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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
あの二人に腹が立ってんだよ
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「ふぅ……これでこの階の動く死体とネグレリア・ワームも、全部倒したな」
「お疲れ、仁。リカバリー」
「おお、回復サンキュー。やっぱ頼れる仲間がいると安心感が違うよ」
「仁こそ、簡単に倒してくね……動く死体とネグレリア・ワームが、本当は弱かったんだ……って勘違いしちゃうよ」
俺と麗翠は、朝からネグレリア討伐のため、ネグレリアの城に来ていた。
ネグレリアがいるのは、この城の最上階である十階。
だが、すでに八階まで到達している。
更にこの階の動く死体とネグレリア・ワームも全滅させた。
何故ここまでスムーズに上手くいっているのか。
理由は二つある。
まず、一つ目は麗翠が同じ勇者パーティーのメンバーだった連中と一緒に、ここの四階まで辿り着いていたため、麗翠の転移魔法トランスファーのおかげで、この城の四階からスタートすることが出来たから。
これは、ありがたい。
三階も一気に飛ばすことが出来たんだから。
そして、二つ目は。
単純に麗翠のサポート力が凄い。
俺も安心して色々任せられる。
こっちの世界に来てから、この世界の人間と組んでモンスター討伐もしたことがあったが、麗翠の場合、俺の性格や行動パターンなどをちゃんと分かっているので、やりやすさが段違いだ。
それに加え、女神の緑の力で、色んな所に仕掛けられたトラップや障害物の除去、敵の探知に、自分達の目的に合わせた最適ルートの案内など……。
麗翠がいるだけで、ここまで俺は何もしなくて良くなるのか。
ただ俺は、何も考えずに麗翠を守りながらモンスターを討伐すりゃ良いだけ。
何この、快適な魔王軍幹部討伐の旅は?
フィスフェレムの時と比べて、メチャクチャ楽なんですけど?
だからこそ、俺は思わず口にしてしまう。
「五十嵐は性格的に論外として、竹内と佐々木はこんな丁寧なサポートを受けておいて、よくもまあ自分達だけ危険な目に遭っているなんて、文句を言えたもんだなあ……あいつらが雑魚だったから危険な目に遭うんだろ。今の所、俺は全く危険な目に遭う要素が無いんだが?」
「またそんなこと言って……良くないよ? いくらあの二人より強いからって、バカにするのは」
俺の言葉に麗翠は、あー……こいつ全然変わってねえな……といった顔をしながら、呆れている。
逆に麗翠は優し過ぎだ。
自分に愛想を尽かして、麗蒼の元へ行ってしまった連中の悪口を言わずにいられるなんて。
「でも、そう思わないか? 俺が苦戦している所や死にかけた所を見たか? 見てないよな? 今こうして俺達二人だけで、スムーズにネグレリアの城を攻略しているという事実こそ、麗翠が悪かったんじゃなくて、あの二人が雑魚なのが悪かったという証明だろ」
ただ俺が、あいつらをバカにして悪口を言っているだけだと思われてしまったら、心外だ。
俺は竹内と佐々木に腹が立ってしょうがないんだ。
自分達の力の無さを麗翠のせいにして、あたかも麗翠が無能かのように愛想を尽かして、麗蒼の元へと行ったのと、そのせいで麗翠がアルレイユ公国で酷い扱いを受けるようになったことも。
……マジで、ネグレリア討伐した後に、ロールクワイフへ行ってあの二人に会ったら、まず一発ぶん殴ろう。
その後で女神の加護も奪おう。
「ちょっとちょっと! 目が据わってるって! 何か物騒なこと考えてない!?」
「……腹立ってきたから、ネグレリア討伐した後、ロールクワイフへ行ってあの二人と会ったら、一発ぶん殴ろうかなって思っただけだぞ」
「い、今の仁がそんなことしたら、あの二人が大怪我しそうだからダメに決まってるでしょ! そ、それに、こんなに私が上手くサポート出来てるのも仁だから! 私があの二人のこと全然知らなくて、上手くサポート出来なかったのもあるだろうから、そんなことしちゃダメ!」
「……冗談だよ、そんな焦るな」
「冗談に聞こえないよ!」
……冗談じゃねえからな。
麗翠が見ていない所で、あの二人のことをぶん殴るのは俺の中で決めたことだから。
まあ、適当に変装でもして、出会い頭に一発ぶん殴っちまえば、バレないし問題ねえな……って、ん?
「……なあ、麗翠。誰かいないか?」
突然、そして一瞬だが、人の気配を感じた。
しかも、普通の人間じゃない。
女神の加護持ちの人間だ。
「……え? ……誰もいないじゃん。気のせいじゃない?」
「……そうか、気のせいか。それだったらいいんだ」
「……うん、やっぱ誰もいないよ?」
「悪い、勘違いかも。九階に進もうか」
麗翠が周囲を確認した後、俺も周囲を確認したが、誰もいなかった。
女神の加護によって、五感が上がっている状態の俺に見つからないでやり過ごせるとすれば、俺が持っていない女神の加護、隠密行動を持っている奴ぐらいだろうけど……まあ、気のせいか。
というか、女神の加護持ちがここにいたら、それはそれで面倒なんだよな。
嫌でも魔王軍に寝返った佐藤・伊東パターンがちらつくし。
……いやでも、それはない。
それはないはずだ。
仮に竹内と佐々木が魔王軍に寝返っていたとしたら、とっくに麗翠は殺されていたはず。
だから、絶対にない。
……だけど、何だこの嫌な予感は?
「お疲れ、仁。リカバリー」
「おお、回復サンキュー。やっぱ頼れる仲間がいると安心感が違うよ」
「仁こそ、簡単に倒してくね……動く死体とネグレリア・ワームが、本当は弱かったんだ……って勘違いしちゃうよ」
俺と麗翠は、朝からネグレリア討伐のため、ネグレリアの城に来ていた。
ネグレリアがいるのは、この城の最上階である十階。
だが、すでに八階まで到達している。
更にこの階の動く死体とネグレリア・ワームも全滅させた。
何故ここまでスムーズに上手くいっているのか。
理由は二つある。
まず、一つ目は麗翠が同じ勇者パーティーのメンバーだった連中と一緒に、ここの四階まで辿り着いていたため、麗翠の転移魔法トランスファーのおかげで、この城の四階からスタートすることが出来たから。
これは、ありがたい。
三階も一気に飛ばすことが出来たんだから。
そして、二つ目は。
単純に麗翠のサポート力が凄い。
俺も安心して色々任せられる。
こっちの世界に来てから、この世界の人間と組んでモンスター討伐もしたことがあったが、麗翠の場合、俺の性格や行動パターンなどをちゃんと分かっているので、やりやすさが段違いだ。
それに加え、女神の緑の力で、色んな所に仕掛けられたトラップや障害物の除去、敵の探知に、自分達の目的に合わせた最適ルートの案内など……。
麗翠がいるだけで、ここまで俺は何もしなくて良くなるのか。
ただ俺は、何も考えずに麗翠を守りながらモンスターを討伐すりゃ良いだけ。
何この、快適な魔王軍幹部討伐の旅は?
フィスフェレムの時と比べて、メチャクチャ楽なんですけど?
だからこそ、俺は思わず口にしてしまう。
「五十嵐は性格的に論外として、竹内と佐々木はこんな丁寧なサポートを受けておいて、よくもまあ自分達だけ危険な目に遭っているなんて、文句を言えたもんだなあ……あいつらが雑魚だったから危険な目に遭うんだろ。今の所、俺は全く危険な目に遭う要素が無いんだが?」
「またそんなこと言って……良くないよ? いくらあの二人より強いからって、バカにするのは」
俺の言葉に麗翠は、あー……こいつ全然変わってねえな……といった顔をしながら、呆れている。
逆に麗翠は優し過ぎだ。
自分に愛想を尽かして、麗蒼の元へ行ってしまった連中の悪口を言わずにいられるなんて。
「でも、そう思わないか? 俺が苦戦している所や死にかけた所を見たか? 見てないよな? 今こうして俺達二人だけで、スムーズにネグレリアの城を攻略しているという事実こそ、麗翠が悪かったんじゃなくて、あの二人が雑魚なのが悪かったという証明だろ」
ただ俺が、あいつらをバカにして悪口を言っているだけだと思われてしまったら、心外だ。
俺は竹内と佐々木に腹が立ってしょうがないんだ。
自分達の力の無さを麗翠のせいにして、あたかも麗翠が無能かのように愛想を尽かして、麗蒼の元へと行ったのと、そのせいで麗翠がアルレイユ公国で酷い扱いを受けるようになったことも。
……マジで、ネグレリア討伐した後に、ロールクワイフへ行ってあの二人に会ったら、まず一発ぶん殴ろう。
その後で女神の加護も奪おう。
「ちょっとちょっと! 目が据わってるって! 何か物騒なこと考えてない!?」
「……腹立ってきたから、ネグレリア討伐した後、ロールクワイフへ行ってあの二人と会ったら、一発ぶん殴ろうかなって思っただけだぞ」
「い、今の仁がそんなことしたら、あの二人が大怪我しそうだからダメに決まってるでしょ! そ、それに、こんなに私が上手くサポート出来てるのも仁だから! 私があの二人のこと全然知らなくて、上手くサポート出来なかったのもあるだろうから、そんなことしちゃダメ!」
「……冗談だよ、そんな焦るな」
「冗談に聞こえないよ!」
……冗談じゃねえからな。
麗翠が見ていない所で、あの二人のことをぶん殴るのは俺の中で決めたことだから。
まあ、適当に変装でもして、出会い頭に一発ぶん殴っちまえば、バレないし問題ねえな……って、ん?
「……なあ、麗翠。誰かいないか?」
突然、そして一瞬だが、人の気配を感じた。
しかも、普通の人間じゃない。
女神の加護持ちの人間だ。
「……え? ……誰もいないじゃん。気のせいじゃない?」
「……そうか、気のせいか。それだったらいいんだ」
「……うん、やっぱ誰もいないよ?」
「悪い、勘違いかも。九階に進もうか」
麗翠が周囲を確認した後、俺も周囲を確認したが、誰もいなかった。
女神の加護によって、五感が上がっている状態の俺に見つからないでやり過ごせるとすれば、俺が持っていない女神の加護、隠密行動を持っている奴ぐらいだろうけど……まあ、気のせいか。
というか、女神の加護持ちがここにいたら、それはそれで面倒なんだよな。
嫌でも魔王軍に寝返った佐藤・伊東パターンがちらつくし。
……いやでも、それはない。
それはないはずだ。
仮に竹内と佐々木が魔王軍に寝返っていたとしたら、とっくに麗翠は殺されていたはず。
だから、絶対にない。
……だけど、何だこの嫌な予感は?
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