118 / 129
勇者となった女友達と元カノもいる勇者パーティー(有象無象)
二十九人じゃないよ、三十人だよ?
しおりを挟む
「……よし、ジン殿とレミ殿にテラハラ殿をアルラギア帝国まで連れて来て貰い、回復術士のスズキと身柄を交換する。信用出来ない回復術士を引き取って貰う見返りに、コクブン殿がジン殿のパーティーへ加入する。……本国への報告はこんな所で良い。これはアルラギア帝国が得をする取り引きだ。帝王がこの取り引きを許可しないということはないだろう」
「かしこまりました。オリヴェイラ様」
「……おい。字が間違っているぞ? 帝王へ渡す文書を書いているという自覚がないのか?」
「し、失礼しました! 書き直します!」
鈴木桃奈と寺原五月の身柄の交換、国分が麗蒼のパーティーを抜けて、俺達のパーティーへ加入するという結論で、話し合いは終わった。
今は、この取り引きをアルラギア帝国の帝王に報告し、許可を得るための文書を作成しているのだが、文書作成はオリヴェイラ様と派遣軍の幹部達で行うので、俺がやることは無いに等しい。
……が、この取り引きに関わったということで俺や麗翠のサインが欲しいみたいなので、任せて俺達はさっさと帰るということは出来ない。
というか、文書をしっかりと確認もせずにサインとか怖くて出来ないから帰れないというのが、本音だけど。
「……ちょっと時間掛かりそうだね。ごめん、お姉ちゃん。少し仁のこと借りていい? 二人きりで話したいことがあるの」
「えっ……」
「あんまり、人には聞かれたくないことだし、話せる時がある内に話しておきたいからさ……お願い!」
「…………」
麗蒼が何故か突然、麗翠に俺と二人きりで話をさせてくれないかと頼む。
もちろん、麗翠は困惑している。
……当たり前だろ。
なんで俺と二人きりで話をしたいのに、お願いをするのが俺じゃなくて麗翠なんだ?
「……私が決めることじゃないし。仁に聞けば?」
「あ、そう? じゃあ、行こっか仁」
「俺にはお願いしないのかよ……国分も待たなきゃだし、時間があるから良いけどさ」
腑に落ちないことはあったが、どうせ帰れないので時間潰しついでに、麗蒼に付き合うことにした。
◇
外へと出た俺と麗蒼は、アルラギア派遣軍総司令部そばの裏山を二人きりで歩いていた。
「ここら辺なら誰もいないかな……ごめんね、仁。オリヴェイラ様達やお姉ちゃんには聞かれたくなかったから」
「結構歩いたな……で、話って?」
「……華と航くんのこと」
「……はなとこーくん? ……ああ、天ヶ浦と航也か」
高校時代、俺は二人をそんな風に呼んだことは無かったので、一瞬だけ麗蒼が誰のことを話そうとしているのか分からなかった。
だが、麗蒼が天ヶ浦と航也のことに関して話そうとしているという事実に、俺は足を止めて聞かざるを得ない。
「二人がラルジュード帝国に仕える勇者パーティーのメンバーだってことは……知ってるよね?」
「……知ってるというか、俺はほとんどの元クラスメイトとこの世界で再会しているからな。再会した連中と死んじまった奴ら、そして色んな人間から聞いたパーティーメンバーの情報を元に計算したら、天ヶ浦と航也を含めてちょうど残り四人。その四人がラルジュード帝国にいる勇者パーティーってことだろ」
「……それ本当? ちゃんと計算合ってる?」
「合ってる……はずだ。四人一組の勇者パーティー七組の二十八人に、俺を加えるんだからあのクラスの人間は二十九人だろ?」
……いや、麗蒼のせいでちょっと不安になってきたな。
もう一回計算し直そう。
移動や死んだ奴を考えたりすると面倒だから、元々のパーティーで。
ボルチオール王国が、ケント、アンリ、ニーナ、サラの四人。
セトロベイーナ王国が、大関、佐藤、伊東、鈴木桃奈の四人。
アルラギア帝国が、岸田、亜形、寺原、高木の四人。
アルレイユ公国が、麗翠、竹内、佐々木、五十嵐の四人。
ロールクワイフ共和国が、麗蒼、国分、丸杉、園部の四人。
そして、どこの国かは分からないが、神堂、隼、中村、伊藤千広の四人。
これで二十四人だから、残り四人。
……うん、間違いない。
ラルジュード帝国の勇者パーティーメンバーは、天ヶ浦と航也、そして鈴木春斗と……深川未央だ。
深川未央とか久し振りに思い出した名前だな。
それぐらい関わりが無いというか、本当に留年ギリギリまで休みまくってたから、関わることが無かったんだよな。
休みが多い理由も知らなかったし。
唯一、彼女のことで知っていることと言えば。
俺達の担任だった深川真央先生の実の妹ということぐらい。
「やっぱり、計算は合ってるな。俺を含めてあのクラスにいた生徒は、二十九人なんだから。ちゃんと計算もし直したし……」
「……ちょっと待って、仁……確かにあのクラスの生徒は二十九人だけど、この世界に転移させられたのは仁も含めて三十人だよ?」
「……え?」
「あの日……始まりの部屋で、イーリスに集められた時、担任の深川先生もいたよね。……覚えてないの? 深川先生が、イーリスに猛抗議してたのに」
「…………」
始まりの部屋に俺がいたのは、一瞬だ。
だから、気付かなかったんだ。
イーリスの手によって、この世界に転移させられたのは、生徒二十九人と教師が一人で、合計三十人ということに。
「かしこまりました。オリヴェイラ様」
「……おい。字が間違っているぞ? 帝王へ渡す文書を書いているという自覚がないのか?」
「し、失礼しました! 書き直します!」
鈴木桃奈と寺原五月の身柄の交換、国分が麗蒼のパーティーを抜けて、俺達のパーティーへ加入するという結論で、話し合いは終わった。
今は、この取り引きをアルラギア帝国の帝王に報告し、許可を得るための文書を作成しているのだが、文書作成はオリヴェイラ様と派遣軍の幹部達で行うので、俺がやることは無いに等しい。
……が、この取り引きに関わったということで俺や麗翠のサインが欲しいみたいなので、任せて俺達はさっさと帰るということは出来ない。
というか、文書をしっかりと確認もせずにサインとか怖くて出来ないから帰れないというのが、本音だけど。
「……ちょっと時間掛かりそうだね。ごめん、お姉ちゃん。少し仁のこと借りていい? 二人きりで話したいことがあるの」
「えっ……」
「あんまり、人には聞かれたくないことだし、話せる時がある内に話しておきたいからさ……お願い!」
「…………」
麗蒼が何故か突然、麗翠に俺と二人きりで話をさせてくれないかと頼む。
もちろん、麗翠は困惑している。
……当たり前だろ。
なんで俺と二人きりで話をしたいのに、お願いをするのが俺じゃなくて麗翠なんだ?
「……私が決めることじゃないし。仁に聞けば?」
「あ、そう? じゃあ、行こっか仁」
「俺にはお願いしないのかよ……国分も待たなきゃだし、時間があるから良いけどさ」
腑に落ちないことはあったが、どうせ帰れないので時間潰しついでに、麗蒼に付き合うことにした。
◇
外へと出た俺と麗蒼は、アルラギア派遣軍総司令部そばの裏山を二人きりで歩いていた。
「ここら辺なら誰もいないかな……ごめんね、仁。オリヴェイラ様達やお姉ちゃんには聞かれたくなかったから」
「結構歩いたな……で、話って?」
「……華と航くんのこと」
「……はなとこーくん? ……ああ、天ヶ浦と航也か」
高校時代、俺は二人をそんな風に呼んだことは無かったので、一瞬だけ麗蒼が誰のことを話そうとしているのか分からなかった。
だが、麗蒼が天ヶ浦と航也のことに関して話そうとしているという事実に、俺は足を止めて聞かざるを得ない。
「二人がラルジュード帝国に仕える勇者パーティーのメンバーだってことは……知ってるよね?」
「……知ってるというか、俺はほとんどの元クラスメイトとこの世界で再会しているからな。再会した連中と死んじまった奴ら、そして色んな人間から聞いたパーティーメンバーの情報を元に計算したら、天ヶ浦と航也を含めてちょうど残り四人。その四人がラルジュード帝国にいる勇者パーティーってことだろ」
「……それ本当? ちゃんと計算合ってる?」
「合ってる……はずだ。四人一組の勇者パーティー七組の二十八人に、俺を加えるんだからあのクラスの人間は二十九人だろ?」
……いや、麗蒼のせいでちょっと不安になってきたな。
もう一回計算し直そう。
移動や死んだ奴を考えたりすると面倒だから、元々のパーティーで。
ボルチオール王国が、ケント、アンリ、ニーナ、サラの四人。
セトロベイーナ王国が、大関、佐藤、伊東、鈴木桃奈の四人。
アルラギア帝国が、岸田、亜形、寺原、高木の四人。
アルレイユ公国が、麗翠、竹内、佐々木、五十嵐の四人。
ロールクワイフ共和国が、麗蒼、国分、丸杉、園部の四人。
そして、どこの国かは分からないが、神堂、隼、中村、伊藤千広の四人。
これで二十四人だから、残り四人。
……うん、間違いない。
ラルジュード帝国の勇者パーティーメンバーは、天ヶ浦と航也、そして鈴木春斗と……深川未央だ。
深川未央とか久し振りに思い出した名前だな。
それぐらい関わりが無いというか、本当に留年ギリギリまで休みまくってたから、関わることが無かったんだよな。
休みが多い理由も知らなかったし。
唯一、彼女のことで知っていることと言えば。
俺達の担任だった深川真央先生の実の妹ということぐらい。
「やっぱり、計算は合ってるな。俺を含めてあのクラスにいた生徒は、二十九人なんだから。ちゃんと計算もし直したし……」
「……ちょっと待って、仁……確かにあのクラスの生徒は二十九人だけど、この世界に転移させられたのは仁も含めて三十人だよ?」
「……え?」
「あの日……始まりの部屋で、イーリスに集められた時、担任の深川先生もいたよね。……覚えてないの? 深川先生が、イーリスに猛抗議してたのに」
「…………」
始まりの部屋に俺がいたのは、一瞬だ。
だから、気付かなかったんだ。
イーリスの手によって、この世界に転移させられたのは、生徒二十九人と教師が一人で、合計三十人ということに。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる