女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)

その頃のボルチオールは

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 ジンがアルレイユ公国へと向かっている頃。

 セトロベイーナ王国からの親書を持ったサンドラとメリサが、ボルチオール王国、国王のパーク・ボルチオールの元を訪れていた。



 ◇



 「全く……こんな夜遅くに来る失礼な客人など貴様しか居ないとは思っていたが……本当に貴様とはなサンドラ。ん? なんだ、今日はメリサが一緒なのか」
 「お久しぶりです、国王。……サンドラさんといるのがジンさんではなく、私で残念でしたか?」
 「……口を慎めメリサ。国王に対して含みのある言い方をするなど、相変わらず貴様も失礼な女だ」

 メリサの態度に、国王だけでなく、側近や護衛もメリサを睨む。
 玉座の間の空気は正に最悪だった。

 「どうしてメリサがこんな態度なのか、セトロベイーナからの親書を見れば、分かると思いますよ。あと、この親書に書いてあることは全て事実で現実ですから受け入れてくださいね」

 サンドラも国王を睨み返して、セトロベイーナからの親書を側近に渡す。
 珍しく、サンドラは本気で怒っていた。

 ケント達にもこの間怒っていたが、それとは比べ物にならないぐらい。

 側近が親書の入っている封を開けて、国王へ渡す。

 「なんと! ジンがフィスフェレムを討伐しただと!? これは素晴らしい! ジンはボルチオール王国の誇りだ!」

 親書を読んだ国王がまず最初に書かれていたジンの快挙を見て、高笑いで喜ぶ。
 玉座の間は先程までのギスギスした空間とは打って変わって歓喜に包まれた。
 側近も護衛も皆ジンの快挙を祝福する。

 が、サンドラとメリサの二人は顔色を全く変えず喜ぶことすらしない。
 二人の様子に怪訝な顔をしながら、国王は親書の続きを読む。

 「……な、なんだと!? 行方不明だったはずの勇者パーティー三人の内二人が、魔王軍に寝返っていただと!? そのせいでセトロベイーナの勇者は死んでしまった……女神の加護を持った人間が魔王軍に寝返って敵となる可能性はこれから十分にあると考えられますので、お気をつけ下さい……だと」
 「だから言ったじゃないですか。そんなに喜んでいられないって。それとこれはジンくんからの伝言ですが、もうボルチオール王国には、ヴェルディア討伐以外一切力を貸さないと激怒していました。……心当たりありますよね?」
 「な、何!? こ、心当たり!? あ、新しいボルチオール王国の勇者にするつもりだったという事しかジンについては考えておらんぞ!? それが何故、ジンを激怒させる原因になる!?」

 ジンが激怒した理由。
 国王には勿論心当たりがあった。
 が、正直に全て話せば、自らのとんでもない失態が露呈するので、当然嘘を言う。
 しかし、黙っているサンドラとメリサではなかった。

 「良く言うね! 親書を渡すだけなんて言って、あんな惨状のセトロベイーナに行かせて!」
 「本当ですよ! でも、それだけならまだジンさんも許してくれましたよ! フィスフェレムを討伐させてセトロベイーナの女王に恩を売り、女王を自分の愛人にしようとするなんて、王として恥ずかしく無いのですか!? ましてやそれを親書に書くなんて!」

 二人の暴露に当然、玉座の間にいる側近や護衛達は騒ぎ出す。
 国王は焦った。
 何故なら全て本当だから。

 だがしかし、ここで国王はさらなる悪手に出る。

 「そ、そんな事を言う訳が無い! 貴様ら、国王を侮辱とは失礼極まりない! 捕らえろ! そして、牢に入れてしまえ!」

 自分がそんな事を言うわけがない。
 嘘を言っているのはあの二人だ。

 ということにして、うるさい二人を黙らせようと考え、護衛に二人を捕らえるように命じてしまったのだ。
 だが、護衛達は動かなかった。

 側近の一人が待つように指示を出したのだ。

 「き、貴様ら! な、何故あの二人を捕らえない! 国王の命令だぞ!」
 「……王よ。落ち着いて下さい。王がジン殿を信用出来ない……つまりジン殿を試す為にフィスフェレムの存在を伝えなかった事は、護衛や他の側近も周知しています」
 「な、何だと?」
 「それで、激怒する程度の器の小さい男だったのですよ。王よ。ここは、そんな器の小さい男にボルチオール王国の命運を預けずに済んだ。そう思いましょう」
 「ちょっ……」
 「本気……で言ってるんですか?」

 側近の言葉に当然二人は納得しなかった。
 命に関わる事を伝えないでおいて、試していただけだと開き直るのはあり得ないと考えるのは当然だろう。

 しかし、側近は二人を見て続ける。

 「貴様ら二人は本当に何も分かっていない。我らの王がセトロベイーナの女王を愛人に出来れば、ボルチオールはセトロベイーナを傘下に出来る。そういう事をお考えになって、身体の要求をしたのだ。今回は、貴様らの馬鹿さ加減に免じて許してやろう。よろしいですな? 王よ?」
 「う……うむ。ま、全くだ。無知は罪だぞ? だが誰にでも間違いはある。今回は見逃してやろう。ご苦労だった、下がっていいぞ」
 「はあ!? 何言って……」
 「二度はない。下がれ」
 「……帰りましょう。サンドラさん。何を言っても無駄です」

 これ以上何を言っても無駄だと判断したメリサはサンドラを止めた。
 サンドラもそれを察したのか、ため息を吐きながら玉座の間を後にした。
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