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「…………」
『大丈夫そうか?』
轟々、と南波斗の耳元で風が音を響かせる。
『まぁ大丈夫なわけないかぁ。喋れないもんな』
そう。
南波斗は今、喋れない。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
時は遡り約五分前。
大草原の一部で、身体を交えたルメアたち。
その後は、急いで身体——下半身を拭いて着衣を整えた。
「……ごめんね、ルメア」
「ん? 何が?」
「……なんか、抑えられなくて……」
「…………その言い方は、他の奴の前ではするなよ……」
色々と誤解されるだろう。
そんなことを言いながら、ルメアは自分の足元に陣を描き出した。
「何してるんだ?」
「……脚力を増強させてくれる術の布陣を描いてる」
「どうして?」
「またお前……近寄るだろ……?」
「…………なるほど。確かに」
「こうやって急に発情させるのはビックリするからな」
強めに言われて、南波斗は「あ、はは……」と声を漏らした。
「……よし、じゃあちょっと待ってて」
「はーい」
「……追いかけてくるなよ」
ジト目で訴えると、南波斗は両手を上げて頷いた。
それを見届けたルメアは、地面を強く蹴って空に飛んだ。
いつもなら、大体二百メートル程で落下するのだが、増強させたおかげなのか、五百メートルほど飛ぶことが出来た。
「うぉ、高……」
まぁここら辺なら、誰にも迷惑をかけずに変身出来るだろう。
さっきので、コツは掴んだことだし。
素早くそこを定位置として、竜の姿に変わるように意識する。
グツグツと腹の底から何かが沸騰して、一気に身体中が熱くなっていく。
——あぁ、この感じ……。成功している……
この感覚が出た瞬間に、ルメアの姿は変わったのだ。
つまり、失敗はしていない。
そしてやはり、コツを掴んだおかげで五分くらいで変身することが出来た。
『ふぅ…………』
息を吐いて、その場で翼を羽ばたかせる。
バサッと一度翼を振り下ろすだけで、突風が巻き起こった。
そのまま二、三度翼を動かしながら、ルメアは徐々に降下していく。
地面に足が着いた時、ズドォォン……と低く唸るような音を響かせた。
「カッコいい…………」
『ん?』
すぐ側で、目をキラキラさせながらルメアをじーっ、と見つめる南波斗。
「俺はどこに乗るんだ?!」
龍の姿は、人間の身体の何倍もデカいというのに、南波斗はビクともせず、興奮気味に話しかける。
『もちろん……俺の背中』
バサッと左翼を動かして、自分の背中を指す。
きっと落ちたりはしない。
「落ちない? なぁ落ちない?」
そう思った瞬間的に、南波斗が声を震わせながらルメアに質問する。
『……落ちない』
「なぁ今の間、なに?!」
けれど確かな確信はなかったため、言葉を濁らすと、腕を掴まれて前後に揺すられた。
『落ちないから、大丈夫だ』
「…………信じるからなっ!」
案外、高所恐怖症なのかも知れない。
いつも強がりな言い方ばかりする南波斗だが、やはり人間だ。
怖いものもあるのだろう。
『可愛いやつめ』
『大丈夫そうか?』
轟々、と南波斗の耳元で風が音を響かせる。
『まぁ大丈夫なわけないかぁ。喋れないもんな』
そう。
南波斗は今、喋れない。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
時は遡り約五分前。
大草原の一部で、身体を交えたルメアたち。
その後は、急いで身体——下半身を拭いて着衣を整えた。
「……ごめんね、ルメア」
「ん? 何が?」
「……なんか、抑えられなくて……」
「…………その言い方は、他の奴の前ではするなよ……」
色々と誤解されるだろう。
そんなことを言いながら、ルメアは自分の足元に陣を描き出した。
「何してるんだ?」
「……脚力を増強させてくれる術の布陣を描いてる」
「どうして?」
「またお前……近寄るだろ……?」
「…………なるほど。確かに」
「こうやって急に発情させるのはビックリするからな」
強めに言われて、南波斗は「あ、はは……」と声を漏らした。
「……よし、じゃあちょっと待ってて」
「はーい」
「……追いかけてくるなよ」
ジト目で訴えると、南波斗は両手を上げて頷いた。
それを見届けたルメアは、地面を強く蹴って空に飛んだ。
いつもなら、大体二百メートル程で落下するのだが、増強させたおかげなのか、五百メートルほど飛ぶことが出来た。
「うぉ、高……」
まぁここら辺なら、誰にも迷惑をかけずに変身出来るだろう。
さっきので、コツは掴んだことだし。
素早くそこを定位置として、竜の姿に変わるように意識する。
グツグツと腹の底から何かが沸騰して、一気に身体中が熱くなっていく。
——あぁ、この感じ……。成功している……
この感覚が出た瞬間に、ルメアの姿は変わったのだ。
つまり、失敗はしていない。
そしてやはり、コツを掴んだおかげで五分くらいで変身することが出来た。
『ふぅ…………』
息を吐いて、その場で翼を羽ばたかせる。
バサッと一度翼を振り下ろすだけで、突風が巻き起こった。
そのまま二、三度翼を動かしながら、ルメアは徐々に降下していく。
地面に足が着いた時、ズドォォン……と低く唸るような音を響かせた。
「カッコいい…………」
『ん?』
すぐ側で、目をキラキラさせながらルメアをじーっ、と見つめる南波斗。
「俺はどこに乗るんだ?!」
龍の姿は、人間の身体の何倍もデカいというのに、南波斗はビクともせず、興奮気味に話しかける。
『もちろん……俺の背中』
バサッと左翼を動かして、自分の背中を指す。
きっと落ちたりはしない。
「落ちない? なぁ落ちない?」
そう思った瞬間的に、南波斗が声を震わせながらルメアに質問する。
『……落ちない』
「なぁ今の間、なに?!」
けれど確かな確信はなかったため、言葉を濁らすと、腕を掴まれて前後に揺すられた。
『落ちないから、大丈夫だ』
「…………信じるからなっ!」
案外、高所恐怖症なのかも知れない。
いつも強がりな言い方ばかりする南波斗だが、やはり人間だ。
怖いものもあるのだろう。
『可愛いやつめ』
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