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「っ、父上…………ッ!!!」


ガバッと起き上がったルメアは、冷や汗が止まらない。
はぁはぁ、と肩で息をする。

悪夢を見ていたかのようになってしまった。

寝巻きの服が、冷や汗でびっしょりと濡れている。
——気持ち悪い……
早く着替えたい。

「……っ、あれ……?」

今更だが、横に寝ているはずの南波斗がいなかった。
「南波斗……?」
少し前にも、こういうことがあった気がする。
ゾワっとした感覚が、ルメアを支配する。

南波斗が居ないことで、軽い恐怖を感じたルメアは、よろよろと立ち上がり部屋を彷徨う。

リビングにはいない。

キッチンにもいなかった。


「……ッ、南波斗……」

傍にいないと、こんなにも不安になるのか、と改めて思い知る。
『重い』と言われるかも知れない。

けれど、それほどまでに南波斗が好きなのだ。

足がすくんでしまって、その場にしゃがみこんでしまった。

——どこにいるんだ……南波斗……


無意識に、空中に腕を伸ばした時——。


「ルメア!?」


——その手を、南波斗が掴んだ。


「南波、斗……」


「何してんの?! もー、びっくりするじゃん!」
なぜか怒られるが、今はそんなことどうだっていい。
ルメアは、南波斗の手を引いて、自分に引き寄せる。

「うお……っ!?」

倒れ込んだ南波斗の身体を、しっかりと受け止めて抱きしめる。
「ルメア? どうしたの?」
すると、耳元で南波斗がクスクスと笑う。


「勝手に、いなくならないで……くれ……ッ」


「風呂行ってただけだよー? 本当に可愛いなぁ、ルメアは……」
近くにいけば、確かに南波斗の髪が濡れている。

ほのかに石鹸のいい匂いもする。

南波斗の背中に回す腕に力を入れると、それに応えるように南波斗も力を入れてくれた。

「……ってか、ルメア汗かいたの?」

「は……そうだった…………っ。すまん、今すぐ離れる……ッ!」
南波斗を見たら、完全に忘れていた。


今、汗で全身びしゃびしゃだった。


慌てて南波斗から離れようとする。
が、それは失敗に終わった。

「なんで? 気にならないよ、俺」
「いや……俺が気になるというか……」


「ルメアが好きだから、気にならない」


男前なセリフを言われて、朝っぱらからルメアの頬は赤くなる。

「……ありがと……ぅ」

「あはは。可愛い」


またぎゅっ、と抱きしめられ、もう逃げられなくなった。
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