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勇者となった女友達と元カノもいる勇者パーティー(有象無象)
忘れさせられた記憶
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「……あの日から二年以上も経っているわけだからな。先生もいたことを忘れてたよ」
「ええっ? 忘れてた? あの優しい深川先生がイーリスに怒鳴るぐらいの猛抗議をしていたのに? ……うちは、忘れられなかったな。あんな優しい先生でも、こんなに怒るんだ……って思ったもん。仁だって、深川先生が怒鳴るイメージ無かったでしょ?」
「確かにあの人が怒鳴るイメージはないな。けど、優しい……か。まあ……優しかったな」
少し不服ではあるが、とりあえず深川先生は優しかったなと麗蒼に合わせる。
……ただ正直、あの先生を優しいと言うのは果たして正しいのだろうか。
麗蒼にとっては、優しい先生だろうな。
校則違反気味のギャルメイクやネイルで、生活指導の体育教師達に注意されていた麗蒼を庇っている所を何回も見たことある。
……でもなあ、暴力事件を起こしまくっていた神堂やクラスの大人しいタイプの女子はほとんど全員パシリにさせてた岸田達に強く言えなかったり、一部の生徒からは真央ちゃんと呼ばれるぐらいには舐められていた先生だからなあ……。
そんな先生を優しい先生と呼ぶのは、俺的には違和感しかない。
生徒に嫌われたくないから、生徒にあまり注意出来ないタイプの教師。
それがあの先生への印象だ。
「そういや、深川先生は確か二十六……ああ、二年以上経ったから二十八歳か。流石に真央ちゃんと呼ばれるのはキツイ年齢になったな先生も。こっちの世界じゃ会ってないから、まだ生きているのかどうかは分からないけど」
本来この世界に転移させられるはずの人間は、四人一組が七組の二十八人。
もし麗蒼の言う通り、イーリスの手によってこの世界に転移させられた人間が三十人だというのなら。
もう一人、俺と同じようにレフトオーバーズ。
すなわち余り物とされた人間がいるはず。
あくまで俺の予想だが、その大本命は間違いなく深川先生だろう。
一人だけ若くない人間が混ざっていたとか、イーリスにとっても弾きやすい……余り物として扱いやすい人間だからな。
「……ねえ、仁。何か隠してない?」
「隠す? 一体何についてだよ?」
麗蒼が怪訝な顔をしながら、急に何かを隠していないかと聞いてくる。
……この世界に転移させられた人間が、三十人ってことを知らなかったせいで、始まりの部屋に俺が一瞬しかいなかったのがバレたか?
当然俺はごまかす。
ここで麗蒼に謎の教会でのイーリスと俺との二人きりの会話……そしてイーリスを俺が殺したという事実を話したところで、何のメリットもないから。
だが、その考えは変わることになる。
「お願い……仁。話して? あの日……始まりの部屋であったことで分からない……ううん。イーリスの仕業なのかな? 忘れちゃったことがあるの。もしかしたら、仁が知っている情報が、あの日起きたとんでもないことを思い出す手がかりになるかもしれないの」
「……は? 麗蒼もあの日に関わることで、忘れさせられた記憶があるのか?」
「うちも……ってことは、仁もイーリスの仕業で、何かとんでもないことを忘れちゃったの?」
……どういうことだ?
なんで麗蒼も俺みたいにイーリスの仕業で、あの日の記憶を一部だけ消されている?
完全にしっかりと覚えているわけじゃないから、適当なことを教えるのも悪いなと思って、俺とイーリスとの二人きりの会話は誰にも教えてなかったが……何か手がかりになるかもしれない。
「……俺もイーリスの仕業で、忘れさせられた記憶があるから完全には覚えていないんだけどさ。俺はあの日、始まりの部屋に一瞬しかいなかったんだよ。だから、深川先生がイーリスに抗議していたのを覚えていない……いや、見てないんだ」
「えっ……じゃあ、仁はあの日どこにいたの?」
「……どこかの教会ってことしか覚えてない。そこで俺は、イーリスに君のことはこの世界に召喚するつもりは無かったけど、手違いで巻き込んでしまったって謝罪されたんだ」
「そっか……そうだったんだ。……え、ちょっと待って……違う……違う! え!? 違う! 違うよ!? だって、そんなのおかしいよ!」
「……?」
麗蒼は突然、それは違う。
そんなのはおかしいと狼狽えながら、否定する。
……俺がどこかの教会で、イーリスと二人きりでいたことに関しては、間違いじゃないはずだしおかしいことじゃないはずなんだけどな……。
と覚えているあの日の記憶を辿ろうとした時だった。
「そうだ……何で忘れちゃってたんだろう……深川先生がイーリスに猛抗議していたのは、何回確認しても全員揃っていない……仁がいないことに対してのことだったのに……うちはなんで、あの日……仁が始まりの部屋にいたはずって思い込んでいたんだろう……」
「え……え?」
「そうだよ! それで、イーリスが猛抗議してきた深川先生への報復として……あれ? 報復として……報復に何をしたんだっけ? うっ……あ、頭が痛い……」
「麗蒼!?」
「ううっ……い、痛い……」
麗蒼が突然、頭痛を訴えその場にうずくまる。
……おいおいおい。
思い出そうとしたら、襲ってくる頭痛って一緒じゃねえかよ。
俺がイーリスを殺した理由を思い出そうとしたら、襲ってくる頭痛と。
「ええっ? 忘れてた? あの優しい深川先生がイーリスに怒鳴るぐらいの猛抗議をしていたのに? ……うちは、忘れられなかったな。あんな優しい先生でも、こんなに怒るんだ……って思ったもん。仁だって、深川先生が怒鳴るイメージ無かったでしょ?」
「確かにあの人が怒鳴るイメージはないな。けど、優しい……か。まあ……優しかったな」
少し不服ではあるが、とりあえず深川先生は優しかったなと麗蒼に合わせる。
……ただ正直、あの先生を優しいと言うのは果たして正しいのだろうか。
麗蒼にとっては、優しい先生だろうな。
校則違反気味のギャルメイクやネイルで、生活指導の体育教師達に注意されていた麗蒼を庇っている所を何回も見たことある。
……でもなあ、暴力事件を起こしまくっていた神堂やクラスの大人しいタイプの女子はほとんど全員パシリにさせてた岸田達に強く言えなかったり、一部の生徒からは真央ちゃんと呼ばれるぐらいには舐められていた先生だからなあ……。
そんな先生を優しい先生と呼ぶのは、俺的には違和感しかない。
生徒に嫌われたくないから、生徒にあまり注意出来ないタイプの教師。
それがあの先生への印象だ。
「そういや、深川先生は確か二十六……ああ、二年以上経ったから二十八歳か。流石に真央ちゃんと呼ばれるのはキツイ年齢になったな先生も。こっちの世界じゃ会ってないから、まだ生きているのかどうかは分からないけど」
本来この世界に転移させられるはずの人間は、四人一組が七組の二十八人。
もし麗蒼の言う通り、イーリスの手によってこの世界に転移させられた人間が三十人だというのなら。
もう一人、俺と同じようにレフトオーバーズ。
すなわち余り物とされた人間がいるはず。
あくまで俺の予想だが、その大本命は間違いなく深川先生だろう。
一人だけ若くない人間が混ざっていたとか、イーリスにとっても弾きやすい……余り物として扱いやすい人間だからな。
「……ねえ、仁。何か隠してない?」
「隠す? 一体何についてだよ?」
麗蒼が怪訝な顔をしながら、急に何かを隠していないかと聞いてくる。
……この世界に転移させられた人間が、三十人ってことを知らなかったせいで、始まりの部屋に俺が一瞬しかいなかったのがバレたか?
当然俺はごまかす。
ここで麗蒼に謎の教会でのイーリスと俺との二人きりの会話……そしてイーリスを俺が殺したという事実を話したところで、何のメリットもないから。
だが、その考えは変わることになる。
「お願い……仁。話して? あの日……始まりの部屋であったことで分からない……ううん。イーリスの仕業なのかな? 忘れちゃったことがあるの。もしかしたら、仁が知っている情報が、あの日起きたとんでもないことを思い出す手がかりになるかもしれないの」
「……は? 麗蒼もあの日に関わることで、忘れさせられた記憶があるのか?」
「うちも……ってことは、仁もイーリスの仕業で、何かとんでもないことを忘れちゃったの?」
……どういうことだ?
なんで麗蒼も俺みたいにイーリスの仕業で、あの日の記憶を一部だけ消されている?
完全にしっかりと覚えているわけじゃないから、適当なことを教えるのも悪いなと思って、俺とイーリスとの二人きりの会話は誰にも教えてなかったが……何か手がかりになるかもしれない。
「……俺もイーリスの仕業で、忘れさせられた記憶があるから完全には覚えていないんだけどさ。俺はあの日、始まりの部屋に一瞬しかいなかったんだよ。だから、深川先生がイーリスに抗議していたのを覚えていない……いや、見てないんだ」
「えっ……じゃあ、仁はあの日どこにいたの?」
「……どこかの教会ってことしか覚えてない。そこで俺は、イーリスに君のことはこの世界に召喚するつもりは無かったけど、手違いで巻き込んでしまったって謝罪されたんだ」
「そっか……そうだったんだ。……え、ちょっと待って……違う……違う! え!? 違う! 違うよ!? だって、そんなのおかしいよ!」
「……?」
麗蒼は突然、それは違う。
そんなのはおかしいと狼狽えながら、否定する。
……俺がどこかの教会で、イーリスと二人きりでいたことに関しては、間違いじゃないはずだしおかしいことじゃないはずなんだけどな……。
と覚えているあの日の記憶を辿ろうとした時だった。
「そうだ……何で忘れちゃってたんだろう……深川先生がイーリスに猛抗議していたのは、何回確認しても全員揃っていない……仁がいないことに対してのことだったのに……うちはなんで、あの日……仁が始まりの部屋にいたはずって思い込んでいたんだろう……」
「え……え?」
「そうだよ! それで、イーリスが猛抗議してきた深川先生への報復として……あれ? 報復として……報復に何をしたんだっけ? うっ……あ、頭が痛い……」
「麗蒼!?」
「ううっ……い、痛い……」
麗蒼が突然、頭痛を訴えその場にうずくまる。
……おいおいおい。
思い出そうとしたら、襲ってくる頭痛って一緒じゃねえかよ。
俺がイーリスを殺した理由を思い出そうとしたら、襲ってくる頭痛と。
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