女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

文字の大きさ
上 下
107 / 129
勇者となった女友達と元カノもいる勇者パーティー(有象無象)

なあ? そうだろう? 国分?

しおりを挟む
 「観念するんだな! お嬢ちゃん!」
 「なあに、そんな悲しそうな顔をしなくていいぞ? 俺達のことを満足させる。たったこれだけのことだ。簡単だろ?」
 「あ……あ……ど……どうして」

 ロールクワイフ共和国の勇者パーティーである国分こくぶんが、派遣軍のおっさん達に囲まれていた若い女性を助けるどころか、むしろおっさん達に従えという意味の言葉を掛けたため、女性は落胆している。

 逆に、派遣軍のおっさん達三人の中でも、荒い言葉遣いをしていた二人は、スケベそうな顔しながら、嬉しそうに連れて行こうとする。
 
 ……何が簡単だよ。
 お前らおっさん達の相手なんか簡単なわけがねえだろ……特に精神的に。
 鏡見てから言えよ。

 同じ男ではあるが、本当に気持ち悪かった。
 なので、この二人には少し黙っていて貰おう。
 国分と三人いた派遣軍のおっさん達の中でも、一番上そうな奴には話があるし。

 「エクスチェンジ。女神の紫イーリス・パープル。あの気持ち悪いおっさん二人を動けなくしろ。パラジー」

 女神の紫によって使える毒魔法の一つ、パラジーを使って、女性を連れて行こうとしていたおっさん二人を麻痺させる。
 効き目は抜群だったようで、おっさん二人は地面にぶっ倒れて、そのまま動けなくなっていた。
 
 「あ……あ……」
 「う……く……」

 誰がこんなことをしやがったんだと言いたげに、おっさん二人は呻いているが、デッドリーポイズンで殺されないだけ、ありがたいと思って欲しい。

 もし、女性を連れて行こうとしていたのが、元クラスメイト……女神の加護持ちの人間だったら、迷わず俺はデッドリーポイズンを使っていただろうからな。

 ……って、女の人怪我してるっぽいな。
 痛そうにしてるし。
 まあ、俺の相手にはならないとはいえ、軍人の男達に思いっきり掴まれたり、引っ張られたりしていたんだから、無理もない。

 「麗翠れみ。この女の人の手当てを頼む。腕とか掴まれたりして、多分痣になってる」
 「あ……う、うん。分かった……今の持ち合わせじゃ、簡単な手当てしか出来ないけど……で、でも大丈夫……かな……?」
 「……やっちまった以上はしょうがねえ。それに、この女の人を見捨てて、アルラギア帝国軍の人間に好き勝手させるのは、岸田きしだ達の悪行を肯定するのと一緒だ」
 「……そうだね。私達が派遣軍の人達に逆らって、この街の人を助けても、結局困るのはロールクワイフ共和国の人達なんだから……って言い訳して、自分に言い聞かせていただけかも。うん、助けよう、じん

 ……別に、麗翠の考えは間違っていないし、なんなら正しいんじゃないかな。
 自分達がアルラギア軍に逆らって助けても、結局困るのはロールクワイフ共和国の人達という考えは。

 実際、麗蒼れあ、国分、丸杉まるすぎ竹内たけうち佐々木ささき、そして麗翠の六人で、岸田達+アルラギア帝国軍を相手にして戦っても、厳しい戦いになっただろうし、ロールクワイフ共和国に甚大な被害をもたらしたと思う。

 園部そのべの強化魔法か女神の加護で、パワーアップした岸田の女神の橙イーリス・オレンジによる爆撃攻撃と、急所必中弓矢使いアーチャー五十嵐いがらしの遠距離攻撃を、麗翠ぐらいしか防げる人間がいそうにないからな。

 だが、今は違う。
 岸田達とアルラギア帝国軍はボルチオール王国侵略で忙しい上に、神堂しんどうと戦わなければならない。
 となれば、アルラギア帝国軍や岸田達もただでは済まないし、苦戦もするから、ロールクワイフ共和国なんて構っていられる状態じゃない。

 ……もし、神堂が簡単に負けたら、もちろん一気にヤバくなるんですけどね。
 無いとは思うけど。

 岸田達とネグレリア、俺はこの両方と戦ったわけだけど、どっちがキツかった? と他人に聞かれたら、圧倒的にネグレリアだと答える。
 そのネグレリアが、俺以上に神堂のことを警戒していたんだから、大丈夫だな。
 うん、大丈夫だと思おう。

 それに、神堂と取引して手に入れた女神の黃イーリス・イエローもあるし。
 何とかなるか。

 いや……多くの人の命が関わっているんだ。
 何とかするんだよ。
 覚悟を決めたんだから、揺らぐな。

 「……その女の人を頼む。俺は、バカな元クラスメイトに用事があるんでね」

 麗翠に女性を任せて、俺は何が起こったのか分かっていない国分と派遣軍のおっさん達の残り一人の元へ行く。

 「き、貴様! 何をした!? ……いや、それはどうでもいい! 従属国であるロールクワイフの冒険者ごときが、宗主国であるアルラギア帝国軍の派遣軍の人間に対して逆らう……これがどういうことだか分かっているのか!?」

 残り一人のおっさんは、やったのが俺だと分かったのか、声を荒らげて怒鳴りつけてくる。
 だが、思わずニヤけてしまった。
 良い返しが思いついたので。

 「ハハッ! おや? 俺にそんな口調で話すのは辞めてもらいたいですね? いくら、あなた達がアルラギア帝国軍の一員でも、俺とあなた達とでは、永遠に埋まることのない差というものがあるんですよ。主に実力がね? なあ? そうだろう? ?」
 「!?」

 怒鳴っていたおっさんは、驚きのあまり黙ってしまう。
 そりゃそうだ。
 さっき国分が自分達に言った言葉で返されただけでなく、俺が国分を知っているから。
 つまり、俺が女神の加護持ちということに気づいたからだろう。

 「……生きていたのね、あなた」
 「お前こそ」

 悔しいのかは分からないが、二年ぶりに会った元カノは顔を紅潮させていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...