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「はぁーーー・・・」
帰るや否や史果は着替えぬままベッドへとダイブし、溜息と同時に枕に顔を埋めた。
あのあとなんとなく気まずさはあったもののすぐさま普段と変わらない基希に戻り、再び園を回っていたが、そのあとすぐに基希に急な用件の連絡が入り夕方には帰ることとなった。
「なんで私・・・あんなこと」
動物園で基希に何故あのような感情が心中を占めたのか処理できず悶々と答えの見えない疑問だけが頭の中を駆け巡らせていた。
「・・・とりあえず、藤さんに今日のお礼言っとこ。朝ごはんといい、今日は何から何まで色々してもらったし」
モヤつく気持ちを抱えながら史果は、重い腰を上げテーブルに置いた鞄からスマホを取り出した。本来なら直接言うべきなのだろうが、何故か基希の声を聞くことに躊躇い、失礼と思いながらもSMSで送ることにした。
「“今日はありがとうございました。久しぶりの動物園、楽しかったです(^▽^)”・・・っと」
史果は当たり障りない内容を送り再びベッドに倒れ込むように沈むと同時にスマホから通知音が鳴りメッセージが届いたことを知らせた。
「早っ!」
驚きながら史果がメッセージを見ると送信者はもちろん基希からで“こちらこそ”とだけ打たれた文字が記されていた。史果は軽く深呼吸し気分を一新させるべく浴室へと向かった。
――――――――――
週明け、慌ただしいオフィスで史果はパソコンを開きメールのチェックをしていた。史果はふと個人予定表のホワイトボードに目をやると基希の名前が書かれた横には“〇〇会社打ち合わせのため直行”と記入されていた。
(藤さん、会社いないのか・・・道理で同僚たちの甲高い声が聞こえないわけだ)
史果が一人納得し、空になったカップにコーヒーを淹れるため給湯室へと向かうと既に女性社員がいるのか話し声が聞こえた。
「やっぱあれが本命なんだよ!」
「でも藤さん、瀬尾さんを彼女だってうちらに言ったじゃん」
「そうなんだけどー、でもおかしくない?今まで接点なかったのに急にだよ?!なんかあるって」
「なんかって何よ」
「例えば、藤さんの弱みを瀬尾さんが握ってる、とか?そうじゃないとありえないっていうか」
「じゃあ、本命っぽい人は?」
「だからそっちがホンモノの彼女だけど、何かしら瀬尾さんに脅されて仕方なく社内ではそういう関係にしてるとか」
「んー、まぁ瀬尾さんが脅してるかは別にしてもあの二人が付き合ってるっていうのはやっぱ信じがたいわよね」
「そうなのよ!だって、私が見た藤さんとあの女の人、ほんと絵になるっていうか清楚でどこか良いとこのお嬢様って感じで・・・失礼だけど正直、瀬尾さんとは比べ物にならなかったのよねー」
まさか会話の登場人物の一人が廊下で聞いているとは知らず、給湯室にいる二人の女性社員は言いたい放題で話し込んでいた。史果は彼女たちにバレないようにその場から離れ再び自分のデスクへと戻った。
(言われなくたってわかってるし!大体なんで私が脅さなきゃいけないのよ!脅されてるのはこっちだし!やっぱり何言われても関わるべきじゃなかったっ!そもそも本命がいるなら偽装なんてしなくたってその彼女紹介するなりなんなりすればいいじゃないっ!そうよっ!その彼女のためにもこんな馬鹿げた契約解除してもらわなきゃ!!)
苛立ちながらキーボードを叩いているとふと我に返り史果は手を止めた。
(私なんでこんな苛立ってるんだろ・・・?何に対して?元々藤さんとは挨拶程度しかしなかったじゃない、それに戻るだけじゃない・・・)
自分に言い聞かせるように頭の中で何度も繰り返すが、落ち着かない気持ちを拭うことが出来なかった。
(今は、仕事っ!仕事っ!)
史果は両手で頬をパチンと叩き、気を取り直すと一心不乱に仕事へ没頭した。
帰るや否や史果は着替えぬままベッドへとダイブし、溜息と同時に枕に顔を埋めた。
あのあとなんとなく気まずさはあったもののすぐさま普段と変わらない基希に戻り、再び園を回っていたが、そのあとすぐに基希に急な用件の連絡が入り夕方には帰ることとなった。
「なんで私・・・あんなこと」
動物園で基希に何故あのような感情が心中を占めたのか処理できず悶々と答えの見えない疑問だけが頭の中を駆け巡らせていた。
「・・・とりあえず、藤さんに今日のお礼言っとこ。朝ごはんといい、今日は何から何まで色々してもらったし」
モヤつく気持ちを抱えながら史果は、重い腰を上げテーブルに置いた鞄からスマホを取り出した。本来なら直接言うべきなのだろうが、何故か基希の声を聞くことに躊躇い、失礼と思いながらもSMSで送ることにした。
「“今日はありがとうございました。久しぶりの動物園、楽しかったです(^▽^)”・・・っと」
史果は当たり障りない内容を送り再びベッドに倒れ込むように沈むと同時にスマホから通知音が鳴りメッセージが届いたことを知らせた。
「早っ!」
驚きながら史果がメッセージを見ると送信者はもちろん基希からで“こちらこそ”とだけ打たれた文字が記されていた。史果は軽く深呼吸し気分を一新させるべく浴室へと向かった。
――――――――――
週明け、慌ただしいオフィスで史果はパソコンを開きメールのチェックをしていた。史果はふと個人予定表のホワイトボードに目をやると基希の名前が書かれた横には“〇〇会社打ち合わせのため直行”と記入されていた。
(藤さん、会社いないのか・・・道理で同僚たちの甲高い声が聞こえないわけだ)
史果が一人納得し、空になったカップにコーヒーを淹れるため給湯室へと向かうと既に女性社員がいるのか話し声が聞こえた。
「やっぱあれが本命なんだよ!」
「でも藤さん、瀬尾さんを彼女だってうちらに言ったじゃん」
「そうなんだけどー、でもおかしくない?今まで接点なかったのに急にだよ?!なんかあるって」
「なんかって何よ」
「例えば、藤さんの弱みを瀬尾さんが握ってる、とか?そうじゃないとありえないっていうか」
「じゃあ、本命っぽい人は?」
「だからそっちがホンモノの彼女だけど、何かしら瀬尾さんに脅されて仕方なく社内ではそういう関係にしてるとか」
「んー、まぁ瀬尾さんが脅してるかは別にしてもあの二人が付き合ってるっていうのはやっぱ信じがたいわよね」
「そうなのよ!だって、私が見た藤さんとあの女の人、ほんと絵になるっていうか清楚でどこか良いとこのお嬢様って感じで・・・失礼だけど正直、瀬尾さんとは比べ物にならなかったのよねー」
まさか会話の登場人物の一人が廊下で聞いているとは知らず、給湯室にいる二人の女性社員は言いたい放題で話し込んでいた。史果は彼女たちにバレないようにその場から離れ再び自分のデスクへと戻った。
(言われなくたってわかってるし!大体なんで私が脅さなきゃいけないのよ!脅されてるのはこっちだし!やっぱり何言われても関わるべきじゃなかったっ!そもそも本命がいるなら偽装なんてしなくたってその彼女紹介するなりなんなりすればいいじゃないっ!そうよっ!その彼女のためにもこんな馬鹿げた契約解除してもらわなきゃ!!)
苛立ちながらキーボードを叩いているとふと我に返り史果は手を止めた。
(私なんでこんな苛立ってるんだろ・・・?何に対して?元々藤さんとは挨拶程度しかしなかったじゃない、それに戻るだけじゃない・・・)
自分に言い聞かせるように頭の中で何度も繰り返すが、落ち着かない気持ちを拭うことが出来なかった。
(今は、仕事っ!仕事っ!)
史果は両手で頬をパチンと叩き、気を取り直すと一心不乱に仕事へ没頭した。
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