2 / 9
第1章 私はただの掃除婦です
第1話
しおりを挟む
ここは、シュバルツ国。わたしの生まれた国。
でも、生まれたところは、端っこにある田舎町。
だから、都会に憧れる少女のように少しは興味はあった。少しはね。
そんなところから、なんで王城にいるかというと、貴族の令嬢は15歳になると行儀見習いとして一年間学ばなければいけないという国の決まりでいるわけだ。今年15歳になった私も、4月からお城に上がった子爵令嬢だったりする。
このシュバルツ国は、昔から少年少女の育成に力を入れてきた。
この行儀見習い制度もその一つ。この国の成人は16歳だが、たった1年間で” 淑女 “になれるかということではない。
大半の貴族の子は幼少の時から学びを始める。子息は12歳の年に国立学園の入学を義務としていた。学園の入学は子息だけの特権なため、その代わりに子女には1年間の行儀見習い制度が適用されていた。
言葉のとおり王侯マナーを学ぶだけがこの制度の目的ではない。実はもっと奥が深かった。
未来を担う子供たちのために、人脈作りの場を設けるだけではなく、貴族としての結束力を高めるといった推敲な目標もあるらしい。みんなが国の狙いを理解しているのかは微妙なところだけど、それでも国の政策としては良策なのではないかとつくづく思う。
だって、わたしのような田舎貴族には、出会いは少ないから。
それに、結婚はまだでも、王城の女官や侍女としての道が開ける可能性も高いのだ。
それでも、大多数の令嬢の目的は『将来のお婿さん』探しなのではないかと私は思っていたりする。
地方貴族の婚約者のいない子女たちにとって、有力子息を捕まえる絶好の機会だから。
※※※
わたしの名はジュリア・ランドール。
一応子爵令嬢の私だが、正直いうと貴族らしい生活ってよくわからない。
田舎で育ったし、貴族らしい生活ってあまりしてこなかったから。
だから、王城の行儀見習いにきて、あの令嬢集団の中に本当はいなくちゃならなかったと思うと憂鬱しかないけど、なぜか登城した初日に” 下働き ”と勘違いされて掃除婦をしている。
一応、侍女長に訴えてみたけど、なぜか取り合ってくれなかった。
「兄さんには心配されたけど・・・」
でもそれでいい。
地味にこの一年を過ごして、そして何事もなく田舎に帰る。
これが一番と思っている。
業務終了の挨拶を終え、目指す先は女子用宿舎。
ナイリーンの姿はなかったから、きっともう宿舎に戻っているだろう。
「た、ただいまーー。」
「お疲れ~。もぐ・・・ご飯いこ」
ぷっ、なにこの短い会話。夕食前の会話はいつもこんな感じ。
同室のナイリーンとは、ここにきて・・・というか初めての友人。
ナイリーンじゃなかったら、わたしに友人なんてできなかったと思う。
わたしには、兄しかいなかったから・・・。
ナイリーンは、食いしん坊でいつも何かを食べている。ぽっちゃりしているのはこれが原因かな。
口数が少ない人なのか、というとそうではない。いつもをもっとしゃべる楽しい人なのだ。
お菓子ばかり食べて夕飯は入るのだろうか?
「うん!わたしもお腹空いたよ。」
「もぐ・・」
これは『うん、わたしも』とういう返事だと思う。
実はナイリーンもわたしと同じ掃除婦だったりする。
彼女は準男爵の令嬢で、本当は行儀見習いできたはず。でもなぜかわたしと同じ掃除婦。
理由は、聞いてたけどごまかされたような?・・・なのではっきりわからない。
クリンとした丸い目が可愛くて、性格も明るくてなんでも知っていて、お城での情報はナイリーンから聞くのがほとんどだ。そんな彼女の実家がすごいのだ。
実家は商売していているらしく、かなり繁盛しているみたいでとても裕福。
月2回、実家から送られてくるお菓子の数々に、わたしもお世話になってたりする。
あ、そういえばここに来る少し前に、トラブルがあった話を教えてくれた。なんでもある上位貴族から縁談を申し込まれた相手がかなりの年上で、ナイリーンの父と差ほど変わりなかったらしい。さすがに、どう断ろうかと悩んでいたところにこの行儀見習い。本当は参加しないつもりそうだけど、これ幸いと逃げ込んだそうだ。
それでも一年しか猶予がないのに、本人曰く「一年あれば、きっといい案が浮かぶ」と楽観的だ。ほんわかしている外見とは違ってなんとも逞しい。
着替えを終わらせて、待っていた友人に声をかける。
「はい、お待たせー」
「もぐ・・・」
ホント、夕食前はこんな感じ。いつも通りのナイリーンにクスっと笑う。
そんな友人と連れ立って食堂へ向かうのだった。
でも、生まれたところは、端っこにある田舎町。
だから、都会に憧れる少女のように少しは興味はあった。少しはね。
そんなところから、なんで王城にいるかというと、貴族の令嬢は15歳になると行儀見習いとして一年間学ばなければいけないという国の決まりでいるわけだ。今年15歳になった私も、4月からお城に上がった子爵令嬢だったりする。
このシュバルツ国は、昔から少年少女の育成に力を入れてきた。
この行儀見習い制度もその一つ。この国の成人は16歳だが、たった1年間で” 淑女 “になれるかということではない。
大半の貴族の子は幼少の時から学びを始める。子息は12歳の年に国立学園の入学を義務としていた。学園の入学は子息だけの特権なため、その代わりに子女には1年間の行儀見習い制度が適用されていた。
言葉のとおり王侯マナーを学ぶだけがこの制度の目的ではない。実はもっと奥が深かった。
未来を担う子供たちのために、人脈作りの場を設けるだけではなく、貴族としての結束力を高めるといった推敲な目標もあるらしい。みんなが国の狙いを理解しているのかは微妙なところだけど、それでも国の政策としては良策なのではないかとつくづく思う。
だって、わたしのような田舎貴族には、出会いは少ないから。
それに、結婚はまだでも、王城の女官や侍女としての道が開ける可能性も高いのだ。
それでも、大多数の令嬢の目的は『将来のお婿さん』探しなのではないかと私は思っていたりする。
地方貴族の婚約者のいない子女たちにとって、有力子息を捕まえる絶好の機会だから。
※※※
わたしの名はジュリア・ランドール。
一応子爵令嬢の私だが、正直いうと貴族らしい生活ってよくわからない。
田舎で育ったし、貴族らしい生活ってあまりしてこなかったから。
だから、王城の行儀見習いにきて、あの令嬢集団の中に本当はいなくちゃならなかったと思うと憂鬱しかないけど、なぜか登城した初日に” 下働き ”と勘違いされて掃除婦をしている。
一応、侍女長に訴えてみたけど、なぜか取り合ってくれなかった。
「兄さんには心配されたけど・・・」
でもそれでいい。
地味にこの一年を過ごして、そして何事もなく田舎に帰る。
これが一番と思っている。
業務終了の挨拶を終え、目指す先は女子用宿舎。
ナイリーンの姿はなかったから、きっともう宿舎に戻っているだろう。
「た、ただいまーー。」
「お疲れ~。もぐ・・・ご飯いこ」
ぷっ、なにこの短い会話。夕食前の会話はいつもこんな感じ。
同室のナイリーンとは、ここにきて・・・というか初めての友人。
ナイリーンじゃなかったら、わたしに友人なんてできなかったと思う。
わたしには、兄しかいなかったから・・・。
ナイリーンは、食いしん坊でいつも何かを食べている。ぽっちゃりしているのはこれが原因かな。
口数が少ない人なのか、というとそうではない。いつもをもっとしゃべる楽しい人なのだ。
お菓子ばかり食べて夕飯は入るのだろうか?
「うん!わたしもお腹空いたよ。」
「もぐ・・」
これは『うん、わたしも』とういう返事だと思う。
実はナイリーンもわたしと同じ掃除婦だったりする。
彼女は準男爵の令嬢で、本当は行儀見習いできたはず。でもなぜかわたしと同じ掃除婦。
理由は、聞いてたけどごまかされたような?・・・なのではっきりわからない。
クリンとした丸い目が可愛くて、性格も明るくてなんでも知っていて、お城での情報はナイリーンから聞くのがほとんどだ。そんな彼女の実家がすごいのだ。
実家は商売していているらしく、かなり繁盛しているみたいでとても裕福。
月2回、実家から送られてくるお菓子の数々に、わたしもお世話になってたりする。
あ、そういえばここに来る少し前に、トラブルがあった話を教えてくれた。なんでもある上位貴族から縁談を申し込まれた相手がかなりの年上で、ナイリーンの父と差ほど変わりなかったらしい。さすがに、どう断ろうかと悩んでいたところにこの行儀見習い。本当は参加しないつもりそうだけど、これ幸いと逃げ込んだそうだ。
それでも一年しか猶予がないのに、本人曰く「一年あれば、きっといい案が浮かぶ」と楽観的だ。ほんわかしている外見とは違ってなんとも逞しい。
着替えを終わらせて、待っていた友人に声をかける。
「はい、お待たせー」
「もぐ・・・」
ホント、夕食前はこんな感じ。いつも通りのナイリーンにクスっと笑う。
そんな友人と連れ立って食堂へ向かうのだった。
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
殿下、もう婚約破棄しませんか?
森 りんご
恋愛
ここは夜会。
「殿下、もう婚約破棄しませんか?」
《婚約破棄》この4文字を告げるためにここに来ましたもの。
でなければこんなむさ苦しい夜会なんかに来ませんよ?
あらあらわたくしの口から《婚約破棄》という言葉が出てくるのが不思議なようですね。
みなさん口をポカンと開けており会場は水を打ったかのように静まり返りました。
そしてわたくしが婚約破棄を告げた相手……この国の第二王子であるレイモンド・シーランド様はなぜかわかりませんが悲しげにこちらを見てきます。
あれ?涙目になっていません?
後でいつも懇意にされている令嬢たちに慰めて貰えばいいでしょう。
婚約者から婚約破棄を言い渡されてショックなのでしょうがもう知りませんわ。
別れを告げようとする時、殿下は大声で叫びました。
「なぜだ?どうしてこんなことをする?」
自分のしたことを振り返ればすぐわかりますのに。
だって……愛されないのは嫌なのよ……
*王子に恋をするのもやめた令嬢と拗らせ王子の物語です。
恋愛描写が下手っぴなのでお許しください!
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
今日で、終わる
夕立悠理
恋愛
ドロシーには大好きな恋人がいた。けれど、その恋人に浮気され、別れることになる。
恋にすっかり消極的になったドロシーは、当初入学するはずだった学園をやめて、全寮制の別の学園に入学することにする。
そこでは、先輩が後輩を指導するという制度があり、ドロシーの先輩は男子生徒だった。
もう、恋なんてしないと誓ったはずなのに、その先輩はドロシーをめちゃくちゃ甘やかしてきて──。それに、なんだか、この先輩には秘密があるようで……?
【完結】役立たずになったので身を引こうとしましたが、溺愛王子様から逃げられません
Rohdea
恋愛
───あなたのお役に立てない私は身を引こうとした……のに、あれ? 逃げられない!?
伯爵令嬢のルキアは、幼い頃からこの国の王太子であるシグルドの婚約者。
家柄も容姿も自分よりも優れている数多の令嬢を跳ね除けてルキアが婚約者に選ばれた理由はたった一つ。
多大な魔力量と貴重な属性を持っていたから。
(私がこの力でシグルド様をお支えするの!)
そう思ってずっと生きて来たルキア。
しかしある日、原因不明の高熱を発症した後、目覚めるとルキアの魔力はすっからかんになっていた。
突然、役立たずとなってしまったルキアは、身を引く事を決めてシグルドに婚約解消を申し出る事にした。
けれど、シグルドは──……
そして、何故か力を失ったルキアと入れ替わるかのように、
同じ属性の力を持っている事が最近判明したという令嬢が王宮にやって来る。
彼女は自分の事を「ヒロイン」と呼び、まるで自分が次期王太子妃になるかのように振る舞い始めるが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる