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「おはようございます・・・瀬尾さん何してるんスか?」
史果は、自身の課のあるフロアの廊下付近を牛歩のような歩幅でキョロキョロと挙動不審に歩いていると後ろから同じ課の後輩の男性社員が不思議そうに声をかけてきた。
「お、おはよう、別に何もー」
作り笑顔を浮かべ、先ほどとは違う通常の歩みのスピードでオフィスのドアを開けた。史果は辺りを見渡し基希がまだ出社してないことに少し安堵し、社員のスケジュールが書かれているホワイトボードに目をやった。
(藤さんは早朝ミーティングか)
基希の名前が記入されているプレートの行先欄には“第一会議室・ミーティング”と走り書きで書かれていた。基希のネームプレートを見ながら昨夜のお礼と同時に謝罪もしなくてはいけないと考えると重く深い溜息を無意識に吐いていた。
(・・・あれ?そういえば何で自宅の場所知ってたんだろ?言った記憶もないし・・・あ、そっか、前に私のこと調べたって言ってたからその時住所わかったのか)
基希にどこまで自分の情報が知れ渡ってるのか考えると身震いし、それを考えないようパソコンの電源を入れるとしばらくして女性社員のここぞとばかりの甘い声での挨拶が史果の耳元に入ってきた。
「藤さーん、おはようございますぅー♡早朝からお疲れさまでーす♡会議終わられたんですか?」
昨日の給湯室の件がなかったかのようにあの場にいた女性社員の一人は、凝りもせずこれでもかという程、身体を密着させ基希に近づいた。“狙った獲物は逃がさない”と思わせるその光景に史果は逆に感心し眺めていると女性社員は史果に視線を向け不敵な笑みを向けた。史果は咄嗟に視線を逸らしパソコンのモニターに目をやった。
「おはよ。そうなんだ、決まって慌てて来たから朝何も食べてなくて。今から会社下にあるコンビニ行ってくるところ」
やんわり女性社員から距離を取りいつもの“天使の微笑”を出すと、女性社員はウットリした表情で固まっている隙に基希は彼女から離れオフィスを出て行った。それと同時に史果のスマホにメッセージが届き、ディスプレイを確認すると“資料室”とだけ打たれた文字だけが基希から送られてきた。
☆☆☆
「・・・あのー、藤さん来ましたよ、いますか?」
ドアを開けると電気が付いていないため室内は暗く視界が慣れていない史果は、手探りで回りを確認していると後ろから“ガチャッ”とドアの鍵が閉められたのがわかり振り向くと長身のシルエットが目の前に現れ、思わず声を上げそうになったところで大きな手に口を塞がれた。
「俺だよ」
耳元で囁くように声が当てられその時、軽く息がかかり史果はゾクっと身体を強張らせた。元々興味がなく性格難だと理解していても外見はパーフェクト男子、さすがに史果でもこんな至近距離でイケメンに掠れたような囁く声を出されては狼狽えるのは仕方ないことだった。
基希は手を放し、もう片方の手で部屋の電気を付け史果の顔を見ると頬を紅潮させ口をモゴモゴと動かせているのがツボにあ入ったのか噴き出して笑い出した。
「何今更緊張してんだよ。昨日、散々緊張感ゼロで絡んできてたくせに」
「あっ、えっ、・・・っと、昨日はすっ、すみませんでした。普段あまり飲まないので限界値を把握してなくて」
「そんなんだから佐伯にあんな場所連れてかれるんだろうが」
ぐうの音も出ないとはこのことかと思う程、返す言葉が見つからず只々謝るのが精一杯でいるとクスっと頭上から笑い声が聞こえ、史果の頭にポンと軽く手が置かれる。
「とにかくメモにも書いたが、俺以外の男とは今後一切飲みに行かないこと。偽装とは言え、今は恋人同士なんだから」
「あと・・・」そういうと指で史果の顎を持ち上げ、不思議そうに史果は基希を見つめていると突然、史果の口唇に温かな体温が伝わり、少し開いた口唇から生温かい基希の舌がぬるりと這入ってきた。史果は咄嗟に離れようとしたが、後頭部を押さえられ逃れることは出来ず基希は傍若無人に咥内を激しく蹂躙した。
「昨日の迷惑料ね、まぁこれ以上シたいならシてやってもいいけど♪」
口唇が離れると基希は口角を上げ厭らしい表情で見下ろした。息を切らしたようにはぁ、はぁと涙目で呼吸する史果を見据えるといきなり額にデコピンしてきた。
「痛っ」
「そのアホ面、直してから戻って来いよ」
そう言うと基希は、ご機嫌な様子で部屋を出て行ってしまった。一人残された史果は、事の流れに着いていけず口を半開きにしながらジンジンする額に手を当て、しばらく放心状態で立ち尽くしていた。
「えっ?えっ?!なんで?!迷惑料でなんでキス?!いくら“偽装恋人”とはいえ誰もいない密室であんな事する必要がある?!」
基希の行動が全く理解できず答えが出ないまま、史果の頭の中は先ほどの光景が焼き付き、一向に離れることができなかった。そのせいで自席に戻るのが遅くなり上司に嫌味を言われ、それを見ていた基希と目が合うと悪戯っ子のようなしたり顔を向けてきた。
(アンタのせいでーっ)
苛立ちを向け一睨みしたが、基希には全く効果なく史果は朝からかなりの体力を消耗させられてしまった。
史果は、自身の課のあるフロアの廊下付近を牛歩のような歩幅でキョロキョロと挙動不審に歩いていると後ろから同じ課の後輩の男性社員が不思議そうに声をかけてきた。
「お、おはよう、別に何もー」
作り笑顔を浮かべ、先ほどとは違う通常の歩みのスピードでオフィスのドアを開けた。史果は辺りを見渡し基希がまだ出社してないことに少し安堵し、社員のスケジュールが書かれているホワイトボードに目をやった。
(藤さんは早朝ミーティングか)
基希の名前が記入されているプレートの行先欄には“第一会議室・ミーティング”と走り書きで書かれていた。基希のネームプレートを見ながら昨夜のお礼と同時に謝罪もしなくてはいけないと考えると重く深い溜息を無意識に吐いていた。
(・・・あれ?そういえば何で自宅の場所知ってたんだろ?言った記憶もないし・・・あ、そっか、前に私のこと調べたって言ってたからその時住所わかったのか)
基希にどこまで自分の情報が知れ渡ってるのか考えると身震いし、それを考えないようパソコンの電源を入れるとしばらくして女性社員のここぞとばかりの甘い声での挨拶が史果の耳元に入ってきた。
「藤さーん、おはようございますぅー♡早朝からお疲れさまでーす♡会議終わられたんですか?」
昨日の給湯室の件がなかったかのようにあの場にいた女性社員の一人は、凝りもせずこれでもかという程、身体を密着させ基希に近づいた。“狙った獲物は逃がさない”と思わせるその光景に史果は逆に感心し眺めていると女性社員は史果に視線を向け不敵な笑みを向けた。史果は咄嗟に視線を逸らしパソコンのモニターに目をやった。
「おはよ。そうなんだ、決まって慌てて来たから朝何も食べてなくて。今から会社下にあるコンビニ行ってくるところ」
やんわり女性社員から距離を取りいつもの“天使の微笑”を出すと、女性社員はウットリした表情で固まっている隙に基希は彼女から離れオフィスを出て行った。それと同時に史果のスマホにメッセージが届き、ディスプレイを確認すると“資料室”とだけ打たれた文字だけが基希から送られてきた。
☆☆☆
「・・・あのー、藤さん来ましたよ、いますか?」
ドアを開けると電気が付いていないため室内は暗く視界が慣れていない史果は、手探りで回りを確認していると後ろから“ガチャッ”とドアの鍵が閉められたのがわかり振り向くと長身のシルエットが目の前に現れ、思わず声を上げそうになったところで大きな手に口を塞がれた。
「俺だよ」
耳元で囁くように声が当てられその時、軽く息がかかり史果はゾクっと身体を強張らせた。元々興味がなく性格難だと理解していても外見はパーフェクト男子、さすがに史果でもこんな至近距離でイケメンに掠れたような囁く声を出されては狼狽えるのは仕方ないことだった。
基希は手を放し、もう片方の手で部屋の電気を付け史果の顔を見ると頬を紅潮させ口をモゴモゴと動かせているのがツボにあ入ったのか噴き出して笑い出した。
「何今更緊張してんだよ。昨日、散々緊張感ゼロで絡んできてたくせに」
「あっ、えっ、・・・っと、昨日はすっ、すみませんでした。普段あまり飲まないので限界値を把握してなくて」
「そんなんだから佐伯にあんな場所連れてかれるんだろうが」
ぐうの音も出ないとはこのことかと思う程、返す言葉が見つからず只々謝るのが精一杯でいるとクスっと頭上から笑い声が聞こえ、史果の頭にポンと軽く手が置かれる。
「とにかくメモにも書いたが、俺以外の男とは今後一切飲みに行かないこと。偽装とは言え、今は恋人同士なんだから」
「あと・・・」そういうと指で史果の顎を持ち上げ、不思議そうに史果は基希を見つめていると突然、史果の口唇に温かな体温が伝わり、少し開いた口唇から生温かい基希の舌がぬるりと這入ってきた。史果は咄嗟に離れようとしたが、後頭部を押さえられ逃れることは出来ず基希は傍若無人に咥内を激しく蹂躙した。
「昨日の迷惑料ね、まぁこれ以上シたいならシてやってもいいけど♪」
口唇が離れると基希は口角を上げ厭らしい表情で見下ろした。息を切らしたようにはぁ、はぁと涙目で呼吸する史果を見据えるといきなり額にデコピンしてきた。
「痛っ」
「そのアホ面、直してから戻って来いよ」
そう言うと基希は、ご機嫌な様子で部屋を出て行ってしまった。一人残された史果は、事の流れに着いていけず口を半開きにしながらジンジンする額に手を当て、しばらく放心状態で立ち尽くしていた。
「えっ?えっ?!なんで?!迷惑料でなんでキス?!いくら“偽装恋人”とはいえ誰もいない密室であんな事する必要がある?!」
基希の行動が全く理解できず答えが出ないまま、史果の頭の中は先ほどの光景が焼き付き、一向に離れることができなかった。そのせいで自席に戻るのが遅くなり上司に嫌味を言われ、それを見ていた基希と目が合うと悪戯っ子のようなしたり顔を向けてきた。
(アンタのせいでーっ)
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