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魔法で作った焔の鳥ファイアバード ——ルーのおかげで、何とか森に落ちることが出来た竜王だった。


全ての『魔族』で一番の実力と強さを持つ竜王 ——〈ルメア・ルイ・レヴェナント〉は、落ちた衝撃で気を失っていた。

頭を強く打ち付けたようだった。


✩.*˚✩.*˚✩.*˚


森に落ちる約一分前、なぜか急に俺の身体が光り出した。
なぜ光ったかは俺自信、分からない。

「眩し…………っ!」

目を強く瞑っても効果はなく、強い光は絶えず輝き続けている。
「ルー! 俺から離れるなよ!」
俺の肩に乗っているルーに声をかける。すると、ルーはより一層俺の身体に、焔の尾を絡ませてきた。
もう目の前には、森どもの木々が迫ってきている。

強く目を瞑り、衝撃に耐える。


「ぐ…………ぅっ……」


バキバキ、と木の枝が折れていく。
俺の背中が悲鳴を上げる。
ピリッとした強い痛みを身体中に感じて、俺は歯を食いしばる。
「っ…………うぐ……」
——頬が切れる感じがする。

痛い。

 ——うん。ただ痛い。

その鈍い痛みに耐え続けていると、今度は今までよりずっと強い痛みが、俺を襲った。



「 ——っ!!??」



——呼吸が止まる。

肺が押しつぶされて、息が出来なくなる。
「っ、!!」
苦しくて涙が溜まる。

……こんな姿、四龍たちに見られなくて良かった。

本当に『竜王』と名乗れなくなる。


「っ…………ぁ……………………」


意識が朦朧もうろうとしてくる。

この姿になるのは、何百年ぶりだから、耐性がまだ着いていない。
身体に傷が付いて、血が流れ出る。

俺は自分で回復魔法を使おうとするが、身体の自由が効かない上に、呼吸困難だ。

術が使えない。


「……………………ぇ……」


誰か、助けてくれ。

息が出来なくて、とても苦しい。
竜王が、とても情けない。

醜態しゅうたいを晒しすぎだ。



こんなもの、俺の信じる『竜王』じゃない。

あぁ。起きなければ。
たとえ呼吸が出来なくても、俺は、竜王として立ち上がらなければ。

頭では分かっているのに、身体が言うことを聞いてくれない。

……限界、だ。


俺は、意識を、手放してしまった。


✩.*˚✩.*˚✩.*˚


金色の明るい髪に、白い肌。
全身が細く、ピッタリとした服からはその細さが分かる。
眠っているのだろうか。

——かわいい……

薄紫色の髪に、青い瞳の青年 ——南波斗なはとはゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

い、いやいや。

相手は、目の前にいる奴は、『男』だ。
誰がどう見ても、男だ。

……ちょっと待て。
もしかして俺は、……ほ、ホモ……?

今まで出会ってきた女たちより、数十倍かわいいし、カッコいい。


——なんか、エロいし。

俺は倒れている男に近づいて、しゃがむ。
「っ、怪我してる……?」
近付いて分かることは、彼がものすごい怪我をしていることだけだった。
「ち、ち、血が……」
俺は彼の身体に両手をかざして、回復魔法を唱える。


「 ——光よ、神よ。女神〈クリスタ〉の導きにより、彼の者の傷を癒し給え」

ぽうぽう、と暖かい光が南波斗の両手に集まる。
その光は、男の傷ついた身体を包み込んだ。


「ヒール」


暖かい光は、一度彼の身体を包み込むと、次の瞬間には男の身体に溶け込んでいた。
すると、みるみるうちに傷が塞がっていき、出血も止まった。

「これで、いいか。でも応急処置だからな」

これで彼が死ぬことはないだろう。
出血多量で死亡、なんて扱いにはならない。

「……放置することは出来ないから……」
俺は顎に手を置いて考える。

そして、一つの考えにたどり着いた。



「——家に連れていこう」



俺の家はさほど遠くない。
ただ、街の中にはないってだけだ。
この草原の一角、川のすぐ近くに小屋が立っている。

——それが俺の家。

「よいしょ……っ」

彼の身体をおぶさってみると、驚くほど軽かった。
「肉食ってんのか、こいつ……」
すぐに山を降りたくて、俺は普段使わない瞬間移動テレポートを発動させた。


✩.*˚✩.*˚✩.*˚


相変わらず古くさい家に着いて、玄関を足でこじ開ける。
「っげほ、ゴホッ……」
たった一週間程度、家を開けただけなのに、こんなにも埃が出るなんて、思ってもみなかった。


いつも使っているお気に入りのベッドに、青年を寝かせておく。

「ゆっくりお休み」

ふわふわの頭を撫でてやると、青年は嬉しそうに頬を緩めた。

「っ」

その、行動は、反則だよ……っ。


——やはり俺は、ホモなんだろうか。

今すぐ、その唇にキスをしたい。そんなことを考えてしまうのだから……。


まぁ、ヤバい奴だろうな、俺は。










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