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「ここ……ルメアが作ったの?」
南波斗がその場で立ち止まって、震えた声で聞く。
「そうだよ。…………十五年くらい前から作っていた気がするな」
今ルメアは二十六歳。
この部屋が完成したのは、一昨年くらいだ。

かなり手が込んでいる。

自分で言うのも何だが、かなり長い年月をかけて理想の部屋を作り上げることが出来た。

「え、スゴすぎんだけど……」
「色々触ってみていいぞ」
「マジ? やった」
ルメアの許可を貰った瞬間、南波斗は手を離して壁に手を触れた。

この部屋は、特定の場所を手が触れると面白い仕掛けが出てくる。

例えば、壁の一部を触れば、湖の水が止まり、全てなくなる。

などと面白い仕組みを散りばめているのだ。
当然、この部屋を造ったルメア本人はどこにどんな仕掛けがあるのか分かっている。

だから、一歩を動いていない。
ふっ、と笑みを零したルメアに、南波斗は話しかける。
「なぁなぁ! このスイッチ押していいやつ?」
「いいよ」
ニコリと優しく微笑んだルメアを見届けた南波斗は、そのスイッチを押した。
彼が押したスイッチは、天井から特別仕様の桜の花が降る、という仕掛けだ。

「っ……?」

突然降ってきた桜の花びらに驚いた南波斗は、肩を竦めた。
「っうわぁああ——!」
目を開けた瞬間に飛び込んできた桜の花びらに、南波斗は目を見開いて、両手を前に出した。
「綺麗……っ」
「だろう? 俺の術で作ったんだ。止むことのない桜の花びらだ」

「これ……ルメアが……、やっぱり凄い……」

ふわり、と優しく微笑んだ南波斗は片腕を下ろして右手を差し出した。
ヒラヒラと舞い降りる桜の花びらを、南波斗は細い指で掴もうとする。


その姿は、とてもはかなかった——。
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