ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい

なかな悠桃

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ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい

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空を見上げれば雲一つない青空。王族のみが出入りを許される庭園ではが開かれていた。

優雅にティーカップを啜る美青年の前には、少し困ったような笑みを浮かべた歳近い令嬢のイルナが座っていた。イルナは少しふくよかで小柄な体型だったためか実年齢より少し幼げな印象に見受けられた。

彼らの間には高級感あるアンティーク調のティーテーブルが置かれ、その上にはティーポットの他、どれも煌びやかで美味しそうなスイーツたちがケーキスタンドへ綺麗に並べられ目でも楽しめるような光景が拡がっていた。
イルナは、無自覚にもはしたなく喉元を揺らしゴクリと唾を飲み込んだ。向かいに座る青年はその情景を一瞥しティーカップをソーサーへ静かに置くと彼女に視線を移しニコリと微笑んだ。イルナはその目が眩む程の輝く光景に椅子から転げ落ちそうになるのをグッと耐えると意を決し口を開けた。

「レ、レン様・・・あのね、その・・・そろそろお茶か・・・」

「あ、そうそうこの前、隣国の友好会に呼ばれて出席した時なんだけどそこで今流行ってるらしいスイーツを見つけたんだ♪イルナが好きそうだなと思ってレシピを訊いて今日うちの専属パティシエに作らせたから食べてみてよ」

イルナは躊躇ためらいながら目の前の青年に何か伝えようとするも途中で言葉を遮られてしまった。レンと呼ばれる青年、レンリールは笑顔でテーブルに置かれたスイーツに視線を促した。彼女の正面には勧められたスイーツがこれでもかと主張して置いてあった。

たっぷりとシロップが沁み込み平たくかたどられ見た目ワッフルのような形の二枚重ねになっているクロワッサン。その間にはたっぷりのバニラアイスが挟み込まれ、その上には山のように盛ったホイップクリームが主張していた。皿の回りにはベリー系の果物が散りばめられ華やかさが表現していた。

口に入れずとも100パーセント美味しいのは嫌でも伝わり外の風に乗って甘い香りがイルナの鼻腔を擽り更に胃を刺激した。

「・・・お、おほほ、ほーんと美味しそうー。でもいつも私ばかりで申し訳ないから今日はレン様が召し上がって。ほら、レン様も甘いもの好きでしょ?」

「僕はイルナが美味しそうに食べてる姿を見ているだけで幸せでお腹いっぱいになるんだ♪ほら、早く食べて。じゃないと温かいクロワッサンでアイスが溶けちゃうよ」

「あー・・・う、うん・・・・・・いただきます」

イルナは引き攣りそうな口元を必死に隠し手元にあった綺麗に磨かれたフォークとナイフ、スプーンを使い分けながら観念した表情で口へと運んだ。

温かい生地と冷たくて甘いバニラアイスが絶妙なバランスで口内に溶け合い先ほどとは真逆の綻んだ表情へと変貌していた。

「ふぉいひーーっっ♡」

「本当に癒されるなあ。イルナのその笑顔、ずっと僕だけに見せていて欲しいな」

「ふふ、こんな平凡な笑顔でレン様が癒されるならいくらでも向けさせていただきますわ」

片頬に手を添え幸せそうな表情で食べるイルナにレンリールも釣られるように微笑んでいた。

「イルナ、口元にクリームが」

「ふぎゅっ!」

レンリールは少し前に身を軽く乗り出すと親指でイルナの口元に付いた生クリームをそっと拭いそのまま自身の舌先で舐め上げた。その姿が何とも艶かしく真正面から目の当たりにしたイルナは勿論、周りに立つ執事や侍女たちも思わず息を呑むほどだった。

「美味しいね♪それともイルナについたクリームだからかな♡」

レンリールの屈託のない笑みとは対照的に苦笑いを浮かべるイルナだった。



☆☆☆
「あー---っんっ!!!!また断れなかったーっ!!!もう王城へ出向くの嫌だよー-っ!!」

王城を出たイルナは馬車の中、両手で頭を抱え左右に振りながら嘆き叫んでいた。その向かいの席では呆れとも哀れとも取れる表情の専属侍女、ルジアが小さくため息を吐いた。

「折角いい感じに体重が落ちてたのに今回ので絶対戻った!・・・家でだって料理長にお願いしてヘルシーな食事にしてもらってたのに振り出しに戻っちゃったよ・・・はあー」

馬車の小窓から流れる風景に目をやりながらイルナは眉間に皺を寄せ盛大なため息を吐いた。

「そもそもお父様がいけないのよ!大事な書類を忘れるから。しかも何故私が持って行かなくちゃいけないの!!従者にでもお願いすればいいことでしょ!!」

情けなかった表情は次第に怒りの表情へ変貌し、イルナは自身の太腿に両手を握り締めた拳をバンバンと何度も打ち付けていた。

「そうはおっしゃられても今回王妃自らイルナお嬢様にお会いしたいとご所望されていたみたいなので致し方ないのかと・・・」

頭ではわかっていても父親に肩入れするルジアに少し苛立ちを覚えるもすぐさま再び大きな溜息を馬車内に響かせた。

「私だって久々に会いたかったわよ、だからこそお会いしたらすぐにでも退室してさっさと帰るつもりだったのに・・・」

「・・・昔から気になっていたのですが、レンリール殿下の何がご不満なんですか?あんな素敵な方、なかなかいらっしゃらないと思うんですが・・・。王太子というご立場ではありますが、どなたに対しても平等な態度で大らか。お優しく平民たちからも慕われて。何より品行方正で容姿端麗!!欠点を探す方が難しい!幼い頃からお嬢様のことをいつも気に掛けてくださって聖人君主という言葉がピッタリのお方だと思いますが」

「それはわかってるわよ。わかってるけど・・・・・・そのせいで私こんなになっちゃったんだよ!!」

つらつらと話すルジアの言葉を肯定しつつも、イルナはガバリと勢いよくドレスの裾を腹部辺りまで持ち上げると中からぽよんとした腹部が現れた。

「いっつもそう!王城へ呼ばれるたび、何かにつけてお茶会と称した!!毎回毎回私が好むようなスイーツの山を気付けばお気に入りのドレスたちがクローゼットで眠る始末・・・。いくら幼い頃からの仲とはいえ相手は王族・・・無下な態度は出来ないし。だからなるべく招待されてる時以外はレン様に会わないようにしてるのに何故かいつも見つかってそのまま予定外のお茶会の開催・・・。これじゃあ何時まで経っても痩せやしないっ!!」

「・・・まあ、そのお気持ちはわかりますが」

イルナとルジアは同じ16歳。ルジア自身も体型が気になる年頃なので痛いくらいわかる。イルナが何かにつけ王城にいるレンリールに連れ去られテーブル一杯のスイーツづくしの光景を何度も目にしていた。しかも、レンリールはそれらを全く口にすることなくほぼほぼイルナが笑顔を引き攣らせて全て平らげている姿を何度も目の当たりにしている。羨ましい反面、彼女の心情を考えると気の毒と頭では理解していても立場上何も言えず、嘆くイルナを不憫な表情で見つめた。


そう、相手が相手だけに誰も何も言えなかった。イルナの二歳上のレンリール・ハイヴィス・ルドフォルンはストイリクス王国の第一王太子。
180センチほどある長身で顔も小さくすらっとしたバランスの良いスタイル。彼を見れば誰もが目を奪われ恍惚な表情で見惚れてしまう程の中性的な顔立ち。貴族のみが通う学園では、貴族の中でも更に位の高い者しか入れない特待クラスに在籍し生徒会長を務めるなど在学生は勿論、教師たちからの人望も厚い。ルジアの言う通り欠点を探す方が大変なほどの秀逸な人物だった。

そんな人物とは対比、イルナ・ソルトロンは150センチほどの身長で幼い見た目な上、体形もちょいぽちゃの侯爵令嬢。そのせいか同年代の令嬢と比べても幼児体型のようなスタイルは彼女にとってコンプレックスの一つとなっている。元来、早産だったためか幼い頃は病弱で食も細くひょろりとした体型だったが、今は見る影もなく健康そうな体つきに変わってしまった。

早くに妻を亡くした現宰相でイルナの父親は、その悲しみを紛らわせるかの如く仕事に明け暮れ、幼いイルナに時間を割いてあげることをしなかった。そんな現状を不憫に思ったレンリール王太子の母親、現王妃は年近い息子の遊び相手として王城へ招き入れる異例の処遇をした。そこでは幼少の王族が受ける教育、教養などを一緒に学ばせ、時には王妃自らイルナに淑女としての振る舞いなどを施し、まるで実の娘のように可愛がってくれた。そんな経緯があるため父娘共々、王以上に王妃の言葉には逆らえないという難点もあった。

当初のお茶会は王妃主催で定期的に行われており、そこでは母娘のような他愛もない世間話をする和やかな時間であった。が、気付けばいつの間にかレンリールも加わることが多くなり今では王妃とは別に開催されるようになっていた。

王妃の時は紅茶と小さな焼き菓子がメインであったが、イルナの甘いもの好きを知ってかレンリールが用意するものは見るからに胸やけするほどの大量スイーツがテーブル一杯に用意され、元々細かったウエストラインも気付けば余裕で摘まめるほどのお肉が蓄えられていった。


「失礼ながら申しますが、傍から見てもレンリール殿下はお嬢様を溺愛しているようにしか見えないのですが・・・それにお嬢様も」

「違う、違う。レン様がしているのはよ。幼い頃から一緒ですもの、私に対してそういった感情は持ち合わせてないわ・・・残念ながらね」

イルナは頭ではわかっていても自らの口でその言葉を吐き出すと何とも言えない感情に心を抉られた。その想いからか、イルナは馬車の小窓から流れる景色を眺めながらある過去の出来事を想い出していた。


イルナが15歳になった頃、王宮主催の舞踏会に父親と共に招待されたことがあった。そこでは、多くの来賓の貴族が集まり、プライベートな話や仕事の話などが多く飛び交っていた。その中に父親も加わってしまいイルナは邪魔にならぬようその場からそっと離れ、用意されていたブッフェスタイルの料理を手に壁へ凭れながら皿に載せた大量の料理を口に放り込んでいた。

(今日は流石にレン様もお忙しいだろうから顔を見ることは出来ないだろうな・・・。それにしても一流シェフが作った料理はどれも目移りする程美味しいなー♡。しかもどれも私の好むような料理ばかり・・・いやいや、ごはん食べに来たんじゃないんだった)

そう頭ではわかっていても皿の上にはこんもりと料理が載せられ、その光景に自身の行動を呆れ自嘲した。
相変わらず父親は談笑し話が盛り上がっていたため、イルナは食べ終わった皿を近くにいた給仕に手渡すとぼうっと会場内を眺めていた。
そこで嫌でも視界に入るのは自分と同年齢であろう令嬢たちの華やかで美しい姿。煌びやかなドレスに身を包み、手足やウエストなど細くスラリとしたスタイルの令嬢たち。同じく年近い令息たちと楽しそうに談笑したりダンスを踊っている光景。自分のような体型はほぼ皆無に近く、その光景にイルナは慚愧ざんきな気分を味わった。

そんな中、中央部付近から騒めきが聞こえイルナがふいに視線を向けるとレンリールが会場に姿を現すのが確認出来た。彼が現れた途端、周りの令嬢たちの目の色が一瞬で変わり恍惚な表情でレンリールを眺めていた。自分といる普段のレンリールは気さくで話しやすい雰囲気を醸し出しているが、遠巻きに見えるその時の彼はすでに次期王としての風格を漂わせ、イルナのような身分のものがおいそれと近づくことは出来ない空気が立ち込めていた。

その凛々りりしい姿を前にイルナも心ときめかせるも、レンリールと同身長ほどのスラリとした美しい令嬢が違和感なく彼の隣に寄り添っていた。その姿は誰が見てもお似合いで周りの令嬢たちは勿論、イルナ自身も嫌でも納得せざるを得ないほどだった。


“レンリール王太子殿下のお隣にいらっしゃるのが婚約者候補のご令嬢のお一人なんだろう”

“なんて見惚れるほどの美男美女なんでしょう!本当に似合いのお二人だわ”

“殿下の成婚が早々に決まればこの国は更に安泰だな”

近くでは彼らの姿を見るなりそんな言葉が飛び交い、イルナは遠くから見えるレンリールたちに向けていた視線を逸らした。

(・・・そりゃあそうだよね。あんな素敵な方がいらっしゃれば私みたいなの異性として見てもらえるわけないか。きっと今日招待されたのも私にあの方を紹介したかったのかも・・・いいじゃない!お相手が決まれば必然的にあのスイーツ地獄お茶会からも解放されて元のスタイルに戻れるかもしれないし!それにレン様への想いだって・・・解放される・・・)

イルナは慣れないヒールでこけそうになりながら早足で彼らが見えぬ場所まで行くと瞳を潤ませながら再び皿に料理を盛り込むと淑やかさとかけ離れたような大きな口を開け、口内へ次々と放り込み平らげた。






(てなことがあったのにその後も・・・いや今も何故か変わらぬこの関係性。結局あのご令嬢が誰かも知らないし、婚約とかの正式な発表はないから決まってはいないにしてもその後どうなっているかもわからない。お父様にそれとなく聞いても“隣国の公女”としか教えてくれなかったし)

馬車に揺られながらぼんやりと物思いに耽っていると屋敷の外観が見え始めやっとの帰還にイルナは心の中で胸を撫で下ろしていた。



――――――――――
(おなか・・・空いたな。今朝はスムージーと果物しか口にしなかったからか何だか気力が湧かない)

レンリールのお茶会の翌日は決まってなるべく食事を摂らないようにしているイルナは、休み時間になるたび体力温存のため机に突っ伏しぼーっと学園を過ごすのが日課だった。

やっと昼食時間になるも食堂に行けば誘惑があるため友人たちの誘いを断り一人寂しく校舎から離れた中庭にあるベンチへと向かった。
昼食用にと料理長に用意してもらっていた豆の搾りかすで作ったカロリー控えめショートブレットを取り出し黙々とかじっていると空いているスペースにドカッと乱暴に座られ思わずショートブレットを落としそうになった。イルナは驚嘆の表情で隣に視線を向けると此方をニヤニヤしながら見据えてくる人物と目が合った。

「なんだ、ダイエットしてんのか?ってことは、昨日はお茶会か・・・。しかし、そんなんばっか食ってても意味ないぞー」

「・・・なんだ、ジョシュアか。ほっといて頂戴」

男の忠告に苛立ちを向けながらもイルナは再び視線を戻し気にする素振りを見せることなく黙々と口を動かしていた。

「運動が一番なんだって。前にもレクチャーしてやったのにすーぐへばりやがって」

尚もイルナの行動に否定的な言葉で返すジョシュアに眉間に皺を寄せ横へ視線を向け睨みつけた。

「それを全うしたら筋肉バカジョシュアの筋トレのせいで一週間動けず生活に支障出たんですけどね!私はまず食事から改革して徐々に体を慣らしていくのが合ってるの!」

「あ、そうですかー」

ジョシュアはふんぞり返るような体勢で足を組み呆れた表情をイルナに向けた。

イルナと話す男子生徒、同じ教室のジョシュア・ノベルスはレンリール同様、幼い頃から知っている仲でそのためか互いに言葉遣いも気にせず憎まれ口を叩き合える程の仲。
イルナの父と王家専属で王宮医のジョシュアの父は、同じアカデミー出身で昔から交流がありイルナが幼い頃から何度か彼らの邸宅へ遊びに行くなどの関係性であった。

その時からジョシュアは長身ではあったが、幼かったイルナ同様線の細い体型の男の子だった。時折体型のことで同年代の貴族の子どもたちに揶揄われ本人はそれが嫌だったのか日々身体を鍛え、幸をなしてか今ではガッチリとした逞しい体型に変貌していた。

レンリールとはタイプは違うが、彼も大人びた端正な顔立ちを持ち同学年よりも下級生や上級生の女生徒からかなりの人気があった。


「そうそう、お父様が言っていたけど先生が『ジョシュアは体ばかり鍛えているが、頭の方ももう少し時間を割いて鍛えて欲しいもんだ』って嘆いていらっしゃったみたいよ」

「はは、やってるつもりだけどな。俺は医療騎士になりたいから・・・だからこそ、衰えないよう心身共に日々鍛えて頭も・・・・・・まあそれなりに鍛えて・・・」

最後の方の言葉は歯切れ悪く心なしか声が小さくなっているのにイルナは吹き出しそうになった。

「でもジョシュアは凄いよね、体型もそうだけど昔と今では何もかも全然違う。私は何やっても上手くいかない・・・」

しゅんとするイルナにジョシュアは顎に手を当て少し考えるようなポーズを取った。

「まあ、男と違って女は脂肪を溜め込みやすい体作りになってるから仕方ないが・・・まあイルナが言うように食事も大事だが、やっぱり運動した方が自然と痩せれると思うけど」

ご尤もな意見にぐうの音も出ない表情のイルナを見たジョシュアは軽く息を吐きニカッと笑顔を向けると彼女の頭上にポンと軽く手を置いた。

「でもさ、俺的にはイルナが気にするほど太ってないと思うけどな。女は気にするかもしれんが、そこらの令嬢みたくガリガリよりお前くらいの体型の方が健康的でいいと思うぞ。殿下もそうなんじゃないのか?じゃなきゃいくら何でも食わせないだろ」

慰めだとわかっていてもジョシュアの言葉にじんわりと心が和らいだ。

「そもそも、そういうのが嫌ならちゃんと殿下に伝えて回数を減らしてもらうかメニューをヘルシーなものに変えてもらえるよう伝えればいいんじゃないのか?」

「ゔっ・・・それが出来れば苦労しないわよ。何度も何度もお伝えしようとしたけど自分好みのスイーツとあの眩い微笑みの前では言葉を発するなんて無理だったのよ」

「はあ・・・。まあ殿下は昔っからお前の好みも熟知して甘々で溺愛してるからな。昔、俺がイルナに近寄って話しかけようものなら暗殺者並に殺気放って阻止されてたし」

ジョシュアは大袈裟に辺りを見渡しわざとらしく身震いする素振りを見せられイルナは思わず噴き出した。

「はは、ここはレン様のような特待生が来る場所じゃないから大丈夫だよ。もしそれが本当ならどんなにか嬉しい言葉だけど。殿下からしたら私は・・・妹のような存在なの。大体こんな体型の私だもの、一国の王子と釣り合いなんて取れるわけない、ない。それにね、私が知らないだけで今レン様の正妃候補が着々と進められてるかもしれない・・・だからこそもう一線を引いて身分相応の態度を取らなくちゃいけない時期なんだと思う。だから私は私でせめて嫁ぐお相手に恥をかかせぬよう体を改造しなくちゃいけないの」

「・・・まあ、殿下とイルナの関係は俺の範疇外として、とりあえずお前が理想とする体型になれるのとせめてイルナを一人の女として見て貰えるよう俺も協力してやるよっ。あと、まあ貰い手がいなけりゃ俺が貰ってやるからそこは心配すんな!」

「ふふ、ありがと」

ジョシュアの笑顔でつられて笑うイルナは遠くの方から二人を見据え突き刺すような視線を向けている人物の姿に気付きもしなかった。



☆☆☆
やっとの思いで半日を乗り越えたイルナは、学園からすぐさま自室に戻り、昼食時のジョシュアとの会話を思い出していた。

ジョシュアからの助言は、まず一日の食事内容をメモすること。それによって、食事量も把握でき後々の傾向と対策にも繋がる。そして、いきなり激しい運動はモチベーションが下がることから屋敷内の庭園などを朝夕散歩をしたり庭園で栽培している野菜や果物の世話や収穫を率先して手伝うこと。足腰も鍛えられ全身運動にも繋がるし意外と体力を使うらしい。

それ自体はイルナ自身も難なくこなせそうだったが、次に話す言葉にジョシュアの表情が少し渋い顔付きになった。

『一番の難問・・・殿下のお茶会は今後一切断ること。これがクリア出来ない以上全て水の泡になる。なかなか難しいとは思うが、殿下も最近公務などでお忙しそうだから頻繁に誘ってくることはないだろうけど・・・まあそこだけ気を付けてくれ』

レンリールは18の歳になり、今まで以上に公務などの仕事が山積みになり執務室などに籠ることも増えていることは昨日のお茶会でレンリールが嘆いていた。

(確か数日後、国王様と王妃様他国への式典に参列されるんだっけ。その間はレン様が代理として公務をしなきゃいけないらしいしーしばらくは顔を合わせることもないかな・・・そっか、逢えないのか)

「イルナお嬢様?」

イルナは困ったような笑みを浮かべ耽っていると不思議そうな表情のルジアに覗き込まれ慌てるように何でもないことを伝えた。

「ルジア、私ね今度こそダイ、」

イルナは意気込みを話そうとした時、激しいノック音と共に執事がイルナの返事を聞く前に勢いよく扉を開けた。普段冷静な執事が慌てたような表情でイルナの前へ立つと早口で事を告げた。

「お、お嬢さま、レンリール王太子殿下がお見えになられておりますので、急いでお部屋から出てきて下さいませっ」

「へ?」

何の約束もなくいきなり来るなんて今までなく、イルナはあまりの驚きで座っていた椅子からひっくり返りそうになった。

「お父様から何も聞いてないけど・・・」

「と、兎に角、お嬢様玄関ホールへ向かいましょう」

驚きで尚も目を丸くしているイルナを引っ張るようにルジアが部屋から出た。

「やあ、イルナ。急にごめんね」

見覚えのあるお付きの者を数名引き連れ、階段から降りてくるイルナに気付くと笑顔を向け軽く手を上げ振った。

「ど、どうなされたんですか?」

「・・・うん。実はイルナに話さなくてはいけないことがあってね。出来れば侍女は控えてもらって二人だけで話したいんだけど・・・駄目かな?」

その切実な憂いのある表情で、イルナはハッと気づいた。

(・・・もしかしたらご婚約が成立したのかもしれない。それをお伝えにいらっしゃったのね)

「承知いたしました」

背後で心配そうな空気を醸し出すルジアにイルナは振り向き微笑みながら小さく頷いた。

イルナはまるで連行されるようにレンリールが乗って来た馬車に乗り込むとゆっくり進み出し目的地へと馬が歩み始めた。
馬車の中でのレンリールは普段と違い会話をすることなく、逆にイルナが会話を弾ませようと頑張るも何故か全て空回りただただ居心地が悪い空気が漂っていた。


「・・・此方は?」

そうこうしている内に馬車の歩みが停まり静かに扉が開いた。イルナはレンリールに手を取られ馬車から降りると見たことのない古城へと連れられていた。不安そうに眺めるイルナに対しレンリールは彼女の頬に軽く指先で触れた。

「ここは曾祖父の城でいずれは僕のものになるんだ。まあ、外観も内装も手直しが必要だけどしっかりとした造りだから安心して入って」

レンリールは先程の馬車内とは違い、いつもの彼らしい雰囲気と口調でイルナの手を引き中へと招いた。

「え、あ、あのお付きの方たちは・・・」

「心配ないよ。中は入らないけどその分、外の警備を強化してもらうから安心して」

ニコリと優しく微笑むレンリールにイルナは何故か不安が募り剣呑に襲われそうになった。歩みを躊躇しようものならレンリールの掴む手が微かに強くなり城内へと吸い込まれていく。

(二人っきりなんて今までないのに・・・)

様々な感情が含む緊張感で潰されそうになるイルナは、前を颯爽と歩くレンリールの背を見つめた。

「着いたよ。どうぞ入って」

歩みを止めたレンリールは一つの重厚な扉の前に立つとノブを回し扉をゆっくり開けイルナを招いた。

「レ、レン様・・・ここは」

てっきり応接室のような部屋が現れると思いきや、中は主寝室のような造りになっており他の内装と違い何故かここだけ真新しく手が加えられていた。

「ここは元々二つ隣同士の客室があったんだけどね、それを取り壊して一つの部屋に造り替えたんだ。ほら、この雰囲気イルナ好みでしょ」

「?・・・・・・え、ええ」

嬉しそうに内装の説明を話し出したレンリールに頭の中が疑問符しか浮かばないイルナは、曖昧な返事を返すことしか出来なかった。

(なんで私好みの部屋なんだろ・・・?どう考えてもここで未来のお妃様と住まわれる場所でしょ?)

「えー-っと、ここはいずれレン様がお使いになるお城なんですよね?そのー、なんで私好みなんでしょうかー?」

「イルナ、ちょっとここに座って待ってて」

レンリールはイルナの質問に答えることなく高級感漂うソファに誘うと彼女を座らせ一旦部屋を出て行ってしまった。

一人残されたイルナは、一連の全く意味不明なレンリールの行動に混乱し両手で頭を押さえながら左右に振った。

(何なんだ!?レン様は私に何を伝えしたいの?ご婚約が成立した話じゃないの!?もーわかんないよーっ!!)

一人出口の見つからない迷宮に迷い込んでしまったかのようにグルグルと纏まらない脳内を回転させているとノック音と共にレンリール自らトレイを持って再び入ってきた。

「ごめんね。急だったからこんなものしか用意できなくて」

そう言いながらローテーブルにトレイを置くとそこにはポットとティーカップが二つ、皿には数種類の焼き菓子が乗っていていつものゴテゴテとしたお茶会とは全く違っていた。

「や、レ、レン様がなさることではっ!」

「はは、これくらい僕だって出来るよ。どうぞ、召し上がれ」

レンリールはティーカップにお茶を注ごうとした時、イルナは慌てるように手を止めようとするもやんわりと断られてしまった。香りのよいハーブティーが鼻腔を擽り先ほどのパニックを忘れてしまう程リラックスした気持ちになった。

「わあ、すごくいい香りですね」

「うん。ハーブティーって気持ちを和らげ体の改善もしてくれるんだよね」

イルナは一口、口に含むと林檎のような甘くフレッシュな香りとほのかにレモンの香りが混じり心を落ち着かせてくれた。

「美味しいです。ところでレン様、お話というのはな、んで・・・あれ?・・・ん、ん・・・」

イルナは急に眩暈のような眠気に襲われ、力が急に抜けたように持っていたティーカップを絨毯に落としてしまいハーブティーをぶちまけてしまった。

(わ・・・たし、ったら・・・大変な、こ・・・を・・・早・・・く拭かな・・・染・・・みに・・・・・・)

瞼が下がるのを必死な思いで抵抗していると向かいに座っていたレンリールが無表情のままゆっくりと席を立ちイルナに手を伸ばした刹那、彼女の意識は闇へと堕ちた。



☆☆☆
「ん・・・、ここ・・・いたた」

イルナは重い目蓋を何とかゆっくり開けると同時にズキンと頭の痛さに襲われ瞬時に強く目を瞑った。痛みが落ち着き再びゆっくり開けると先程の豪華な部屋から一転、古びたレンガが視界に入り込みカビ臭いような臭いが鼻につく。蝋燭から生み出される橙色の光がぼんやりとした薄暗い部屋を怪し気に照らし揺らめき恐怖心を煽いだ。

「ここは・・・レン様?・・・どこに、って何これっ!?」

少しずつ頭が冴えていきベッドから起き上がろうとした刹那、気付けば両手首に囚人を拘束するための頑丈な手錠が括られよく見るとそれを繋ぐ長い強靭な鎖は壁に打ち付けられていて引き剥がすことは皆無だった。

「おはよう、イルナ。どう目覚めは?」

声を掛けられ初めて自分以外の人がいることに気付いたイルナは声の主に視線を向けた。そこにはイルナが目を覚ます間、読書を楽しんでいたのか持っていた本を小さく粗末な木の机に置くと足を組んだレンリールが微笑み此方を見据えた。机に置いてある蝋燭の光がレンリールの顔を照らすも心なしか笑顔のはずのレンリールの表情がどす黒く見えイルナは畏怖し声が出せなかった。

「イルナが目を覚ます間、湧き上がる情欲を抑える為に普段読まない詩集を読んでいたんだが・・・そんな姿を目の前にしていたらどうにも頭に入らなかったよ」

「す、がた・・・きゃっ!な、なん、何なのっ!?」

クスリと笑みを零すレンリールを不思議に思いながらイルナはキョトンとした表情で視線を自身の身体に落とす。気づけば先程まで着ていたドレスは脱がされシュミーズのみの姿になっていたことに驚愕した。

その姿にクスクスと軽く笑いながらレンリールは席を立ちゆっくりイルナが繋がれ寝かされているベッドへ近づき縁へと腰を下ろした。

「ここはね大昔、謀反者などを幽閉するための地下部屋だったらしいんだ。本当はこんなのがあるとイルナが怖がると思って取り壊す予定にしてるんだが・・・その前にまさか使う羽目になるなんてね」

恐怖で硬直が取れないイルナは、眼球だけを何とか動かし辺りを見渡す。レンリールが言う通り古さを感じ生々しい拷問器具などが多く置かれ心底ゾッとした。
そんな様子を知ってかレンリールは、震え固まるイルナの頬に優しく手を添え撫で上げるとニコリと笑みを零した。

「大丈夫だよ、イルナにそんなことはしないから。・・・それより今日、中庭で王宮医の息子と楽しそうに話してたね。何を話してたの?」

「え、え、っと・・・」

表情はいつもと同じ印象だが、やはり彼を纏う仄暗い雰囲気と今まで聞いた事のない冷たく突き刺さる様な声色を前にイルナは萎縮し唇を震わせた。

「イルナ、そんなに怖がらないで。僕はキミに危害を加えたり傷つけるつもりはないんだ。ただ、あの男と何を話していたのかを聞きたいだけなんだ」

「じゃ、じゃあ、この手錠を解いてくださいませ。こ、これでは囚人のような気、気分になります」

「いいよ、ちゃんとイルナたちが何をあんなに楽しそうに話していたのか教えてくれたら」

「そ・・・それは・・・」


『イルナ、出来れば暫くは殿下にダイエットすること言わない方がいいぞ。だってそうだろ?今までイルナが喜ぶと思って用意していた食べ物が実は迷惑でしたー、なんてこと殿下が知ったらショックで寝込んじまうかもしれねーぞ』

中庭でジョシュアに言われた言葉を思い出したイルナは、レンリールの問いかけに躊躇した。普段であれば機転を利かし辺り障りない言い訳を伝えていただろうが、現在置かれている状況下のせいか思考が働かず一瞬言葉を詰まらせてしまった。

「・・・大した会話はしておりません。そもそもレン様も私とジョシュアの関係はご存知ではないですか」

「ああ、勿論知ってるよ。でもね、僕言ったよね。“僕だけに笑顔見せていて”って。イルナも了承してくれたよね・・・なのに」

スッと冷気がレンリールの全身に纏い闇深く堕ちていくのがまざまざと伝わる。イルナは逃げることが不可能ながらも両手を動かし鎖を揺らすもビクともしなかった。

「レン様、悪い冗談はここまでにしていい加減に外してください。家に戻らなくては皆心配します。帰りましょ」

「ふふふ、イルナは何を言ってるの?帰るってどこにだい?ここは僕とイルナのいえだよ」

「レンさ・・・ま・・・?」

余りにも様子が違うレンリールにイルナが後ずさるように距離を取ろうとした刹那、無理やり身体を押し倒されレンリールが覆い被さってきた。イルナの抵抗と共にガチャガチャと冷たい金属音が手元から聞こえ緊張感が走る。

「なっ、お、お止めくださいっ!どうなさったんですか!?レン様、正気に戻ってくださいっ」

「僕は至って正気だよ。そう見えないのはイルナが僕にやましい隠し事をしているからじゃないの?ねえイルナ、これはなんだよ。悪い子にはちゃんと身体で覚えさせなくてはいけないからね」

「レ、んっ・・・ふぐッ・・・んん」

イルナは押さえつけられるようにレンリールの唇に塞がれ、一瞬で力が抜けてゆく。こんな危機的な状況に置かれているのにイルナのレンリールへの想いが勝り無意識に彼の行動を受け入れてしまった。

「かわいい・・・浅いキスでこんな蕩けたような顔になっちゃって。益々他のやつに見せられないよ」

「ん・・・ん、だ、だめ・・・で、・・・す」

乱暴なことをされているにも関わらず彼の唇からはイルナへの愛おしさと盲愛に等しい程の想いが伝わってくる。啄むような口づけは次第に深く淫らなものへと変わってゆく。レンリールの熱く濡れた舌がイルナの咥内おくへゆっくりと這入り込み蹂躙するよう愛撫する。

(い、いけない・・・こんな一国の王子と・・・)
「レ、んっ、レン、さ・・・ま、もう、放して、く、ださ・・・」

イルナは、頭の片隅に残っていた理性と自身の立場を思い出し、再びレンリールを拒否するよう顔を背け唇を遠ざけた。

「はあ、はあ・・・一時の感情で妹のような存在の私とこんなことしてはいけません」

「妹・・・ねえ。んー、僕はイルナにそんな感情持ち合わせた覚えはないけどなあ。・・・そうか、イルナの中で僕はという存在価値でしかないということか・・・はは、それは困ったな」

再び深淵へと誘われたレンリールはスッと冷たい視線をイルナに向けた。仰向けで涕目で潤ますイルナを見下ろしニヤリと口角を上げる。

「じゃあ、お仕置きとプラスして一からたちの関係を再構築してイルナの身体と心に刻んでいかなくてはいけないな」

「きゃっ!や、やだ!レン様っ、おやめください!!」

レンリールはイルナが身につけているシュミーズを乱暴に引き裂き下着を剥ぎ取ると中から白く透き通るようなもち肌が現れゴクリと喉元を揺らず。

「や、み、見ないでくださいっ!!」

「綺麗だ・・・俺の想像していた通りだ。いや、それ以上だな。イルナ、綺麗だよ」

レンリールは嬉しそうに恍惚な表情でイルナの何も身に纏わぬ柔らかな素肌に指先を滑らすように触れていく。

「嫌っ!見ないで!触らないでっ!!こんな醜い身体恥ずかしい・・・もう本当にやだ・・・」

鎖に拘束されているため両手で身体を守ることも出来ず、しかもレンリールに騎乗されているせいで身体を丸めることも出来ない。ぽよんとした上半身をレンリールに見られているという羞恥心から幼児のように泣きじゃくり頭を左右に振った。

「うう・・・ッ、少しでも痩せて・・・せめて・・・せめてレン様の想い人になれなくても隣にいて恥をかかせないような体型にしたかった・・・。ジョシュアにレクチャーしてもらって今日から開始しようとしたのにー。お茶会だってあんな自分好みのスイーツ並べられたら食べちゃうからそれとなくかわそうとしてたのにレン様全く気付いてくれないしーっ」

タガが外れたようにわんわんと泣きじゃくるイルナを前に流石のレンリールも目が覚めたのかいつもの雰囲気に戻り、彼女を抱き起すとそのまま優しく包んだ。

「ああ、お願いだから泣かないで、イルナ。僕はあのお茶会で美味しそうに笑顔で食べるイルナが愛おしくて。ごめんよ、そんな想いを抱いてたなんて。・・・でも僕は、一度もイルナの外見を気にしたことなんてないんだよ」

「私は嫌なんです!レン様のような容姿端麗じゃないのに隣に不釣り合いな私がいるのはとても辛いんです。レン様には以前いらした隣国の方のような可憐で華のある女性がお似合いなんです。私みたいなちんちくりん一緒にいちゃダメなんですっ」

レンリールは自身の親指の腹でイルナの溢れる涙を拭いそれを口に含むと微笑んだ。
他の男がそんな素振りをすれば気持ち悪さが目立ちそうだが、レンリールがすると色香を放ち何故か美しい所作をしているような錯覚をしてしまう程だった。

「イルナがそんな感情を抱いていたなんて気づきもしなかった。僕はイルナを苦しませてたんだね、本当にごめん。さっきも言ったけど僕はただイルナが喜ぶ笑顔が見たかっただけなんだ。あの空間の時間だけがイルナを独り占めできる・・・それが、たまたまお茶会あれだっただけで、正直何でもよかった。キミさえいれば」

レンリールはイルナの頬を掌で覆い額に軽く口づけをした。いつもの優しい空気を漂わせているせいかイルナの緊張は少しずつ解けるように和らいでゆく。

「ふふ、そんな嬉しい言葉を沢山言われたら勘違いしちゃいそうです。レン様から出る言葉はまるで私のこと女性として見ているようで錯覚に陥っちゃいます」

目元が紅くなったイルナが微笑むとレンリールも釣られて笑みを溢した。

「勘違いじゃないよ。僕は、イルナが生まれた頃からキミに恋をしてるんだよ」

「え・・・?で、でも」

「黙って」

「ん、ん・・・んっ」

イルナの言葉を遮るようにレンリールは再び唇を塞ぎ角度を変えるたび深さを帯び隙間から舌先が這入り込む。イルナの唇の肉を割って肉厚な舌が咥内を蹂躙する。挨拶程度のキスはしたことがあるが、先程同様こんな激しいものをしたことがなかったイルナはただただレンリールのリードに身を委ねるのが精一杯で呼吸するのも忘れてしまう程だった。

その光景に気づいたレンリールはゆっくりと唇を離すと何か思いついたのか口角を少し上げ意地悪な笑みを浮かべた。

「イルナ、今思いついたんだけど大好きなスイーツを我慢しなくても体を絞れる方法があるんだ。それは、イルナだけじゃなくて僕も一緒に協力できることなんだけど・・・試してみない?」

「はあ、はぁ・・・・・・んっ?」



☆☆☆
「あっ、はんッ♡あぁーッ、や、やらーよぅ、も、んんッッ」

「ほら、腹筋をすごく使うだろ。あぁ、イルナの肌は僕の手に吸いつくように張り付いてすごくキモチいいよ♡」

胸を揉みしだき人差し指で尖りをクニクニと弄りながらもう片方の手は下腹部へと滑り秘部へ辿り着く。レンリールの長くて太い綺麗な指が何度も何度も割れ目をなぞり、時折敏感な部分を掠るように触れられその度にイルナの身体はビクつき小さな痙攣を引き起こす。

「さっきまで透き通るようなすべすべしてた肌が今は紅く火照って厭らしく見えるよ」

「あ、んんッ!あぁ、い、イタッ!」

レンリールは恍惚な表情を浮かべイルナの敏感な陰核部分を優しく捏ねながら首筋に熱くピリッとした痛みを何ヶ所も刻んでゆく。その度にイルナの息が荒くなり下腹部は波打つように小さな痙攣を起こす。

レンリールの唇は首筋から鎖骨、乳房へと移り彼が辿った跡が分かるように鬱血痕が現れていた。

「イルナのおっぱいずっと舐めたくて我慢してたんだ。ほんと抑えるのが大変だったよ・・・あぁ、想像以上に綺麗で欲情するよ」

レンリールは蠱惑こわく的な息遣いを放ちイルナの甘く痺れるような容姿に扇情する。

「あ、んッ♡ふ、んぁあッ」

レンリールの前髪が胸元にあたると擽ったさで身を捩る。ツンと反り立った先端を彼の熱く濡れた舌先がクニクニと弄びながら口に含むと強弱を付けるように吸い上げられた。同時に上下から受ける快楽に全身が仰け反るような痺れと初めて味わう淫楽に発したことのないイルナの甘い喘ぎ声が部屋に響き渡る。

「そろそろ膣内なかも解していこうか」

何やら囁くように話すレンリールに反応できずぼやけた視界でぼーっとしていると何か下腹部に異物がゆっくりと侵入し膣内を圧迫してくるのがわかった。

「あ、や、や・・・何っ!?なんか、んっ、へ、ンに・・・あっ、音、や、らよぉ」

レンリールがイルナの膣内へゆっくりと中指を挿れたり抜いたりを繰り返す度、くちゅん、ぐちゅと厭らしい粘着性のある水音が部屋に響いた。

「イルナの膣内ここすごく熱くて火傷しちゃいそうだ。痛くない?・・・大丈夫そうみたいだからもう少し奥入れるね♡」

「は、あああぁぁ・・・んぁッ♡」

肉壁を抉るように指の関節を弓なりに動かしレンリールの厭らしい指が奥へと穿つ。
ガシャ!ガチャ!!と見えないナニカから逃れるようにイルナを繋いでいる手錠の鎖が大きな金属音を立て抵抗するも虚しくそれと共に溢れ出る蜜の音が同調した。

「どんどん膣内なかが解れてきた。あぁ、イルナの甘い液で僕の手がびちょびちょだ♡」

レンリールは挿れていた指をゆっくりと引き抜くとまるで手に零れた蜂蜜を舐めとるようにイルナから出た蜜を恍惚とした表情で美味しそうに指を舐めしゃぶった。

今まで見たことのない全く違う表情のレンリールを前に呼吸を乱すイルナは視線を離せず凝視した。

「はあ、はあ・・・はあ、そんな、の・・・舐めな・・・いで・・・汚・・・いか、ら」

イルナは喘ぎすぎたせいか、少し掠れた声色でレンリールの手を掴もうと弱々しく伸ばすも鎖で届かず再び力尽きるようにベッドへと沈めた。

「イルナは本当に可愛いな。そんなこと言われたら意地悪なことまたしたくなってくるよ」

「ひゃっ!ちょっ、脚広げちゃダメー-ッッ!!!」

レンリールは上唇を一舐めするとイルナの両脚の膝を手で覆いぐいっと左右へ割るように開いた。薄暗い部屋とはいえ、ぱっくりと秘部をレンリールの目の前で晒され恥ずかしさと冷ややかな空気があたり小さく身震いしたイルナは下唇をぎゅっと噛み締めた。

「んッ!んくッ、あッ・・・んんッ、やっ・・・はぁッ」

開かれた内腿にレンリールは顔をうずめると舌を這わせきわ付近を吸い上げる。まだ直接秘部には触れられていないのにも関わらずどんどん溢れ出る蜜が臀部まで滴り落ちた。疼きが下腹部を刺激しイルナは仰け反り腰をヒクつかせる。痛みと共に紅く浮き上がる痕を何カ所も刻まれるたび快感が全身を巡り痺れさせた。

「ふっ、んくぅッ・・・あぁッン、ッあ・・・」

レンリールの生温かく濡れた厚みのある舌が内腿から秘部へと流れ割れ目をなぞるように押し当て舐め上げる。そのたびにイルナの腰は激しく揺れ動き自分でも制御出来なくなっていた。レンリールはぐちゅぐちゅに熟れた膣口へ唇を宛がい優しく口づけすると軽く息がかかりイルナは擽ったさを逃すように小さく息を吐いた。秘部を舌が覆い動くたびに下腹部に緊張が走り同時に涕が眼尻から零れ落ちた。

「あぁ、すごいよ・・・さっきなんか比べものにならないくらいグチョグチョ。イルナ、さっきよりもぷっくりと腫れて舐めて欲しそうなんだけど」

「ひッ!・・・んあッ、やッ、・・・だっ・・・んんッ!んくっ」

両親指で肉を左右に広げると中から赤くヒクついた小さな突起が顔を出す。まるでソフトクリームを舐めるように舌先をチロチロと動かされた瞬間、イルナは脳天まで電流が走ったかのように大きく仰け反った。今まで味わったことのない感覚が全神経を刺激し痙攣する。

はしたないと頭ではわかっていても初めて味わう快楽にイルナはレンリールに身を委ね快感に溺れてゆく。


もっと・・・もっと・・・・・・キモチよくなりたい・・・・・・。もっと・・・溶けてレン様と交じり合いたい・・・。

「あッ♡・・・も・・・なん、か・・・また、ゾワゾワ、って・・・。はッん♡・・・おかし、く・・・な、る・・・」

イルナは口端から唾液が流れシーツを力いっぱい握り締めた。何か得体の知れない感覚が再び迫り昇りつめようとした刹那、レンリールは口を離し頭を上げた。

「え・・・な、なんで・・・」

解放と同時に急に放り出されたような感覚に襲われたイルナは切なさが苦しく込み上げ涕を滲ませた。その様子にレンリールはニコリと微笑むとイルナの濡れた眼尻と口端を指で拭い上げた。

「イキたかった?でもこれ以上はイルナが僕のところまで堕ちてくれるなら今以上のコトしてあげる。どうする?イルナ次第だよ」

ズボン越しからでもわかるほど怒張した盛り上がりをイルナの秘部に宛がい小さく揺れ刺激を与えた。先ほどの昇りつめていた刺激がじわじわとせり上がるも突き抜けるほどの快楽は味わえずイルナはもどかしく疼きをあげる秘部から再び蜜を溢していた。

「一緒に・・・レン様と・・・キモチよくなりたい」

止めて欲しいと何度も懇願していた言葉は懇請へと変わり、レンリールに縋るような視線を向けた。

「いいよ、イルナのお願い聞いてあげる」

レンリールは着衣を全て脱ぎ出すと引き締まった肉体が蝋燭の光に煽られ美しく現れた。

「その前に今鎖を外すね」

ガチャガチャと鍵で拘束具を外すと一気に解放されホッとした表情でイルナは無意識に両手首を擦った。

「痕は付いてなさそうだね、自分でしときながらだけど傷とかなくて良かった」

レンリール自身も安堵しイルナの手首に唇を落とした。

「レン様・・・本当によろしいんですか?私のような者と・・・」

「まだ言うの?僕はずっとイルナしか見てないよ。これからもずっと・・・だから僕にイルナを頂戴」

「んんっ・・・・・・」

レンリールの素肌がイルナの肌にピタリと張り付くように重なり互いの心臓音が一つになったような気分に陥る。

「・・・いい?」

レンリールに耳元で囁かれたイルナが小さく頷くと両脚を広げられ熱く滾った大きな塊が膣口と陰核部分を擦りながら上下に動く。その行為だけでも身体が仰け反りレンリールの両腕を力いっぱい掴んだ。

「うぅッ・・・あッ・・・んあッ、あッ♡」

「あ、んっ・・・あ、つい・・・はッ・・・んくッ!狭・・・い、くはッ」

レンリールはイルナの腰付近を両手掴むと先端を膣口にピタリとつけ腰をゆっくり突き出すように膣内へと這入り込ませてゆく。イルナは裂けるような痛みと今まで以上の圧迫に身体中に力が入り強張らせた。

「イ、ルナ・・・お願い・・・はッ、力・・・抜いて・・・じゃないと奥に、んッ・・・進めな・・・い」

「む、無理ですぅー-ッ」

目をぎゅっと瞑るイルナの表情を見た瞬間、何故か湧き上がる高揚感に襲われたレンリールは彼女が苦しいとわかっているのに腰を無理矢理押し入れた。

「あッッ!・・・ひぅッん、あんッ・・・」

締まる肉壁を抉るように突き進み、膣内に怒張が貫いてゆく。

「大丈夫だから。今は痛いかもしれないけどだんだん馴染んでくるから。それまで頑張って」

「ん・・・は、い・・・んぁ♡」

レンリールは耳元で囁きイルナへ覆い被さり抱き締めた。目元を強く瞑ったまま口元を一文字いちもんじに結ぶイルナに何度も浅い口づけをする。

「イルナ、僕にしがみついて」

「は・・・い・・・」

言われた通りイルナが従順にレンリールの背中に手を回すと互いに舌を絡め深い口づけへと変わっていく。

キスを交わしたおかげか痛みが徐々に薄れるに従って身体の緊張感も解れてゆく。その間もレンリールはゆっくり腰を動かしながら膣内を堪能し何度も堪えるように艶かしい吐息を洩らした。

「はあっ、ん・・・イルナのお腹に全部挿入ったよ。わかる?ここに根元まで這入り込んだ僕のが埋まってるんだ♡」

レインリールは自身の上半身を起こしイルナの下腹部辺りを優しく撫で上げ指を滑らせた。しかし、既にキャパオーバーのイルナにとってレンリールが話す言葉は耳に届かず自身が発する喘ぎ声しか耳に届いていなかった。

「はッ・・・ん、流石にもうキツくなってきたかも。イルナ、ごめんね。ちょっとだけ動くから我慢してくれると嬉しいな」

膣内で締め付けられているせいかレンリールの陰茎がピクピクとヒクついているのが伝わった。辛そうに額に汗を滲ませるレンリールにイルナは覚悟を決めたように小さく頷いた。

そのやり取りを最後に互いに会話はなくなり、その代わりイルナの啼き声とレンリールの小刻みに震える艶のある声色が地下に響き渡る。
激しく身体を揺さぶられ突き上げられるたびイルナは震え結合部からぐちゅぐちゅとした粘着音が響く。

「んんーッ、はっ、はっ・・・くっ」

抽挿が激しくなりレンリールの身体からポタポタと汗がイルナの上半身に落ち流れシーツに染みを滲ませる。

「もう、射精そう・・・このまま、膣内なかに・・・」

「あッッ・・・んぁッ、ううッ・・・はァんッ♡」

激しく打ち付けられるたび肌同士からパンッパンッとリズムよく破裂音が鳴り響きイルナの膣内を荒々しく刺激した。鼓動がどんどん早くなりイルナはこのまま死んでしまうんではないか、と思う程の激しさに襲われた。

「あー-っ、イクッ・・・・・・!!」

びゅっ!、びゅっ!!レンリールの陰茎が一気に膨らむと同時にビクビクと痙攣しながら子宮口目掛け濃い白濁を迸る。何度も何度も打ち付けるように子宮口に注ぎ満足したレンリールはそのまま力尽きたようにゆっくりイルナの上へ倒れ込んだ。

「はあ・・・はあ・・・・・・イルナ、大丈・・・・・・イルナ!?」

息切れしながらも少しずつ落ち着きを取り戻したレンリールは、ゆっくり身体を起こしイルナに視線を向けるとぐったりとし気絶しているイルナの姿が目に飛び込んできた。



☆☆☆
あれから何時間経ったのだろう・・・陽光がない地下の部屋にいたはずのイルナが目を覚ますとふかふかのベッドに寝かされ煌びやかな室内に移動していた。しかし、窓のカーテンが閉まっており室内は温かみのあるランプの色だけが辺りを照らしていた。時間の感覚が全く読めないイルナは今がいつなのかさっぱりわからなかった。

「いたたた・・・」

すでに全身が筋肉痛にでもなったかのような痛みと共に下腹部辺りの違和感を感じつつ一先ず起き上がろうとした刹那、背後から覆い被さるように抱き締められた。

「目が覚めたんだね。どう、身体の調子は?」

「えぇ、なんか変な感じがしま・・・んっ?」

レンリールの色香に当てられ先程の行為を想い出したイルナは、照れ臭さから彼から逃れようとした刹那、内腿へ何かがとろりと流れる感覚に襲われた。

(やだっ!まさか私、おもら・・・)

その瞬間、両脚をぎゅっと閉じるとそれに気づいたレンリールが厭らしい手つきで太腿を撫で上げた。

「さっき部屋にイルナを運ぶ時ように気を付けてたけど・・・今動いたから出てきちゃったんだね♡本当はすぐにでも欲しいんだけどまだ婚約前だし今は我慢しなきゃね。ほら、ハーブティー飲んだ時違和感あったでしょ?あれは睡眠薬だったけど特別に赤ちゃんが出来ないようにする効果も入ってたんだ」

レンリールはイルナのおなかを擦りながら愛おしそうに微笑んだ。イルナはレンリールの言動で言いたいことが伝わり一気に身体が熱くなり顔が真っ赤になってしまった。

「・・・ねえ、イルナがコンプレックスに思ってるこの身体、僕は大好きなんだ。吸い付くような肌で抱き心地もいいし。正直どこが気に入らないのかわからないんだ」

「いやいや、今レン様が触れておられるこの弾力のあるおなか、ムチムチした二の腕と脚・・・数え上げればキリがないですし正直、今体力と思考が追い付いていないので抵抗できませんが、通常の私なら100パーセント触られないようこの場から逃亡しています」

「ははは、それは困るな。んーでも、そんなに気になるなら・・・やはり協力しなくてはいけないね。だって、今のままではイルナのこの姿を拝めないかもしれないってことだろ?」

「へっ?」

レンリールはイルナの上へ覆い被さり馬乗りの姿勢になった。何事か理解できないイルナは、きょとんとした表情で扇情的な表情のレンリールを見上げた。先ほどよりも明るい部屋のためか鍛えられ引き締まった胸筋や割れた腹筋がハッキリと見え思わず見惚れてしまった。

「ねえ、イルナ。ダイエットには食事制限も必要だけどやっぱり運動も大事だと思うんだ」

「ええ、そうですね・・・あの、レン様・・・」

「運動は何も走ったり筋トレしたりするだけじゃないよね。例えば、今のようなのも運動の一つだと思わない?現にイルナ、全身を使った運動したみたいに疲れたんじゃない?普段しないような体勢とかおなかに力入れてたし明日になればもっと動けなくなってるかもしれないよ」

「・・・そ、そうかもしれませんね・・・えっとー・・・」

イルナは段々自分に危機的状況が迫っているのを察し動こうとするも逃がすまいとするレンリールにガッチリと行く手を阻まれていた。

「はは、そんな怯えた顔しないで。逆にそれは煽っているようなもんなんだから♡イルナ、僕も協力するからいっぱいしようね♡ってことで早速再開しようか♡今なら脂肪燃焼効果も高いだろうし」

「・・・・・・はっ!?や、や、や、無、無、無理ですーーっ」


広い城内でイルナの甘い叫び声が反響するように翌朝まで響き渡り、その様子を嬉しそうな表情を浮かべるレンリールの姿があった。
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