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「はぁーー...」
次の日、碧は下駄箱で深い溜息をつきながら内履きに替えいつもより遅い足取りで教室へと向かった。
教室のドア付近から教室内を覗いていると後ろから肩を叩かれ思わず身体をビクつかせ恐る恐る振り向くと一番会いたくなかった人物が碧を見下ろしながら笑顔で立っていた。
「おはよ♪」
「...お、おはようございます」
碧は離れるよう早足でそのまま自席へと向かい貴斗もまた友人たちがいる席へと向かった。昨日の貴斗の言葉の意味にビクつきながらも悟られぬよう鞄から教科書などを机の中へと入れた。何事もなかったかのようにその後の貴斗は碧の元へ寄ることはなく放課後となった。
☆☆☆
「桐野さん、ほんと御免ね」
「ううん、大丈夫だよ。借りたい本もあったし」
別のクラスの図書委員に当番を変わって欲しいと頼まれ碧は放課後図書室へと向かった。今日は割と利用者も少なくカウンターに座り返された本の整理をしているとドアが開く音が聞こえ誰かが入って来たのがわかった。
「お疲れさま、碧ちゃん」
碧は声を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がるかのように心拍数が上がったのがわかった。カウンター越しに立つ貴斗はいつになく上機嫌な様子で碧を見下ろしていた。
「...用がないなら出て行ってください」
碧は顔を見ることなく作業しながら淡々とした口調で貴斗に向けるとにやりと口角を上げカウンターに座りだした。
「ちょっ!他に利用してる生徒もいるんだ「もう誰もいないよ」
貴斗の言葉にハッと顔を上げ周りを見渡すと確かに先ほどまで利用していた生徒たちはいつの間にか誰一人姿はなかった。ここにいるのは自分と貴斗だけ...と感じると同時に碧は急いで荷物を纏めた。その様子に貴斗は目を眇め碧の手首を掴んだ。
「碧ちゃんと初めて喋ったのって図書室だったよね、俺ね、中学ん時付き合ってた子も図書館で出会ってなんか縁があるんだよねー...名前はね、紅音ちゃんて言ってさーほんと可愛い子なんだ。そういえば碧ちゃんのお姉さんと同じ名前だから吃驚しちゃった...しかもこの学校の生徒だったんだね、そうそう吃驚ついでにさこの写真見てよ」
貴斗は碧の意思を無視しながらペラペラと話しポケットから出したスマホをカウンターに置きそこに映った写真を見せられた。
「知り合いの先輩に送ってもらったんだけど碧ちゃんのお姉さん、紅音さんが中学生の頃の写真でさー、元カノにそっくりなんだよね、でも俺が会った彼女は同じ年の子で紅音さんはその時もうハタチ過ぎてたからいくら何でも中学生には流石に見えないよね...これってどういう意味だと思う?ついでに昨日碧ちゃんと一緒にいた大学生の飯野夏樹さんだっけ?もここの出身なんだってねー、二つ上だから俺らが一年の時向こうは三年生で結構人気あった人なんだってね。俺の知り合いの女の子に彼のこと好きだった子がいて色々教えてくれてさ...因みに俺の元カノも身内がここの卒業生で近所の人も通ってるって言ってたんだけどなんか碧ちゃんと元カノの境遇が似てて驚いちゃった」
碧は隙すら与えない貴斗の話を俯いたまま黙って聞いていた。掴まれた手を振り払おうにもさせまいとするかのように力が込められていた。
「...もういい加減にかくれんぼしないで出てきてくんないかな」
碧が顔を上げるとあの時最後に見た冷たく妖艶な表情で見つめられ碧は息をするのを忘れるくらい硬直し貴斗から目が離せなくなっていた。
「...手、放して」
自分が今出せる精一杯の声量で空いているもう片方の手で貴斗の手を払い除けようと掴もうとすると逆にその手も掴まれてしまった。
「キミは誰なの?もういい加減俺を解放してよ」
悲しげな表情で苦笑し貴斗はカウンター内に入り込み碧を椅子から立ち上がらせると自分の胸元に引き寄せ抱き締めた。碧は貴斗の想いが身体に流れ込む感覚に襲われ自然と貴斗の背中に手を添えようとしたが、能海琴花の顔が脳裏に浮かび貴斗の身体を強く押し戻した。
「解放?言ってる意味がわからない...これ以上私に構わないで」
貴斗から離れ、無機質な声色を放ちカウンターの外へと出て鞄を持って図書室から出ようとすると貴斗は無言のまま碧の左腕を引っ張り自分の元へ再度引き寄せ身動き取れないように碧の後頭部を押さえ無理矢理唇を重ねた。
「んっ!...やっ...んぐっ」
貴斗の生温かい舌が碧の咥内へと侵入し縦横無尽に支配していった。長く激しいキスはこの前と比べものにならない位、碧を翻弄させ堕としていった。
“パチンッ!”
室内に乾いた音が響き、碧は空いていた右手で貴斗を押しそのまま頬に平手打ちをかました。
「ふざけるのもいい加減にして!そうよ!私よ!あの時貴方と付き合ってた“紅音”は!嘘を付いたのは悪いと思ってる、でもだからって何なの?!私たちはあの日で終わったの!......お願いだからもう構わないで」
碧は流れる涙を指先で拭い貴斗が怯んだ隙に部屋から出ようとするが再び今度は背後から抱き締められまたも身動きが取れなくなってしまった。
「もうほんとやめ「きみは誤解してるんだっ!」
碧の声を遮るように貴斗は大声で叫び身体を自分の方へと向かせた。
「琴花を知ってるよね?彼女とは付き合ってもないしましてや婚約もしてない...あれは彼女がついた嘘なんだ。碧と別れてから接触したのを知って...誤解を解きたくてももう連絡出来ない状態になってた」
碧はあまりの衝撃的な内容に驚きながらもきっかけとなったあの時の琴花たちとのやり取りを思い出し心臓が締め付けられた。
「...碧、一つ聞きたいんだけど俺のこと本当に好きだった?」
その言葉に碧は顔を上げ貴斗を見上げると今にも泣きそうな歪んだ表情を浮かべ碧をじっと見据えた。
碧は無言のまま小さく頷いた瞬間、碧の両肩を掴み貴斗は先ほどより更に苦しげな表情を向けた。
「じゃあ...何で...何で痕あったの?...あれって昨日の幼馴染だよね、やっぱ俺から乗り換えたの?」
貴斗が話すたびに掴まれた肩の手に力が入り碧は痛みで一瞬顔を歪めるが逃げれる状態ではないのがわかっていたためそのまま耐えた。
「わかったから...全部話すから手放して」
力が抜けたように碧は壁に凭れながら軽く息を吐いた後、何故名前を偽ったのか、夏樹との関係や琴花たちから聞かされた話で貴斗へ不信感を抱いたこと、何故キスマークをつけられたかなどあの時起きた出来事を隠さず淡々と話し貴斗は黙ったまま碧の話を聞き入っていた。
「確かになっちゃんのこともあったし、正直な気持ち最初は阿部くんのこと本当に好きなのかわからなかった、あの時は色んなことが起きすぎて心が壊れてたから...でも阿部くんといると楽しかったし安心できた...なっちゃんのことも忘れられた...だからあの女の子...琴花さんから聞かされた時はほんとにショックだった...“あー、結局私は誰からも必要とされてないんだ”って」
「そんなわけないじゃんか俺がどんな気持ちで...でもそんなこと言ったらそっちもか」
互いに苦笑しながら碧は貴斗に頭を下げた。
「私の嘘から始まったこと...本当にごめんなさい、あの時の私はどうしても普段の自分を曝け出すことができなかった...私を知らない阿部くんになら自分じゃない...姉のように振る舞えるような気がした。それにあの時と違って高校では地味な私だから気付かれないと思ったし仮に気付かれても誤魔化せると思った...でもこれだけは言わせて。私は貴方のこと大好きだった...それと私のこと好きでいてくれてありがと」
頭を上げ泣き腫らした眼が更に赤くなりながら笑顔でお礼の言葉を伝えた。凍り付いていた15歳の時の多感な感情が少しずつ溶け碧はやっと心が軽くなったような気がしていた。そんな碧に貴斗は微笑みながら碧の手を優しく握った。
「これでお互い誤解とかいろいろ解決できたしもう一回やり直そ「それはないです」
碧は間髪入れず言い放ちあまりの衝撃に呆気に取られ貴斗は思わずパシパシと瞬きの数を増やしていた。
「えっ?だってお互い好きだったのに別れてんだよ?俺はきみに会うためにこの学校...」
「それとこれとは別問題です。まさか阿部くんがそこまでして追いかけて来てくれたのは嬉しかったですよ、でもだからって今更じゃないですか?私は15歳の純粋な貴方の事は好きでしたが17歳の女の子をとっかえひっかえしている今の貴方には正直全く興味はありません」
貴斗の言葉を遮り碧は説くように冷静な様子で淡々と言い連ねた。呆然とし微動だにしない貴斗を置いて帰ろうとした時に「ちょっ、ちょっと」正気に戻った貴斗は慌てるように声を掛け碧をその場に留まらせた。
「いやいや、あの時だって...って、...じゃ、じゃあスマホに入ってる連絡全部消すし金輪際他の女の子とは一切かかわらない」
そう言いながら貴斗はスマホを操作し連絡帳に入っている女の子を消そうとしていたのを今度は碧が慌てて阻止した。
「そんなことしなくていいです!とにかく何度も言ってますがもう関わらないで欲しいの」
その言葉に貴斗からぴりついた気配が纏わりつき碧は一瞬怯みながらも彼を見つめていると一転し急に微笑まれ例の写真を見せられた。
「この前の写真スマホの待ち受けにしようかなー、それともアイコン...何にしても他の奴らに見られたら色々広まっちゃうねー、あーでもそうなったら俺らが付き合ってるって噂も立つし碧に悪い虫もつかなくなって一石二鳥かー」
口角を上げ悪い笑みを向けながら碧の伊達眼鏡を取り上げた。取り返そうにもこの前と同じ状況になりなかなか取り戻せずイラついていると貴斗は碧の腰辺りをぐいっと自分の方へと密着するように寄せ耳元に口付けした。
「俺ね、碧のことになるとストッパーぶっ壊れるみたいだから態度次第でどうなるかわかんないし気を付けてね♡」
そう囁くと碧の耳介を舐め上げニヤリと笑みを溢しながら碧の眼鏡を持ってそのまま図書室から出て行った。
「ちょっ、私の眼鏡返してっ!」
耳を押さえながら叫ぶが碧の声は貴斗に届くことなく図書室に一人残され追いかける元気もなくその場に呆然と佇んでいた。貴斗との関係が清算され前へと進めると思いきや最後の怒涛のやり取りに更に頭を抱える結果となり碧は深く深く大きな溜息を吐いた。
次の日、碧は下駄箱で深い溜息をつきながら内履きに替えいつもより遅い足取りで教室へと向かった。
教室のドア付近から教室内を覗いていると後ろから肩を叩かれ思わず身体をビクつかせ恐る恐る振り向くと一番会いたくなかった人物が碧を見下ろしながら笑顔で立っていた。
「おはよ♪」
「...お、おはようございます」
碧は離れるよう早足でそのまま自席へと向かい貴斗もまた友人たちがいる席へと向かった。昨日の貴斗の言葉の意味にビクつきながらも悟られぬよう鞄から教科書などを机の中へと入れた。何事もなかったかのようにその後の貴斗は碧の元へ寄ることはなく放課後となった。
☆☆☆
「桐野さん、ほんと御免ね」
「ううん、大丈夫だよ。借りたい本もあったし」
別のクラスの図書委員に当番を変わって欲しいと頼まれ碧は放課後図書室へと向かった。今日は割と利用者も少なくカウンターに座り返された本の整理をしているとドアが開く音が聞こえ誰かが入って来たのがわかった。
「お疲れさま、碧ちゃん」
碧は声を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がるかのように心拍数が上がったのがわかった。カウンター越しに立つ貴斗はいつになく上機嫌な様子で碧を見下ろしていた。
「...用がないなら出て行ってください」
碧は顔を見ることなく作業しながら淡々とした口調で貴斗に向けるとにやりと口角を上げカウンターに座りだした。
「ちょっ!他に利用してる生徒もいるんだ「もう誰もいないよ」
貴斗の言葉にハッと顔を上げ周りを見渡すと確かに先ほどまで利用していた生徒たちはいつの間にか誰一人姿はなかった。ここにいるのは自分と貴斗だけ...と感じると同時に碧は急いで荷物を纏めた。その様子に貴斗は目を眇め碧の手首を掴んだ。
「碧ちゃんと初めて喋ったのって図書室だったよね、俺ね、中学ん時付き合ってた子も図書館で出会ってなんか縁があるんだよねー...名前はね、紅音ちゃんて言ってさーほんと可愛い子なんだ。そういえば碧ちゃんのお姉さんと同じ名前だから吃驚しちゃった...しかもこの学校の生徒だったんだね、そうそう吃驚ついでにさこの写真見てよ」
貴斗は碧の意思を無視しながらペラペラと話しポケットから出したスマホをカウンターに置きそこに映った写真を見せられた。
「知り合いの先輩に送ってもらったんだけど碧ちゃんのお姉さん、紅音さんが中学生の頃の写真でさー、元カノにそっくりなんだよね、でも俺が会った彼女は同じ年の子で紅音さんはその時もうハタチ過ぎてたからいくら何でも中学生には流石に見えないよね...これってどういう意味だと思う?ついでに昨日碧ちゃんと一緒にいた大学生の飯野夏樹さんだっけ?もここの出身なんだってねー、二つ上だから俺らが一年の時向こうは三年生で結構人気あった人なんだってね。俺の知り合いの女の子に彼のこと好きだった子がいて色々教えてくれてさ...因みに俺の元カノも身内がここの卒業生で近所の人も通ってるって言ってたんだけどなんか碧ちゃんと元カノの境遇が似てて驚いちゃった」
碧は隙すら与えない貴斗の話を俯いたまま黙って聞いていた。掴まれた手を振り払おうにもさせまいとするかのように力が込められていた。
「...もういい加減にかくれんぼしないで出てきてくんないかな」
碧が顔を上げるとあの時最後に見た冷たく妖艶な表情で見つめられ碧は息をするのを忘れるくらい硬直し貴斗から目が離せなくなっていた。
「...手、放して」
自分が今出せる精一杯の声量で空いているもう片方の手で貴斗の手を払い除けようと掴もうとすると逆にその手も掴まれてしまった。
「キミは誰なの?もういい加減俺を解放してよ」
悲しげな表情で苦笑し貴斗はカウンター内に入り込み碧を椅子から立ち上がらせると自分の胸元に引き寄せ抱き締めた。碧は貴斗の想いが身体に流れ込む感覚に襲われ自然と貴斗の背中に手を添えようとしたが、能海琴花の顔が脳裏に浮かび貴斗の身体を強く押し戻した。
「解放?言ってる意味がわからない...これ以上私に構わないで」
貴斗から離れ、無機質な声色を放ちカウンターの外へと出て鞄を持って図書室から出ようとすると貴斗は無言のまま碧の左腕を引っ張り自分の元へ再度引き寄せ身動き取れないように碧の後頭部を押さえ無理矢理唇を重ねた。
「んっ!...やっ...んぐっ」
貴斗の生温かい舌が碧の咥内へと侵入し縦横無尽に支配していった。長く激しいキスはこの前と比べものにならない位、碧を翻弄させ堕としていった。
“パチンッ!”
室内に乾いた音が響き、碧は空いていた右手で貴斗を押しそのまま頬に平手打ちをかました。
「ふざけるのもいい加減にして!そうよ!私よ!あの時貴方と付き合ってた“紅音”は!嘘を付いたのは悪いと思ってる、でもだからって何なの?!私たちはあの日で終わったの!......お願いだからもう構わないで」
碧は流れる涙を指先で拭い貴斗が怯んだ隙に部屋から出ようとするが再び今度は背後から抱き締められまたも身動きが取れなくなってしまった。
「もうほんとやめ「きみは誤解してるんだっ!」
碧の声を遮るように貴斗は大声で叫び身体を自分の方へと向かせた。
「琴花を知ってるよね?彼女とは付き合ってもないしましてや婚約もしてない...あれは彼女がついた嘘なんだ。碧と別れてから接触したのを知って...誤解を解きたくてももう連絡出来ない状態になってた」
碧はあまりの衝撃的な内容に驚きながらもきっかけとなったあの時の琴花たちとのやり取りを思い出し心臓が締め付けられた。
「...碧、一つ聞きたいんだけど俺のこと本当に好きだった?」
その言葉に碧は顔を上げ貴斗を見上げると今にも泣きそうな歪んだ表情を浮かべ碧をじっと見据えた。
碧は無言のまま小さく頷いた瞬間、碧の両肩を掴み貴斗は先ほどより更に苦しげな表情を向けた。
「じゃあ...何で...何で痕あったの?...あれって昨日の幼馴染だよね、やっぱ俺から乗り換えたの?」
貴斗が話すたびに掴まれた肩の手に力が入り碧は痛みで一瞬顔を歪めるが逃げれる状態ではないのがわかっていたためそのまま耐えた。
「わかったから...全部話すから手放して」
力が抜けたように碧は壁に凭れながら軽く息を吐いた後、何故名前を偽ったのか、夏樹との関係や琴花たちから聞かされた話で貴斗へ不信感を抱いたこと、何故キスマークをつけられたかなどあの時起きた出来事を隠さず淡々と話し貴斗は黙ったまま碧の話を聞き入っていた。
「確かになっちゃんのこともあったし、正直な気持ち最初は阿部くんのこと本当に好きなのかわからなかった、あの時は色んなことが起きすぎて心が壊れてたから...でも阿部くんといると楽しかったし安心できた...なっちゃんのことも忘れられた...だからあの女の子...琴花さんから聞かされた時はほんとにショックだった...“あー、結局私は誰からも必要とされてないんだ”って」
「そんなわけないじゃんか俺がどんな気持ちで...でもそんなこと言ったらそっちもか」
互いに苦笑しながら碧は貴斗に頭を下げた。
「私の嘘から始まったこと...本当にごめんなさい、あの時の私はどうしても普段の自分を曝け出すことができなかった...私を知らない阿部くんになら自分じゃない...姉のように振る舞えるような気がした。それにあの時と違って高校では地味な私だから気付かれないと思ったし仮に気付かれても誤魔化せると思った...でもこれだけは言わせて。私は貴方のこと大好きだった...それと私のこと好きでいてくれてありがと」
頭を上げ泣き腫らした眼が更に赤くなりながら笑顔でお礼の言葉を伝えた。凍り付いていた15歳の時の多感な感情が少しずつ溶け碧はやっと心が軽くなったような気がしていた。そんな碧に貴斗は微笑みながら碧の手を優しく握った。
「これでお互い誤解とかいろいろ解決できたしもう一回やり直そ「それはないです」
碧は間髪入れず言い放ちあまりの衝撃に呆気に取られ貴斗は思わずパシパシと瞬きの数を増やしていた。
「えっ?だってお互い好きだったのに別れてんだよ?俺はきみに会うためにこの学校...」
「それとこれとは別問題です。まさか阿部くんがそこまでして追いかけて来てくれたのは嬉しかったですよ、でもだからって今更じゃないですか?私は15歳の純粋な貴方の事は好きでしたが17歳の女の子をとっかえひっかえしている今の貴方には正直全く興味はありません」
貴斗の言葉を遮り碧は説くように冷静な様子で淡々と言い連ねた。呆然とし微動だにしない貴斗を置いて帰ろうとした時に「ちょっ、ちょっと」正気に戻った貴斗は慌てるように声を掛け碧をその場に留まらせた。
「いやいや、あの時だって...って、...じゃ、じゃあスマホに入ってる連絡全部消すし金輪際他の女の子とは一切かかわらない」
そう言いながら貴斗はスマホを操作し連絡帳に入っている女の子を消そうとしていたのを今度は碧が慌てて阻止した。
「そんなことしなくていいです!とにかく何度も言ってますがもう関わらないで欲しいの」
その言葉に貴斗からぴりついた気配が纏わりつき碧は一瞬怯みながらも彼を見つめていると一転し急に微笑まれ例の写真を見せられた。
「この前の写真スマホの待ち受けにしようかなー、それともアイコン...何にしても他の奴らに見られたら色々広まっちゃうねー、あーでもそうなったら俺らが付き合ってるって噂も立つし碧に悪い虫もつかなくなって一石二鳥かー」
口角を上げ悪い笑みを向けながら碧の伊達眼鏡を取り上げた。取り返そうにもこの前と同じ状況になりなかなか取り戻せずイラついていると貴斗は碧の腰辺りをぐいっと自分の方へと密着するように寄せ耳元に口付けした。
「俺ね、碧のことになるとストッパーぶっ壊れるみたいだから態度次第でどうなるかわかんないし気を付けてね♡」
そう囁くと碧の耳介を舐め上げニヤリと笑みを溢しながら碧の眼鏡を持ってそのまま図書室から出て行った。
「ちょっ、私の眼鏡返してっ!」
耳を押さえながら叫ぶが碧の声は貴斗に届くことなく図書室に一人残され追いかける元気もなくその場に呆然と佇んでいた。貴斗との関係が清算され前へと進めると思いきや最後の怒涛のやり取りに更に頭を抱える結果となり碧は深く深く大きな溜息を吐いた。
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