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幼馴染(男)と地味女子三人の勇者パーティー(役立たず)
買取って貰うか
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「おーい! ジン! お前ジンだろ? 何をやってるんだ?」
「ん?」
ケルベロスを倒し、洞窟からいつもの街へ戻っている途中で、何者かに声を掛けられた。
振り返ると冒険者の格好をした金髪の男がいた。
俺はこの男を知っている。
ケント達と楽しそうに話しているのをよく見るからだ。
だが、名前は知らない。
俺はケント達と違いこの世界の奴らとはコミュニケーションを取ることが出来ないから。
そう、だから俺は不思議でならなかった。
この男が話している言葉が理解出来るということに。
おかしいな。
こうしてこの世界の人間と普通にコミュニケーションが取れるなんて。
まるで、俺が女神の加護を受けた勇者みたいじゃないか。
そんな事を考えている俺を気にも止めず目の前の男は話を続ける。
「何だよ、普通に俺の言ってる事が理解出来ているじゃないか。ケント達はジンが俺達の話している言葉が理解出来ない位頭が悪いから無視しているんだってバカにしながら言ってたぞ?」
こいつ……大分失礼だな。
何回も会った事があるからって、一回も話したことも無い人間にそんな事正直に言うか?
頭が悪いのはそっちだろ。
ケントもだ。
もっとまともな言い訳考えられなかったのかよ。
しかもバカにしながらって……。
俺がどうしてこうなってしまったか、事実を知っているはずなのに、酷いもんだ。
「……そうか。で、何の用だ? そんな人間にわざわざ話し掛ける程お前は暇なのか?」
「何だよジン? ケント達に食わせて貰っているのに随分偉そうじゃないか?」
「そうだな。だからってお前にとやかく言う権利は無い。失せろ、不愉快だ」
俺は男との会話を無理矢理終わらせ街へ戻ろうとする。
正直、この世界の人間は嫌いなんだ。
俺を見る度、ニヤニヤと笑っていたのでバカにしているのは薄々気付いていたが、やっぱりこいつらは俺をバカにしていたんだ。
ケント達も一緒になって俺をバカにしていたのは少しショックだが。
「そうかそうか、その言葉後悔するなよ? ケント達が王都から帰ってきたら伝えておいてやるからな!」
「……王都? どこだそりゃ?」
「ハッ! やっぱりケントの言う通りただのバカじゃねーか! 教えてなんかやるかよ!」
そう言って男は、街へと去っていった。
男の話から察するに、王都って事はこの国は王国なのか。
まずそれを知らなかった。
なんなら俺はこの国の名前だけではなく、今いる街の名前すら知らない。
まあ、いずれ分かるようになるから良いか。
あまり気にせず、俺は街へと戻った。
◇
「いらっしゃい! 何かご用かい?」
街へ戻った俺は、街の武具店に来ていた。
というのも、今まではこの世界で様々な物に書かれていた文字を読めなかったり、この世界の人間とコミュニケーションを取れていなかった為、ケルベロスを倒したのはいいが、それを持っていった所で報酬やら何やらをケント達みたいに誰かから貰えるように俺はなっていないのだ。
それなら、直接武具店に素材として買い取って貰おうと考えた。
よく、ケント達が売りに行って金に変えて来ている話を聞いていたからな。
「これ、買い取って貰えるか?」
店のカウンターにケルベロスの三つの頭が入った大きな袋を乗せる。
胴体やら足などは洞窟へ置いてきた。
というか、重くて無理。
頭だけで精一杯だった。
「素材の買い取りね。……って、ケルベロスの頭!?」
「金にならないか?」
「なる! なるに決まっているだろ! 凄いな君!」
興奮しながら、店主はケルベロスの頭を査定しだす。
うわっ、よく口とか開けられんな。
臭くねえのかよ。
ケルベロスとはいえ所詮は犬だろ?
「いや……本当に凄いな。あそこの洞窟にいるケルベロスだろ? これを一人で?」
「ああ、まあな。意外と弱いんだな」
「君が強いだけだろ……それに君この街じゃ全然見かけないし」
見かけないって……もうこの街に住むようになってから二年なんだけどな。
……いや? よく考えれば、二年もの間ケント達の世話になっているだけで、街になんか行かなかったから、見かけないって言われて当たり前か。
適当に誤魔化しておこう。
「勇者ケントの昔からの知り合いなんだよ。だから、そこら辺の一般人よりは強くて当たり前だろ」
「あの女神に選ばれた勇者と昔からの知り合い?」
あっ、しまった。
誤魔化すつもりが余計な事を言ったわ。
勇者であるケントが違う世界から来たってのを街の人間は知っているのか。
現に俺の言葉を聞いた店主は、聞き間違いかと俺に聞き直しているし。
まあ、いいや。
別に隠すことじゃないだろう。
さっきの男みたいに、俺の事を知っている奴は知っているんだから。
「俺も女神によってこの世界に召喚されたんだよ、巻き込まれてな」
「信じられない話だが、現にケルベロスを楽勝に倒しているわけだからな……」
「別に信じなくても良いさ。それよりいくらぐらいで買い取ってくれるんだ?」
これ以上俺がここに来た切っ掛けなど聞かれても答えられない。
俺は強引に話題を変えた。
「金貨三十枚でどうだい? こんな珍しい物だから高く買い取らせて貰うよ」
「それで良い、まとまった金が欲しいからな」
俺の言葉を聞いて、店主は裏へ行く。
そしてカウンターに金貨の入った袋を俺に差し出す。
中身を確認して、袋ごとポケットに入れる。
「いやー本当に珍しい物を買い取らせて貰えたな。……胴体や足もあればもっと高く買い取れたんだが……」
何だと?
胴体や足もあればもっと高く買い取れた?
店主の言葉を俺は聞き逃さなかった。
金はいくらあったって良い。
「それなら、一緒に洞窟へ行かないか? 実は胴体と足を置いてきたんだ」
「ん?」
ケルベロスを倒し、洞窟からいつもの街へ戻っている途中で、何者かに声を掛けられた。
振り返ると冒険者の格好をした金髪の男がいた。
俺はこの男を知っている。
ケント達と楽しそうに話しているのをよく見るからだ。
だが、名前は知らない。
俺はケント達と違いこの世界の奴らとはコミュニケーションを取ることが出来ないから。
そう、だから俺は不思議でならなかった。
この男が話している言葉が理解出来るということに。
おかしいな。
こうしてこの世界の人間と普通にコミュニケーションが取れるなんて。
まるで、俺が女神の加護を受けた勇者みたいじゃないか。
そんな事を考えている俺を気にも止めず目の前の男は話を続ける。
「何だよ、普通に俺の言ってる事が理解出来ているじゃないか。ケント達はジンが俺達の話している言葉が理解出来ない位頭が悪いから無視しているんだってバカにしながら言ってたぞ?」
こいつ……大分失礼だな。
何回も会った事があるからって、一回も話したことも無い人間にそんな事正直に言うか?
頭が悪いのはそっちだろ。
ケントもだ。
もっとまともな言い訳考えられなかったのかよ。
しかもバカにしながらって……。
俺がどうしてこうなってしまったか、事実を知っているはずなのに、酷いもんだ。
「……そうか。で、何の用だ? そんな人間にわざわざ話し掛ける程お前は暇なのか?」
「何だよジン? ケント達に食わせて貰っているのに随分偉そうじゃないか?」
「そうだな。だからってお前にとやかく言う権利は無い。失せろ、不愉快だ」
俺は男との会話を無理矢理終わらせ街へ戻ろうとする。
正直、この世界の人間は嫌いなんだ。
俺を見る度、ニヤニヤと笑っていたのでバカにしているのは薄々気付いていたが、やっぱりこいつらは俺をバカにしていたんだ。
ケント達も一緒になって俺をバカにしていたのは少しショックだが。
「そうかそうか、その言葉後悔するなよ? ケント達が王都から帰ってきたら伝えておいてやるからな!」
「……王都? どこだそりゃ?」
「ハッ! やっぱりケントの言う通りただのバカじゃねーか! 教えてなんかやるかよ!」
そう言って男は、街へと去っていった。
男の話から察するに、王都って事はこの国は王国なのか。
まずそれを知らなかった。
なんなら俺はこの国の名前だけではなく、今いる街の名前すら知らない。
まあ、いずれ分かるようになるから良いか。
あまり気にせず、俺は街へと戻った。
◇
「いらっしゃい! 何かご用かい?」
街へ戻った俺は、街の武具店に来ていた。
というのも、今まではこの世界で様々な物に書かれていた文字を読めなかったり、この世界の人間とコミュニケーションを取れていなかった為、ケルベロスを倒したのはいいが、それを持っていった所で報酬やら何やらをケント達みたいに誰かから貰えるように俺はなっていないのだ。
それなら、直接武具店に素材として買い取って貰おうと考えた。
よく、ケント達が売りに行って金に変えて来ている話を聞いていたからな。
「これ、買い取って貰えるか?」
店のカウンターにケルベロスの三つの頭が入った大きな袋を乗せる。
胴体やら足などは洞窟へ置いてきた。
というか、重くて無理。
頭だけで精一杯だった。
「素材の買い取りね。……って、ケルベロスの頭!?」
「金にならないか?」
「なる! なるに決まっているだろ! 凄いな君!」
興奮しながら、店主はケルベロスの頭を査定しだす。
うわっ、よく口とか開けられんな。
臭くねえのかよ。
ケルベロスとはいえ所詮は犬だろ?
「いや……本当に凄いな。あそこの洞窟にいるケルベロスだろ? これを一人で?」
「ああ、まあな。意外と弱いんだな」
「君が強いだけだろ……それに君この街じゃ全然見かけないし」
見かけないって……もうこの街に住むようになってから二年なんだけどな。
……いや? よく考えれば、二年もの間ケント達の世話になっているだけで、街になんか行かなかったから、見かけないって言われて当たり前か。
適当に誤魔化しておこう。
「勇者ケントの昔からの知り合いなんだよ。だから、そこら辺の一般人よりは強くて当たり前だろ」
「あの女神に選ばれた勇者と昔からの知り合い?」
あっ、しまった。
誤魔化すつもりが余計な事を言ったわ。
勇者であるケントが違う世界から来たってのを街の人間は知っているのか。
現に俺の言葉を聞いた店主は、聞き間違いかと俺に聞き直しているし。
まあ、いいや。
別に隠すことじゃないだろう。
さっきの男みたいに、俺の事を知っている奴は知っているんだから。
「俺も女神によってこの世界に召喚されたんだよ、巻き込まれてな」
「信じられない話だが、現にケルベロスを楽勝に倒しているわけだからな……」
「別に信じなくても良いさ。それよりいくらぐらいで買い取ってくれるんだ?」
これ以上俺がここに来た切っ掛けなど聞かれても答えられない。
俺は強引に話題を変えた。
「金貨三十枚でどうだい? こんな珍しい物だから高く買い取らせて貰うよ」
「それで良い、まとまった金が欲しいからな」
俺の言葉を聞いて、店主は裏へ行く。
そしてカウンターに金貨の入った袋を俺に差し出す。
中身を確認して、袋ごとポケットに入れる。
「いやー本当に珍しい物を買い取らせて貰えたな。……胴体や足もあればもっと高く買い取れたんだが……」
何だと?
胴体や足もあればもっと高く買い取れた?
店主の言葉を俺は聞き逃さなかった。
金はいくらあったって良い。
「それなら、一緒に洞窟へ行かないか? 実は胴体と足を置いてきたんだ」
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