暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃

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暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

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「あーずーさーー、見ぃーつけたぁー。俺から逃げられると思うなんてウン百億年はえーんだよ」

「ひっ!そ、惣くん・・・確か今日、教授のとこに行くはずじゃあ」

午後の授業が教授の都合により休講になった梓沙は一人、お気に入りのうさぎカフェへと足を運んでいた。

「そんなのとっくに終わってたんだよ!ったく、お前探してたら無駄に煩い女どもに囲まれたじゃねーか」

悪態をつきながら隣にドカッと座り、梓沙の膝の上で行儀よく寝ているお気に入りのを横からかっ攫うように奪い取られた。

「ちょっと勝手に」

「あ?お前のじゃねーんだからいいだろ、なぁー♡お前クリクリの目しやがってかわいいなー。どっかの誰かさんとは大違いだなー♡」

「はぁ・・・」

梓沙は程よい重みが無くなった膝にもの悲しくなりながら、隣で楽しそうに兎と戯れる男に気づかれぬよう小さく溜息を吐く。


吉野梓沙よしのあずさは、同じ大学に通う二つ上の兄と二人暮しをしている大学一年生。梓沙が受験を控えた年、父に海外勤務の辞令が出てしまい母は着いて行くことが決まっていたが、兄は大学があるため残ることに。少々ブラコン気味の梓沙は兄が残るならということで自分も残ることにし、兄と協力し二人で生活をすることとなる・・・・・・はずだった。


「梓沙ー、今日の夕めし、何ー?」

「お兄ちゃんがチキン南蛮食べたいって言うからそれにする」

「まーた慎太のリクエストかよ、たまには俺の好きなのも作れよなー。今からでも遅くねーからエビフライにしようぜ♪」

「いやいや、なんで惣くんのリクエスト作んなきゃいけないのよ。そんなに食べたいなら周りにはべらかしてる女の子に頼んでください・・・ってか自分の家、帰んなよ」

「俺んから通うより、お前らんから行った方が大学近いって何回も言ってるだろ」


梓沙、兄の慎太と同じ大学へ通う菅谷惣一すがたにそういちは悪びれることなく当たり前のような態度に梓沙は心の中で盛大な溜息を吐いた。

「大体、誰のおかげで慎太アニキと同じ大学受かったと思ってんだ?ん?梓沙さんのカラカラと鳴るスッカラカンの頭、誰が知識詰め込んでやったと思ってんだ?」

「・・・・・・惣くんのおかげです」

したり顔で見下すような表情のイケメンに返す言葉が見つからない梓沙は、情けない気持ちを溢れさせながら重い腰を上げ、カフェを出ることにした。


惣一との出会いは梓沙が年長、慎太と惣一が小学二年生の頃まで遡る。小学生の時、慎太と惣一が同じクラスになった事がきっかけで二人は意気投合、家にも頻繁に遊びに来るようになった。その頃に梓沙とも顔見知りとなり、二人が小学校卒業するまで梓沙を含め遊ぶことも多かった。

梓沙が惣一への第一印象は綺麗な男の子。クリクリの人懐っこい二重に色素の薄いブラウンの瞳、柔らかそうなサラサラなツーブロックのヘアスタイル。慎太も負けず劣らずのルックスを持っているが、幼心に初めて兄以外でかっこいいと思った男の子だった。気づけば梓沙は惣一に対し、淡い恋心を抱くようになっていた。

彼らが成長するにつれ絶対と言っていい程、周りの異性は振り向き恍惚とした表情で彼らに視線を投げた。梓沙はそんな二人を誇らしく思うと共に、そこで惣一に対して“絶対に手に入らない存在”と痛感した。

梓沙自身、いくら惣一に恋心を抱いても自分が隣にいる想像は浮かばず、虚しい気持ちからこの初恋に終止符を打つことを決めた。梓沙が高校に入り、新しい恋をしようと友人たちに出会いの場を求めるも何故か兄と惣一に気付かれ邪魔をされ彼氏はおろか、男友だちも出来ないまま高校を卒業する羽目になってしまった。


「はぁ・・・昔は美少年で天使みたいだったのに、って痛いっ!痛いっ」

なるべく聞こえないよう小さく呟いたつもりが惣一に聞こえたらしく頬を抓られた。

「“だった”じゃなくて今もだよ!」

幼い頃の惣一は線も細く一見、“美少女”と間違えられるくらいの容姿を持っていた。しかし、中学に上がる頃には身長もぐっと伸び、運動もしていたのも加わると体つきは、日に日に男性らしさが目立つようになっていった。美少年が男らしさを身につけるとこんなにまで妖艶な姿になるのかと思うくらい、色香を放ち言葉を失なう程だった。梓沙が中学生の頃に見た高校生の惣一は、常にいつも違う綺麗な女性と歩く姿を何度か目にするようになっていた。

「おい、そろそろ帰るぞ」

「え、ちょっと、引っ張んないで、って、あ・・・」

梓沙の腕を掴み、もう片方の手で梓沙の鞄を持ち二人は店を出た。初秋を過ぎたとはいえ、まだ日差しが強く外に出るや否や梓沙は眩しさで目を細めた。

「ほら、早く歩け」

惣一に指を絡めるように手を繋がれ心拍数が上がる。掌に惣一の体温が伝わり、梓沙は紅くなる頬を気づかれないように俯いた。


「惣?」

二人が歩いていると何処からか女性の声で惣一を呼ぶ声がした。声の主へ視線を向けるとそこには髪の長い上品な顔立ちの女性が此方・・・というより惣一に視線を向けていた。梓沙は繋いでいる手の存在を思い出し、瞬時に彼の手から離れた。その一瞬だが、惣一が梓沙を睨みつけたことは彼女自身全く気付いていなかった。


「久しぶりね、元気してた?」

「あぁ、まぁそれなりにね。そっちは相変わらず変わらないな」

の笑顔を顔一杯に貼りつける惣一に何となく靄つく心内が芽生えるも、二人の神々しい程までの佇まいに梓沙は引け目を感じ、無意識に一歩後ろに下がっていた。

「えっと、そちらは?」

やっとのことで彼女の視線が梓沙に向けられるが、正直好意的には感じ取れなかった。

「慎太・・・吉野慎太の妹で俺の大学の後輩」

「へぇ、吉野くんの妹さんなんだ。はじめまして、私、福島伊奈です。惣と吉野くんとは高校の同級生で・・・惣の元カノです♡」

(・・・でしょうね)

あんな親し気な様子は・・・だろうな、と思いながら梓沙ももう一度自分の口から自己紹介をした。

「吉野くんとは仲良いのは知ってたけど・・・妹さんとも仲良かったのね」

「まぁ、こいつとも付き合い長いし、みたいなもんなんだ」

妹・・・彼の口から何度となく放たれてきたその言葉を聞くたび、梓沙の恋心を深く奈落の底へと堕とさせてきた。それでも、気まずくなりたくない想いから我慢してきたが、やはり彼に関係した女性が傍にいながらの発言は正直心を抉った。

「ちょっと、悪い」

丁度その時、タイミングが良いのか悪いのか惣一のスマホの着信音が鳴り、会話をするため少し離れた場所で相手と話し出しだし、必然的に伊奈と二人っきりになってしまった。

しばしの沈黙の後、口火を切ったのは彼女の方からだった。

「えっと、梓沙ちゃんは惣と仲いいのね、惣のあんな素の表情、初めて見たわ。彼、かっこいいからいくら扱いとは言え、一緒にいると周りからのやっかみもあるんじゃない?」

「そうですね・・・でも伊奈さんのように綺麗な人でない限り、私みたいのはみんなの眼中には入らないですよ」

笑いながら自虐するの言葉にダメージを与えられ、やるせなさで心が折れそうになっていた。

「ふーん・・・私と彼ね、そんなに長くなかったのよ。惣って執着心がないから“去るもの追わず”って感じで。だから、とっかえひっかえって感じ・・・私の時もそうだった。丁度、彼が前の彼女と別れたその隙に告白したら付き合うことになったんだけど、なんか彼の心はいつも“無”って感じだったわ。身体を重ねてる時なんか私を通して誰かを見ているようだったし。あの頃は私も若かったからそれが耐えれなくて別れたんだけど」

伊奈は電話中の惣一がまだ戻ってこないのを確認するように彼へ視線を一瞥した。

「正直、惣にとっては彼女とセフレの違いなんてなかったのかもしれないわね・・・身体だけの関係。まぁ今ならそれでもいいからもう一度、になってもいいけどね、梓沙ちゃんはどう思う?」

伊奈の生々しい内容に、彼氏もいたことのない梓沙には耳を覆いたくなるような恥ずかしく苦痛な話だった。あれだけいつも違う女性を連れて歩いていたのだからそういう関係になってることも理解はしてるつもりだった。

そんな中でも一番長く付き合いのある自分には全く欲情しない惣一に、女としての価値がないことを再び突きつけられたような気分だった。

「私にとって惣くんは、兄のような存在なのでそういったことはわかりません。惣くんに好きな人がいようが何しようが私には関係ないので」

「そっ。なら、折角再会できたし私、惣ともう少し話したいんだけど・・・二人っきりになってもいいかしら?」

「どーぞ。惣くんには“用事があるから先に帰った”とでも伝えてください。では、私はここで失礼します」

梓沙は伊奈にニコリと微笑み、惣一が此方に視線を向けてないことを確認すると伊奈に小さく頭を下げ踵を返しそのまま彼らの元から離れた。


梓沙は、早くその場から離れようと足早に歩を進める。心臓が口から飛び出してきそうなほどの大きな心拍が身体中に激しく鳴り響いていた。

(なんで、私がこんな想いしなきゃいけないのよ)

梓沙は帰宅すべく、すぐさま電車に乗ると苛立ちと虚しさが心を乱し、眼を紅く潤ませた。手すりに摑まりながら自動扉のガラス窓から流れる風景を只々無心の状態で眺めていた。





☆☆☆
帰宅した梓沙は、急いで夕食の準備を始めた。兄に心配かけるようなことはしたくない、そんな想いから慎太の前では何事もなく接しようと何かに取り憑かれたようにチキン南蛮用の鶏肉を揚げていた。


(あ・・・私いつもの癖で惣くんの分まで作っちゃった)

気が付くと三人分の食事の準備をしてしまったことに気づき、梓沙は情けない笑みを浮かべた。今頃、彼はあの綺麗な元カノと・・・そんな複雑な想いをしていると玄関扉から鍵の開く音が聞こえ、ドス、ドス、と地響きのように足音を強く鳴らしながら梓沙がいるキッチンへと向かって来た。

「お兄ちゃん、おかえり。早かっ」

閉めていたリビングのドアが勢いよく開けられると、非常に不機嫌な表情の惣一がキッチンにいる梓沙の元へと迫ってきた、かと思うと腕を強く掴まれ引き寄せられる。

「痛っ・・・な、何っ?!ちょっと近「お前、何勝手に帰ってんだよっ!電話しても出ねーし、ふざけんな!」

いきなり入って来た惣一に文句を浴びせられ、初めこそ目をぱちぱちとし動揺を見せていたが、段々と苛立ちが募り彼の掴まえている手を振り解いた。

「なんでそんなに怒られなきゃいけないのよっ!こっちは気利かせてあげたのに!!」

「はっ?!ふざけんな!ガキが変な気回しやがって!」

「ガ・・・二つしか違わないしっ!!」

「中身が“ガキ”だって言ってんだよっ!!おりしてやってるこっちの身にもなれっ」

「おもっ・・・どーせ、惣くんの周りにいる大人な女の子みたいじゃないですよーだ!」

互いの言動にヒートアップしていると「ただいま~」とその場の空気とは真逆な声色を出しながら兄の慎太が帰って来た。

「それに、惣くんに“お守り”してなんて誰も頼んでないし!もう私のことはほっといて!!」

「お、おいっお前ら何、喧嘩し・・・ってあずっ、どこ行「部屋っ!!ご飯出来てるから勝手に食べてっ!!!」

「梓沙っ!まだ話は終わっ・・・」

梓沙は惣一の言葉を最後まで聞くことなく、そのままリビングを飛び出し部屋の鍵を閉めベッドにダイブし枕に顔を押し込めた。

(何なのよっ!!どうせ“ガキ”ですよ!妹としか扱ってもらえませんよ!!もう嫌だっ!!惣くんなんて大嫌いだ!あんなヤリチン、地獄に堕ちちゃえ!!)

興奮気味になった感情を逃すように両足をバタつかせていると、ローテーブルに置いてあったスマホからメッセージが届いたことを知らせる通知音が流れた。梓沙は零れそうになる目元の雫を手の甲で拭い、スマホのディスプレイに目をやる。

そこには、大学の友人で同じゼミ仲間の桜井ヒカルからのメッセージだった。


“あずー、ダメ元で聞くけど来週の金曜日、合コンとか無理?どーしてもあと一人捕まんなくて(;'∀')相手はウェブ関係の会社に勤める社会人だから変なことにはならないと思うし・・・どうかな?”

梓沙は断りのメッセージを打つもそれを即効で消し“参加する”と打ち直し、ヒカルへ送信した。すぐさま彼女から場所と時間を知らせるメッセージが届いた。

(私だってお兄ちゃんや惣くん以外の男の人と交流したってもういいよね・・・そうよっ!お兄ちゃんはともかく、惣くんには関係ないことなんだから)





――――――――――
「合コンなんてほんと大丈夫なの?ってか、そもそも家から出してもらえないんじゃない?」

「多分・・・大丈夫。こういう時のためにお兄ちゃんの弱み握ってるから♪あ、服選んでくれてありがと」

休日、梓沙は兄が眠っている間に街へと趣き、高校からの親友、大倉若菜と共にアパレルショップを巡り休憩がてらカフェテリアで一息ついていた。惣一たちとの関係性も知っている若菜は、頬杖付きながら心配そうな表情で前に座る梓沙に視線を向けていた。

「若菜がいてくれてほんと良かった。私、合コンなんて初めてだし、しかも社会人みたいだからいつもの格好じゃあ子供っぽい気がして・・・でもどんな服選んでいいかもわかんないし、大体自分に何が似合うのかも・・・」

「いやいや、梓沙は自己評価低すぎ。まぁ、幼い頃からあんな国宝級イケメンの二人を見てきてるから仕方ないかもしんないけどさー。高校の時だって二人が邪魔しなかったら梓沙、彼氏の一人や二人出来てたよ」

「ふふ、ありがと♡お世辞でも嬉しいよ」

ご機嫌な梓沙を余所に不安げな表情で見つめる若菜は(何も起きませんように・・・)と心の中で願っていた。



☆☆☆
あまりにも楽しく、ついつい門限の19時を少し過ぎてしまい、恐る恐る梓沙は玄関を開けると兄の普段履いている靴がないことを確認しホッと胸を撫でおろした。

高校の時、父から言われた門限は、大学に上がり両親がいなくなった今も解かれることはなかった。大学生になったことで梓沙は両親に直談判し、渋々ながら了承を得た・・・にも関わらず何故か現、保護者代わりの慎太と部外者の惣一に猛反対を食らい今もその決め事が続行中となっていた。

だが、今度行く合コンは19時開始となるため兄からの了承がないと家から出られない。梓沙は慎太が帰ってくる前に急いで夕食の準備をし、好物のおかずを目いっぱい作った。


「ただいま・・・って何?なんか今日って記念日とかあったっけ?」

手を洗った慎太はダイニングテーブルに並べられたご馳走に驚きながら椅子に座った。
梓沙はご飯をよそい自分も席へと着き慎太にお茶碗を手渡した。

「お兄ちゃん、お願いがあります」

「何だよ、改まって。小遣いならもうちょっとでバイトの給料日だからそん時に」

「今度の金曜日の夜なんだけど、合コン行「却下」

間髪入れず決断が下され梓沙は呆気に取られた。

「で、でもお父さんは前に門限解除、了承してくれたよ?」

「それはそれ。まだ未成年なんだし、今は俺がお前の保護者代理なんだから。親父だって言ってたろ?“最終的にはお兄ちゃんの意見に任せる”って。しかも合コン?!男慣れしてないお前みたいのが行くような場じゃないよ、やめとけ。」

「そ・・・だけど」

梓沙は唇を前に飛び出すように尖らせながらを出すため梓沙が座る隣の椅子の座面に隠しておいたあるDVDのパッケージを慎太の前に見せつけるようにぶら下げた。

「おまっ?!なんでそれを!!ちょっ!返せよっ」

慎太が取り上げようとするが、梓沙は意地悪な笑みを見せ“ ひょい”っと彼からパッケージを遠ざけた。

「“巨乳彼女のご奉仕三連発♡”だってー。あーあ、こんなの観てるって彼女しいちゃんが知ったらどんな気持ちになるのかなー。しかも本棚の後ろにこーんないっぱい隠すなんて確信犯もいいとこだよねー。お兄ちゃんサイテー」

スマホの写真画面を慎太に向けるとそこには棚裏に隠しておいた卑猥な雑誌やDVDなどが撮られていた。

「これ、しいちゃんに送ったらどう思うかなー?私だったら嫌だなー」

「お前なー・・・・・・はぁ。あのな、別に俺は意地悪で言ってるわけじゃないんだぞ?俺だって・・・惣だってお前が可愛いし心配なんだよ。だから少し過保護で窮屈かもしれないけど」

「わかってるよっ、でも私だって恋愛したい!お兄ちゃんだって可愛い彼女いるし、惣くんだって色んな女の子と遊んでるのに・・・二人は良くてなんで私はダメなの?私だってもう19だよ?!そういう出会いの場に行ったっていいでしょ?!」

「男はいいんだよっ!大体、まだ未成年で酒も飲める歳でもないお子様のくせに・・・ってわー?!、送信ボタン押すなっ!押すなっ!」

梓沙は眇めながら慎太の彼女とのトーク画面を開き、先ほどの写真を送ろうとした時、慌てるように梓沙の手を掴み再び大きな溜息を吐いた。

「もうーっわかったよっ!!その代わり場所を教えるのと、わかってると思うが、呉々も変なことされそうになったら即効帰る準備すること!それと、このことは俺と梓沙の秘密だ!惣には絶対内緒だぞっ!あと終わりそうな時間になったら俺に連絡!すぐ迎えに行くから」

「そんなの一番わかってるよ。お兄ちゃんありがとう。しっかり社会勉強してきまーす♪」

ドッと疲れ果て一気に食欲が失せてしまった慎太とは対照的な梓沙は、初めての合コンに心を躍らせ大きな口を開けご飯を放り込んだ。

「はぁ・・・惣には絶対バレないようにしなきゃな。マジでコロされる・・・」

小さな声で慎太が呟き、大きな溜息をつきながらテーブルに並べられた好物のとんかつを小さな口でちびちびと食べていた。





――――――――――
週末の金曜日ということもあり、指定されていたお洒落なダイニングバーは人で溢れていた。
男女各四名ずつ交互に座り、和やかなムードで会は進められた。

「君たちは未成年だからノンアルね」

「はーい」

梓沙以外の友人たちは場慣れした素振りで接していたが、初めての状況に頭がついて行けず、梓沙は隅に座りずっと固まったまま自身の前に置いてある前菜をちびちびと食べていた。

(ヤバいな・・・そもそも夜に出歩いたことすらない私が、いきなりの合コンはやっぱりハードルが高すぎたのかな)

妙な緊張感に押し潰されそうになっていると目の前にお洒落なワイングラスがすっと隣から置かれた。

「“デュク・ドゥ・モンターニュ”。ノンアルコールワインだから未成年の梓沙ちゃんにも安心して飲めるよ」

梓沙の隣に座っていた優しそうな男性が此方に微笑みながら話しかけてきた。

「さっきも一応自己紹介はしたけど改めまして、俺は高内藤吾たかうちとうごです。今日はこんな可愛い子に会えたから参加して良かったよ。そういえば、さっきも聞いたけどお兄さん、厳しい人なんだってね」

「あ、ありがとうございます。私も改めまして、吉野梓沙と言います。すみません・・・私こういう場、初めてなので緊張しちゃって。兄からは門限も決められているので夜、出歩くこともなくて」

「門限?!・・・まぁ、お兄さんの気持ちもわからなくないかも。だってこんな可愛い妹だったら俺でもそうしちゃうから」

緊張を解きほぐすように藤吾は梓沙に優しい声色を向け会話をしてきた。そのおかげで初めこそ緊張していた梓沙だが、時間が経つにつれ段々と会話が弾むようになっていた。



「ちょっと化粧室行って来まーす♡ほら、梓沙も行くよ」

「へっ?あっ」

友人の一人に腕を引っ張られパウダールームへと連れて行かれた。


「私はもう茶髪の人一択!」

「えー、私もその人いいと思ってたのにー。まぁ今日はアンタに譲ってあげるわよ。梓沙の方は隣の人とイイ雰囲気だったね。どう?初合コンは」

「うん、まぁ初めは緊張したけど高内さんが話し上手だし聞き上手だからだいぶリラックスして話せてる」

「さすが、営業マンよねー♪」

三人が男性陣の品定めでやんやと盛り上がってると梓沙のスマホにメッセージが届いた。


“合コンはどう?相手は年上で上手いんだから難しいとは思うけど、かわすとこはかわしなさいよ!何かヤバくなりそうならあの二人にすぐ連絡しなね!きっとすぐ飛んでくるから!”

若菜のかなり心配したのが窺える忠告に“了解”と送り、再びテンション高めの友人たちの後を追うように元いた場所へと戻った。


「おかえり。新しいの注文しといたから飲んでみてよ。綺麗なカクテルだろ?」

目の前に用意されたカクテルはパステルグリーンの色合いでグラスの縁部分には可愛らしく飾り切りされたフルーツが飾ってあった。

「これもノンアルコールなんですか?」

「うん、そうだよ。ノンアルだし甘めだからこれも飲みやすいよ。ってか、もし未成年に酒勧めたら俺捕まっちゃうよ」

藤吾は手錠をはめられてるかのように左右の手で拳を作り前に突き出すような手ぶりに思わず笑ってしまった。目の前に置かれたグラスを手に取ると梓沙は一口、それを口の中に含んだ。

「ほんとだ、甘くて美味しい。すごく飲みやすいからこれがお酒だったら飲み過ぎちゃって大変かも」

藤吾は楽しそうに笑顔を向ける梓沙に微笑み返し片肘を立て頬杖しながら彼女をじっと見据えていた。





☆☆☆
「・・・ちゃん・・・梓沙ちゃん・・・大丈夫?」

「うーん・・・高内・・・しゃん?ありぃ?みんにゃは・・・」

気付くといつの間にか眠っていたらしく、辺りを見渡すと先ほどまでいたメンバーの姿はなく、何故か藤吾と二人きりになっていた。

「梓沙ちゃん、急に寝ちゃったから・・・みんなには次行く予定だった店に先に行ってもらったんだ。起きたら合流するって言ってあるんだけど・・・今は無理そうだね」

「そうらったんれすか・・・しゅみましぇん」

何故か呂律が回らず目の前の視界もぼやけて見え梓沙は違和感を感じた。あれから、あのカクテルが美味しくて二杯ほどおかわりしたまでは覚えているが・・・その後は全く覚えていなかった。

(おかしいな・・・頭もぼうっとするし。これじゃあまるで・・・)
「と、とりあえず、わてゃし・・・これで、帰り・・・」

梓沙は立ち上がろうした時、足元が覚束ずよろけてこけそうになるところを藤吾に支えられた。

「大丈夫?!」

「す、すみましぇん・・・な、なんか、身体がふわふわして・・・でも胃はもやもやして、でも吐きそうではないんですけど・・・あり?自分で何言って」

「んー、でも少し吐いたら楽になるかもしれないし、一旦トイレ行ってみようか?俺も途中まで付き添うから」

恥かしそうな表情で照れ笑いをする梓沙に対し藤吾は心配そうな表情を向け、梓沙の腰に手を回しゆっくり立たせると多機能トイレへと誘導させた。


「うぅ・・・ずみましぇん。初対面の人にご迷惑を・・・」

「いいから気にしない、気にしない」

「とりあえず、もう、らいじょうぶらと思うんで」

梓沙は藤吾から離れ、トイレに入ろうとするも何故か彼も一緒に中へと梓沙を押し込むように入って来た。

「え?高・・・ちょっ!や、やめ」

無言のまま藤吾は後ろ手でカチャ、と施錠すると梓沙の背後から抱き締めてきた。あまりに突然な出来事に抵抗するも先ほどから足元、頭がフラフラし思った以上に力が出ず彼を押しのけることが出来なかった。

「俺、梓沙ちゃんみたいな初心うぶな子タイプなんだよね。ねぇ、いいでしょ?」

藤吾は梓沙の耳元に囁くように話し、身体をまさぐってきた。

(気持ち・・・悪い。どうしよ、どうしよ)

藤吾に身体を密着され不快感で気分が悪くなり、吐き気を催しそうになるのを必死に堪える。ただ、藤吾には恥ずかしさから身体を硬直させていると勘違いされ、その様子を見ながら口角を上げた。

「大丈夫、安心して。俺、結構から」

「やら、止めてっ、ほんと高内さ・・・」

後ろから項辺りに藤吾の口唇が当たり生温かい舌先が這うように舐めてきた。昂奮してきたのか、徐々に荒くなる息があたり悪寒が走る。同時に身体を密着していることで梓沙のお尻辺りに藤吾のが当たってくる感覚に一瞬にして血の気が引き絶望で冷や汗が出てきた。

(もうほんとヤダっ!ヤダっ!助けてっお兄ちゃん!助けて・・・助けてっ!!惣くんっ!!!)

怖くて声が出せない梓沙は、ただカタカタと小さく身体をビクつかせ動けずにいると、外から勢いよく大きな音でドン!ドン!ドン!、とトイレの扉を叩く音が聞こえた。

「お客様、ご使用中のところ大変申し訳ございません。只今、厨房の方からボヤが起きまして店内のお客様を外へと非難誘導しております。もし、お済でしたらここを開けていただけないでしょうか?」

藤吾は“チッ”と舌打ちすると扉の鍵を開けたその瞬間、勢いよく扉が開きそのまま藤吾は胸倉を掴み上げられると身体を壁へと押さえつけられた。

「お前っ!何なんだよっ!!」

「よくもまあ、に手出してくれたな」

あまりの恐怖で全く周りが見えていなかった梓沙だが、聞き覚えのある声で我に返り、瞑っていた目を開き顔を上げた。

そこには、何故かホールスタッフが着ている制服姿の惣一が、今まで見たことのない位の恐ろしい表情で藤吾の胸倉を掴んだまま睨みつけていた。

「いい加減、放せよ!!店員のくせに客に何してくれてんだよっ!」

藤吾も負けじと惣一の服を掴み上げようとすると片手を外した惣一はポケットからスマホを取り出し動画を流し始めた。


『お客様、ご注文のフェアリーランドでございます・・・が、これは先程いらっしゃったお連れ様のご注文でしょうか?失礼とは思いましたが、先ほどノンアルコールをご注文されていたので。こちらだとアルコールの苦手な方はお控えになった方がよろしいかと』

『いや、俺が飲むやつだから』

『作用でございましたか。大変失礼いたしました。ごゆっくりどうぞ』

そこには梓沙たちがパウダールームに向かって退席している時のやり取りなのだろう、藤吾と店員に扮した惣一の会話のやり取りが映し出されていた。その次の動画ではそのカクテルを藤吾に勧められ呑み、おかわりをする梓沙の姿を見せつけた。

「未成年に酒飲ますわ、強姦未遂するわ。あんた、もしこんなこと会社にバレたらどうなるかな?まぁ俺はどうでもいいけどな、どうする?このまま大人しく帰るか・・・それともこの動画、ネットに上げて会社に送りつけるか。どっちか選べよ」

「あ、あ、・・・あ、梓沙ちゃん・・・俺、用事思い出したからか、さ、先、か、帰るね」

一気に蒼ざめてしまった藤吾は慌てふためいた様子で転がるように中を飛び出して行ってしまった。あまりにも突然の出来事に梓沙は思考が完全に停止し腰が砕けたようにへなへなと床に座り込んでしまった。

「そ・・・惣くん、あの助け「テメーはアホかっ!!!」

梓沙は安堵から涙が溢れ、助けてくれた彼に言葉をかけようとするも惣一の罵声に自身の声を被せられ“ひゅっ”っと言葉を呑み込んだ。

「お前、慎太脅したんだってな。いい度胸してんじゃんか。それで、俺には内緒にして合コンしてたってか。へぇー、俺にバレないと思ったのか、お前ごときに俺も見くびられたもんだよなー」

「だ、だって・・・ご、ごめんなさい」

口調はいつものような意地悪だが、怒りと哀しさと苦しさが複雑に混ざり合った表情を梓沙に向けその顔を見た瞬間、梓沙はボロボロと嗚咽を上げながら泣きじゃくった。

「でも、ほんとよかった・・・間に合って。目離した隙にお前らいなくなってたからマジで焦って頭おかしくなるかと思った・・・痛いとこないか?」

惣一はしゃがんだままの梓沙を引っ張り立たせ、そのまま自分に引き寄せ優しく抱きしめた。藤吾の時には不快感しかなかった密着だったが今、惣一に同じことをされているのに全くそういった拒否反応は見えず、甘くふわふわしたものに包まれているような気分に心臓が高鳴り始めていた。

(惣くん・・・あったかい)

彼の体温と心音に安堵を感じ、梓沙は硬く男らしい胸元に頬を摺り寄せた。

「俺がどんな想いしてここにいるのかわかってんのかよ」

「って、そうだよ!なんで惣くんがここにいるの?!惣くんのバイト先ここじゃないし、偶然にしては、ぶっ!」

顔を上げ惣一を見上げようとするも何故か後頭部を手で抑えつけられ、再び顔を胸元に戻された。

「詳しい話はまた今度だ・・・とにかくが先だ。行くぞ」




☆☆☆
「んふっ・・・んんっ・・・ふっ・・・っふ・・・んぁ、ちょっ、待っ・・・」

近くに空きがあったラブホテルに入室した二人は、着衣のまま惣一にシャワールームへと連れられ、勢いよくシャワーを浴びせられた。その間、惣一も同じく着衣した状態で抵抗する彼女の口唇を貪り、逃がさないよう抱き締めた。

「もう、我慢なんかしねー」

まだ酔いが醒めない梓沙は“これは夢なのか?”なんて感情を持ちつつも、惣一から与えられる熱が全身に伝わりそれが現実とわかると頬が一気に紅潮した。

「折角、今まで排除してきたのにまさかこんなとこで・・・」

悔しそうにブツブツと呟く惣一は、梓沙の首筋になぞるように舌を這わせ強く吸い付いた。

「あ・・・、惣・・・」

「こんな肩開いた服着やがって・・・こんなのお前には似合わねーよ。絶対俺の前以外でこんな服・・・もう外で着るなよ」

不機嫌な惣一は梓沙の首筋へ何度も吸い付き、鬱血した痕がどんどん付けられてゆく。惣一の口唇が滑るように鎖骨辺りまで下りていくと同様に小さな痛みを植え付けた。

「やっ、そんなあといっぱ、痛っ!い、痛いよっ」

「これはこの前、俺に楯突いた

鎖骨の上部分を噛みつかれ惣一の歯型がくっきりと付けられる。低い声色で梓沙の耳許に囁き、リップ音を鳴らしながら耳に口づけししゃぶりついた。

「一丁前に感じてんのか?お前、耳弱いんだな」

「はァん、ぃ・・・や、ふっ・・・そ、惣くん、ちょっと、待って!私、頭まだ回って、んっ、ないんだけど・・・なんで私にこんな・・・」

執拗に耳を責められ、思考停止の状態にされるも唐突な惣一の行動に全く理解できず、小さな抵抗と言わんばかりに胸元を押しやった。一瞬、ムッとした表情を見せたが、軽く深呼吸し身体の密着は逃してくれなかったが、そのまま抱き締められた状態で話し出した。


「ガキの頃からお前が好きだ。だから、他の男に触られるのは「ちょっ、ちょっと待ってよ?!」

話しの腰を折られた惣一は、照れ臭さを隠し再び不機嫌な表情を梓沙に向ける。

「いやいや、どこでそんな・・・全く素振りなかったですけど。むしろ私は“妹”としか認識されてなかったはずですけど」

「そうでも言ってないと耐えれなかったからな。そもそも、お前が二十歳はたちになるまでは手出すの禁止って慎太に言われてたし。一度でも触れれば歯止めなんてできねーし仕方ないからそれ守ってた」

「いつの間に・・・。で、でも惣くん彼女いっぱいいたし、そんなの信じられないよ」

「言ったろ?傍にいればお前を襲いそうになるから他で紛らわせてた。まぁ、何もしねーからあっちから去ってくのがほとんどだったけどな」

「嘘だ、そんなのっ・・・この前会った元カノとはやってたくせに」

惣一は梓沙の言葉に脳内でクエスチョンマークを浮かばせるも「あぁ、それで」と勝手に納得し小さく笑みを浮かべた。

「あいつとも何にもねーよ。まぁどいつもキスとかはしたけど最後までシたことねーし・・・ってか、たねーからそもそも無理だったしな。そうそう、その元カノから梓沙に伝言頼まれてた。『揶揄ってごめんね、惣に護られているあなたがつい可愛くて意地悪な嘘ついちゃった♡』だと」

なかなか信じがたい話で梓沙は、眉間を寄せながら考え込んでいると痺れを切らしたように再び惣の口唇が梓沙の口唇に重ねてきた。角度を変えながら口づけしその間、惣一の片手が服の中へと入り込みブラジャーのホックをパチンと外す。

下着と共に服を上に持ち上げられると綺麗な双丘が惣一の目の前に現れ、無意識に咽喉仏が波打った。

「そ、惣くん恥ずか「黙って」

浴室の熱気と身体中から沸騰してるかのような熱さで頭がどうにかなりそうになり、梓沙が涙目で懇願するも逆にその姿は更に惣一を煽り欲望の中へといざなった。梓沙は上半身を脱がされ恥ずかしさから胸元を隠そうとするも手を掴まれ阻止されてしまった。

「はぅっ・・・んんっ・・・だ、だめ・・・あっ、あっ・・・」

梓沙は、欲情からか左の硬く突き出した先端をクニクニと舌先で弄ばれ、もう片方は指先で摘まれ弄られ、その二つの味わったことのない刺激に浴室内は梓沙の荒い息遣いと艶のある声色が溢れ響いた。

「そんな声出せるんだな。もしこんな声聞いてたら俺、絶対襲ってたろうな・・・」

惣一は独り言のように話し、困った笑みを浮かべ再び口唇を重ねる。惣一の舌先が梓沙の口唇へ割って咥内に這入り、くちゅくちゅと粘膜が纏わるように舌を絡ませる。

惣一の生温かく絡みつく舌の動きに昂奮した梓沙は、彼の後頭部に手を添え、自ら押し付けるように更に深く口唇を密着させた。互いの唾液が口許から流れ出るもシャワーのお湯がそれらを流しとった。

惣一の手は梓沙の腰辺りに振れ、梓沙は思わず擽ったさと厭らしい感覚で小さくビクつかせた。その反応に惣一は目を細めるとスカートのファスナーを下げ足元からするりと床にスカートが落ちた。両手で梓沙の左右の臀部を掴み揉み上げ指先をショーツの中へと潜り込ませると、愛液が溢れ出る割れ目に指を拭うように触れた。

「あァんっ、そ・・・んぁとこ・・・ふんっ、んあッ、あぁー・・・」

中指を膣口へと浅くではあるが、出し入れされ梓沙は腰元が小さく震え惣一の身体にしがみ付いた。
惣一は梓沙のショーツを脱がせると、そのまましゃがみ床に座ると梓沙を自身の内腿の間に座らせ脚を広げさせた。

「この体勢なら全部触れる」

「あっ、んっ♡・・・あぁ、あっ、惣・・・」

惣一の右中指で膨れあがった陰核を優しく捏ね、左中指と薬指は先程よりも奥深くまで膣内へと這入り込み、くの字に曲げ伸ばしをし卑猥な粘着音を響かせ、口許は膨れ尖った先端にむしゃぶりついた。

身体中を惣一に支配されているような感覚に襲われ、その上抜け切れていないアルコールも重なり梓沙は、喘ぎ声を上げ啼くことしか出来なかった。

「そ・・・そう、くん・・・っあァ、へ、変・・・に、あぁ、なっ・・・」

惣一の熱い舌が先端に絡みつき、指は奥底へと嬲るような動きに梓沙は下腹部に力が入る刹那、得体の知れない感覚が込み上げてきた。自分では止めることができない小さな痙攣が継続的に身体を支配し、鎮まると一気に力が抜け背後から支える惣一に凭れかかった。

「スゲーヒクついて、もう手が梓沙の汁でべとべと。はぁ・・・もう、我慢できねー。このままベッド行くぞ」

惣一は梓沙の膣内ナカからぬるりと指を抜き取り、ぐったりした梓沙を浴槽のエプロン部分に凭れさせると、自身の濡れた上下の着衣を全て脱ぎ捨て、すぐさま梓沙を抱き抱え浴室を出た。



「はぁ・・・はぁ、惣・・・くん、お布団、濡れちゃう」

「どーせ、濡れるからいいんだよ」

梓沙は意識が混濁した状態でベッドに優しく寝かされると、覆い被さった惣一から酸素がなかなか取り込めないほどの激しい口づけをされる。彼の中指はまたも濡れ溢れる秘部に滑るように撫で絡め、梓沙は無意識に膣内をキュッと締め付けた。

先程、軽くイッたせいなのか少し触れられるだけで自身の臀部にまで流れ落ちる体液が伝わり、羞恥から生理的な涕が零れた。

「梓沙が嫌がっても、もう絶対放さないからな。俺から逃れれると思うなよ・・・一生俺の傍にいろ・・・」

「ずるい、よ・・・そんな表情かお

普段見せる表情とは違い、穏やかで優しい微笑みに梓沙は胸が締め付けられた。惣一はベッドサイドに置かれた避妊具を手に取ると歯で袋を引き裂く。

梓沙は、初めて見る男性器に圧倒され、思わず目が離せず絶句してしまう。惣一は視線に感じつつも小さく笑いながら今にも爆発しそうな状態のモノにスルスルと装着していった。

(・・・あんな、おっきいの・・・大丈夫かな)

「もう止めるの無理だから、痛かったら俺の身体に爪立てるなり噛みつくなりしろ」

不安そうな表情を向かべる梓沙に惣一は軽く口づけし、自身の先端を膣口に擦りながらゆっくりとれていく。大きくて熱い圧迫した塊が壁を穿ち、みちみちと膣内ナカを押し広げていく。梓沙は痛みから身体を仰け反らせ啼き声を上げた。惣一の上半身から梓沙の胸や腹部に汗が流れ落ち、彼の恍惚とし甘く蕩けそうな表情が更に梓沙の心臓を締め付けた。

「はっ・・・っく、き、・・・ついな・・・っあ、ヤ、ベ・・・」

惣一の律動の激しさと共にベッドの軋み音が聞こえ、肌と肌がぶつかる生々しい音が部屋に響く。

「あっ、あぁ、・・・んっ!激し・・・痛、いっ・・・そん・・・奥、だ、だめ・・・あァんっ!」

「・・・・・・っは、もっと、もっと、奥に・・・くっ、んんっ・・・はっ、はっ!」

腰を深く打ち付ける惣一の身体にしがみ付き、ぐちゅぐちゅと厭らしい水音が大きく響くと更に抽挿が激しくなる。彼の婀娜めくほど恐ろしい色香の表情を目にした梓沙は、痛みと疼きが混じり合うと下腹部に力が入りその瞬間、惣一が呻き声を上げ膣内で陰茎がビクビクと痙攣し膜越しに白濁を放出させた。




☆☆☆
梓沙は、先ほどの浴室での行為以上に生まれて初めての脱力感に力尽きていた。放心状態のままベッドに横たわっていると、いつの間にか備え付けの小型冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを持った惣一に手渡しされた。

「ありがと・・・なーんか、キスもエッチも色んなこと惣くんにぜーんぶ奪われた気分だよ」

「はっ?なんだそれ。どういう意味だよ」

水を飲む梓沙が横たわる隣に腰を下ろした惣一は、梓沙が口にしたペットボトルを奪い自身も一口飲んだ。

「だって、エッチは初めてかもしんないけどキスはしてたんだよね?エッチだって最後までシテないってだけで、それまでの行為はしてたわけだし・・・って、痛いっ!」

枕を抱え唇を前に突き出しブスっとした表情を向ける梓沙の額に惣一は軽く指で弾き、そのまま赤くなった部分の額にキスをした。

「俺のファーストキス、お前だけど。一回目は、確かお前が保育園の年長の頃だったかな?二回目は、俺が中三でお前が中一の頃。部屋で寝てたお前にキスした。そん時は、確か軽く舌も入れたっけ。しかも制服に手掛けようとした寸前で慎太に見つかって・・・あん時の慎太はさすがにヤバかった。それがあって“二十歳はたちまで触るの禁止”令に繋がるんだけどな」

「・・・・・・はぁっ?!何よそれ?!意味わかんない!!」

「しゃーねーだろ、爆睡して気付かなかったお前が悪い。あと、今までこれだけじゃあ収まんねーから朝まで付き合ってもらうぞ。まだまだ時間はたーっぷりあるしな♪」

「はっ?!もう、む、無理だからっ!!やだーっ!!!」

全くと言っていい程悪びれることなく言いのけるこの暴君の幼馴染に、これからも振り回されるのかと思うと頭が痛くなると同時に体力が持つのか怖気震える梓沙だった。



おまけ☆





その頃、吉野家・・・。

「けーっきょく、惣ちゃんにバレちゃったんだ。いいのー?あずちゃん、きっと今頃、惣ちゃんに・・・」

「仕方ないだろー。っま、アイツにしては結構頑張って我慢したし、もういいかなって」

ソファに寝ころびスマホを弄りながら慎太は寝転がり、その傍らで最愛の彼女、椎奈が慎太の髪を撫でながら話しかけていた。

「だよね、もう何年?あの女が切れない惣ちゃんが“実は小っちゃい頃から親友の妹を好きだった”なんてねー」

「まぁ、あいつの溺愛っぷりは、実は俺以上だからな。そもそも門限解除だって惣が大反対だったから出来なかっただけだし」

「でもさー、お兄ちゃんとしては寂しいんじゃない?可愛い妹が他の男のモノになって」

「そりゃあね・・・まっ、惣なら大丈夫だろ。俺的には相手が惣で良かったと思ってるし」

「そうだね・・・でも惣ちゃん相手だとあずちゃん、絶対逃げ出せないだろうなー。我が弟ながらあの性格は難ありだしなー」

「確かに・・・。あのの一途さは俺でも引く」

「えー、でもね、彼女一筋なんて羨ましいなー」

「俺だって、しいの弟並みに一途だけど?」

「ふふ・・・そうかなー?だって慎ちゃん、こーんなセクシーなに目移りしちゃう人だからなー」

椎奈はそっと慎太のスマホを取り上げ、彼の目の前に豊満な胸元を両腕で寄せるような姿勢をした女の子が写るDVDパッケージを見せつけた。

「へっ!?・・・はっ!なんでそれっ!そういや、お気に入りがなかったの・・・い、いや、そういう・・・へっ、いや、ははは・・・」

「慎ちゃんはこーんな巨乳の女の子がいーんだねー。ごめんねー私、おっぱいないでっ」

「はっ、そうじゃ・・・はぶっ!!」

エロDVDのパッケージを顔面にぶつけられた慎太はソファから飛び起き、椎奈の顔を恐る恐る視線を向けるとは感情のない笑みを浮かべていた。

「どーせ、今日はあずちゃん帰って来ないだろうし、みーっちりお話ししようねー、慎太お兄ちゃん♡」

「・・・・・・はい」

眼が全く笑っていない恋人に詰め寄られ、彼にとっても別の意味で長い夜を迎えることとなった・・・。


おまけのおまけ☆
惣一と付き合うことになった数日後。

大学の講義が終わり、そのまま惣一に連れられホテルに直行され、何度も貪られ放心状態の梓沙はふとあることを思い出し、隣で横になっている惣一に話しかけた。

「そういえば、何で合コンのこと気づいたの?お兄ちゃんが言うとは思えないし」

「あー、あれな。前にお前の部屋入った時、普段着なそうな服掛けてあったの見つけて何となーく嫌な予感して。それで慎太を問い詰めて、吐かせた。門限もあるし、外出も逐一報告しなきゃいけないのに知らないわけないと思って」

「えーっ、お兄ちゃんが惣くんには絶対内緒って言ったのにー。にしても、服だけなら誤魔化せそうなのに」

「勿論、無料ただじゃねーよ。姉貴しいの中・高の卒アルで取引。慎太あいつ、姉貴のことになると優先順位変わるからな」

「・・・・・・」

「場所もあの店で知り合いがバイトしてたからオーナーに頼んでもらって、一日だけバイトって形で手伝わせてもらったってわけ。動画も知り合いに撮ってもらったし助かったわー」

梓沙は頭を抱え、大きな溜息を吐いた。隣で寝転がってた惣一は向きを変え梓沙の上へ覆い被さった。

「そんだけお前は俺に管理されて放れることなんて一生出来ねーんだよ。これからは俺だけに独り占めさせてもらうから覚悟しとけ」

「暴君だなー。仕方ないから一生私を逃げ出さないよう掴まえていてよね。他に目移りしたらヤダからね」

「するか。この時をどんだけ待ったと思ってんだよ・・・梓沙、好きだよ」

惣一の甘く蕩ける表情と言葉に今日も足腰が立たないくらい虐められる梓沙でした♡
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