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第三〇話 シャルロッタ・インテリペリ 一三歳 二〇
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「サルヨバドス、あの疫病の悪魔は滅びた……」
「な……あれだけ贄を与えたのに。これでは全てが無駄になるではないか!」
暗い部屋の中で椅子に座る男性……栗色の髪を短く刈り上げた神経質そうな男が驚き、思わず目の前のテーブルを叩いてしまう。
彼は先日サルヨバドスに贄を与えていた外套をきた男と同一人物であり、今回のクリストフェル王子への呪いをかけさせるために疫病の悪魔を召喚した陰謀に加担している。
彼の衣服は仕立ての良い貴族が着用するもので、王国の庶民が着られない非常に高額なものであることから、王国の貴族位を持っていることが窺い知れる。
「疫病の悪魔は確かに強力になっていたが、ディムトゥリア神の眷属としては最下級に位置する。それゆえに戦闘能力には限度があるからな」
「だ、だが……あれだけ人の命を吸わせて贄を得た悪魔だぞ?! そう簡単に死なれては困る……」
「あれよりも強いものが現れた、ただそれだけだ」
だがそんな彼を見ても冷めた目で見つめる人物がもう一人、テーブルを挟んだ対面に腕を組んだまま、深く椅子へと腰を下ろしている。
その男の姿は非常に不気味だった……黒色のローブに身を包む大柄な人物で、鳥を模した仮面がフードの中から覗き、本来の素顔を見ることはできない。
ただ仮面の眼窩の奥に覗く眼は無機質で、深淵を思わせるような深く薄暗い光を湛えた赤い目が見えており、まるで作り物のような不気味な雰囲気を醸し出している。
「強いものだと? あの不思議な光と爆音、王都にいたものであれば誰もが聞いている……あれからサルヨバドスの気配は完全に消えた」
数日前、王都の地下水路で不自然なくらいの魔力爆発が起きた、だが通常魔力の爆発が起きた場合は大きな災害となることがあるが、今回の魔力爆発があっても地下水路は崩壊しなかった。
確かにあの夜に起きた不思議な発光現象、そして大きな爆発音は王都に住んでいたものであれば誰もが気づいている。
だが、地下水路を調査した兵士たちは驚いていた……そこは聖なる力に満ちた浄化された空間となっており、それまで漂っていた負の空気は一掃され驚くほど清浄な空気が流れていたのだ。
「勇者、かもしれぬな……あれだけの神聖な力を発して尚地形を破壊しない魔力などこの世界には存在しない」
「だ、だが……クリストフェルが予言された勇者なのだろう?」
「無論、かの王子は勇者たる資質を備えている、それ故にサルヨバドスによる呪いをかけた」
鳥仮面の男は眼前の人物が発した言葉に頷く、彼の永遠とも思える記憶には勇者という完成された戦闘兵器の姿が今なお昨日のことのように思い出せる。
勇者、それは世界を救うために女神が遣わした存在、世界を安定させる天秤は何百年周期かに一度大きく振れることがある。
何らかの揺り返し現象により世界のバランスが大きく崩れるのだが、そのバランスを失った時代は歴史を紐解いてみると必ず魔王と勇者の存在がある。
魔王復活はすでに予言されている、そしてその予言には魔王と対極に位置する勇者の存在も記録されているのだ。
「……魔王様の復活はもうすぐなのだ、それに合わせて勇者が生まれることは混沌の四教団により予言されていた、その子供こそクリストフェル・マルムスティーン、この国の第二王子である」
「だ、だがクリストフェルは呪いで戦うことなど……」
「そうだ、それゆえに不確定因子が現れたのかもしれない、クフフッ……サルヨバドスは疫病の悪魔、先ほども伝えたが戦い向きの悪魔ではない、それでも人間にあの汚物を倒すことなど出来ようか?」
鳥仮面は軽く両手を広げると肩をすくめて笑う……予言にない不確定因子の存在はどう考えるべきか? 魔王様が復活した後、その不確定因子が予想もしない方向へと世界を導く可能性がある。
混沌の使徒として混乱と混迷、そして不規則な未来は尊ぶべきもの……混沌はそうあるべき、自らも制御し得ない力であるべきだ。
今回サルヨバドスを滅ぼした不確定因子、これは混沌だ……停滞しつつあった現状に石を投げ入れるまさに水面に立つ波紋のよう。
「闇征く者……混沌神の訓戒者たる貴殿に問う、ならばどうするべきか?」
「確実に相手を殺したいのであれば、ワーボス神の眷属である暴力の悪魔を乞うべきだ。だがアレは単なる殺戮人形、貴殿の大事な者達も死ぬかもしれぬな? クフッ……」
闇征く者は仮面の下で引き攣るような笑い声をあげ、そしてその不快さに男性は嫌悪感を丸出しにした表情を浮かべる。
だが訓戒者の恐ろしさを知る男には彼に文句をつけようなどという無謀な気持ちは起こらない。
仮面の男、いや生物であるかどうかすらわからないが、混沌神の言葉を伝えそしてその怒りや憎しみをこの世界に顕現させる怪物。
貴族風の男は一度大きく深呼吸して昂った気持ちを抑え込むと仮面の男へと問いかけた。
「混沌神は今後どうされよと申されるか? 信徒にご教示いただきたい」
「混沌四神の意志は変わらぬ……魔王復活を成就せよ、神々の盟約を破りし存在を見つけ出し滅ぼせ、世界を混沌へと塗り替えよ」
訓戒者の言葉に黙って貴族風の男は頭を垂れる、混沌四神……戦争と殺戮の神ワーボス、腐敗と疫病の神ディムトゥリア、魔法と秘密の神ターベンディッシュ、肉欲と快楽の神ノルザルツ。
その意志は訓戒者により示されている……それに従うのは信徒たる者の宿命であるからだ、貴族風の男は訓戒者へと視線を戻す。
「とにかく、クリストフェルを追い落とすための策は今後も行わなければならない、そのために助力を乞う」
「承知した、私も混沌の使徒だ。魔王復活のための労力は惜しまぬよ、ヌーガン・ベッテンコート侯爵……」
ベッテンコート侯爵、イングウェイ王国の重鎮たる貴族の一人であり、その本性は混沌神ターベンディッシュを信仰する信奉者の一人でもある。
混沌の触手は長年の平和で緩み切っているイングウェイ王国のあちこちへと、その腐敗と混沌を広げつつあり、その企みは半ば成功しつつあった。
だがしかし、此処にきて勇者の素質を持つクリストフェルの弱体化に失敗し、尚且つ貴重な戦力である疫病の悪魔を失った。
三年前にも同じような出来事があり、本来インテリペリ辺境伯の戦力を削ぐべく召喚されていた黒書の悪魔が滅ぼされる事件があったが……あれも不確定因子だろうか? 闇征く者は仮面の下でほくそ笑む。
「……面白い、実に面白い……我と同格の存在が生まれたのであれば……それは歓迎するべきだろうな」
「……また定期的に王都へ遊びに……いや、それは違うな。僕が君に会いにいこうシャルロッタ、許してくれるかい?」
「は、はあ……あと二年もすれば学園でございますし、そこで会えばよろしいのでは……」
わたくしの手をしっかりと握って離さない目の前の超絶イケメン王子クリストフェル殿下が熱っぽい視線でわたくしを見ているのだが、彼は先日会った時よりもぜんぜん顔色が良くなっていて、咳もしなくなっている。
わたくしが疫病の悪魔を倒したことで、彼の生命力を盗み取る呪いは解消されているからな……そりゃあ元気にもなるだろう、というか数日で元気になりすぎだろ……。
サルヨバドスはどれだけ殿下の生命力を引っこ抜いていたんだ……数日前とは生命力のみなぎり方が違う。
「君と会った翌日から僕を蝕んでいた謎の病魔が無くなったんだ、君は僕にとって大切な女神なんだよ」
うぉっ……なんだこの後光が差しそうなイケメンスマイルは。
呪いが解消されてみてわかるが、クリストフェル殿下はこの世界の女神様に愛された人間の一人だと思う、これはその人の魔力を感知するわたくしやユルのような特殊な目を持っていないとわからないかもしれないが。
身体の内部から放たれている神聖なる波動というか、光の気配が少々強すぎる……今の彼は勇者ではないが、鍛え上げれば勇者としても遜色ない戦士に育ちそうではある。
「殿下、お体の調子が良くなったこと臣下として喜ばしく思います、一つお願い事を。自らを鍛え王に相応しい力をおつけください。わたくしは強い殿下を見てみたく……」
「お、おお……シャルロッタは強い男が好みなのだな、承知した。君の隣に並ぶ男に相応しく強くあろうと思う」
「あ、その……強い男が好みとかじゃなくてですね……殿下は強くなれると思った次第でして……その」
「お父上からも聞いたよ、シャルロッタも剣を嗜むとね。今度君に会うときまでに剣を鍛え直すよ」
違う、強い男が好きって意味じゃなくて殿下は確実に強くなれるって思ったから鍛えてみてよって言いたかっただけなんだよ……だが、殿下は笑顔を浮かべてわたくしの手をもう一度優しく握ると軽く手の甲に唇を落とす。
そしてニコリと破壊力満点の笑みを浮かべてわたくしを見る……ひぇっ……前世は男性とはいえ現在は女性としての生活が一三年目ともなると色々心境の変化なども生まれてくるものなのだろうか?
思わずドキッとしてしまった上に、少しだけ頬を染めたわたくしを見て殿下は嬉しそうに微笑むとしっかりと握っていたわたくしの手を離す。
「また会おうシャルロッタ、いや愛しい我が婚約者殿、いつか君の目に僕だけを映してみせるよ」
「な……あれだけ贄を与えたのに。これでは全てが無駄になるではないか!」
暗い部屋の中で椅子に座る男性……栗色の髪を短く刈り上げた神経質そうな男が驚き、思わず目の前のテーブルを叩いてしまう。
彼は先日サルヨバドスに贄を与えていた外套をきた男と同一人物であり、今回のクリストフェル王子への呪いをかけさせるために疫病の悪魔を召喚した陰謀に加担している。
彼の衣服は仕立ての良い貴族が着用するもので、王国の庶民が着られない非常に高額なものであることから、王国の貴族位を持っていることが窺い知れる。
「疫病の悪魔は確かに強力になっていたが、ディムトゥリア神の眷属としては最下級に位置する。それゆえに戦闘能力には限度があるからな」
「だ、だが……あれだけ人の命を吸わせて贄を得た悪魔だぞ?! そう簡単に死なれては困る……」
「あれよりも強いものが現れた、ただそれだけだ」
だがそんな彼を見ても冷めた目で見つめる人物がもう一人、テーブルを挟んだ対面に腕を組んだまま、深く椅子へと腰を下ろしている。
その男の姿は非常に不気味だった……黒色のローブに身を包む大柄な人物で、鳥を模した仮面がフードの中から覗き、本来の素顔を見ることはできない。
ただ仮面の眼窩の奥に覗く眼は無機質で、深淵を思わせるような深く薄暗い光を湛えた赤い目が見えており、まるで作り物のような不気味な雰囲気を醸し出している。
「強いものだと? あの不思議な光と爆音、王都にいたものであれば誰もが聞いている……あれからサルヨバドスの気配は完全に消えた」
数日前、王都の地下水路で不自然なくらいの魔力爆発が起きた、だが通常魔力の爆発が起きた場合は大きな災害となることがあるが、今回の魔力爆発があっても地下水路は崩壊しなかった。
確かにあの夜に起きた不思議な発光現象、そして大きな爆発音は王都に住んでいたものであれば誰もが気づいている。
だが、地下水路を調査した兵士たちは驚いていた……そこは聖なる力に満ちた浄化された空間となっており、それまで漂っていた負の空気は一掃され驚くほど清浄な空気が流れていたのだ。
「勇者、かもしれぬな……あれだけの神聖な力を発して尚地形を破壊しない魔力などこの世界には存在しない」
「だ、だが……クリストフェルが予言された勇者なのだろう?」
「無論、かの王子は勇者たる資質を備えている、それ故にサルヨバドスによる呪いをかけた」
鳥仮面の男は眼前の人物が発した言葉に頷く、彼の永遠とも思える記憶には勇者という完成された戦闘兵器の姿が今なお昨日のことのように思い出せる。
勇者、それは世界を救うために女神が遣わした存在、世界を安定させる天秤は何百年周期かに一度大きく振れることがある。
何らかの揺り返し現象により世界のバランスが大きく崩れるのだが、そのバランスを失った時代は歴史を紐解いてみると必ず魔王と勇者の存在がある。
魔王復活はすでに予言されている、そしてその予言には魔王と対極に位置する勇者の存在も記録されているのだ。
「……魔王様の復活はもうすぐなのだ、それに合わせて勇者が生まれることは混沌の四教団により予言されていた、その子供こそクリストフェル・マルムスティーン、この国の第二王子である」
「だ、だがクリストフェルは呪いで戦うことなど……」
「そうだ、それゆえに不確定因子が現れたのかもしれない、クフフッ……サルヨバドスは疫病の悪魔、先ほども伝えたが戦い向きの悪魔ではない、それでも人間にあの汚物を倒すことなど出来ようか?」
鳥仮面は軽く両手を広げると肩をすくめて笑う……予言にない不確定因子の存在はどう考えるべきか? 魔王様が復活した後、その不確定因子が予想もしない方向へと世界を導く可能性がある。
混沌の使徒として混乱と混迷、そして不規則な未来は尊ぶべきもの……混沌はそうあるべき、自らも制御し得ない力であるべきだ。
今回サルヨバドスを滅ぼした不確定因子、これは混沌だ……停滞しつつあった現状に石を投げ入れるまさに水面に立つ波紋のよう。
「闇征く者……混沌神の訓戒者たる貴殿に問う、ならばどうするべきか?」
「確実に相手を殺したいのであれば、ワーボス神の眷属である暴力の悪魔を乞うべきだ。だがアレは単なる殺戮人形、貴殿の大事な者達も死ぬかもしれぬな? クフッ……」
闇征く者は仮面の下で引き攣るような笑い声をあげ、そしてその不快さに男性は嫌悪感を丸出しにした表情を浮かべる。
だが訓戒者の恐ろしさを知る男には彼に文句をつけようなどという無謀な気持ちは起こらない。
仮面の男、いや生物であるかどうかすらわからないが、混沌神の言葉を伝えそしてその怒りや憎しみをこの世界に顕現させる怪物。
貴族風の男は一度大きく深呼吸して昂った気持ちを抑え込むと仮面の男へと問いかけた。
「混沌神は今後どうされよと申されるか? 信徒にご教示いただきたい」
「混沌四神の意志は変わらぬ……魔王復活を成就せよ、神々の盟約を破りし存在を見つけ出し滅ぼせ、世界を混沌へと塗り替えよ」
訓戒者の言葉に黙って貴族風の男は頭を垂れる、混沌四神……戦争と殺戮の神ワーボス、腐敗と疫病の神ディムトゥリア、魔法と秘密の神ターベンディッシュ、肉欲と快楽の神ノルザルツ。
その意志は訓戒者により示されている……それに従うのは信徒たる者の宿命であるからだ、貴族風の男は訓戒者へと視線を戻す。
「とにかく、クリストフェルを追い落とすための策は今後も行わなければならない、そのために助力を乞う」
「承知した、私も混沌の使徒だ。魔王復活のための労力は惜しまぬよ、ヌーガン・ベッテンコート侯爵……」
ベッテンコート侯爵、イングウェイ王国の重鎮たる貴族の一人であり、その本性は混沌神ターベンディッシュを信仰する信奉者の一人でもある。
混沌の触手は長年の平和で緩み切っているイングウェイ王国のあちこちへと、その腐敗と混沌を広げつつあり、その企みは半ば成功しつつあった。
だがしかし、此処にきて勇者の素質を持つクリストフェルの弱体化に失敗し、尚且つ貴重な戦力である疫病の悪魔を失った。
三年前にも同じような出来事があり、本来インテリペリ辺境伯の戦力を削ぐべく召喚されていた黒書の悪魔が滅ぼされる事件があったが……あれも不確定因子だろうか? 闇征く者は仮面の下でほくそ笑む。
「……面白い、実に面白い……我と同格の存在が生まれたのであれば……それは歓迎するべきだろうな」
「……また定期的に王都へ遊びに……いや、それは違うな。僕が君に会いにいこうシャルロッタ、許してくれるかい?」
「は、はあ……あと二年もすれば学園でございますし、そこで会えばよろしいのでは……」
わたくしの手をしっかりと握って離さない目の前の超絶イケメン王子クリストフェル殿下が熱っぽい視線でわたくしを見ているのだが、彼は先日会った時よりもぜんぜん顔色が良くなっていて、咳もしなくなっている。
わたくしが疫病の悪魔を倒したことで、彼の生命力を盗み取る呪いは解消されているからな……そりゃあ元気にもなるだろう、というか数日で元気になりすぎだろ……。
サルヨバドスはどれだけ殿下の生命力を引っこ抜いていたんだ……数日前とは生命力のみなぎり方が違う。
「君と会った翌日から僕を蝕んでいた謎の病魔が無くなったんだ、君は僕にとって大切な女神なんだよ」
うぉっ……なんだこの後光が差しそうなイケメンスマイルは。
呪いが解消されてみてわかるが、クリストフェル殿下はこの世界の女神様に愛された人間の一人だと思う、これはその人の魔力を感知するわたくしやユルのような特殊な目を持っていないとわからないかもしれないが。
身体の内部から放たれている神聖なる波動というか、光の気配が少々強すぎる……今の彼は勇者ではないが、鍛え上げれば勇者としても遜色ない戦士に育ちそうではある。
「殿下、お体の調子が良くなったこと臣下として喜ばしく思います、一つお願い事を。自らを鍛え王に相応しい力をおつけください。わたくしは強い殿下を見てみたく……」
「お、おお……シャルロッタは強い男が好みなのだな、承知した。君の隣に並ぶ男に相応しく強くあろうと思う」
「あ、その……強い男が好みとかじゃなくてですね……殿下は強くなれると思った次第でして……その」
「お父上からも聞いたよ、シャルロッタも剣を嗜むとね。今度君に会うときまでに剣を鍛え直すよ」
違う、強い男が好きって意味じゃなくて殿下は確実に強くなれるって思ったから鍛えてみてよって言いたかっただけなんだよ……だが、殿下は笑顔を浮かべてわたくしの手をもう一度優しく握ると軽く手の甲に唇を落とす。
そしてニコリと破壊力満点の笑みを浮かべてわたくしを見る……ひぇっ……前世は男性とはいえ現在は女性としての生活が一三年目ともなると色々心境の変化なども生まれてくるものなのだろうか?
思わずドキッとしてしまった上に、少しだけ頬を染めたわたくしを見て殿下は嬉しそうに微笑むとしっかりと握っていたわたくしの手を離す。
「また会おうシャルロッタ、いや愛しい我が婚約者殿、いつか君の目に僕だけを映してみせるよ」
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