猛毒天使に捕まりました

なかな悠桃

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部屋に戻ると既に夕食の準備がされており、待ってましたっ!!、と言わんばかりの勢いで史果は食事へ無我夢中でありつき、基希はその様子を呆れつつも笑みを浮かべ眺めていた。

先程不意を突かれながらも誤魔化した史果だったが、基希が納得していないのはわかっていた。自分自身が後腐れなく離れられるか・・・そのことばかりが脳内を占める日々。この旅行が普通の恋人同士で訪れられていたら・・・そう想うと同時に何度も何度も脳裏を掠める、あのパーティーでの二人の仲睦まじい姿。現実に引き戻され自身を戒める。

“夢を見てはいけない。決して起こりえないことなんだから”


「正直こうやって心休めるの何年振りかってくらいでさ、ほんと史果と来れて良かった。ありがとな」

史果が心ここにあらずといった状況の中、基希がふいに改まったように話し出した。

「・・・いえ、私もこんな素敵な場所に連れて来て頂けて嬉しいかったです。ありがとうございました」

「今度は北海道・・・いや沖縄もいいよな♪時間見てまた行こうな」

基希の屈託のない笑みを史果は笑顔を向け応えるもズキン、ズキンと胸が抉られるような錯覚に襲われていた。基希が何を考えてこのようなことを自分に言うのか全く理解出来ないと同時にこの表情、この言葉が偽りでなければいいのにと思うたび心臓を締め付けられ抉られ深い傷を刻まれていくような気分になった。



☆☆☆
(折角の美味しい食事だったのに・・・正直味わかんなかったな)

食事を済ませ仲居さんに膳を下げてもらっている間、基希のスマートフォンが鳴り史果に断りを入れると一旦部屋から退室した。部屋に一人残された史果は、広縁に置かれていた低椅子に座り月明かりに照らされまた違った美しさを放つ庭園をぼんやりと眺めていた。

(ほんとあの出来事が夢だったら良かったのにな・・・いやいや、何回この堂々巡り繰り返すのよ!あれは現実。基希さんにとって私は結婚前のあそ・・・)

突きつけられた現実を考えれば考えるほど自身を卑下する言葉が脳内を支配した。深淵に堕ちていく気分を紛らわそうと備付冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

先程の食事で小さなグラスで一杯だけ飲んだが全く酔うことが出来なかった史果は、気を紛らわせるためプルタブを勢いよく引っ張り開けた。

まるで夏の暑さで乾いた喉を潤すかのようにビールを一気に流し込むも爽快感が得られることはなかった。頭では何度も何度もシミュレーションし割り切って接するつもりでも基希の表情、態度を見る度に気持ちの揺らぎが襲い史果を陥れる。

「悪いな。ってなんだよ、先にやりやがって」

「あ、おかえりなさい。なんかちょっと呑みたくなっちゃって」

電話を終えた基希が部屋へと戻ると一本目の缶ビールを呑み終えた史果が二本目へ口をつけるところだった。基希は少し呆れ顔をするも自身も冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し喉へと流し込んだ。

「こら、そんな強くないのに。ってか、酔われて寝られても困るんだけどな」

気付けば持っていたはずの缶はテーブルに置かれ座っていたはずの身体は立たされ基希に抱き締められていた。

「もと、んっ・・・」

ふわりとシャンプーの香りを感じた刹那、彼の唇に優しく塞がれた。アルコールのせいかふわふわとした感覚に襲われている史果は、おずおずとした手つきで基希の背中へ回すと舌がぬるりと這入り込み熱を伝えてきた。

「んっ・・・ふ、ん・・・」

舌が絡み合うたび厭らしい水音が耳元に届き史果の心臓を高鳴らせた。

「ずっと我慢の連続だったけどここに来て史果の浴衣姿見たらもう限界だった・・・ほらっ、キスだけでもうこんな」

「いやいや、着く前からいろい、ッッ!!」

史果の反論の言葉を遮らせるかのように基希の手が史果の手を掴むと確信犯的に自身の硬く屹立した部分を擦りつけるように触れさせた。

「はあ・・・浴衣脱がすぞ」

「え・・・あっ、んッ・・・」

基希は、再び口づけしながら史果の浴衣の帯を慣れた手つきで解き板間へと落とした。はらりと開いた浴衣の間から淡いピンクの下着を覗かせ基希の手が頬から首筋、肩、背中へと愛おしそうに触れてゆく。下着の後ろホックをパチンと外し肩から抜き取るとふっくらとした双丘が現れ基希の喉仏が大きく動いた。

「可愛い・・・なあ、俺のも脱がして」

囁くように甘える声色を耳元へダイレクトに伝えられた史果は、ゾクゾクと背筋を快感で身震いさせ緊張から震えながら両手で基希の帯を解く。はだけた浴衣から骨張った鎖骨、鍛えられた逞しい胸板が目の前に現れた。何度も見ているとはいえ互いにショーツだけの現状に恥ずかしさから目のやり場に困り無意識に視線を逸らすも基希に下顎をくいと上げられ否応なしに視線を絡ませられた。史果はせめてと言わんばかりに胸元を両手で抱え込み身体を隠した。

「隠すなって」

「こ、こんな明るい部屋で・・・は、恥ずかしい」

史果の両手で胸元を抱え込むように隠す姿を良しとしない基希によって両腕を摑まれ再び胸元を曝け出された。

「あ、んんッ・・・ふッ、あァッ」

首筋を這うように基希の唇と舌が蠢き、昂奮からか史果から甘い声が洩れ小さく身震いした。淡く尖った先端を爪や指の腹で弄ぶように弾かれるたび先端がどんどん硬くなり立体的に浮かび上がらせた。

「キモチいい?」

はあ、はあ・・・浅い呼吸と涕目でぼんやりした史果が小さくこくりと頷くと基希の喉元が大きく揺れ早急な手つきで胸を揉みしだく。尖った先端部分に舌を這わせ舐め上げ口の中へ含むと前歯で軽く甘噛みした。

「やっ、・・・あッ・・・噛ん、じゃ・・・だ、め・・・」

硬くなった薄紅色の先端を甘噛みされた史果は快感を逃がすかのように仰け反り基希の髪を両手でくしゃくしゃと搔き乱した。時折チクリとした痛みを与えられるたび史果は切なげに小さく眉を寄せ甘い吐息を吐き出した。

立っているのもやっとな史果は、縋るように基希の身体を手で滑らせ下腹部まで下りてゆく。下着越しからでも張り詰めているのがわかる程の硬くなった部分を躊躇いながらも優しく指先を這わした。

「んッ・・・」

一瞬、身体を強張らせ苦し気な声色を放つ基希に軽い加虐心が芽生えた史果は、彼の形を指先でなぞりながら弄んだ。先端から我慢汁が出ているのか鈴口があたる生地は薄っすら濡れ指先に伝わってきた。自分との行為でこんなになっているんだ・・・そう思うと更に意地悪をしたくなった史果は、包むように下着越しから執拗に撫でまわした。。

「はあ・・・はあ、うッ・・・お、前・・・はッ、くっ」

「きもちイイですか?・・・じゃあもっとキモチいいことしてあげますね」

「はっ?わッ!ばかっ!!やめ、」

その言葉を発すると矢庭に史果は両膝立ちになり基希のボクサーパンツを一気に引き下ろした。勢いよく勃ち上がった太い竿が目の前に現れ思わず息を呑む。
明るい部屋で、しかもこんなに至近距離でまじまじと見たことがなかった史果は、思わず固まってしまい何度も瞬きを繰り返していた。

「・・・あのさ、そんな至近距離でガン見されると流石に恥ずかしいんだけど」

史果が見上げると口元を押さえ恥ずかしそうに赤らむ基希に胸が締め付けられ思わずにやけそうになった。

「・・・私、したことがないので上手く出来ないかもしれませんが・・・がんばりますっ!」

「はっ?がんばるって、っておいっ!やめ、うくッ、んんッ」

史果は恐る恐る片手で陰茎を優しく握り透明な液が滲み出ている鈴口へ舌を当てぴちゃぴちゃと舐めだした。ソフトクリームを舐めるような舌の動きに基希の籠るような声色と下腹部が微かに力が入っていた。

(これ、口に入れて動かせばいいんだよね?確か、歯あてないようにしなきゃいけないんだよね?)

自身の心の中で自問自答しながら手を支えゆっくりと唇を開き咥内へといざなうよう飲み込んでいく。熱くて大きな塊は史果の咥内全てを支配し苦しさがありながらも何度も浅い部分を出し入れした。先走りのしょっぱいような苦いような味が舌と喉を刺激し顔を歪めるもそのたび頭上から婀娜めくような声色が降り一層史果の口の動きを速めた。

(こんな大変なものだとは。顎・・・痛いかも)

苦しさはあるにしろ、いつもは基希に弄ばれている感覚を与えられている史果は、ここぞとばかりに自分が上位になった気分になり正直愉しんでいた。ちらりと上目遣いで見上げると何かを耐えるようにぎゅっと目を瞑り下唇を噛み締め呻く基希の姿が見受けられた。

「なあ・・・もっと奥まで咥えれそう?無理ならいいから」

史果の頭を優しく撫で悦楽な表情で聞いてきた基希に咥えたまま小さく頷いた。

「んッ・・・ふぐッ、ん・・・」

喉奥まで塊を突き入れ更に苦しさが咥内を占めたが、それよりも基希に気持ち良くなって欲しい一心で頭を何度も前後に動かした。

「はっ、はっ、・・・も、もう・・・いい・・・から・・・んくっ、んはッ・・・それ以上は・・・」

「あンッ」

咄嗟に基希に頭を両手で掴まれ引きはがされると同時に咥えていた肉棒も咥内から飛び出した。

「はあ、はあ、はあ・・・っぶねー・・・」

尻餅をつくように崩れた基希は、動いてもいないのに激しい運動をしたかのように乱れた呼吸となっていた。基希は、そのまま後方に両手をつき身体を支えるように片膝を曲げた体勢で座り込み、目の前で狼狽えている史果を軽く睨んだ。

「あのなー、物には順序って言うもんがあってだなー。だっ、大体急に何で・・・」

「こういうことしたら男の人喜ぶのかなって。あんな口いっぱいあけなきゃいけないから顎は痛かったですけどそれよりもいつも余裕な基希さんが翻弄される顔が見れたので私的には満足です」

「・・・変態」

したり顔の史果に見下ろされ不服そうな表情で基希は史果の腕を引っ張り自身の両脚の間へ引き寄せた。

「基希さんだって“もっと奥まで”とか言って満更でもなか、んっ・・・ふっ・・・んん」

基希に話しを遮られ史果はそのまま唇を塞がれた。基希の生温かい舌がぬるりと咥内に這入り込み史果の舌と絡み合う。噛みつくような口づけに口端から唾液が流れるも構うことなく貪り合った。厭らしい水音が重なる口元から響き史果の心臓を締め付け跳ね上がらせた。

「はあ・・・ん、はぁ・・・」

唇がゆっくり離れると酸欠状態でぼーっとし紅潮した表情の史果を無言のまま抱き上げると、寝室に敷かれている布団へ史果を寝かせその上へ覆い被さり再び唇を塞いだ。

「俺を舐めやがって。覚悟しろよ」

上唇をぺろりと舐め意地悪そうににやりと笑みを浮かべ見下ろす基希に史果は、この後の自分の身の危険さを想像するだけで武者震いを起こし顔を引き攣らせた。
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