ればいいのね? お安いご用だわ」
「……殺すなよ? まああいつらは死んでも再生するが、一度死ぬと復活までかなりの時間を要するぞ」
火焔鳥は破壊と再生を司る幻獣の一種であり、炎の中から生まれ出でそして炎に帰って死を迎えるという輪廻を象徴する存在だ。
火焔教団なんてこの火焔鳥を信仰する連中なんかも存在するくらいその幻想的な姿は美しく、そして儚い存在なのだ。
ただマルヴァースではその存在は信じられているけど、最後の目撃例が相当昔だとかで……実物を見たことのある人はいなかったんじゃないかな。
まあ、そんな幻獣を観れると言うだけでもこの火口へと向かっているのは正直心が躍る出来事だったりもするのだ。
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