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ぽっちゃり女勇者と後三人誰だよ…の勇者パーティー(壊滅状態)
哀れな裏切り者
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「だ、だから言ってるだろう!? べ、魔王の剣は、女神の剣と同じくらい強力な剣だという事しか知らないんだよ!」
「……」
「や、辞めてくれ! 無言で女神の剣の刃を首筋に沿わせないでくれ! 分かったよ! 全部話すよ! ……魔王の剣は、魔王が女神の加護を持った人間を魔王軍側に寝返らせようとして、作った代物らしいんだ」
佐藤からの情報収集は順調と言えば順調だ。
俺の知らない情報がどんどん入ってくる。
しかし、女神の加護を持った人間を寝返らせようと考えるとは魔王も頭が良いな。
それとも、必ず裏切る人間が出てくるって確証があったのか?
現に、佐藤と伊東に関しては魔王軍に寝返ってフィスフェレムの手駒となっているみたいだし。
と、いうことはだ。
「……お前ら、自分の意思で大関を殺そうとしたのか。……フィスフェレムに操られているフリをしてまで」
「……!」
「そんでもって、もう一人はこっそり国外に逃亡かよ」
「…………」
佐藤は震えながら黙ったまま、何も言わない。
最悪の勇者パーティーだな。
セトロベイーナ王国の勇者パーティーは。
勇者である大関は、仲間だったはずの佐藤と伊東に殺されかけて、意識不明の重体。
佐藤と伊東は、魔王軍に寝返った。
……そして、回復術士のスズキこと、鈴木桃奈に至っては、佐藤の話だとフィスフェレムとの対決の時にドサクサに紛れて逃亡し、回復の魔法をかければ助かったかもしれないセトロベイーナ軍の人間を見殺しにした。
ああ、やっぱりな。
ケント達もそうだったが、やっぱりそうなんだよ。
「現実は厳しいって事を俺に教えてくれて、逆に感謝するよ。お前らに」
「……え、え?」
佐藤は、突然笑顔で感謝の言葉を言い出した俺に戸惑った。
当然、この男に向けている笑顔なんて、決して喜ばしい笑顔なんかじゃない。
勉強や運動、容姿や性格だけでなく、人としての常識すらも俺に劣っている目の前の男を嘲笑せずにはいられず、感謝と称して皮肉も言いたくなってしまったのだ。
「元の世界でダメだった奴は、やっぱり異世界でもダメなんだよ。改めて、確認させてくれてありがとうな」
そう言い残して俺は佐藤と別れ、フィスフェレムの間を進んだ先の階段を登ると出れるという、屋上へ向かう。
佐藤の話だとフィスフェレムは、屋上にいる。
伊東は、フィスフェレムから命令されてセトロベイーナ王国の東側の隣国アルレイユ公国とやらに行っていて不在らしい。
まあいい、そっちの方が好都合だ。
魔王の剣という訳の分からん武器を持った伊東を相手にしながらフィスフェレムを討伐するのも面倒だし。
そんな事を考えていた時だった。
「ふ、ふざけんな! 君に何が分かるって言うんだ! 分かるって言うんだぁーーーーー!!!!!」
喚き散らしながら、佐藤が殴りかかってきた。
当然、女神の加護を剥奪してある状態のこの男の身体能力などたかが知れているので、余裕で避ける。
佐藤は全力で俺を殴るつもりだったのだろう。
俺に避けられた後、反動で躓きバランスを崩して転んだ。
そして、泣きじゃくっていた。
二十歳を超えた男、一般的に言うと成人男性が転んで泣きじゃくる姿はあまりにも無様だった。
仲間を裏切り、セトロベイーナ王国の人間達を裏切り、多くの人間を死なせた最低な人間を殺す気も無くなるくらい。
「……うっ、グスッ。……こ、こんな事……こんな事したかった訳無いじゃないか! お、大関さんのように……グスッ……セトロベイーナ王国の人達から……グスッ……頼られたかった! でも、一緒だった! 元の世界と一緒だったんだよ! 女王からは失望され、軍の人間からは蔑まれ、国民からは税金泥棒と罵られて! まるで元の世界と変わらなかった! 全く誰からも期待されず、馬鹿にされていた元の世界と変わらなかった! その気持ちが君に……君になんか分かるか!?」
鼻水を垂らし、涙を流し、佐藤は子供のように喚き散らしながら更に続ける。
「だけど、フィスフェレム様は認めてくれたんだ! そしてこう言ってくれた! 愚かな人間共に一緒に復讐をしようと! そして、この世界を支配して、我らが住みやすい世界に一緒に変えよじゃないかと言ってくれたんだ! だ、だから絶対魔王軍は負けない! 勝つのは……勝つのは魔王軍だ! フィスフェレム様万歳! 魔王軍万歳!」
これは佐藤から俺に対する忠告なのだろうか?
……いや、違うな。
裏切って、多くの人を死なせてしまった負い目を自分と伊東だけじゃ背負えないんだ。
だから、俺をこうやって脅して引き入れようとしているんだ。
「……じゃあ早く、フィスフェレムの所へ行けよ。お前、フィスフェレムの部下になったんだろ? 侵入者が入ってきたって報告しなくて良いのか?」
佐藤が今の状態でフィスフェレムの元に行けば、どうなるか分かっていた。
が、それを分かっていてけしかけた。
「……だから君は嫌いなんだよ! 元の世界でも嫌いだった! そうやってアドバイスするフリをして、いっつも馬鹿にしていたのを知ってるんだからな! その余裕、フィスフェレム様の前でも保てるといいな!」
立ち上がった佐藤はそう吐き捨て、フィスフェレムのいる屋上へ走っていった。
俺は佐藤に合わせるため、ゆっくりと歩いて屋上へ向かう。
……アドバイスするフリをして、いつも馬鹿にしていたから嫌いだったねえ。
……俺、佐藤とそんな喋る関係だったか?
「……」
「や、辞めてくれ! 無言で女神の剣の刃を首筋に沿わせないでくれ! 分かったよ! 全部話すよ! ……魔王の剣は、魔王が女神の加護を持った人間を魔王軍側に寝返らせようとして、作った代物らしいんだ」
佐藤からの情報収集は順調と言えば順調だ。
俺の知らない情報がどんどん入ってくる。
しかし、女神の加護を持った人間を寝返らせようと考えるとは魔王も頭が良いな。
それとも、必ず裏切る人間が出てくるって確証があったのか?
現に、佐藤と伊東に関しては魔王軍に寝返ってフィスフェレムの手駒となっているみたいだし。
と、いうことはだ。
「……お前ら、自分の意思で大関を殺そうとしたのか。……フィスフェレムに操られているフリをしてまで」
「……!」
「そんでもって、もう一人はこっそり国外に逃亡かよ」
「…………」
佐藤は震えながら黙ったまま、何も言わない。
最悪の勇者パーティーだな。
セトロベイーナ王国の勇者パーティーは。
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佐藤と伊東は、魔王軍に寝返った。
……そして、回復術士のスズキこと、鈴木桃奈に至っては、佐藤の話だとフィスフェレムとの対決の時にドサクサに紛れて逃亡し、回復の魔法をかければ助かったかもしれないセトロベイーナ軍の人間を見殺しにした。
ああ、やっぱりな。
ケント達もそうだったが、やっぱりそうなんだよ。
「現実は厳しいって事を俺に教えてくれて、逆に感謝するよ。お前らに」
「……え、え?」
佐藤は、突然笑顔で感謝の言葉を言い出した俺に戸惑った。
当然、この男に向けている笑顔なんて、決して喜ばしい笑顔なんかじゃない。
勉強や運動、容姿や性格だけでなく、人としての常識すらも俺に劣っている目の前の男を嘲笑せずにはいられず、感謝と称して皮肉も言いたくなってしまったのだ。
「元の世界でダメだった奴は、やっぱり異世界でもダメなんだよ。改めて、確認させてくれてありがとうな」
そう言い残して俺は佐藤と別れ、フィスフェレムの間を進んだ先の階段を登ると出れるという、屋上へ向かう。
佐藤の話だとフィスフェレムは、屋上にいる。
伊東は、フィスフェレムから命令されてセトロベイーナ王国の東側の隣国アルレイユ公国とやらに行っていて不在らしい。
まあいい、そっちの方が好都合だ。
魔王の剣という訳の分からん武器を持った伊東を相手にしながらフィスフェレムを討伐するのも面倒だし。
そんな事を考えていた時だった。
「ふ、ふざけんな! 君に何が分かるって言うんだ! 分かるって言うんだぁーーーーー!!!!!」
喚き散らしながら、佐藤が殴りかかってきた。
当然、女神の加護を剥奪してある状態のこの男の身体能力などたかが知れているので、余裕で避ける。
佐藤は全力で俺を殴るつもりだったのだろう。
俺に避けられた後、反動で躓きバランスを崩して転んだ。
そして、泣きじゃくっていた。
二十歳を超えた男、一般的に言うと成人男性が転んで泣きじゃくる姿はあまりにも無様だった。
仲間を裏切り、セトロベイーナ王国の人間達を裏切り、多くの人間を死なせた最低な人間を殺す気も無くなるくらい。
「……うっ、グスッ。……こ、こんな事……こんな事したかった訳無いじゃないか! お、大関さんのように……グスッ……セトロベイーナ王国の人達から……グスッ……頼られたかった! でも、一緒だった! 元の世界と一緒だったんだよ! 女王からは失望され、軍の人間からは蔑まれ、国民からは税金泥棒と罵られて! まるで元の世界と変わらなかった! 全く誰からも期待されず、馬鹿にされていた元の世界と変わらなかった! その気持ちが君に……君になんか分かるか!?」
鼻水を垂らし、涙を流し、佐藤は子供のように喚き散らしながら更に続ける。
「だけど、フィスフェレム様は認めてくれたんだ! そしてこう言ってくれた! 愚かな人間共に一緒に復讐をしようと! そして、この世界を支配して、我らが住みやすい世界に一緒に変えよじゃないかと言ってくれたんだ! だ、だから絶対魔王軍は負けない! 勝つのは……勝つのは魔王軍だ! フィスフェレム様万歳! 魔王軍万歳!」
これは佐藤から俺に対する忠告なのだろうか?
……いや、違うな。
裏切って、多くの人を死なせてしまった負い目を自分と伊東だけじゃ背負えないんだ。
だから、俺をこうやって脅して引き入れようとしているんだ。
「……じゃあ早く、フィスフェレムの所へ行けよ。お前、フィスフェレムの部下になったんだろ? 侵入者が入ってきたって報告しなくて良いのか?」
佐藤が今の状態でフィスフェレムの元に行けば、どうなるか分かっていた。
が、それを分かっていてけしかけた。
「……だから君は嫌いなんだよ! 元の世界でも嫌いだった! そうやってアドバイスするフリをして、いっつも馬鹿にしていたのを知ってるんだからな! その余裕、フィスフェレム様の前でも保てるといいな!」
立ち上がった佐藤はそう吐き捨て、フィスフェレムのいる屋上へ走っていった。
俺は佐藤に合わせるため、ゆっくりと歩いて屋上へ向かう。
……アドバイスするフリをして、いつも馬鹿にしていたから嫌いだったねえ。
……俺、佐藤とそんな喋る関係だったか?
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