女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)

裏切りの勇者、新たな戦い

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 クソビッチの二人を始末した俺は笑みを浮かべていた。

 ハハッ。
 なんだ、こんなもんか。
 女神の加護を持っているクセにアンリもニーナもこんな簡単に死ぬんだな。

 やっぱり殺して正解だ。
 ジンの方が良かったとか言って、俺を裏切ろうとしていただけじゃなく、こんなにも弱いなんて。
 この程度の実力なら、遅かれ早かれ死んでいたから問題ないな。

 「ヒィッ……」
 「……女神の加護を持っている二人が……」

 側近や護衛達は恐怖で身を震わせながら、悲鳴を上げている。
 良いな……最高だよ。
 加護が無くなった途端に俺をバカにし始めた連中が、絶望している顔はたまらないな。

 「ゆ……勇者ケント! 一体何をしているんだ!?」

 いつもだったら玉座にふんぞり返って、俺達勇者パーティーが跪く姿を、ご満悦そうに見ていたジジイが慌てふためきながら、怒鳴りつけてくる。

 「何をしているんだ……って、見れば分かるでしょう? アンリとニーナを殺したんですよ」
 「そんなことを聞いているのではない! 何故、二人を殺したのかと聞いているのだ!」
 「……もう必要ではなくなったからですかね。俺にとっても、ボルチオール王国にとっても」
 「なっ……」
 「安心して下さいよ。女神の加護を失ってしまった俺をずっとサポートしてくれた王妃様の顔に免じて、今までの無礼は許してあげますから」

 ハハッ……滑稽だな。
 俺に怯えているのがよく分かる。
 それもそうだろう。

 ジンのせいで女神の加護を失った俺を散々こき下ろしていたからな、このジジイは。
 自分もこの二人のように殺されるのでは……と考えるのも無理はない。

 「ボルチオール王国にとって、必要ない? それは大間違いだ。勇者よ、彼女達二人はそれぞれ役目があったのだ。何故殺した? 気でも狂ったのか?」

 こんな時でも、偉そうにしているバルガス。
 ……俺が何も知らないと思って、その態度なのか、他の側近や護衛達とは違い、俺への接し方を変える気が無いのか。
 前者なら間抜けだが、後者なら一貫しているだけ、玉座の間に今いる人間の中では一番マシな人間ということになるな。

 「気なんか狂ってないさ。むしろ、今までずっと一緒だった仲間を殺したというのに、自分でも怖いくらい正気だよ」
 「……気が狂っていない正気の状態で二人を殺したのであれば、貴様はただの馬鹿だ。アルラギア帝国との交渉材料に必要だった人材を殺したのだから」
 「馬鹿はお前だよ、バルガス。交渉なんか必要ない。俺がアルラギア帝国軍を倒すからな。心配はいらないさ、なんせ俺はジンと同じ力を手に入れたんだから。見覚えあるだろ? この黒い剣を? 見たことあるよなあ? お前らが俺の代わりの勇者にしようとした男が持っていた剣と同じ代物なんだからよ!」

 玉座の間にいる全員に見えるよう、アンリの身体から剣を引き抜き、高く掲げる。

 すると、護衛の中にジンの持っていた女神の黒イーリス・ブラックを見たことがあった人間が数人ほどいたらしく、驚きながら周囲の同僚の護衛や側近達に話している。

 そりゃ驚くよなあ? 見覚えあるに決まってるよなあ?
 なんせジンの持っている物と一緒なんだから!

 「どうやら、賢い奴は理解しているみたいだぜ? バルガス?」
 「……貴様、どこでそんな代物を? 女神の剣イーリス・ブレイドにしては、少々禍々しい剣だが?」
 「なるほど……その質問で、お前が無知だってことは分かったよ。残念だがお前みたいな馬鹿の質問に答える義務は俺には無いね」
 「何だと? 貴様……まあ……良い」

 散々下に見ていた俺に、馬鹿にされたのが気に食わなかったのか、バルガスは俺に食ってかかろうとしていたが、剣を向けたら大人しく引き下がった。
 馬鹿なりに賢明な判断だと言えるだろう。

 「……で? どうします? 国王様?」
 「……どうしますとは、どういうことだ?」
 「だから、ボルチオール王国の勇者である俺にアルラギア軍の対処を任せるかどうか聞いているんですよ? まあ、俺の女神の加護が復活した以上、任せないというのは悪手だと思いますが」
 「……勇者ケント、貴様にアルラギア軍の対処を任せる」
 「それなら、今まで通りサポートよろしくお願いしますよ? 俺がやらなきゃ、この国滅びるんだから」
 「……ああ、約束しよう」

 ジジイは渋々……といった様子で、俺にアルラギア軍の対処を任せた。
 ……なんか、面白くないな。
 そんな態度で頼まれるのも。
 ……てか、もうコイツらに敬語なんか使う必要ないか。

 「おい、ジジイ? 頭ぐらい下げろよ? 立場分かってんのか?」
 「!?」

 ジジイは、面食らっていた。
 今までペコペコしていた俺が、急に凄んできたからだろう。
 
 「調子に乗るなよ!」
 「国王様に謝れ!」
 「今まで役に立っていなかったろうが!」

 護衛が数人、今の俺の態度が気に食わなかったのか、野次を飛ばしてくる。
 ……あーそう、あくまでお前らはそういう態度なのね。

 「……あーあ、馬鹿な護衛達のせいでやる気無くなってきちゃった。さっきの話無しな? アルラギア軍に殺されちまえよ。お前らなんか」
 「あ、ああ! す、すまない! そ、それだけは勘弁してくれ!」

 とうとうジジイは、俺に頭を……いや、土下座をした。
 ハハッ……一国の王が無様だねえ!

 「土下座までされちゃ、仕方ねえな。お前らのこと、守ってやるよ。その代わり今まで以上のサポート頼むぜ? あー後、その馬鹿な護衛達は処刑しとけよ? ハハッ……ハハハ……ハッハッハ」

 笑いながら、俺は玉座の間を後にした。

 笑いたくもなるだろ。
 だってコイツら、生き残るために魔王軍の手を借りることになるんだから。

 馬鹿だな、本当に。
 女神の加護が復活したって言ったら、あっさり信じてやんの。

 とっくにお前らのことなんか裏切って、魔王軍に寝返ってるっての。













 既に、魔王軍へと寝返っていたケント。
 今の自分なら、アルラギア帝国軍程度なら倒せると自信満々だ。

 だが、この戦いに岸田きしだ神堂しんどうという自分より格上の人間が関わっているということを、彼はまだ知らない。
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