女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

文字の大きさ
上 下
46 / 129
ぽっちゃり女勇者と後三人誰だよ…の勇者パーティー(壊滅状態)

元の世界で俺に負けた奴は異世界でも俺に負ける

しおりを挟む
 亜形あがたけい
 岸田きしだを中心としたクラスの中心的グループ(自分達でそう言っているだけで、クラスのほとんどの人間から疎まれている連中の集まり)の一人で、金髪+軽薄そうで頭が悪そうな言動、好戦的な性格という、今の時代の日本には絶滅危惧種と言っていい量産型ヤンキーだ。

 ……まあ、そのクセにケンカが全く強くないんですけどね。
 教師達からの信頼も全くなかったから、中学時代に俺とのケンカに負けてケガした時も、まともに取り合って貰えなかったという一件があってから、一方的に俺を逆恨みしている大バカ野郎だ。
 
 自業自得だろ。
 成績が悪い上に素行も悪い生徒の味方をするほど先生は暇じゃねえぞ。

 そしてその隣にいるサツキちゃんと呼ばれていた女。
 恐らくだが、同じクラスだった寺原五月てらはらさつきだろう。
 元の世界では黒髪だったが、こっちでは茶髪にしたのか。
 小柄で髪型はボブヘアー、常におどおどしている奴って印象しかない。
 あー後、岸田と付き合っている化粧が濃くて、自称サバサバ系(ただ性格が悪いだけ)の五十嵐いがらし里香りか、そしてその五十嵐の友人である園部そのべ彩乃あやののパシリだった。
 
 そして、この二人の足元で死んでいるマユミという女は、これも同じクラスだった高木たかぎ真弓まゆみだろう。
 高木も寺原と同じ様に五十嵐と園部のパシリだった記憶がある。
 代わりに宿題とかをやらされていたのを何回も見たことがある。
 断れば良いのに。

 ……って、待てよ?
 岸田、亜形、五十嵐、園部は元の世界でつるんでいた連中だから分かる。
 だが、寺原と高木はパシらされていただけで、この四人とは仲良くはない。
 何故、一緒に行動していたんだ?

 それに本来、勇者パーティーは四人一組。
 亜形、寺原のやり取りとセトロベイーナの人間の話から推測すると、岸田をリーダーとするアルラギア帝国の勇者パーティーは最低でも六人もいる事になる。
 
 ……あ、仕えていた国を裏切った派手で岸田にお似合いのクズな女達ってもしかして、五十嵐と園部の事か。
 それなら、あくまで推測だけど元々のアルラギア帝国の勇者パーティーは岸田、亜形、寺原、高木の四人で、五十嵐と園部が仕えていた国を裏切って加入したって形で、アルラギア帝国の勇者パーティーが六人に増えたのかもしれん。

 そんな予想を立て、じゃあどうやってこの二人を倒すか考えながら、瓦礫と化した城門の方へと進む。
 

 「……ウ、ソ……でしょ」

 突然、寺原が戸惑い出した。
 俺に気付いたか?
 まあ、そりゃそうだ。
 俺はあくまでこの世界じゃ余り物。
 事情を知らない寺原は、俺が死んでいると思っていても仕方無い。

 「サツキちゃんは、ここで見ててオッケーオッケー! さーってと! 今回もワンパンで行くっしょ!」
 「あ……」

 そんな寺原をよそに、俺をこの世界の人間だと思い込んでいる亜形は突っ込んで来た。
 流石、寺原。
 そのおどおどしている性格は直ってねえな。
 誰かに意見とかしている姿も見た事ねえから、亜形を止められる訳無いと思っていたよ。

 そして亜形、やっぱりお前って頭悪いな。
 お前に関してだけは言えるよ。
 人は見た目によるって。

 「激遅! やっぱこの世界の人間って弱過ぎっしょ!」

 女神の加護による力なのかは知らんが、亜形はあっという間に俺の前へ来た。
 そして、俺に剣を振り下ろす。

 あーダメダメ。
 マジでダメ。
 何だその剣の使い方?
 チャンバラごっこする小学生か?

 「へ……?」

 無情にも亜形の振り下ろした剣は、俺の女神の黒イーリス・ブラックに防がれただけで、折れた。
 当たり前だ。
 亜形の持っている剣も、恐らくイーリスの手で作られた物なんだろうが、女神の剣イーリス・ブレイドとは、イーリスが込めている力の具合に圧倒的な差がある。

 「中学時代を思い出すな? 亜形?」
 「は? テメー誰だよ? って!? う、上野うえの!? い、生きてたのか!?」
 「どこぞのただただ突っ込んで来るだけの頭が悪い奴よりは頭の出来も、運動能力も格上なんでな? そりゃもう、余裕で」
 「チッ! 余り物が何で生きてんだよ! 死ね! 剣が無くても大丈夫っしょ! 拳で十分だっつーの!」

 大嫌いな俺が生きていて、冷静さを失っているのか、はたまた本気で己の拳で十分だと思っているのかは分からないが、亜形は逃げるどころか女神の剣を持つ俺に殴り掛かって来た。
 女神の黒で戦う意味が無いなもう。
 それなら試してみるとするか、ケントから奪った女神の紫イーリス・パープルの使い心地を。

 「エクスチェンジ! 女神の紫! デッドリーポイズン!」

 ……女神の黒の欠点もう一個あったわ。
 奪った他の女神の剣を使うにはいちいちエクスチェンジって言わないといけないとか……。
 何はともあれ、女神の紫を使ってみた訳だが……効き目はどうだ?
 亜形のへなちょこパンチを躱して距離を取る。
 もちろん、亜形は俺を追おうとする。
 しかし、その時だった。

 「うぶっ……!? く、苦しい……う、上野テ……メー……ブフォッ!!!」

 亜形は突如苦しみ出して、吐血した。
 ほう……凄いな、女神の紫。
 これは使える。
 あ、そういえば!
 デッドリーポイズンって確か猛毒とかそんな意味だった気がする!

 いかんいかん、俺とした事が。
 そんな事にも気付かずに間違って亜形に猛毒を掛けてしまうなんて!
 麻痺辺りなら、パラジーとかで良かったのに!
 ま、どうでも良いか。
 俺を殺そうとした奴の事なんて。

 「大人しくお前は、そこで苦しみながら這いつくばっていろ。それがお似合いだよ。中学の時も俺にケンカ売ってそうなってるから平気だろ? 二回目だぜ? 二回目」

 そう言って、亜形の元を離れた。
 亜形は、猛毒が体に回っているのでバタバタと苦しみながら、吐血し続けている為か俺に何も言い返せない。

 「俺の見間違いじゃ無ければ、お前は寺原五月だな?」

 寺原だとは分かっていたが、一応確認の為に本人確認をした。
 すると黙って頷き、俺の元へ来る。

 「上野くん……生きていたんだね」
 「お前こそ、岸田達と仲良くこの世界の人間を殺しまくっていたみたいだな」
 「サツキは殺してない!」
 「でも、止めなかったんだろ?」
 「……」

 俺の意地悪な問いかけに寺原は黙る。
 はいはい、都合悪くなると黙るのも寺原の特徴でしたね。
 まあ、分かっているけどさ。
 寺原が岸田達を止められる人間じゃない事も、岸田達が寺原に意見されたぐらいで、この世界の人間を殺す事を辞めるような人間じゃない事も。

 「何はともあれ、お前は岸田達と同じパーティーのメンバーだった。亜形みたいになりたくなければ、大人しく付いて来て貰うぜ?」
 「……うん。そうします」

 聞きたい事なんか、山程ある。
 それにセトロベイーナの人間も寺原に聞きたい事があるだろう。
 報復に寺原が処刑なんて話になったら知らん。
 これで良いのかは分からないが、とりあえず女王様の元へ寺原を連れて行く事にした。

 「あ……あ……」

 宮殿へ向かう道中。
 猛毒による吐血で、失血死した亜形圭を見て、寺原五月が失禁してしまった事も、亜形圭の女神の加護を手に入れた事も、ジンは気付く事なく怯える寺原と共に、セトロベイーナの人間とサンドラとメリサが待つ客間に戻るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...