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幼馴染(男)と地味女子三人の勇者パーティー(役立たず)

カムデンメリーへ

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 「あー……やっぱ気が乗らないなあ……」

  アイドラさんに王都へ行くなら王様の元にも行って欲しいと言われて三日。

  とうとう、その日がやって来てしまった。
  い、行きたくねえ……。
  王様の元へ行くのも嫌だが、何より一番嫌なのは虹の教団とかいう巨大宗教団体の教祖だという王妃にも会うことになることだ。

  ……まあ、嫌な事を後回しにし続ければロクな事にならないのは、俺も二十年生きているんだから、よく分かっている。
  嫌だけど行くしかない。

  それに、嫌な事を後回しにし続けている連中が身近にいるからこそ、俺は逃げてはいけないんだ。
  アイツらの未来は、破滅しかない。
  そうなりたくないのなら、嫌な事でもやれ。

  自分を奮い立たせ、ロジャース邸を出る。

 「おはようございます。ジンさん」
 「おはようございます。って、馬、馬車?」

  外に出るとメリサさんと、俺とメリサさんの二人だけが乗るには大きすぎる馬車があった。
  む、無駄金……。

 「では、早速行きましょうか。勇者ケント達が王都にいる間に、王都に着きたいので」
 「あれ?  そういえば、ケント達がいないのに俺もファウンテン離れて大丈夫なんですか?」

  ケント達がいないからファウンテンの街はヴェルディア達魔王軍の連中に攻められた訳だ。
  今は俺がいるから女神の剣イーリス・ブレイドの力を警戒して攻めて来ないだけなのに。

 「大丈夫です。以前とは違い、周辺の街や王都からの応援が来ていますし、何よりサンドラさんが万全ですから」
 「……は?  はあ……」

  メリサさんは心配しなくて良いと言いたげに笑うが、後半のサンドラさんが万全という言葉で、一気にメリサさんの発言が信用できなくなる。 

  万全?
  今日も二日酔い~とか言いながら、リビングでゲロ吐いてアイドラさんに説教されていたあの状態が万全なのか……。

 「し、信用出来ねえ……」

  思わず口からポロっと失言してしまったが、メリサさんには聞こえてなかったのか、馬車へと乗り込んでいったので、俺も馬車に乗って王都カムデンメリーへと向かう。


  ◇


 「す、凄いですね。この馬車……もの凄いスピードで走ってません?」
 「私も始めてです。流石、貴族様がご用意なさった特注の馬車ですね……。このスピードで走れば荷台が揺れたり、衝撃を感じるはずなのですが、全くそういうのも無いですね」

  俺達の乗る馬車は、猛スピードで王都カムデンメリーへと向かっていた。
  本来、普通の馬車で行けばファウンテンからだと一日は掛かるらしいが、この馬車で行けば半日で済むと、ファウンテンのどこぞの貴族様が用意してくれたのだ。

  更にそれだけじゃない。

 「まさか、こんな防具まで用意してくれるとは……メリサさんの杖とローブも用意された物ですよね?」
 「王と謁見する訳ですから、安物では失礼だと言われました。杖もローブもアクセサリーも全て性能と値段を兼ね備えています」
 「俺に用意された防具もやっぱり安物とは違うなあ……軽いから動きやすいし」

  メリサさんの装備品を見た後、自分に用意され今着けている防具を見る。
  野球のキャッチャーの防具みたいな鎧?  だが、動きやすいし丈夫そうだし文句はない。

 「馬車や装備品を用意して下さったのは、シルビエラ・グレイス様です。何でもジンさんにお礼がしたかったとか」
 「……誰でしょう?」
 「街を救って頂いたとも言っていましたが、何より妻と娘を救って貰ったと」

  妻と娘?
  困っている人妻(ただしキレイな人に限る)なら片っ端から助けたし、小さな女の子も一杯助けたから分からないな。

 「緑髪の方を助けた覚えはありませんか?  グレイス様の第三夫人なんですよ。第一夫人と第二夫人、そしてその子供達を守るので精一杯だったから助かったと言っていました」
 「ああ!  思い出した!  サタン達に襲われてた所を助けましたね!  ……そうか、良かった怒って無かったんだ……」

  感謝されている事よりも、あの緑髪の人妻が怒っていなかった事にホッとした。
  娘さんにサタンの血液と体液モロにぶっかけちゃったからね。
  いやー怒ってなくて良かった良かった。

 「しかも名を名乗らずに、すぐに別の人を救いに行ってしまったから、ジンさんだと分からず、お礼をするのが遅れてしまったとも言ってましたよ?  凄いですねジンさん?  貴族の関係者を助ければ大金を貰えるのは常識なのに」
 「……な、名乗っている暇無かったですから!  た、大金よりもま、街の人の命ですよ!」

  嘘です。
  娘さんをおもいっきり汚したから、絶対怒られると思って、ただ逃げ出しただけです。
  しかし、メリサさんは全く疑いもせず。

 「凄いですねジンさん。全く、サンドラさんや勇者ケント達にも見習って貰いたいものです。助けたからはいお金!  と要求する程お金には困っていないのに……」
 「はは……」

  俺に対して物凄く感心してくれているけど、真実を知ったらガッカリするだろうな。
  黙っておこう。

  後、サンドラさんもケント達もイメージ通り過ぎて笑えねえよ。
  助けた人間に対してキッチリ見返りを求めるところとか。

  ケント達は何に使っているのかは知らんが、サンドラさんは貰った金はすぐに酒代に使ってそう。
  アイドラさんは、サンドラさんに対して酒代とかあげてなさそうだし。

  ……あ、そもそもサンドラさんってそろそろ二十五歳になるんだから、親から金貰い続けるのはおかしいか。

  サンドラさん、ゴメンね。
  大人とは思えない行動しまくっているから、勝手にダメ人間扱いしちゃった。

  心の中で俺はサンドラさんに謝る。
  そんな俺を馬車は気にも止めず猛スピードで走り、王都カムデンメリーへと突っ走る。
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