上 下
69 / 90

68(道中)

しおりを挟む
酸素が薄くなっていく気がする。
南波斗は必死になって俺の背中にくっついている。

天空に近付くにつれて——当たり前だが——酸素が薄くなっていく。


『生きてるかー?』

「…………っああ! なんとかなっ!」

酸素不足に陥らないように、南波斗には一応術をかけてある。

俺がかけた特殊な術によって、南波斗はこうやって話せているし、息も出来ている。
『そうか。もうすぐで着くぞ』
「分かった!」

そうだ。

本当にもうすぐ着く。

案外早く着きそうだったから、ルメアは力を抜いて飛んでいた。
もう少しだけ南波斗には我慢してもらうことになるが、まあ大丈夫だろう。


時々ルメアが勢いよく雲を突き抜けたりすると、南波斗が「おわぁああああああああっ!!」と悲鳴を上げた。


口を閉じていないと、舌を噛むって忠告したのに。

すると、ルメアの背筋にゾクッとしたものを感じた。

『……ん?』

ゾクッとルメアの脊髄を駆け抜けた感覚を確かめようとして、目線を後方に向けるルメア。


——雲と鳥…………


何だったのだろうか、と思い、ルメアは忘れることにした。

……が、また同じような感覚がして振り返った。

「うわぁああっ!?」

——あ。

完全に南波斗の存在を忘れていた。
振り回してしまった。

『わ、悪い……南波斗』
「っああ、いや……! 俺は平気だ! それよりも、どうかしたのか?!」
『…………誰かがいる気がするんだ』

「ちょっ、おい……。やめてくれ……」

声が小さくなっていく南波斗。
——まぁ……敵ではないか……


ルメアの敵であるのなら、ルメアを見つけた時点ですかさず攻撃を仕掛けてくるはず。

けれどその攻撃をしてこないし、一定の距離を保って行動しているみたいだから、危険ではない。
——気配を感じることが出来ない。


『……誰かいるのか!』


「嘘だろお前、マジか!?」

ルメアの考える、最終手段。



——声をかける。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...