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可愛すぎて意味わからない(ルイ目線)

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 俺の腕の中でまたスヤスヤ眠る暁人は、本当にかわいい。
 可愛すぎて、ホント…………。
 「意味、分からん……」

 あの後一応、服を着せた。風呂上がりだから、余計気を使わないといけない。
 俺自身、髪の毛も乾かさずに寝たら、翌日風邪を引いたことがある。
 「暁人…………」
 お仕置き、と言って、俺の欲を満たした。でも、やっぱり無理させた。
 途中から泣き続けるし……。
 「ごめん」
 暁人が絡むと、自分を見失ってしまう。
 まだ出会って日が経っていないのに……。暁人に出会うまでは、こんなんじゃなかったのになぁ……。
 俺は暁人に布団をかぶせ直して、ベッドから出る。

 さっきから携帯が鳴りっぱなしでうるさい。
 このまま放置したいけど、暁人起こしたら嫌だし。

 携帯を手にして、俺はベッドルームから出て行く。


 「……チッ」
 部屋を出たと同時に、メッセージが届く。まだ電話じゃなくて良かった。
 「…………」
 だーっ、とメッセージを打っていく。
 ピロリン、とかわいらしい音がして、相手に送られる。
 「……は? 電話…………?」
 メッセージを送った直後、電話がかかってきた。
 本当は出たくない。
 あぁ、でも。

 出ないと、あとで痛い目に合うのは俺なんだし……。
 「……………………もしもし……」

 『もしもし? ルイか?』

 優しい口調で話すが、俺はコイツの本性を知っているから、逆効果だ。
 「気持ち悪い喋り方すんなよ」
 『客人がいるんだ』
 電話越しに、誰かのあえぎ声が聞こえてくる。
 呆れ果てて、俺は自然とため息が出る。
 「どうせ、小さい子供だろ?」
 『よく分かるな。ああ。私の下でいているよ』

 電話の相手は、確か……。


 ——鈴原すすはら甚九郎しんくろう

 だったか…………。

 『聞くか?』
 誰が垢の他人の子供の喘ぎ声なんか聞きたいか。
 でも俺の意見は関係なしに、鈴原は男の子の声を俺に聞かせる。

 『あっ! い、や……ごめんなさいっ、んんああぁぁ!!』

 「もういい、やめろっ!」
 とても苦しそうで、聞いているこっちまで嫌な気分になる。
 『もういいのか?』
 「当たり前だ! 聞きたくねぇっ!」
 なんなんだ、本当に!
 だから『ゲイ』は嫌いなんだよ。身体を重ねられるんなら、誰でもいいんだから。
 俺は、きっとゲイじゃない。

 ただ暁人が好きなだけ。

 「あんなにメッセージ送らなくてもいい。しつこい」

 『そうか。心配だったからな。——うるさい、啼くな』
 『ひぐぅぁ……っ! ごめんなさ……ゆるひて……ぇあんっ!』

 電話、切りたいんだけど。
 あーイライラする!!

 「それだけだ。切っていいか?」
 『早いな。ああ、そうだ。君にプレゼントした家はどうだい?』
 「………………まぁまぁだよ」
 『そうか。ならよかった』
 鈴原は心底嬉しそうに話す。でも俺は全然うれしくない。
 「切るぞ」
 『あ、ルイ。ちょっと待っ——』

 もう話したくないから、すぐに電話を切る。
 「チッ……。あークソ……っ! イライラする……」
 こんな日にまで奴の声を聞きたくなかった。
 ついさっきまで幸せだったのに。
 「暁人には見せられない姿だな……」

 こんな姿、死んでも彼には見せたくない。
 失望されても、嫌だし……。

 「暁人……っ!」
 携帯を握りしめて、暁人の名前を口にする。

 なぜだろう。
 暁人の名前は、俺の心を癒してくれる気がする。

 「はぁ…………」
 ため息が溢れまくる。 


 「俺は、もっと強くならないと……大切なものも、守れない」

 拳をぎゅっと握って、俺は改めて決意する。
 あの時とは違う。
 力も弱く、言いなりになっていたあの頃とは違う。
 俺は変わったんだ。


 「暁人を、守ってみせる……っ」


 一番大切な人。



 彼を、何があっても守るんだ。
 たとえ、俺がどれだけ傷つこうとも……。

 暁人は武器を持っていない。
 だから、俺が一緒にいる時は、守ってやらないと。


 「何があっても、絶対に……っ!」



 俺は、強くなくちゃ……いけないんだ……。


 
 

 
 















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