女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神《バカ》に召喚された七組の勇者パーティー〜

石藤 真悟

文字の大きさ
上 下
3 / 129
幼馴染(男)と地味女子三人の勇者パーティー(役立たず)

あの勇者パーティーは弱い

しおりを挟む

 「うわ!  本当にケルベロスが倒されてる!」
 
  どうしてこうなった。

  俺は武具店の店主を誘ったつもりなんだが?
  何故俺は、異世界の美女とこんな薄暗い洞窟に二人で行くことになったんだ?

  ああ、そうだった。
  怖いからウチの店の常連客の中で、一番強い人を連れて行って、ケルベロスの胴体と足を持ってきて売ってくれ!  とかふざけた事を店主に言われたんだった。

  あの厳つい感じの顔で、なんてビビりなんだ。
 
  ……いや、人は見た目で判断しちゃいけないって事は、俺は知っているじゃないか。
  ……地味で真面目そうな女の子が裏では実は……

 「どうしたの?」
 「え?  ああ、何でも無いです」
 「それにしてもスゴいね~ケルベロスを倒すなんて」
 「はあ……そうなんですか?」

  目の前の美女は、俺を褒めてくれるが、実感は湧かない。
  自分がスゴいことをしたという感覚がない。

 「ここのケルベロスに沢山の冒険者や洞窟に迷い込んだ子供達が殺されていたって聞いた事ない?」
 「無いですね。そもそも、俺は腕試しの為にケルベロスを倒しただけなので」
 「……おじちゃんが言ってた、勇者と一緒に異世界から来た男ってのは、本当なんだね」

  やれやれといった感じで呆れ顔を浮かべる美女。
  ……あの、ビビり店主め……俺の素性を喋りやがったのか……。
  厳つい顔の店主なら寡黙であれよ。
 
 「……でも、不思議だな……。君、全然勇者より強いよ?」
 「え?」

  美女の言葉を聞いて俺は、焦る。

  不味いな。
  何故なら、ケント達を始めとした勇者パーティーは女神の加護を受けているはず。
  俺はあくまで余り物。
  女神の加護を受けていないんだから。

  そんな俺が女神の加護を受けている勇者より強いなんてバレたら不審がられるだろ。

 「そんな訳無いだろ?  って思ってる?」
 「ええ……まあ」
 「私、一緒に戦ったことあるけど勇者パーティー弱いわよ?  これが女神に召喚された人達?  って思ったもの」

  お姉さんの言葉にホッとする。
  何だ、アイツらと一緒に戦った事があるのか。

 「お姉さんが腕利きの冒険者だから、アイツらが弱く見えるだけでしょ?」

  俺はお姉さんの話を利用して、アイツらがただ弱いだけと話題を変える。

  別に怪しまれないだろ。
  目の前の美女はとても強い人だって、あのビビり店主は言っていたし。
  何か、魔法剣姫って凄いアダ名で呼ばれていたし。

 「まあ……皆強いって言ってくれるけど、結局私は女神に選ばれなかった訳だし。それに君も私の名前すら知らないじゃない。強い人だって認識してないからでしょ?」

  そう言った後、お姉さんは悲しそうに目を伏せる。

  女神に選ばれなかった。

  それは即ち、この世界では勇者として魔王を討伐する事が出来る人間ではないと烙印を押されたのと同義らしい。
 
  ケントが自分はいかにこの世界では優れた人間なのかを俺に説明する為に色々教えてくれた。
  嘘かと思ってたんだが、本当みたいだな。
  お姉さん凄い悲しそうな顔してるし。

  ……慰めてあげるか。

 「分かりますよ。お姉さんの気持ち」
 「……君に?  そんな訳無いでしょ?  ケルベロスを倒せる力を持っている人が私の気持ちなんて……」
 「……俺も、女神に選ばれなかった人間ですから」
 「……えっ」

  お姉さんは、驚いた表情で俺を見る。
  嫌な思い出だが、話すしかない。
  キレイな人の悲しい顔なんて見たくないからな。

  俺が分かる範囲での話、それとケント達から聞いた話を話そう。

  レフトオーバーズ。

  即ち、余り物。

  俺は、女神にそう宣告されたんだから。
  ……ま、少し(大嘘)は嘘を交えるけど。

 「俺は、女神の加護が無いんです。そのせいで二年もの間、この世界の人とコミュニケーションを取ることすら出来ませんでした」
 「……でも、勇者はここに来た時から普通にこの世界の言葉を理解出来たって」

  そりゃそうだろうな。
  女神の加護を受けているんだから。

 「……異国の地に行っただけで、その国の人間が話す言語を瞬時に理解出来る。これが、女神の加護の効果以外でどう説明出来るんですか?」
 「勇者達は、僕達は凄く頭が良いからすぐにこの国の言葉を覚えたって言ってたけど……」

  アホか、アイツら。
  どうしてそんな見栄を張る事を。
  ……正直に言って良いよな?
  俺の事も好き勝手に言ってくれたみたいだし。

 「アイツらが?  それは無いですね。お世辞にも、以前の世界では頭が良いとは言えませんでしたよ。お世辞で言って中の下くらいです」
 「やっぱりそうなんだ。何か言動がバカっぽかったから、薄々気付いてたけど……」
 「……」

  ……何だろう。
  アイツの幼馴染だからだろうか。
  俺もメチャクチャ恥ずかしいんだけど。
  言動がバカっぽいって。
  こんな悲しい事ある?

 「具体的にどんな事言ってました?」
 「何か、凄い自慢気に「また僕、何かやっちゃいました?」とかよく言ってた……」
 「……」

  ケントくん、アニメの見過ぎですね。
  ええ、そうですね本当に。
  そういや、そんなの感じのセリフ出てくるアニメ見てたな。
  元の世界で。

 「……ま、まあこれで分かりました?  つまり、そんなバカな言動をしちゃう奴でも異世界の人間と一瞬にしてコミュニケーションを取れちゃうんです!  女神の加護って奴は」
 「でも、君も私とこうして話せてるじゃない」
 「……そりゃ、二年もここに居れば覚えますよ」
 「あ、そっか」
 
  嘘です。
  何故か知らないけど、いつの間にかこの世界の人間とコミュニケーション取れるようになってました。

  後、多分お姉さんより俺の方が強いよ。

  勇者を選ぶ側の女神を殺したんだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

処理中です...