元カレが追ってきた

なかな悠桃

文字の大きさ
上 下
1 / 1

元カレが追ってきた

しおりを挟む
「カンパーイ!!」

男女交互に座りグラス片手に皆盛り上がっていた.......山下歩乃やましたほの、ただ一人を除いては。

(何故?!どうして?!)

歩乃はグラスを両手で握りしめ自分の顔色が段々と蒼白になっていくのを自覚した。
とにかく目の前の端正な顔立ちの男から早く立ち去りたい、早く家に帰りたい気持ちでいっぱいで周囲の声など全く聞こえない状態に陥っていた。

(ドラマや漫画の世界じゃあるまいしまさか合コンの席で目の前に元カレがいるなんて...)

しかも一方的に別れあらゆる連絡という全てのツールを遮断し逃げるように地元を出た。親以外居住はもちろん、大学すら一部の友人にしか教えていなかった。

「歩乃ちゃん楽しんでるー?なんか顔色悪くない?」

隣に座る如何にもチャラそうな男に絡まれ苦笑いしてると

大学で知り合った友人の梨央が「歩乃こういう場になれてなくて」と話に割って入ってくれ歩乃は心の中で少しホッと胸を撫で下ろしていた。

目の前に座る男は両隣を陣取る女性たちと楽しげに会話を弾ませていた。

(自分だけが気にしているだけで相手はさほど気にしていないのだろうな…)

とは言えやはりこの場をやり過ごせるほど歩乃のスキルは高くない。

始まったばかりの宴に水を差すことはしたくなかったがこの状況から逃げ出したい気持ちの方が勝りチャラ男の隣にいる梨央にトイレに行くことを伝えバッグを持ち一旦個室から出た。歩乃は気づかれないよう小走りでそのまま出入口付近へと向かった。

(梨央には気分が悪くなったから帰ると連絡しておこっと)

歩乃はスマホを出し梨央とのトーク画面を開き文字を打っていると

「歩乃」

聞き覚えのある声にビクッと体を震わせた。恐る恐る振り向くと先程目の前にいた眉目秀麗な面持ちの男が歩乃を呼び止めた。

「久しぶり、...ってトイレ行くって言ってたのに逆じゃない?まさか帰るとか?」

ニコニコしながら話してかけてくる男に、いつの間に?!と思うが頭の回転が上手くいかずしどろもどろになり頬を人差し指で掻きながら、

「あれー?御手洗こっちじゃなかったっけーハハハー…」


「……」

「……」
(我ながら情けない位の返し.....)

苦しい嘘にその場の空気が一瞬にして零下と化し、男は不敵な笑みを浮かべ此方に視線を向けていた。

「…歩乃こういうの合コン苦手だったよね?」

「一人来れなくなったからって.....急遽頼まれて」

ふーんと怪訝そうな顔に挙動不審になりながらも目の前にいる男、良平に答えた。


尾上良平、彼とは高校3年の時のクラスメイトで初めて付き合った相手だった。異性が苦手で内気、人見知りな性格の歩乃とは対照的に明るく男女問わず人気者、頭も良ければ顔も良い、まさに2次元の世界から出てきた王子そのものの様な存在だった。

歩乃とは委員会が同じになり、たまたま教室での席も隣同士と偶然が重なり少しずつ話す機会が増えていった。自分にはないものをたくさん持っている良平に気付くと歩乃は惹かれていた。

そんな時、良平からまさかの告白を受け二つ返事で付き合うことになった。
モテる良平との交際は歩乃にもしもの事があると危険ということでしばらくは内緒にしようということになった。休みの日はなるべく校内の生徒に会わなそうな場所を選び少し遠出をし2人の時間を楽しんだ。

良平との関係は内気な歩乃にとって新しい世界が開かれたかのように新鮮で楽しい日々であった。ただ、手は繋ぐことはあってもそれ以上のことはなく少し物足りなさもあったが自分の事を大事にしてくれる姿勢が嬉しかった。


_______

放課後、歩乃は担任から頼まれた資料を職員室に届け帰ろうと廊下を歩いていると自分の教室から数人の男子生徒の声が聞こえてきた。その会話の中に良平の名前が聞こえ歩乃は興味本位で足を止めた。


「今回のこのままいけば良平と良平に賭けたやつの勝ちだな」

「あーいう“地味子タイプ”は良平のこと避けると思ってたのによークソー」

「やっぱ顏いいと得だよなー」

「バカっ!俺ら以外には内緒なんだから、誰かに聞かれたら良平にブチ切れられんぞっ」

「でもさ、いつまで続けんだろうな?とりあえず付き合ったんだしそろそろネタバレすればいいのにな」

「さぁな、まぁ受験もあるし別れて山下がショックで落ちたら後味悪いから卒業式まではやるんじゃねーの」

「もしかしたらダメになるかもしんねーしまだまだチャンスはありそうだな」


教室にいる男子たちからの会話は一瞬にして歩乃の頭の中を真っ白にさせた。

そのあとどうやって家に帰ったのか全く覚えておらず只々ショックだった…でも何故だか不思議と涙は出なかった。


翌朝、歩乃は学校の準備をし玄関へと向かう。昨晩はあまり寝ることができず頭が働かない状態になっていたがそんなことで休むわけにはいかず重い足取りで靴を履いた。

玄関のドアを開けると数メートル先で良平がスマホを弄りながら待っていた。歩乃が出てきたのに気づくとスマホをしまい歩乃の元へ近付いてきた。

「おはよ」

ニコっと朝から屈託のない笑顔を向けられ歩乃は目を逸らしそうになるのをグッと堪え、

「おはよう」

歩乃も笑顔で返した。

付き合ってからは毎朝良平が歩乃の家まで迎えに来て駅まで向かうようになっていた。

「...何かあった?」

普通にしているつもりが違和感があったのか、良平は怪訝そうな表情で歩乃の顔を覗き込み歩乃は首を横に振り笑顔で答えた。良平は納得していないのか少し不満気な表情をしていたが、気持ちを切り替え指を絡ませるように歩乃と手を繋ぎ他愛もない会話をしながら駅へと向かった。


駅付近に近づくと歩乃は手を離し「じゃ、先行くね」と前を歩いて行った。駅には自分の学校の生徒も多く利用しているため駅からは別行動にすることを二人で決めていた。

歩乃は少しホッとしていた。昨日のことが頭から離れず良平の話をうわの空で聞きながらいた為、時折良平から「聞いてる?」などと言われる始末であった。

ちらっと後ろを振り向くと既に数人の同級生の男女と話している良平の姿が見られすぐさま前を向き俯きながら歩乃は足早でホームへと向かった。


――――――――――
「遅くなってごめーん」

帰宅途中、良平から『少しでいいから会わない?』と連絡が入り家の近くの公園で待ち合わせをしていた。

良平の手にはコーヒーショップの袋があり中から歩乃の好きな抹茶のフラペチーノを出し手渡した。良平はベンチに座る歩乃の隣に座り自分用に買ったアイスティーを出した。

「ありがとう」

良平は「いーえ」とニカッと笑いアイスティーを飲みながらしばらく雑談していると

「歩乃は進学どうすんの?」

「良平くんは?」

「俺は多分地元の大学行くかな」

「私は.....」

その時歩乃は一つの嘘をついた。

「多分私も地元の大学の医学部かな」

前に図書館で歩乃はたまたま手に取った医療の本を読んだ時、著者の大学教授の言葉が胸に刺さりそこからいくつか出版していた教授の著書を読み漁り医療系の仕事に就きたいと思うようになった。地元にもそういった大学はあるが、ある大学でその教授が教壇に立っていることを知りその大学に入学したいと目指すようになった。

でもそれを良平には言わず地元での進学という嘘を告げたのだ。

「そっかー、そしたら高校卒業してもこのまま一緒にいられるな」

歩乃の頭をポンポンと撫でながらホッとした様子でいる良平に不信感が募った。

自分とは賭けで付き合ってるのになんで卒業後の話をしてくるのか。

(あー...そうか、怪しまれないように先があるように見せかけてるんだ。今バレたら賭けに逆転負けしちゃうかもしれないもんね)

歩乃は一人納得し自嘲していた。そんな歩乃を不思議そうに良平は窺っていた。

そのあとは他愛もない話をし夕飯時まで公園で話し込んだ.....と言っても一方的に良平が喋っていたのだが。


歩乃は部屋のベッドに横たわり今後の計画を練った。

良平は地元の大学に進むと言っていたので卒業後は離れられる。卒業式の日にこちらから別れを告げ、自分の連絡先を全て変更しここへはしばらく戻らない覚悟でいようと心に決めた。

(自分を賭けの対象にしたくらいだ、大して何も思わないだろう。笑い者にされるくらいならこっちから振ってやる)

そう思うと歩乃は次第に気持ちが軽くなっていった。




そして当日、その日に言うつもりがやはり人気者、なかなか話す機会が持てず学校ではそのまま終わってしまった。歩乃は明日早朝には両親と共に新しい新居への準備で家を出る。仕方なく電話で話そうとかけるが出る気配はない。仕方なくトーク画面を開き別れの文章を送ったあとすぐに電源を切り携帯ショップで番号の変更をしに向かった。

そして彼との連絡はそこで途絶えた。


―――――――――――
「あれー?なんで良平と歩乃ちゃんが一緒にいんのー?」

「トイレで会ったから一緒に戻っただけ」

チャラ男に答える良平に連れ戻された歩乃は先程の定位置へと渋々戻った。隣のチャラ男はすでに出来上がってるのかやけに身体に触れてきた。

「巧、飲みすぎだぞ」

良平は歩乃と巧の間に割って入り込んで座わった。歩乃的には助かったがこれはこれで神経をすり減らす状態になり、げんなりしてしまった。戻ってからの良平は何故か機嫌が悪く先程まで周囲にいた女の子達も相手にしてもらえなくなったことで違う席へと散っていった。良平は無言のままアルコールを摂取する頻度が多くなっていき鬼気迫る感じで隣にいる歩乃は居た堪れなくなっていた。

「歩乃どしたの?」

梨央が歩乃に近づき話しかけてきてくれた。天の助けと言わんばかりに自然な装いで立ち上がろうとするとぎゅっとフレアスカートの裾を良平に掴まれた。

「どこ行くの?」

トロンとした目付きで歩乃を見つめ先程の不機嫌さはとっくに消え去っていた。

「...尾上くん酔っ払ってるの?」

歩乃が手を離ししてもらおうとスカートを引っ張ると良平はパッと手を離したが、すぐ上から歩乃の手を掴み良平のところへ引っ張られ胸元に顔をぶつけた。

「ちょっ!」

良平に抱き締められるような体勢になり離れようと動くがなかなかうまくいかなかった。周囲の視線が気になり抵抗すると周りの男子たちから、

「こらーっ!良平それセクハラーっ」

皆酔っ払ってるのか笑いながらチャチャは入れても誰も助けてはくれず傍にいる梨央にも「いーなー」と羨ましがられる始末だった。

(酔っ払いってこんな力あるの?!)

歩乃は全身の力を使って良平を押しのけようとすると今度は歩乃の肩に額を乗せてきた。

「もういい加減に「...ぎもぢ悪い...」」

歩乃は口を押さえる良平にあたふたしていると

「...悪い、飲みすぎたし俺先帰るわ。申し訳ないけどタクシー拾うの付き合ってもらいたいんだけど...いい?」

尋ねられるような言い方だったはずだが有無を言わさず良平は手際よく財布から自分と歩乃の分の飲み代を幹事に渡し歩乃を連れ店をあとにした。

「...良平くん、大丈夫?ってかお金」

歩乃は自分の財布から先程置いていった分を返そうとしたが先ほどより具合が悪くなったのか項垂れる良平に受け取れる状況はなく良平の鞄にそっと入れておいた。

「良平くん帰るとこどこ?」

良平は地元の大学に通ってるはずで歩乃がいるこことは車でも3時間以上はかかる場所だ。何故あのメンバーの中にいたのか聞きたかったが今はそれどころではないためタクシーを探した。やっとタクシーを捕まえ良平を乗せたはいいがどこへ行けばいいかわからない。良平は項垂れていて話せる状態ではないし歩乃は渋々自分も乗車し歩乃の住んでいるアパートへと向かった。

いくら華奢な男とは言えやはり男.....重い。引きずるように抱えやっとの思いで鍵を開け力尽きたかのように玄関で倒れ込んでしまった。ただ、倒れ方がまずかったのか歩乃は良平に覆いかぶさられる体勢になってしまい抜け出せずにいた。

「良平くん...重いよー、ちょっとどいてほしい」

苦しそうに藻掻くが良平はピクリとも動かない。逆に心配なり顔を覗くと良平の唇が歩乃の唇に勢いよく重なった。

「っん.....」

いきなりのことで歩乃は避けることもできず呆然とその行為を受け入れてしまった。抵抗しないのをいい事に良平はぬるっと歩乃の口の隙間から舌を入れ歯列をなぞり舐め回した。


......もう絶対どこにも行かせない」


良平は一旦唇を離したがすぐさま重ね歩乃の咥内を更に深く貪り、手が服の上から身体を優しく触れてきた。

「りょ...へい.....く....や....て」

歩乃は良平を押し返そうとするが全く歯が立たない。

良平は起き上がり歩乃と自分の靴を玄関に放り投げ、そのまま歩乃を掬うように抱き抱え勝手に部屋へと入っていく。先程まで歩くのも覚束無い様子だったはずなのにしっかりした足取りで進んでいった。

歩乃を優しくベッドに下ろし良平は馬乗りの体勢になり見下ろしながら、

「ごめんね、騙して。俺...酒強いんだ」

歩乃は唖然としてしまい言葉を失っていた。

「ど.....どうして.....?」

歩乃は震える声で良平に問いかけた。良平は掌で歩乃の頬を包みながら耳元に唇を寄せ

「歩乃が勝手に俺の前から消えたお仕置き」

急に無機質な程の声色で囁かれると同時にトップスを捲し上げられ胸元が露わになった。ブラを下にずらし胸の先端がさらけ出された。

良平とはプラトニックな関係のまま別れ、その後も誰とも付き合うことなくここまできたため異性に身体を見られたこともなく危機的状況も味わったことがなかった。いざ抵抗したくても身体が思うように動いてくれず、そうしている間にも良平は歩乃の乳首を口に含み舌でクリクリと弄んでいた。

「ふぁっ.....ぁ、ふ.....んんっっ」

歩乃は、自分から発せられる恥ずかしい声に慌てて口元を押さえた。

「声押さえたらだめ」

口元を覆っていた両手を掴まれ良平の指と絡み合うように押さえつけられた。舐められ硬く尖った先端に再び吸い付き口許を手で押さえられない歩乃は喘ぎ声を押し殺すように唇をぎゅっと閉めた。

「歩乃.....」

良平の恍惚な表情に惹き込まれそうになるのを堪えていると、


「俺があれ卒業式以来どんな気持ちでいたかわかる?」

片方の手を離し指で歩乃の唇をなぞるように触れながら首筋にチクッとした痛みを付けられる。紅く色付いた印を愛おしそうに眺めながら、

「歩乃にやっと触れれた」

目を細め笑みを溢しながらブラのホックをパチっと外し身体から抜き取った。揺れる大きな膨らみを良平の大きく骨ばった手が揉みしだいていく。指の腹でクニクニと先端を転がされ歩乃は受ける衝撃に下半身が疼き出していた。

「あぁ.....んふっ、だ、だめ...や...だ...」

ふくらみに歯を立てられ快感と痛みで眼から生理的な涙が流れた。

(...どうして)

歩乃は良平の行動が理解出来なかった。元々賭けで付き合っただけの相手にここまで執着する意図が理解出来なかった。それを察したのか良平は手を放し見下ろした。

「歩乃、何で消えたの?俺ずっと探したよ。卒業式のあと二人でお祝いしようと思って連絡するのにスマホ見たらあんなメッセージ入ってるし...掛け直したら繋がらなくなってるし。家まで行きたかったけど友達に捕まって無理だったし...そうこうしてたら歩乃いなくなってて.....大学地元だって言ってたのに」

良平の顔はみるみるな哀しげな重い表情に霞んでいった。歩乃は被害者のような態度をとる良平に少し苛立ちを覚えた。

(何言ってるのっ!そもそも私にした仕打ちを棚に上げて何なのっ!)

歩乃は段々怒りが抑えられず良平を突き飛ばした。気が抜けていたのか簡単に突き飛ばされ良平は勢いよくベッドから転げ落ちた。

「ふっふざけないでっ!私知ってるんだからっ!貴方達が賭けをして私を嘲笑ってたのを!」

自分で言って悔しくて涙が出そうになるのを堪え良平に今までこんな声出したことなんてないだろうというくらい声を荒らげた。

「やっぱりあの時聞いたんだな...急に態度変わった気がしてたし。放課後、廊下にいた歩乃に声かけようとしたら俺に気付かず立ち去って行って...その後教室入ったらアイツらが俺らのこと話してたから」

良平は転げ落ちた床で項垂れながらぽつりぽつりと話し始めた。

「確かに賭けはした。だから俺たちの付き合いはちゃんとしたものではない」

その言葉に歩乃はズキリと心臓を抉られる想いで聞いていた。彼の言葉から自分たちの付き合いがニセモノだと突きつけられてしまった。

「...でも嘘であって嘘じゃないんだ」

歩乃が理解出来ず尋ねると良平は頭をガシガシ掻きながら恥ずかしそうに目線を泳がせた。

「.....一目惚れだった。高1の時体育祭で足捻って保健室行ったことがあって、そしたら先生の代わりに保健委員の歩乃に手当てしてもらったんだけど.....なんかわかんねーけど笑った顔見た瞬間、この子だっ!てそん時思って...」

俯きかげんで口に手を当て前髪で目元が隠れていたため表情は見えなかったが耳が真っ赤に染まっていたのに歩乃は気付いた。

「そこから歩乃を目で追うようになってた...でもあの頃はクラスも違うしなんの接点もなくて」

良平は歩乃に近づき恐る恐る抱き寄せ、抵抗されないことがわかると自分の膝の上に乗せ背中に手を回した。

「高3で奇跡的に同じクラスになって...でもやっぱなかなか話せなくて。そんな時俺らの間で何かを賭けて遊ぶのが流行ってたんだ...それを利用して歩乃と付き合えるかどうかの賭けをした。俺の方に賭けたダチから委員会一緒にしてもらったり席譲ってもらったりして協力してもらった」  

「...ひどい」

歩乃は良平から離れようと押すが先ほどとは違い全く歯が立たなかった。その間も良平の話は続いた。

「別のダチから見たら俺がこういうことしてるのは歩乃を揶揄ってんだろうって勝手に思われて...。俺と歩乃、接点全くないし共通の友だちもいなかったから。ただ単に暇つぶしのゲームと思われてた。賭けの対象にしたのは悪かったと思ったけどそのおかげで歩乃と接点が持てたことの方が重要だったから歩乃の気持ちとか何も考えてなかった...軽く考えてた、ごめん」

良平にきつく抱き締められ歩乃は少し苦しかったが小刻みに震える良平の背中に恐る恐る両手を回し落ち着かせるように摩った。

「...良平くんの友だちが賭けのことや『卒業式の日にネタバレするんじゃないか』って言ってたの聞いて何となく納得してたの、あーやっぱりなって...それに良平くん私に手出さなかったでしょ?それって賭けの対象だったからかって思った。だからショックだったけど不思議と受け入れられたの」

「受け入れんなよっ!俺が...あの時どんだけ我慢してたかっ!」

いきなり声を荒げられ歩乃は吃驚してしまい、良平は慌てて「...ごめん」と呟き気不味い表情を浮かべた。

「俺、自信なかったんだと思う...もし賭けのことがバレて俺の事拒絶されて口も利いてもらえなくなったらって想像したら怖くてそれ以上何も出来なかった。だから卒業した日に全部言ってそれでも俺の本当の気持ちも知ってもらってから歩乃に委ねようと思った.....嫌われても罵られても歩乃を手放すつもりはなかったけど」

歩乃の肩に額を乗せ深い溜息をついた。

「歩乃と連絡取れなくなって周りの奴らに聞いても知らないって言われて八方塞がりだった。けど高校ん時、医療関係の本熱心に読んでたろ、しかも同じ著者の。親父に聞いたら大学の教授だって...もしかしたらと思ってその大学に行ったんだ」

「えっ!来たの?!」

歩乃はまさかそこまでして良平が自分を探し出すなんて...驚きでそこから言葉が出ずにいた。

「やっとの思いで見つけて、声かけたかったけど...そん時隣に男がいた。多分そういう相手じゃないって雰囲気見てわかったけどやっぱ辛くて...時間はかかったけど編入試験受けて今こっちの大学通ってる」


(.........ん?)

「えっ?...えっ?ちょっ、ちょっと待って...頭がついていけない」

歩乃は一旦良平から離れ思考がついていかず頭を抱えてしまった。そんなあたふたしている歩乃を後ろから優しく抱き締め、

「目指す道が違うから大学までは一緒にはできなかったけどなるべく近い大学選んだ。いつでも会えるように」

「...ってことは今日の合コンした大学に通ってるの?」

歩乃が尋ねると良平は頷き、歩乃の旋毛にちゅっと唇をあてた。

「で、でも今日の合コン私たまたまだったんだよ?!私のことどうのこうの言ってる割に合コン出て.....言ってることとやってることがむちゃくちゃだよっ」

抗議すると旋毛にあった唇が首筋から肩に辿りそのまま歯で甘噛みされ思わず「ひゃっ...」と声を漏らしてしまった。良平は嬉しそうに目を細めそこを舐め上げた。

「それは俺のとこの幹事が歩乃んとこの幹事に話つけて歩乃には内緒ってことにして呼んでもらった...表向きは人数合わせってことで」

(.....ってことは初めから私がいることは予定調和だったってこと?!えっ、ってことは私また騙された?!)

歩乃が悶々と考えている間に噛まれた肩越しをきつく吸いながら、服の裾から両手が入り込み胸を揉み上げてきた。

歩乃はいろいろ言いたいことだらけであったが言葉が出てこず反対に漏れる吐息だけが部屋に響いた。

「俺、歩乃を騙してばっかだな、ごめんな.....でもそれだけ必死で歩乃をもう手放したくなかったんだ」

後ろから歩乃の服を脱がし良平もTシャツを脱ぎお互い上半身は何も身についていない状態になった。良平の引き締まった筋肉が男の色香を漂わせ、背中越しでも色濃く伝わった。良平は歩乃を静かにベッドに寝かせ仰向けにした。歩乃は恥ずかしさから両腕で胸を隠すように抱えたがすぐに腕を取られ胸元が露わになった。

「隠さないで、ちゃんと見たい」

掌に余る乳房をやわやわと揉みもう片方は舌で転がしながら舐め回した。口の中に含むと今度は強く吸い上げ歩乃は身体をビクビクと小さな痙攣を起こした。良平はちゅぽ、と口から離すと唾液で厭らしくテラテラと濡れ光る胸に見惚れ更に欲情が駆り立てられていた。

「歩乃...かわいい」

少し掠れ気味の声が妙に艶っぽく響き、歩乃は下腹部辺りがキュッと押さえつけられるような気分になった。
良平の顔が近付きゆっくりと唇が重なる。ちゅっ、ちゅっと軽く啄むような口付けが降り注ぐ。軽いキスがだんだん激しく深いものへと変わり互いの舌を貪るように絡み合わせた。

唇が離れると互いの口許から銀の細い糸が結ばれ良平が唇を手の甲で拭うと途切れた。理性を失いかけているのか早急に良平はスカートのホックを外し足元から抜きベッドの下へ落とす。

膝を開かれ下着越しからとは言え、人に見せたことのない部分を晒され羞恥心が襲いかかってくる。脚の間にいる良平は内腿の付根部分に唇を寄せ吸いついた。ピリッとした痛みが何か所も与えられ歩乃は喜悦の声を漏らす。両内腿にたくさんの跡が付けられそれを一つ一つ愛おしそうに良平は眺めていた。

小さく息を吐き良平は抵抗される前に歩乃の下着を剥ぎ取り恥部を露わにさせた。歩乃は恥ずかしさから手で見えないよう覆ったがすぐに捉えられてしまった。

「み、見ないで」

顔を紅潮させ良平に訴えたが逆に良平を煽ってしまい更に欲情が抑えられなくなっていた。良平は濡れ溢れる愛液を中指で掬い膣口の回りをなぞった。

「ぁ...あん、んっ、ぁ.....」

歩乃は初めの快感に頭が着いていかずシーツをギュッと掴み意識を逸らすように握り締めた。

「...歩乃、俺と別れたあと誰かと付き合った?」

唐突に聞かれ良平に視線を動かすと冷たさが纏うような目線と低い声で告げられた。意識朦朧とする中、首を横に振ると「初めてか...」小さな声で嬉しそうに呟き先程の表情と打って変わって目許を和らげ歩乃に優しく口付けをした。

「痛かったら言って」

良平はそう告げると中指をゆっくり膣口の回りをなぞりながらゆっくりとナカへと沈めてた。

「ふぁ...、んっ.....ぁ、ん...」

浅い部分を指が何度も出入りしたり指を曲げナカを掻き混ぜたりしその度にくちゅくちゅと卑猥な水音が響いた。しとどに流れ出た液がシーツを色濃く濡らしていく。

「歩乃、初めてなのにこんなに濡らしてエッチだなー」

ニヤリと笑みを浮かべながら眼をじっと凝視され歩乃は恥ずかしさのあまりカッと顔を紅潮させた。良平は指を休めることなく繰り返した。

「ちょっと痛いかもしれないけどナカ解さないといけないからもう一本増やすよ」

そう言いながら膣口に指が追加され串刺しにされたかのような痛みで涙が溢れた。

「ナカ.....きっ...つ、指すげー締め付けてくる」

「んはぁ...りょ...、良平く...ん...いっ、痛い.....よ」

声を上擦らせながら歩乃は良平に訴えた。

「痛いよね、でも俺のはこれよりもっと痛いから少しでも痛くならないように解さないと」

良平は指を抜くことなくそのままぐちゅぐちゅと大きく音を立て、口元は胸の先端に吸い付いた。

歩乃は身体を何度もビクつかせながら良平の頭を抱え込んだ。そうでもしないと歩乃は痛みと快感から意識が飛んでいきそうで怖かった。唇は離れたが、指はいまだに腟内の最奥へと這い回り、同時にもう片方の指は小さな陰核へと伸びていった。

「ここもぷっくり腫れてコリコリになってる」

執拗に両方を攻められ歩乃は喘ぎ声と共にだらし無く口許から涎が流れ身体がバラバラにされる感覚に襲われた。

「ぁあ、...んはぁー、もうだめーっおかしくなちゃうっ」

歩乃は下半身から感じたことのない恐怖がじりじりと込み上げ必死の思いで良平の手を掴んだ。肩で息をし涙目の歩乃を前にし我に返り、

「初めてなのにやりすぎた、ごめん」

膣口からゆっくりと指を抜き、ふやけた指に絡んだ液を良平は口に含み舐めとった。

「そろそろ大丈夫かな...」良平が独り言を呟きながらベルトを外しジーンズと下着を下ろした。中からは猛々しい塊が真上にそそり勃ち、先の穴からは透明な液が漏れ出ていた。

「ほら、興奮して我慢汁出まくってヤバいことになってる」

歩乃は生まれて初めて見る男性器に興味と恥ずかしさで目を逸らすと良平が歩乃の手を取り陰茎に触れさせた。

「なっ!」

「スゲー硬くなってるだろ、歩乃のナカに挿入りたくて堪んないってなってる」

良平は歩乃の手を自分の手の中に包むように握り陰茎を上下に擦り上げた。見た目は凶暴なまでに赤黒く熱くて太い陰茎が触るとすべすべしていて歩乃は不思議な感覚で魅入ってしまった。初めこそ恐怖を覚えたが扱くたびに良平から「はぁ...んぁっ...ふ...くっ...」と漏れる息遣い、婀娜やかな表情が歩乃自身も高揚していくのがわかった。

「歩乃、もう...いい?」

歩乃の手を陰茎から放しポケットに入れておいた避妊具を口で開け装着していく。歩乃は脚を大きく広げられ良平のモノで膣口とクリトリスを擦るように上下に動かされた。

「歩乃のここ、またすごいびちゃびちゃになってきた」

擦る度にくちゅくちゅと水音が溢れ歩乃はもどかしくて早く挿れて欲しくて堪らなかった。

「初めてだし無理はさせたくないからゆっくりするな」

良平は腰をゆっくり進め膣内に侵入してきた。あれだけ慣らしたはずなのにやはり痛みで気が狂いそうになるのを下唇を噛みながら耐えていた。自然と涙が流れ良平は舌でペロリと舐めた。

「やっぱ痛いよな、ごめんな」

良平は歩乃に口付けしゆっくり、ゆっくりと腰を少しずつ押し進めた。良平も苦しいのかキスをしながら声が漏れ出ていた。

「...はぁー.....全部...挿入った....くっ、ヤバ...油断したら持ってかれそ」

良平はナカで蠢く膣襞に翻弄されながらじっと耐え、歩乃は下半身から感じたことのない圧迫感と異物感で痛みよりも疼きの方が強くなってきていた。

「動くよ」

良平がゆっくりと抽挿し歩乃は無意識に膣内をひくつかせ良平を締め上げる。時折漏れる良平の声にも下腹部が敏感に反応してしまい愛液が溢れ出、おしりまで流れ出ていった。

「ぁあ.....ん、んふ.....んんっ」

初めこそ痛みで辛かった場所が今は薄れ快感に満たされ自らも腰を無自覚に動かしてしまっていた。その行為に良平は更に欲情を掻き立てられ腰を打ちつけ激しさでベッドの軋む音が動きとともに大きくなっていった。

「歩乃...騙してほんとごめん、俺もう離れたくないんだ...だからもう一度俺とやり直してください」

良平は動きを止め歩乃を抱き締めた。汗ばんで熱くなった身体の重みがなんだか心地よく歩乃は良平の背中に手を回した。

「良平くん...大好きだよ」

その一言で煽られ良平は完全に理性を失い腰を激しく動かしナカを攻め立てあげる。時折、急に動きが止まり抜き取られたかと思ったら一気に突き立てられる、その度に膣内が痙攣するかのような気持ち良さで歩乃の身体を跳ね上がらせた。

良平も限界が近いのか身体から吹き出る汗が歩乃の胸元に落ち流れた。

はっ、はっ、と互いの息が荒くなり良平の陰茎がナカでビクビクと脈を打ちそれと同じく膣内がぎゅっと締め上げる。

「んは、はっ...もう...ヤバ.....い...射精る」


良平は最奥まで深く一気に貫き、亀頭が膨張した瞬間小さな穴から膜越しに白濁を吐き出した。



―――――――――
「...ごめんな、初めてなのに無理させちゃって」

良平に腕枕をされながら髪を梳かれ歩乃は擽ったさで胸元に顔を埋めた。

「ううん、大丈夫。でも今日こんなことになるなんて思いもしなかった」

良平は微笑みながら歩乃のおでこに軽くキスを落とした。

「そう言えばさー、さっきの飲み屋の時俺の事『尾上くん』て呼んだよな。あれショックだったなー」

急にしゅんと哀しげな表情で見つめられ歩乃はあたふたしてしながら、

「だっ、だってあの場で“良平くん”呼びしたら要らぬ詮索されちゃうし.....良平くんだって女の子と楽しそうに喋って他人のフリしてた感じに見えたから初対面を装った方がいいのかなって」

先程の光景を思い出しなんとなくモヤモヤした感情が抑えきれずムスッとした表情になっていた。そんな歩乃を覗き見ながら良平は喜々とした様子で歩乃を抱き締め耳を食みながら囁いた。


「じゃあ、俺を朝まで独占してよ」

くるっと回転し歩乃を下に敷き仰向けにさせる。

「今のだけじゃ高校の分まで全然足りないんだよねー。俺あん時ホント我慢してたから何度も部屋で.......とっ、とにかく今までのできなかったイチャイチャ取り戻すから」

良平はニヤリと艷めいた表情で舌舐めずりをし歩乃に覆い被さる。

「ちょっ、これ以上はもう無理だよーっ」

涙目で背中をパシパシ叩くが全く効果がなかった。

「コレなくなるまで歩乃がんばろっ」

どこから出したかわからない新品の箱を見せられ歩乃は愕然としながらも良平の策略にまたもまんまと嵌ってしまうのだった。


「歩乃、愛してる」


すれ違いやっと結ばれた二人の熱は明け方まで引くことはなかった。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

偽りの向こう側

なかな悠桃
恋愛
地味女子、蓮見瑠衣はイケメン男子、多治見慧とある事がきっかけで付き合うことに・・・。曖昧な関係に終止符を打つため彼女は別れを切り出すが・・・。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

社長はお隣の幼馴染を溺愛している

椿蛍
恋愛
【改稿】2023.5.13 【初出】2020.9.17 倉地志茉(くらちしま)は両親を交通事故で亡くし、天涯孤独の身の上だった。 そのせいか、厭世的で静かな田舎暮らしに憧れている。 大企業沖重グループの経理課に務め、平和な日々を送っていたのだが、4月から新しい社長が来ると言う。 その社長というのはお隣のお屋敷に住む仁礼木要人(にれきかなめ)だった。 要人の家は大病院を経営しており、要人の両親は貧乏で身寄りのない志茉のことをよく思っていない。 志茉も気づいており、距離を置かなくてはならないと考え、何度か要人の申し出を断っている。 けれど、要人はそう思っておらず、志茉に冷たくされても離れる気はない。 社長となった要人は親会社の宮ノ入グループ会長から、婚約者の女性、扇田愛弓(おおぎだあゆみ)を紹介され――― ★宮ノ入シリーズ第4弾

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

Honey Ginger

なかな悠桃
恋愛
斉藤花菜は平凡な営業事務。唯一の楽しみは乙ゲーアプリをすること。ある日、仕事を押し付けられ残業中ある行動を隣の席の後輩、上坂耀太に見られてしまい・・・・・・。 ※誤字・脱字など見つけ次第修正します。読み難い点などあると思いますが、ご了承ください。

閉じ込められて囲われて

なかな悠桃
恋愛
新藤菜乃は会社のエレベーターの故障で閉じ込められてしまう。しかも、同期で大嫌いな橋本翔真と一緒に・・・。

処理中です...