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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
宣戦布告、復活の勇者
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これは仁と神堂が取引をしていた頃。
ボルチオール王国の勇者パーティーの一員である西坂杏里と川村新菜が、ボルチオール王国、国王のパーク・ボルチオールから、急な呼び出しを受けた時の話である。
◇
「遅い! 遅いぞ! 貴様ら!」
「……申し訳ありません。国王様。……ほら、ニーナも頭下げて」
「……申し訳ありません」
「国を救う力も無いどころか、指定された時間に来ることも出来んのか! この、役立たず共が!」
「……本当に申し訳ありません」
「……反省しています」
私達二人は、怒り狂う国王様にただただ頭を下げることしか出来なかった。
仕方ない。
私達はなんの功績も残せなかったどころか、むしろこの国にダメージを与えてしまうレベルの失態を冒した上、頼みの勇者であるケント、そして攻撃役のサラが女神の加護を失ってしまったのだから。
本来だったら国王様の元には、ケント、私、ニーナ、サラの四人がいたはず。
それなのに、今は私達二人しかいない。
……ああ、最悪。
なんで私達のリーダーはあの男だったのかしら。
上野くんのほうがマシだったわ。
元の世界に帰るために魔王を討伐したいとか面倒なことを言う男だったけど、よく考えたら全ての面でケントより全然上じゃない。
仮に上野くんに女神の加護が無くても、私がサポートしてあげれば済むだけの話だった。
はあ……本当、失敗だったわ。
ケントなんかの言うことを聞いて、上野くんをバカにし続けなければ良かった。
「あの勇者ケントはまだ女神の加護を失ったままなのか!? どうなっているんだ貴様らは!」
こうやって、加齢臭のする老人にひたすら、役立たずなどと暴言を吐かれ続けても、頭を下げ続けることしか許されない、現状のせいで余計にそう感じてしまう。
私達は、渡辺健人よりも上野仁をリーダーにして、こんな国……ボルチオール王国をさっさと捨てるべきだったと。
「どうするつもりだ! アンリ! アルラギア帝国が宣戦布告をしてきたのだぞ!? 相手は女神の加護を持った勇者が率いるアルラギア帝国軍! そんな相手に貴様らは勝てるのか!?」
……勝てるわけないでしょ。
多くの国を滅ぼした実績のあるアルラギア帝国から宣戦布告を受けてしまった時点で分かりきっていたことじゃない。
国王様や周囲にいる側近に、聞こえないように私は呟く。
聞こえるようになんか言えない。
もし、そんなことを言ってしまえば私達……私とニーナは終わりよ。
女神の加護を持った人間は、この世界では立派な交渉材料になるんだから。
勝てないと分かれば、国を守るためにボルチオール王国が、私達をアルラギア帝国に差し出すわ。
そうなったら、私達はアルラギア帝国で酷い扱いを受けることになるだろう。
それだけは避けたい。
「……どうすんの? アンリ? 絶対無理じゃん。二人でどうにかなる相手じゃないでしょ?」
ニーナが、頭を下げたままの状態で、私にだけ聞こえるように、どうするのか聞いてくる。
分かりきったことをわざわざ聞かないでよ? ニーナ?
そのみつ編み、引っ張ってあげましょうか?
ああ……もう、本当にイライラする。
ケントもだけど、ニーナもサラも本当に使えないわ。
ニーナはなんにも考えてないし、サラに至っては、上野くんを怒らせてケントと一緒に女神の加護を奪われた挙げ句、精神的ショックとかで寝てるだけ。
……というか、ケントとサラ、この二人を交渉材料にして、降伏して差し出せばいいんじゃないかしら?
女神の加護が無いことがバレたらアルラギア帝国に滅ぼされるのは、目に見えているけど。
「……王よ。我々に一つ案があります」
側近の一人が突然、そう発言する。
案……? 案って……一体?
あの人……前から偉そうに発言する人だとは思っていたけど、何なの?
側近の中のトップ?
しかも、王もあの人の意見は素直に受け入れるし。
「バルガスか……良いだろう。聞かせろ」
「はい。案というのは、ニーナ殿以外の三名……勇者ケント、剣士サラ、そしてそこにいるアンリ殿をアルラギア帝国に差し出し、降伏しましょう」
「なっ!?」
「…………」
マズいマズいマズい。
嘘でしょ?
国王様のイエスマンだらけの側近達が、そんなことを考えていたなんて……。
しかもなんでアルラギアに差し出されるのが、ニーナじゃなくて、私なのよ!?
ニヤつくな! ニーナ!
性格悪いわね! 本当に!
「何を言っておる! 気でも狂ったか、バルガス! 役立たず共を差し出すのはどうでもいいが、降伏だと!?」
……私達を差し出すのはどうでもいいって言葉は引っかかるけど……国王様は当然反対してくれた。
そうよ、降伏なんて認められるわけがないわ。
しかし、バルガスと呼ばれる側近は冷静に話す。
「……王よ。滅ぼされるよりは、アルラギア帝国の従属国となりましょう。知人にアルラギア帝国の従属国となったロールクワイフ共和国の要人がいますが、逆らわなければ、我々のような国を動かす人間は損しません。損するのは……」
「ボルチオールの国民だけ……ということか」
「流石、我らの王。ご理解が早い王に従うことが出来て、我々は幸せです」
「ふむ……従属国となっても、困るのは国民だけ……か」
ちょっと……本当にマズいわ。
国王様も降伏しようか迷っているじゃない!
というかその前に他の側近や護衛からは、なんで降伏することに対しての反対意見が無いの!?
「……あー助かった」
横でニーナは、安堵しながら笑う。
人の気も知らないで……。
どうしよう……どうしよう……。
ああ……私達は終わった……。
こんな国のために、私達はアルラギア帝国に差し出される。
そう、絶望している時だった。
バーン!
突然、玉座の間の扉が勢い良く開かれる。
玉座の間にいた全員が、扉の方を振り向く。
すると……そこにいたのは……。
「勇者ケント!? 何故貴様が!?」
「……勇者ケント?」
「何をしに……」
国王様や側近、そして護衛達はざわつく。
私だって、一瞬そう思ってしまった。
女神の加護を失ったケントが、今更出てきても……。
それに、何あの……黒い鎧に黒い剣……。
あんな物、持っていた?
玉座の間にいる全員が呆気にとられる。
しかし、ケントは気にもせず言い放つ。
「喜んで下さい。俺の女神の加護が復活したんですよ。しかも、それだけじゃない。あなた達がこの国の新しい勇者にしようとしていたジンと同じ力を俺は手に入れたんだ! なあ!? 女神の黒!」
ケントの持つ黒い剣が妖しくドス黒く光る。
すると、次の瞬間。
ニーナが血を吐いて、死んだ。
い、一体何が……。
「……お前も死ねよ、アンリ。ジンがリーダーの方が良かった? ふざけんじゃねえ……クソビッチが」
何があったのか見るために立ち上がろうとした時には……既に私はケントに心臓を貫かれていた。
ああ……こんなことなら。
上野くんに付いていくべきだっ……た。
ボルチオール王国の勇者パーティーの一員である西坂杏里と川村新菜が、ボルチオール王国、国王のパーク・ボルチオールから、急な呼び出しを受けた時の話である。
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「遅い! 遅いぞ! 貴様ら!」
「……申し訳ありません。国王様。……ほら、ニーナも頭下げて」
「……申し訳ありません」
「国を救う力も無いどころか、指定された時間に来ることも出来んのか! この、役立たず共が!」
「……本当に申し訳ありません」
「……反省しています」
私達二人は、怒り狂う国王様にただただ頭を下げることしか出来なかった。
仕方ない。
私達はなんの功績も残せなかったどころか、むしろこの国にダメージを与えてしまうレベルの失態を冒した上、頼みの勇者であるケント、そして攻撃役のサラが女神の加護を失ってしまったのだから。
本来だったら国王様の元には、ケント、私、ニーナ、サラの四人がいたはず。
それなのに、今は私達二人しかいない。
……ああ、最悪。
なんで私達のリーダーはあの男だったのかしら。
上野くんのほうがマシだったわ。
元の世界に帰るために魔王を討伐したいとか面倒なことを言う男だったけど、よく考えたら全ての面でケントより全然上じゃない。
仮に上野くんに女神の加護が無くても、私がサポートしてあげれば済むだけの話だった。
はあ……本当、失敗だったわ。
ケントなんかの言うことを聞いて、上野くんをバカにし続けなければ良かった。
「あの勇者ケントはまだ女神の加護を失ったままなのか!? どうなっているんだ貴様らは!」
こうやって、加齢臭のする老人にひたすら、役立たずなどと暴言を吐かれ続けても、頭を下げ続けることしか許されない、現状のせいで余計にそう感じてしまう。
私達は、渡辺健人よりも上野仁をリーダーにして、こんな国……ボルチオール王国をさっさと捨てるべきだったと。
「どうするつもりだ! アンリ! アルラギア帝国が宣戦布告をしてきたのだぞ!? 相手は女神の加護を持った勇者が率いるアルラギア帝国軍! そんな相手に貴様らは勝てるのか!?」
……勝てるわけないでしょ。
多くの国を滅ぼした実績のあるアルラギア帝国から宣戦布告を受けてしまった時点で分かりきっていたことじゃない。
国王様や周囲にいる側近に、聞こえないように私は呟く。
聞こえるようになんか言えない。
もし、そんなことを言ってしまえば私達……私とニーナは終わりよ。
女神の加護を持った人間は、この世界では立派な交渉材料になるんだから。
勝てないと分かれば、国を守るためにボルチオール王国が、私達をアルラギア帝国に差し出すわ。
そうなったら、私達はアルラギア帝国で酷い扱いを受けることになるだろう。
それだけは避けたい。
「……どうすんの? アンリ? 絶対無理じゃん。二人でどうにかなる相手じゃないでしょ?」
ニーナが、頭を下げたままの状態で、私にだけ聞こえるように、どうするのか聞いてくる。
分かりきったことをわざわざ聞かないでよ? ニーナ?
そのみつ編み、引っ張ってあげましょうか?
ああ……もう、本当にイライラする。
ケントもだけど、ニーナもサラも本当に使えないわ。
ニーナはなんにも考えてないし、サラに至っては、上野くんを怒らせてケントと一緒に女神の加護を奪われた挙げ句、精神的ショックとかで寝てるだけ。
……というか、ケントとサラ、この二人を交渉材料にして、降伏して差し出せばいいんじゃないかしら?
女神の加護が無いことがバレたらアルラギア帝国に滅ぼされるのは、目に見えているけど。
「……王よ。我々に一つ案があります」
側近の一人が突然、そう発言する。
案……? 案って……一体?
あの人……前から偉そうに発言する人だとは思っていたけど、何なの?
側近の中のトップ?
しかも、王もあの人の意見は素直に受け入れるし。
「バルガスか……良いだろう。聞かせろ」
「はい。案というのは、ニーナ殿以外の三名……勇者ケント、剣士サラ、そしてそこにいるアンリ殿をアルラギア帝国に差し出し、降伏しましょう」
「なっ!?」
「…………」
マズいマズいマズい。
嘘でしょ?
国王様のイエスマンだらけの側近達が、そんなことを考えていたなんて……。
しかもなんでアルラギアに差し出されるのが、ニーナじゃなくて、私なのよ!?
ニヤつくな! ニーナ!
性格悪いわね! 本当に!
「何を言っておる! 気でも狂ったか、バルガス! 役立たず共を差し出すのはどうでもいいが、降伏だと!?」
……私達を差し出すのはどうでもいいって言葉は引っかかるけど……国王様は当然反対してくれた。
そうよ、降伏なんて認められるわけがないわ。
しかし、バルガスと呼ばれる側近は冷静に話す。
「……王よ。滅ぼされるよりは、アルラギア帝国の従属国となりましょう。知人にアルラギア帝国の従属国となったロールクワイフ共和国の要人がいますが、逆らわなければ、我々のような国を動かす人間は損しません。損するのは……」
「ボルチオールの国民だけ……ということか」
「流石、我らの王。ご理解が早い王に従うことが出来て、我々は幸せです」
「ふむ……従属国となっても、困るのは国民だけ……か」
ちょっと……本当にマズいわ。
国王様も降伏しようか迷っているじゃない!
というかその前に他の側近や護衛からは、なんで降伏することに対しての反対意見が無いの!?
「……あー助かった」
横でニーナは、安堵しながら笑う。
人の気も知らないで……。
どうしよう……どうしよう……。
ああ……私達は終わった……。
こんな国のために、私達はアルラギア帝国に差し出される。
そう、絶望している時だった。
バーン!
突然、玉座の間の扉が勢い良く開かれる。
玉座の間にいた全員が、扉の方を振り向く。
すると……そこにいたのは……。
「勇者ケント!? 何故貴様が!?」
「……勇者ケント?」
「何をしに……」
国王様や側近、そして護衛達はざわつく。
私だって、一瞬そう思ってしまった。
女神の加護を失ったケントが、今更出てきても……。
それに、何あの……黒い鎧に黒い剣……。
あんな物、持っていた?
玉座の間にいる全員が呆気にとられる。
しかし、ケントは気にもせず言い放つ。
「喜んで下さい。俺の女神の加護が復活したんですよ。しかも、それだけじゃない。あなた達がこの国の新しい勇者にしようとしていたジンと同じ力を俺は手に入れたんだ! なあ!? 女神の黒!」
ケントの持つ黒い剣が妖しくドス黒く光る。
すると、次の瞬間。
ニーナが血を吐いて、死んだ。
い、一体何が……。
「……お前も死ねよ、アンリ。ジンがリーダーの方が良かった? ふざけんじゃねえ……クソビッチが」
何があったのか見るために立ち上がろうとした時には……既に私はケントに心臓を貫かれていた。
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