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第十五話 スキルの仕組み

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 マリが乗っ取られる事件が一件落着した後、二人は霊の浄化に努めた。
浄化をしながら、気晴らしに、マリが話しかけてくる。

「何で、先輩はスキルが簡単に増えるんですかね?」

 それは、異世界に来てから一年経つが、未だに判明しない謎だった。
更に、その状況に合わせた、都合の良いスキルが現れる。

「スキルが増える条件とか無いのか?」
「そうですね......。魔物と戦っていく内に身に付いていく、
としか習いませんでしたから」
やはり、と言うべきか、規則性は見つかっていないそうだ。

「先輩の故郷でも、この世界をモチーフにした様な、
話はあったんですよね。何か、心当たり無いですか?」

 彼とて、そこまで異世界に詳しかったわけではない。
だが、この世界はRPG的な要素もあるので、
ゲームとして考える事も可能であった。
彼は、スキル修得のあるあるを思い返す。

(たしか、スキルをゲットするには、お金が必要だったり、
同じキャラを合成したり、レベルで決まっていたり......)

「あっ! スキルポイントだ!」
懐かしい過去では、ありながらも、彼が、一番納得できる結論が出た。

「スキルポイント?」
マリは、首をかしげて、疑問顔をする。彼は頷き、そのまま話を続けた。

「あぁ、レベルが上がったら、もらえるポイントなんだけど、
おそらく、この世界だと、魔物を倒したら手に入るんだ」

 マリが、大きく口を開けて、納得した様子。
それの証明ごとく、マリが話を付け加えた。

「だから、スライムを倒し続けた、先輩にスキルポイントが貯まって......」

 その言葉で、スキルはポイント制説は完成となる。
マリが洞窟に来てから、攻撃魔法を全属性揃えれたのも、これで合点がつく。

「何か、スッキリしたな」

 クイズが解けた時の様な達成感とともに、彼の魔法陣が大きく現れる。
調子がでてきたようだ。満足気な表情で、除霊を進める。

 除霊が完全に終わった後、二人は部屋を出る。
館内を歩き回ったが、依頼書に書いてあるような異変は無かった。
依頼は、しっかりと解決できたというわけだ。
だが、霊の未練とかは解決しようという、意思すらなかった。

 ギルドに報告を行ったが、確認をするために、
数日かかる、という事を、二人は聞かされた。
でも、金なら十分あるので、なんら問題は無い。

「あの、先輩?」

 マリが、宿屋へ戻る町道の中、
寒そうに手をこすりながら、彼を呼びかける。
冷えた夜風が強く風立っていた。

「今日は部屋、どうしますか?」

 また、二人部屋を取るのか、という事を聞いている。
「昨日、嫌がっていたので、今日は一人部屋二つ取るべきだろうか?」と思案する。

「私は、どっちでも良いですけど......」

 彼としての意外性をついた、どちらでも良い、というマリの口述。
真意は、選択を任せるといったところである。
だが、彼はそこで考えをやめなかった。

(普段の俺なら、節約したいから、二人部屋を選んでしまうだろう。
だが、これは試されているようなものであり、
マリの頭の中には、すでに答えがある。
したがって、昨日言っていた事を踏まえるため......)
心配症である彼は、無駄なところで頭の回転が早い。


「一人部屋を二つ!」

 つい、思い切ってしまった彼は、大きな声を出して受付に言ってしまった。
さっきの思考のおかげで、俺の頭は、現在、冴えている。
これで、誤答であるはずがない。といった、自信が彼にはあった。

「そ、そうですよね......。それが一番だと思います......」

 やはり正解だった、と少年はドヤ顔をする。
マリがどこか残念そうに、ショボンとしていた様子を見て、
完全なる勝利である、と痛感する。
彼が初めて、彼一人が参加の、頭脳戦は幕を閉じて、二人は各部屋に戻った。

 そして、ここは少年の部屋。
彼は、ステータスをベットの上で、寝っ転がりながら、眺めていた。
スライムを倒し続けたからこそ、のステータスが彼の目の前にある。

「はぁー......。本当に、異世界だなー」

 改めて、異世界という実感をした後、
ステータスを消して、白い天井を何となく見つめる。
数分程度で、彼の意識は遠のいていった。



 ひんやりとした空気が少年の顔を滑り、彼は目を覚ました。
布団をかけずに寝てしまったようで、朝起きの第一声が「さむー」である。
ベットから降りて、両手をこすりながら、大きなクシャミをした。

 支度を素早く済ませて、部屋を出る。マリの部屋は隣だ。
早朝であることもあり、ノックせずにドアを開ける。
彼の部屋と左右対称であり、興味をかけたてられながら、部屋の短い通路を渡る。

「おい、マリ。起きてるか?」

 部屋のランプは、つけっぱなしであり、少年と同様に、寝落ちしたようだ。
彼は己の事を置いといて、マリに対して呆れながらも、
毛布にくるまったマリを起こそうと、毛布の橋をギュッと握る。

「起きろ!」

 その掛け声とともに、毛布が引っ張り上げられた。
それでも、マリの反応が無い。「爆睡かよ」と、クスッと笑った。
彼は、直接、マリの肩を横に揺らす。

「マ、マリ?」

 それでも、反応が無かった。
よく観察すると、呼吸をしていない事が分かる。
彼の顔は、血の気が無くなり、一気に青ざめた......
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