女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

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ぽっちゃり女勇者と後三人誰だよ…の勇者パーティー(壊滅状態)

じょ、女王!?

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 女王様が俺達に会う準備が出来たそうなので、俺達四人は馬車を降りる。
  サンドラさんが涎を垂らした親書は、中身が無事だったものの封筒はベタベタになったので、剥き出しのまま渡すそうだ。

  ……本当に失礼だよね。
  まあ、サンドラさんも不味い事をしたという自覚があるのか、しょんぼりしていたし責めないでおこう。
 
  メリサさんは数分前に起きたため、あくびをしながら、眠そうにしている。
  リベッネ曰く一番メリサさんが眠らなかったらしく、つい本気で魔法を掛けたらしい。
  半日で起きれた事にビックリしていた。

  リベッネを先頭に門の前まで行く。
  すると正面の門が門番の手によって開けられた。
  門の向こう側には美しい庭園が……広がっていなかった。

  なんだこりゃ。
  雑草は生え放題、世話が行き届いていないのか枯れそうな花、更には虫の死骸まで転がっている。
  歩道は砂だらけ、ボルチオール王国みたいに迎えの執事やメイド、そして道を案内したり宮殿付近を護衛している兵士もいない。

  結局宮殿まで、誰にも会うことなく着いた。
  うわ、遠くから見ると綺麗な宮殿もこうして近くで見ると汚いな。
  ……宮殿は掃除をしていない訳じゃない。
  悪意を持った誰かに汚されたって感じだな。

 「うわーまた汚くなってるなー。二週間ぶりに宮殿に来たけど、はあ……」

  リベッネはため息を吐きながら、宮殿の入り口の扉を開ける。
  おお……宮殿の中はキレイだ。
  こんなに中はキレイにしているんなら、外もキレイにしたら良いのに。

 「……決して狭い訳じゃないのに、メイドも執事もいないね。ボルチオールなんか余るくらいいるのに」
 「……人が足りてないのでは?  庭を見れば分かります。全く手入れされてませんでしたし」

  リベッネには聞こえないように、俺の後ろでサンドラさんとメリサさんが小声で話している。
  カムデンメリーにある城で働いていた二人からしたら不思議でしょうがないだろう。

  だって、王様の元で働いた事のない俺ですらあまりの人のいなさに、ビックリしてるし。

 「あ、着きましたよ。皆様。ここにアタシ達が仕えるセトロベイーナの女王ちゃ……女王様がいます」
 「え?  きゃ、客間?」
 「こんなただの一室に過ぎない部屋に女王がいるのですか?」
 「あー……それは説明を受ければ分かると思います」

  ボルチオール王国の城には、玉座の間という王様が謁見を行うための玉座がある部屋があった。
  王様が玉座にふんぞり返って、おお、来たかって謁見する為の部屋が。

  一方、セトロベイーナ王国の女王が今いる部屋の前に立っているが、とてもじゃないけど女王様がいるような部屋には思えない。

 「女王ちゃーん、入るよー。あっ……今勇者様達がいるの忘れてた。女王様入りまーす」

  ノックもせずにリベッネが部屋の扉を開けて入る。

 「あ、ありえない……」
 「え?  私もあんな感じで玉座の間に入るけど?  ねえ?  ジンくん」
 「……そうですね」
 「ほら」

  ほらじゃねえよ。
  ドン引いているメリサさんが正解なんだよなあ……友達の部屋にお邪魔するんじゃないんだからさ。
  どう考えてもサンドラさんとリベッネが非常識だからな。

 「お待ちしていました、ボルチオール王国の勇者様。わたくしが、セトロベイーナの女王、セトロベイーナ三世です」

  部屋に入るとドレスを着た女王……。
  じょ、女王!?
  どう考えても俺より年下にしか見えないピンク髪の少女が頭を下げて俺達を出迎えてきた。
  い……いや、待て。
  もしかしたら、俺より年上かもしれん。
  あれだ、童顔なだけだろ。

 「……え?  これがセトロベイーナの女王?  どう見ても私より年下じゃん」
 「失礼ですよ!  余計な事を言わないで下さい!」
 「お人形さんみたいで可愛い!」

  ……本当にこの人は。
  女王様の護衛をしている騎士達がドン引いているぞ。
  他国の女王に対して、何故そんな事を言えるのか?
  メリサさんも頭を抱えている。

 「可愛いだって!  良かったね!  女王ちゃん!  あっ……女王様」
 「もう良い……慣れてるから」

  リベッネもいかに女王に対してサンドラってるのが分かるよ。
  サンドラってるって何だって?
  目上の人間に対して、平気で失礼を働く事だ。
  今、俺が作った。
  この世界に辞書があるんなら、新しく載せて良いぞ。



  ◇



 「ボルチオール王国の王が親書をわたくしに渡したいって聞いたのですが……」

  テーブルを挟んで、向かい側のソファーに座った女王様が話を切り出す。
  座っているとますます少女にしか見えなくなってくるな。

 「はい。ボルチオール王国、国王のパーク・ボルチオールから親書を預かってきま……した。はい、きました。」

  サンドラさんは物凄く歯切れが悪そうに答える。
  そういや、封筒の中に入っていた親書がベタベタになっていないか中身を少し見たって言っていたな。
  本来、親書の中身を見るのはおかしいけど。
  ……それが歯切れが悪そうに答えているのと繋がっていたりして。

 「……どうぞ、こちらが親書です。ご確認をお願いします」

  さっきとは違い、サンドラさんなりの敬語で女王様に話しながら、親書を渡す。
  まあ、流石にあんな言葉遣いで渡すわけ無いよね。
  いくら、サンドラさんでも。

  受け取った女王様は、申し訳程度に畳まれていた親書を開き、目を通す。
  すると、厳しそうな顔に変わる。
  ……一体、何が書かれているんだ?
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