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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
あ、やっぱり? 防具ない?
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「……てか、普通にあいつらと戦う前提で話が進んでいるけどさ、麗翠こそ大丈夫なのかよ。麗蒼と戦うかもしれないんだぞ?」
俺は女神の加護を持つ、元クラスメイトの達の行動のせいで、起きてしまった悲惨な光景を見てきた。
だから、いくら友達だった麗蒼だとしても、こっちの世界で岸田達のような侵略行為をしていたり、自分達の都合で俺に剣を向けてくるということを麗蒼がしてくるというのであれば、迷わず戦える。
でも麗翠はどうなのかは分からない。
どっちかと言えば、麗翠はこっちの世界の人間に恨みを持っているはずだし……何より、麗翠にとって麗蒼は家族だ。
戦えないというのであれば、別に麗翠は戦場から離れた遠くで、俺の回復と防御に専念してくれれば良いだけだし。
どこまでやって良いのか聞ければ、麗蒼達をその程度の怪我に抑えて勝てば問題ないしな。
だが、麗翠からの答えは意外なものだった。
「んー、別に平気かな。元々麗蒼とはそんなに仲良く無かったし……正直、他の人達ともあんまり仲良く無かったし……私は仁に従うし、仁のやりたいことに付き合うよ?」
麗翠は俺に笑顔でそう言った。
俺に合わせて無理して言っているわけでは無さそうだ。
……麗蒼とはあまり仲良く無かったか。
これは意外だな。
ああ……そういえば、元の世界でも俺が麗蒼と遊んでいたり、話していたりしているだけで、麗翠はよく不機嫌になっていたっけ。
あの時は何故か分からなかったけど、麗翠が麗蒼とそんなに仲良くないから不機嫌になっていたんだな。
自分の友達が自分とあんまり仲良く無い奴や嫌いな奴と楽しそうに遊んでいたり、話していたりしたら、確かに嫌だ。
なるほどね……今更になって、あの時の謎が解決するとは……。
「分かった。それなら、これからは俺のサポートを頼む」
「うん、いいよ。……でも、絶対に私を捨てないでね?」
「そんなことは無いから安心しろって」
やれやれ、早く麗翠が元通りになってくれることを祈るしかないな。
事あるごとに、私を捨てないでとか重い発言をされると、俺も困るし。
……さて、麗翠が仲間になったわけだが。
これからどうしよう。
俺の本来の目的は、ネグレリアを倒すついでに、アルレイユ公国の勇者パーティーを引き抜いて、セトロベイーナ王国を守ってもらう予定だったが、既に麗翠以外の女神の加護を持つ人間は、アルレイユ公国からいなくなっていて、麗翠にセトロベイーナ王国を守って貰うのも不可能。
そうなると……さっさとネグレリアを倒して、麗蒼達がいるであろうロールクワイフ共和国に行くべき……だな。
既にアルラギア帝国の従属国となった国を守る必要なんてない。
全員引き抜いて……場合によっては全員の加護を奪う。
決まりだな。
……でも、その前に……。
「そういえばさ……麗翠って、防具は……どうした?」
ずっと疑問だった。
アルレイユ家の屋敷で見た時は、ボロボロの服……というよりは、もはや布みたいな物を着ていた。
もちろん、今の麗翠が着ている服はアルレイユ家で着ていた服よりは大分マシだが。
……一回も麗翠が防具を身に着けている姿を見ていないんだよな。
物凄く、嫌な予感がする。
「……お金に困って、売っちゃった。結構良い金額で買い取るって言われたから……つい……」
「あっ……やっぱり?」
予想通りだったよ。
麗翠が防具を着ている姿を全く見ないわけだ。
見れるわけねえわな?
とっくに防具売ってるんだから!
……参ったな。
麗翠が売った防具はイーリス特製の防具だったはずだ。
それ並の性能を持つ防具なんて、かなりの金額だぞ……。
……しかも、大金を出して買ったとしても、所詮はこの世界の素材でこの世界の人間が作った物だから、多分女神の加護持ちの攻撃を食らったらすぐに壊れるし。
「ちなみに麗翠、その金は?」
「……この家の購入に使っちゃって、もうほとんど残ってない。元々は四人でお金を出し合うはずだったんだけど、みんないなくなっちゃったから、一人で払わなきゃいけなくなって……」
「…………」
いや、まあ……あんなガリガリだった時点でまともな物食べて無いんだろうな……って思っていたから……金が無いってのも薄々勘付いていたけどさ……。
金も無い、防具も無い、信頼も無い、仲間もいないとは……麗翠も俺に負けず劣らずこの世界で地獄を味わったようだな……。
何なら衣食住があっただけ、俺はマシだったんじゃないか?
この世界の人間と意思疎通が出来なかったのも、麗翠を見ていると幸せだったんじゃないかと思えてくる。
「と、とりあえず……防具を買いに行くか……。後は……まともな物を食べに行こう」
「えっ……でも、お金……」
「金なら心配するな。聞いてたと思うけど、魔王軍幹部を討伐した時にたんまり報酬を貰っているから、……多分、大丈夫」
……セトロベイーナ王家から金貨を大量に貰っていて助かったな。
あそこで謙遜して、いえ……魔王軍幹部の討伐は女神の加護を持つ者として当然ですから……とかカッコつけずに報酬をキッチリ貰っておいてマジで良かった。
俺は女神の加護を持つ、元クラスメイトの達の行動のせいで、起きてしまった悲惨な光景を見てきた。
だから、いくら友達だった麗蒼だとしても、こっちの世界で岸田達のような侵略行為をしていたり、自分達の都合で俺に剣を向けてくるということを麗蒼がしてくるというのであれば、迷わず戦える。
でも麗翠はどうなのかは分からない。
どっちかと言えば、麗翠はこっちの世界の人間に恨みを持っているはずだし……何より、麗翠にとって麗蒼は家族だ。
戦えないというのであれば、別に麗翠は戦場から離れた遠くで、俺の回復と防御に専念してくれれば良いだけだし。
どこまでやって良いのか聞ければ、麗蒼達をその程度の怪我に抑えて勝てば問題ないしな。
だが、麗翠からの答えは意外なものだった。
「んー、別に平気かな。元々麗蒼とはそんなに仲良く無かったし……正直、他の人達ともあんまり仲良く無かったし……私は仁に従うし、仁のやりたいことに付き合うよ?」
麗翠は俺に笑顔でそう言った。
俺に合わせて無理して言っているわけでは無さそうだ。
……麗蒼とはあまり仲良く無かったか。
これは意外だな。
ああ……そういえば、元の世界でも俺が麗蒼と遊んでいたり、話していたりしているだけで、麗翠はよく不機嫌になっていたっけ。
あの時は何故か分からなかったけど、麗翠が麗蒼とそんなに仲良くないから不機嫌になっていたんだな。
自分の友達が自分とあんまり仲良く無い奴や嫌いな奴と楽しそうに遊んでいたり、話していたりしたら、確かに嫌だ。
なるほどね……今更になって、あの時の謎が解決するとは……。
「分かった。それなら、これからは俺のサポートを頼む」
「うん、いいよ。……でも、絶対に私を捨てないでね?」
「そんなことは無いから安心しろって」
やれやれ、早く麗翠が元通りになってくれることを祈るしかないな。
事あるごとに、私を捨てないでとか重い発言をされると、俺も困るし。
……さて、麗翠が仲間になったわけだが。
これからどうしよう。
俺の本来の目的は、ネグレリアを倒すついでに、アルレイユ公国の勇者パーティーを引き抜いて、セトロベイーナ王国を守ってもらう予定だったが、既に麗翠以外の女神の加護を持つ人間は、アルレイユ公国からいなくなっていて、麗翠にセトロベイーナ王国を守って貰うのも不可能。
そうなると……さっさとネグレリアを倒して、麗蒼達がいるであろうロールクワイフ共和国に行くべき……だな。
既にアルラギア帝国の従属国となった国を守る必要なんてない。
全員引き抜いて……場合によっては全員の加護を奪う。
決まりだな。
……でも、その前に……。
「そういえばさ……麗翠って、防具は……どうした?」
ずっと疑問だった。
アルレイユ家の屋敷で見た時は、ボロボロの服……というよりは、もはや布みたいな物を着ていた。
もちろん、今の麗翠が着ている服はアルレイユ家で着ていた服よりは大分マシだが。
……一回も麗翠が防具を身に着けている姿を見ていないんだよな。
物凄く、嫌な予感がする。
「……お金に困って、売っちゃった。結構良い金額で買い取るって言われたから……つい……」
「あっ……やっぱり?」
予想通りだったよ。
麗翠が防具を着ている姿を全く見ないわけだ。
見れるわけねえわな?
とっくに防具売ってるんだから!
……参ったな。
麗翠が売った防具はイーリス特製の防具だったはずだ。
それ並の性能を持つ防具なんて、かなりの金額だぞ……。
……しかも、大金を出して買ったとしても、所詮はこの世界の素材でこの世界の人間が作った物だから、多分女神の加護持ちの攻撃を食らったらすぐに壊れるし。
「ちなみに麗翠、その金は?」
「……この家の購入に使っちゃって、もうほとんど残ってない。元々は四人でお金を出し合うはずだったんだけど、みんないなくなっちゃったから、一人で払わなきゃいけなくなって……」
「…………」
いや、まあ……あんなガリガリだった時点でまともな物食べて無いんだろうな……って思っていたから……金が無いってのも薄々勘付いていたけどさ……。
金も無い、防具も無い、信頼も無い、仲間もいないとは……麗翠も俺に負けず劣らずこの世界で地獄を味わったようだな……。
何なら衣食住があっただけ、俺はマシだったんじゃないか?
この世界の人間と意思疎通が出来なかったのも、麗翠を見ていると幸せだったんじゃないかと思えてくる。
「と、とりあえず……防具を買いに行くか……。後は……まともな物を食べに行こう」
「えっ……でも、お金……」
「金なら心配するな。聞いてたと思うけど、魔王軍幹部を討伐した時にたんまり報酬を貰っているから、……多分、大丈夫」
……セトロベイーナ王家から金貨を大量に貰っていて助かったな。
あそこで謙遜して、いえ……魔王軍幹部の討伐は女神の加護を持つ者として当然ですから……とかカッコつけずに報酬をキッチリ貰っておいてマジで良かった。
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