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11-Past 6-
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夕暮れになり涼しげな風も出始め、日中の茹だるような暑さとは違い和らいではきたが残暑はまだまだ厳しく動くと少し汗ばんだ。碧は公園のベンチに座り、犬の散歩をする人、ジョギングをする人などをぼーっと眺めていた。
『......もっもしもし?!えっ、あっ、今日もダメ元で掛けてたから...ごめん、今かなり動揺してて...掛けてきといてなんだよってカンジだよね』
貴斗の焦りが目に浮かび笑ってしまいそうになるのを必死に抑え、碧は深呼吸した。
「...電話掛け直さなくてごめんね」
『ううん、全然気にしないで......僕が悪いから。紅音ちゃん、こんなこと言ったら呆れてドン引きされるの覚悟で言うけど......今から会って話させてもらえないかな?もちろんこの間みたいなことは絶対しない!二人っきりになるような場所も選ばない、何だったら紅音ちゃんが決めてくれればそこへ行くから』
受話口から貴斗の必死な言葉に碧はしばらく考え込み図書館近くにあった公園で待ち合わせすることにした。
貴斗との電話を切った後、泣き腫らし赤くなってしまった目元をメイクで隠し念のためカラコンは控え伊達メガネと目立たないようキャップを被り準備を整え部屋を出た。玄関で靴を履いていると物音に気付いた母親が顔を出してきた。
「どこ行くの?!もうすぐ夕飯になるのに」
「ちょっとコンビニ」
背を向けたまま自宅を後にした。
☆☆☆
「ごめん、言い出した本人が遅刻って」
急いで漕いだのか額の汗を拭い自転車から降りるとベンチに座っていた碧の拳一つ分空けて隣に座った。鞄からペットボトルを二本取り出し一つを碧に渡した。
「ありがと」
碧はすぐに蓋を開け一口含んだ。冷たい炭酸液が喉元を通り胃の中に流れスッキリしていく気がした。隣にいる貴斗もゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み一呼吸置くとバッと勢いよく此方に身体を向け、
「この前はほんとにごめんっ!!」
大きな声で深々と頭を下げてきた。周りにいた通行人は何事かと此方をちらちらと見、恥ずかしくなった碧は慌てて貴斗に顔を上げてもらった。
「ちょっ、ちょっとこんなとこでやめてよっ」
碧は貴斗に注意すると更にしょげたように項垂れ、まるで飼い主に怒られた子犬のようになっていた。
「…ひとつ聞きたいんだけど紅音ちゃんの好きな人って...もしかしてこの前ご飯作ったって言ってた幼馴染?」
唐突に言い放たれた言葉に碧は目を丸くし「あー...」と歯切れの悪い声を出してしまった。その態度に確信したのか貴斗は深い息を吐き俯いた姿勢でポツリポツリと話し出した。
「あの時キヨさんと話すキミの顔を見た時物凄くイラついたんだ...だって紅音ちゃんの顏すごくキラキラしてたから、その幼馴染の彼の事が好きなんだろうなって......そう思ったらもう自分でも訳が分かんない行動取ってた...でも同意もないのにそんなことしてキミを傷つけてしまったことは謝っても許されることじゃないよね、ほんとにごめ、.....って紅音ちゃん目どうしたの?」
通常より厚めにファンデーションとアイカラーを目元にし念押しとしてキャップで隠すよう被っていたのに貴斗が顔を上げ碧の顏をしっかりと見るや否やあっさりばれ碧は思わず目線を逸らした。
「何かあった?」
目線を逸らしたままの碧の顔を覗き込み貴斗は心配そうな表情で優しく問いかけた。碧は観念したように軽く息を吐き貴斗の方へと視線を戻した。
「今日嫌なことが立て続けにあって.....こっちこそなんかごめんね、あんだけ電話とんなかったのに自分が弱くなった途端こうだもんね、はは...最低だな私」
夏樹のことを貴斗に話すのは敢えて避け冗談ぽく笑いながら話すと憂いな表情で碧を凝視していた。まるで心の中までも見透かされるような視線に碧は身を竦めた。
「それでも...それでもいいよ、紅音ちゃんが僕を頼ってくれたから。だってその幼馴染には言えないことなんでしょ?なら僕がいくらでも代わりになって紅音ちゃんの話聞くよ」
此方を真っ直ぐ見据え話す貴斗の言葉に先ほど見た夏樹に懇願した朋絵とリンクしてしまい碧は胸が締め付けられた。
「...もしかしてその幼馴染と何かあったの?」
確信をつかれ思わず身体を硬直させると碧の態度に貴斗は察し碧の頬にペットボトルを触っていたからかほどよく冷えた掌が優しく包み込むように触れた。
「僕は紅音ちゃんの笑顔が初めて会った時から大好きなんだ、僕なら絶対にこんな顔にはさせない。この前のことはほんとに申し訳ないと思ってる...でもこれだけはわかって欲しいんだ、僕は冗談半分であんなことしたんじゃない...会って間もないけどこんな気持ちなったの初めてだし会えば会うほど好きになっていった。紅音ちゃんが他のヤツ見てるの知ってたけど僕の事も少しは意識してくれないかな」
想っていたことを全部口にしたからか貴斗の頬は赤く染まり何かを紛らわすように横に置いてあったペットボトルを一気に口に含んだ。
「...ありがと、阿部くんは優しいね。こんな私にも気遣ってくれて.....でも私はそんな阿部くんが思うような人間じゃないよ」
居た堪れず作り笑顔を浮かべると貴斗は膝の上に置いてあった碧の手を取り、
「僕は紅音ちゃんが好きだ、こんな弱ってる時に卑怯かもしれないけど…力になりたいんだ。今すぐは無理かもしれないけど好きだった人のこと忘れられるくらい僕が紅音ちゃんの傍にいるから」
真っ直ぐに気持ちをぶつける貴斗に後ろめたさが込み上げ躊躇った。もし自分の姿、心に偽りがなかったなら…そう想いながらも反面、縋りたい拠り所が欲しい気持ちが碧の頭の中をグチャグチャにさせた。
「…阿部くんて変わってるね、夏休みも終わるしお互い学校も違うからそんなに会えないのにいいの?」
夏樹への気持ちが完全になくなったわけではなく貴斗に対して恋愛感情が芽生えたのかすらわからなかったが壊れかけた碧の心は手を差し伸べてくれる貴斗に助けてもらう選択肢をとるしかなかった。
「もちろん、休みの日に会えればそれだけで十分だよ。お互い受験生だし高校までの辛抱だからね…ありがと、大好きだよ紅音ちゃん」
『......もっもしもし?!えっ、あっ、今日もダメ元で掛けてたから...ごめん、今かなり動揺してて...掛けてきといてなんだよってカンジだよね』
貴斗の焦りが目に浮かび笑ってしまいそうになるのを必死に抑え、碧は深呼吸した。
「...電話掛け直さなくてごめんね」
『ううん、全然気にしないで......僕が悪いから。紅音ちゃん、こんなこと言ったら呆れてドン引きされるの覚悟で言うけど......今から会って話させてもらえないかな?もちろんこの間みたいなことは絶対しない!二人っきりになるような場所も選ばない、何だったら紅音ちゃんが決めてくれればそこへ行くから』
受話口から貴斗の必死な言葉に碧はしばらく考え込み図書館近くにあった公園で待ち合わせすることにした。
貴斗との電話を切った後、泣き腫らし赤くなってしまった目元をメイクで隠し念のためカラコンは控え伊達メガネと目立たないようキャップを被り準備を整え部屋を出た。玄関で靴を履いていると物音に気付いた母親が顔を出してきた。
「どこ行くの?!もうすぐ夕飯になるのに」
「ちょっとコンビニ」
背を向けたまま自宅を後にした。
☆☆☆
「ごめん、言い出した本人が遅刻って」
急いで漕いだのか額の汗を拭い自転車から降りるとベンチに座っていた碧の拳一つ分空けて隣に座った。鞄からペットボトルを二本取り出し一つを碧に渡した。
「ありがと」
碧はすぐに蓋を開け一口含んだ。冷たい炭酸液が喉元を通り胃の中に流れスッキリしていく気がした。隣にいる貴斗もゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み一呼吸置くとバッと勢いよく此方に身体を向け、
「この前はほんとにごめんっ!!」
大きな声で深々と頭を下げてきた。周りにいた通行人は何事かと此方をちらちらと見、恥ずかしくなった碧は慌てて貴斗に顔を上げてもらった。
「ちょっ、ちょっとこんなとこでやめてよっ」
碧は貴斗に注意すると更にしょげたように項垂れ、まるで飼い主に怒られた子犬のようになっていた。
「…ひとつ聞きたいんだけど紅音ちゃんの好きな人って...もしかしてこの前ご飯作ったって言ってた幼馴染?」
唐突に言い放たれた言葉に碧は目を丸くし「あー...」と歯切れの悪い声を出してしまった。その態度に確信したのか貴斗は深い息を吐き俯いた姿勢でポツリポツリと話し出した。
「あの時キヨさんと話すキミの顔を見た時物凄くイラついたんだ...だって紅音ちゃんの顏すごくキラキラしてたから、その幼馴染の彼の事が好きなんだろうなって......そう思ったらもう自分でも訳が分かんない行動取ってた...でも同意もないのにそんなことしてキミを傷つけてしまったことは謝っても許されることじゃないよね、ほんとにごめ、.....って紅音ちゃん目どうしたの?」
通常より厚めにファンデーションとアイカラーを目元にし念押しとしてキャップで隠すよう被っていたのに貴斗が顔を上げ碧の顏をしっかりと見るや否やあっさりばれ碧は思わず目線を逸らした。
「何かあった?」
目線を逸らしたままの碧の顔を覗き込み貴斗は心配そうな表情で優しく問いかけた。碧は観念したように軽く息を吐き貴斗の方へと視線を戻した。
「今日嫌なことが立て続けにあって.....こっちこそなんかごめんね、あんだけ電話とんなかったのに自分が弱くなった途端こうだもんね、はは...最低だな私」
夏樹のことを貴斗に話すのは敢えて避け冗談ぽく笑いながら話すと憂いな表情で碧を凝視していた。まるで心の中までも見透かされるような視線に碧は身を竦めた。
「それでも...それでもいいよ、紅音ちゃんが僕を頼ってくれたから。だってその幼馴染には言えないことなんでしょ?なら僕がいくらでも代わりになって紅音ちゃんの話聞くよ」
此方を真っ直ぐ見据え話す貴斗の言葉に先ほど見た夏樹に懇願した朋絵とリンクしてしまい碧は胸が締め付けられた。
「...もしかしてその幼馴染と何かあったの?」
確信をつかれ思わず身体を硬直させると碧の態度に貴斗は察し碧の頬にペットボトルを触っていたからかほどよく冷えた掌が優しく包み込むように触れた。
「僕は紅音ちゃんの笑顔が初めて会った時から大好きなんだ、僕なら絶対にこんな顔にはさせない。この前のことはほんとに申し訳ないと思ってる...でもこれだけはわかって欲しいんだ、僕は冗談半分であんなことしたんじゃない...会って間もないけどこんな気持ちなったの初めてだし会えば会うほど好きになっていった。紅音ちゃんが他のヤツ見てるの知ってたけど僕の事も少しは意識してくれないかな」
想っていたことを全部口にしたからか貴斗の頬は赤く染まり何かを紛らわすように横に置いてあったペットボトルを一気に口に含んだ。
「...ありがと、阿部くんは優しいね。こんな私にも気遣ってくれて.....でも私はそんな阿部くんが思うような人間じゃないよ」
居た堪れず作り笑顔を浮かべると貴斗は膝の上に置いてあった碧の手を取り、
「僕は紅音ちゃんが好きだ、こんな弱ってる時に卑怯かもしれないけど…力になりたいんだ。今すぐは無理かもしれないけど好きだった人のこと忘れられるくらい僕が紅音ちゃんの傍にいるから」
真っ直ぐに気持ちをぶつける貴斗に後ろめたさが込み上げ躊躇った。もし自分の姿、心に偽りがなかったなら…そう想いながらも反面、縋りたい拠り所が欲しい気持ちが碧の頭の中をグチャグチャにさせた。
「…阿部くんて変わってるね、夏休みも終わるしお互い学校も違うからそんなに会えないのにいいの?」
夏樹への気持ちが完全になくなったわけではなく貴斗に対して恋愛感情が芽生えたのかすらわからなかったが壊れかけた碧の心は手を差し伸べてくれる貴斗に助けてもらう選択肢をとるしかなかった。
「もちろん、休みの日に会えればそれだけで十分だよ。お互い受験生だし高校までの辛抱だからね…ありがと、大好きだよ紅音ちゃん」
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