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変な輩__やから__#に絡まれたが、難なくそれを躱すことが出来た。
天空や地上でも上位三位に食い込む実力を持つルメアに、ああやって勝負を挑むことがバカなのだ。
実力で勝負なんかすれば、必ずルメアが勝つというのに。
地上でも多少はルメアの名や、竜王のことは知られているだろう。
だって南波斗が『竜王』を知っていたんだから。
——むぅ……アイツらは知らないのか……
あれほど簡単に攻撃を躱されれば、少しは疑問に思い、ルメアから距離を取るはずだ。
が、取らなかった。
きっとルメアのこと——竜王を知らないのだろう。
「バカはどこにでもいるんだな……」
眉間を抑えながら、息を吐く。
けれど、アイツらのおかげで、ルメアは今の自分の力の戻り具合が分かった。
完全に元の力に戻るまで、あと数ヶ月、といった所だ。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に南波斗の家に着いた。
「ただいまー……?」
ガチャッと玄関を開けると、ぶわぁっ、と強い風がルメアを直撃した。
「ぅぐ……ッ!?」
強風に押されて、ルメアの身体は少し後退する。
「あ、おかえり。ルメア」
中から少し遅れて返事が帰ってくる。
「ただいま……。何しているんだ?」
「ついでだから、家全部掃除しようと思ってね」
「ふぅん……」
「もう終わったから、最後に〈瞬陣の突風〉を使ったんだよ」
瞬陣の突風——。
術者の力を根源として、凄まじいほどの突風を巻き起こさせる術。
戦場でもよく使われる有名な術だった。
強力にすればするほど、その分の対価として力を消費する。
危険を伴う術でもある瞬陣の突風は、ルメアも使えるが、あまり好んでは使わない。
そんな術。
「身体は大丈夫なのか?」
「え? 全然平気だよ。……心配してくれてありがとう、ルメア」
わしゃわしゃとルメアの髪の毛を乱暴に撫でる南波斗。
一気にボサボサになったが、「ハハッ。可愛い」と南波斗に笑われ、ルメアは赤くなった。
「……せっかく風呂、入ったのに……」
「また入ればいいじゃん。今度は一緒に……ね?」
妖艶に笑って、ルメアの耳に顔を近付け、低音ボイスで囁く。
ゾクッとした感覚がルメアの背中を走る。
「ンっ……」
腰にズクンとしたものが落ち、少しだけ足が震えた。
「震えちゃって……期待した?」
「ン…………ッ! してな……ぃい……ッ!?」
否定しようとした瞬間、耳を舐められる。
ふいに襲った不思議な感覚に、ルメアの声が上ずる。
「くっ……んっ……、舐めん…………なぁ……ッ!」
耳を舐められるなんて、初めてだ。
耳朶をねっとり舐め上げられ、ビクビクゥ、と身体が震える。
「んっ……ふぁ……あ……っ、あっ、あ……」
「ん……気持ちいい?」
耳を舐めながら、南波斗が聞く。
「わか……んな……ぃ…………っ!」
南波斗は時々、ぢゅっ、と耳たぶを吸い上げる。
まるで、そこにキスマークを付けるかの強さで南波斗は吸い付く。
満足したのか、南波斗は最後に耳たぶにちゅっ、とキスをして離れていった。
「っ……お前ぇ……!」
ガクン、と力が抜けて床に座り込む。
涙目になって、南波斗を睨み付けるルメア。
けれどその睨みは、南波斗には効果はなかった。
「ふふっ。ほら、立ってルメア」
手を伸ばされて、うー、と唸りながらもルメアはその手を掴んだ。
「……ベッドも新しくなったしさ」
唐突にベッドの話へ持っていく南波斗。
首を傾げたルメアを見て、南波斗は笑う。
「セックス、する?」
お茶でも飲んでいたら、全部吹き出していただろう。
そしてルメアは、的確なツッコみを入れる。
「するわけねぇだろぉがっ!!!」
断られるのを分かって、南波斗は聞いたのだが、予想通りの答えで南波斗は大爆笑した。
「かわいいなぁ……っ、ホントッ!」
ぎゅーっ、と抱き着かれながらも、ルメアはブツブツと文句を言い続けていた。
「あー、好きだよ……ルメアぁ!」
「うるさいっ! 俺も好きだよ!」
どういう感情で言っているのか、ルメア本人も分からなかった。
天空や地上でも上位三位に食い込む実力を持つルメアに、ああやって勝負を挑むことがバカなのだ。
実力で勝負なんかすれば、必ずルメアが勝つというのに。
地上でも多少はルメアの名や、竜王のことは知られているだろう。
だって南波斗が『竜王』を知っていたんだから。
——むぅ……アイツらは知らないのか……
あれほど簡単に攻撃を躱されれば、少しは疑問に思い、ルメアから距離を取るはずだ。
が、取らなかった。
きっとルメアのこと——竜王を知らないのだろう。
「バカはどこにでもいるんだな……」
眉間を抑えながら、息を吐く。
けれど、アイツらのおかげで、ルメアは今の自分の力の戻り具合が分かった。
完全に元の力に戻るまで、あと数ヶ月、といった所だ。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に南波斗の家に着いた。
「ただいまー……?」
ガチャッと玄関を開けると、ぶわぁっ、と強い風がルメアを直撃した。
「ぅぐ……ッ!?」
強風に押されて、ルメアの身体は少し後退する。
「あ、おかえり。ルメア」
中から少し遅れて返事が帰ってくる。
「ただいま……。何しているんだ?」
「ついでだから、家全部掃除しようと思ってね」
「ふぅん……」
「もう終わったから、最後に〈瞬陣の突風〉を使ったんだよ」
瞬陣の突風——。
術者の力を根源として、凄まじいほどの突風を巻き起こさせる術。
戦場でもよく使われる有名な術だった。
強力にすればするほど、その分の対価として力を消費する。
危険を伴う術でもある瞬陣の突風は、ルメアも使えるが、あまり好んでは使わない。
そんな術。
「身体は大丈夫なのか?」
「え? 全然平気だよ。……心配してくれてありがとう、ルメア」
わしゃわしゃとルメアの髪の毛を乱暴に撫でる南波斗。
一気にボサボサになったが、「ハハッ。可愛い」と南波斗に笑われ、ルメアは赤くなった。
「……せっかく風呂、入ったのに……」
「また入ればいいじゃん。今度は一緒に……ね?」
妖艶に笑って、ルメアの耳に顔を近付け、低音ボイスで囁く。
ゾクッとした感覚がルメアの背中を走る。
「ンっ……」
腰にズクンとしたものが落ち、少しだけ足が震えた。
「震えちゃって……期待した?」
「ン…………ッ! してな……ぃい……ッ!?」
否定しようとした瞬間、耳を舐められる。
ふいに襲った不思議な感覚に、ルメアの声が上ずる。
「くっ……んっ……、舐めん…………なぁ……ッ!」
耳を舐められるなんて、初めてだ。
耳朶をねっとり舐め上げられ、ビクビクゥ、と身体が震える。
「んっ……ふぁ……あ……っ、あっ、あ……」
「ん……気持ちいい?」
耳を舐めながら、南波斗が聞く。
「わか……んな……ぃ…………っ!」
南波斗は時々、ぢゅっ、と耳たぶを吸い上げる。
まるで、そこにキスマークを付けるかの強さで南波斗は吸い付く。
満足したのか、南波斗は最後に耳たぶにちゅっ、とキスをして離れていった。
「っ……お前ぇ……!」
ガクン、と力が抜けて床に座り込む。
涙目になって、南波斗を睨み付けるルメア。
けれどその睨みは、南波斗には効果はなかった。
「ふふっ。ほら、立ってルメア」
手を伸ばされて、うー、と唸りながらもルメアはその手を掴んだ。
「……ベッドも新しくなったしさ」
唐突にベッドの話へ持っていく南波斗。
首を傾げたルメアを見て、南波斗は笑う。
「セックス、する?」
お茶でも飲んでいたら、全部吹き出していただろう。
そしてルメアは、的確なツッコみを入れる。
「するわけねぇだろぉがっ!!!」
断られるのを分かって、南波斗は聞いたのだが、予想通りの答えで南波斗は大爆笑した。
「かわいいなぁ……っ、ホントッ!」
ぎゅーっ、と抱き着かれながらも、ルメアはブツブツと文句を言い続けていた。
「あー、好きだよ……ルメアぁ!」
「うるさいっ! 俺も好きだよ!」
どういう感情で言っているのか、ルメア本人も分からなかった。
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