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第十七話 討伐の証

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 彼女は、少年とマリの二人と、握手をした後、二人にも自己紹介を求めてきた。
彼は、さっきので十分だと判断されたのか、彼女は、マリの方に手を向ける。
「私?」と言ったような顔で、一旦彼をを見た後、元気よく自己紹介を始めた。

「私の名前は、
クイーンズ・ラリファット・マリエルです。マリ、と呼んでください。
私は魔法使いで、攻撃魔法は全属性使えます。よろしくお願いしますね。」

 端的でありながら、これからクエストを受ける仲間としての、
最低限の情報は、発信させた紹介。さらに、微笑みを忘れない。
さすが、マリである。

「よろしくな、マリ。おぬしも、よろしく頼むぞ。
某(それがし)は、サリネと呼んでくれ。」

 サリフィネンスから、三文字とって、サリネである。
そんなことを考えていると、彼の顔を見て、キョトンとした。

「そういえば、おぬしは何と呼べばよい? 名前がないのであろう?」

 名前が無い、というのは怪しまれる以前に、彼は不便であることを思い出した。
彼は、16歳であるので、サリネの方がやや年上と見て取れる。
なのに、マリと同様に「先輩」と呼ぶのも、いささか不自然だ。
マリも「うーん。」と首をひねった。
マリには、昔の名前を彼が思い出せない事は、伝わっているからだ。

「まぁ、俺に付いてきてくれるなら、とりあえずリーダーでいいよ。」
一応、ギルドに申請したパーティーでは、彼がリーダーとなっている。

「リーダーか......。うむ、異論はない。リーダーで、よかろう。」
パーティーメンバーのリーダーとして、サリネは彼を認めてくれたそうだ。

 マリが、「リーダー」と、練習するように小さく連呼していたので、
彼が、わざわざ呼び方を変える必要は無い事を伝えると、
「はい。リーダー!」と、返事した......。

「それで?」
彼は、サリネに話を持ち掛けた。正確には、サリネの方からである。

「あぁ、まだ、言ってなかった。
某が受けようとしていたのは、これなのだ。」

 一枚の依頼書を見せる。
内容は、ゴブリンの討伐というもの。
彼が、実際に見たくないランキングで、
思いつく魔物の中、一位に入賞している魔物だ。
ちなみに、もう見たくないランキングは、当然、スライムだ。

 この世界で、ゴブリンを倒すことは、普通なのかと彼は思い、
マリを見ると、顔を引きつらしていた。
やはり、女子に不人気である事は間違いないと、確認を完了させる。

「な、なんで、これを?」
マリが、詰まらせたような声で、尋ねた。
その言葉には、できれば諦めてほしいという、マリの願いが、実は含まれている。

「うむ、この町に来る途中に、ゴブリンの集団に会ってな。
かなりの量を倒したから、せっかく、耳だけ持ってきたのに、
依頼の引き受け申請がされていないと言われて、
我が、申請しようとしたのに、ランク外だと言われたような流れでござる。」

 淡々と経緯を話すサリネは、パンパンに中身が詰まった袋を、彼の前に出した。
話の流れ的に、中身は、容易に察しがつく。
まるで、中がもう見えたかのように、マリはヒィッ、と声を上げる。

「多分、百体程度は、始末したから、二百はあると思うぞ。」

 そう言うと、マリは、さらに顔を歪めた。
だが、すぐに両頬を叩いて、表情をいつもの様にすると、
マリは明るく、ポジティブに振舞った。

「で、でも、ゴブリンを百匹も倒すんなんて、並大抵の強さじゃないですよ!
ここは、付いてきてもらうべきなのでは?」

 マリが、彼に最終的な確認を求める。もちろん、答えはイエスとなった。
それよりも、彼はゴブリンの数え方において、二人に違いがある事に着目した。
それは、親などの教育か、専門学的な考え方の違いか、それとも......。

「でも、依頼はもう申請したんですし、
ソレをギルドに出せば良いんじゃないですか?」
彼は、目の前の袋を、粗末な事に指を差して言った。

「い、いやぁ、これじゃ金が足りないかのう......。」

 彼の目が節穴でなければ、
初めての戸惑った表情、あるいは、焦りの表情である。
しかし、悪意を感じさせない秘匿をしているような気がしていた。

「お金なら、僕が貸しますよ。」とカマかけを少しは試みるものの、
僅かな警戒心を読み取られないためにも、彼は言わないでおいた。
「一回、仲間としてクエストに行くだけの人だ。」と、自分に、
言い聞かせた事も、理由の一つではある。

 一通り、話が終わると、席を立って、ギルドを出た。
昨日よりも道の悪い中、ガタガタと揺れる馬車が走っている
ゴブリンの居る場所は、昨日の幽霊館よりも少し遠い所にある森。
そして、マリは、昨日と同様に、ぐったりとしていた。
おそらく、【乗り物酔い耐性】という、スキルは無いとみた。

 この森は、魔物だけが放浪している野性的な自然ではなく、
エルフという種族が居るアイル村で、自然と上手く調和しているそうだ。
眩しい光を丁度良く遮る、木々の中を、
少しだけ舗装されている道を歩いて、森の中心部へと向かった。
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