女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)

色々と考えさせられる

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 食事の会計を済ませ、俺達二人は店を出て、またカムデンメリーの街を歩きだした。
 
 やっぱり、俺の考えは間違いではなかったようだ。
 高級料理店で肉や魚にデザートなどと、二人揃ってほぼほぼフルコースに近いくらい食べて、金貨二枚程度で済んだ。

 ……食事代が金貨二枚程度で済んだって、冷静に考えると金銭感覚が大分ぶっ壊れてるな俺。
 麗翠れみの防具一式と指輪やネックレスなどのアクセサリー、俺達二人の普段着や下着など色々な物を買って、金貨百枚近く使っちゃっているから、安く感じちゃっているのかもな。

 まあ……別に良いか。
 かつての俺の恩人の一人であり仲間がまた笑顔になってくれたんだから。

 「美味しかったね、じん。今日は本当にありがとう。色々と買って貰った上にあんな美味しい物まで食べさせて貰って、久しぶりに生きてて幸せだったよ」
 「あ、ああ……どういたしまして」
 「?」

 本人は全くなんとも思っていないんだろうけど……麗翠の最後らへんの言葉は、ちょっと聞いてて重く感じるな。
 まだ、メンタルが不安定なんだな……と思ってしまう。

 でも、久しぶりに生きてて幸せだった……か。
 一歩間違えれば……どうなっていたのだろう。
 今の麗翠の笑顔と言葉に、俺は色々と考えさせられてしまう。
 
 もし俺が、ケントか大関おおぜきの代わりに、ボルチオール王国かセトロベイーナ王国の新しい勇者になっていたら。

 それか、岸田きしだを始めとしたアルラギア帝国の勇者パーティー、魔王軍幹部フィスフェレム、そして魔王軍の手先となった伊東いとう達との戦いのどれかで俺が死んでいたら。

 もし……なんてことを考えてしまうぐらい、アルレイユ家の屋敷での麗翠の姿は衝撃的だった。

 考えさせられたのはこれだけじゃない。
 元の世界での俺の麗翠への態度もだ。

 俺はマネージャーとして支えてくれた麗翠に何か恩を返してたか?
 
 礼を言うだけで、麗翠がサポートしてくれるのはマネージャーなんだから当たり前とか、心のどこかで思っていなかったか?

 こうして再会出来たからいいけど、麗翠に恩を返せないまま、二度と会えなくなっていたかもしれないんだ。

 ……もう絶対に麗翠の笑顔と幸せを誰にも奪わせない。
 この世界の人間にも。
 魔王軍の奴らにも。
 元クラスメイトの連中にも。

 それが、麗翠への恩返しになるはず……

 「……仁? 仁ってば! どうしたの? 大丈夫?」

 不安げな麗翠の声を聞いて、ようやく俺は我に返った。

 「え、えっと……まだ何か欲しい物あるのか?」
 「やっぱり全然話聞いてないじゃん! お店でも言ったでしょ? 暗くなる前にトランスファーで転移して、私達の家に帰ろうって。ほら、街の中心部からも外れてるし、人も全然いない所にもう来てるよ!」
 「あっ……」

 色々と考え過ぎていたのか、とっくに街を離れていて、人気のいない場所へと着いていたことに、俺は気付いていなかったみたいだ。

 「本当にどうしたの? ずっと何か考えていて、上の空だったよ?」
 「……悪い、色々考えてた」
 「一緒に街を歩いてて、心配だったよ……仁が人にぶつかったり、スリにお金や買った物とか取られちゃったりしないか。私がずっと見てたから良かったけど」
 「…………」

 元はと言えば、麗翠が久しぶりに生きてて幸せだったよ……なんて言うから色々と考えちまったんだけどな。
 ……まあ、こんなことは恥ずかしいから絶対に言わないが。

 「……人来ちゃうと困るし、すぐ家に転移するよ? トランスファー」

 俺達二人は、また強い光に包まれる。
 ……ったく、本当にこの光には慣れないな。
 そう思いながら目を瞑る。

 ……………………。
 光が収まった。
 目を開けると、あっという間に麗翠の家のリビングだ。
 本当に凄いな、女神の緑イーリス・グリーンの転移魔法は。

 というか、あれ?
 さっきよりも転移するスピードが早くなってないか?
 しかも俺、カムデンメリーに転移する前みたいに女神の緑の柄を握ってないのに、普通に転移出来ているし。

 「あ、仁に言ってなかったっけ? トランスファーは私が行ったことある場所なら、転移するのも更に速くなるんだ。それとさっき仁に女神の緑の柄を握らせたのは、私が行ったことがない場所だったからだよ」

 不思議そうにしている俺を見て、トランスファーについて詳しく麗翠が教えてくれた。

 「……ふー、人が多くて疲れたー。ねえ……仁も疲れなかった? 色々私の買い物に付き合わせちゃったし、絶対仁も疲れちゃってるでしょ? どうせ、ぼーっとして、上の空になっていたのも、……ああ、疲れた……もう帰りてえ……なんで、女って買い物こんなに長えんだ? ……とか考えてたんでしょ?」

 麗翠はすでに履いていた靴を床にほっぽり出してソファーにうつ伏せ状態で寝転びながら喋る。
 それを見て、靴を履きっぱなしだったということに気付き、慌てて靴を脱ぐ。
 玄関に置いてこなきゃ。
 ついでに麗翠の靴も置いてくるか。

 「ちょっと玄関に靴置いてくる」
 「私のも持っていってくれるの助かる……」
 「疲れたなら、寝てて良いぞ?」
 「うん……そうする」

 朝に再会して、少し間を空けて昼からはカムデンメリーで夕方まで買い物。
 疲れて無いわけが無い。
 それに、麗翠は久し振りの満腹だ。
 眠くもなるだろう。

 「仁……靴置いたら、すぐ私の近くに来てね? また一人になると不安になるから……」
 「分かってるよ」

 ……早く、元の麗翠に戻って欲しいな。
 本当にこっちまでおかしくなりそうだから。
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