上 下
16 / 55

結婚しました

しおりを挟む
2体のドラゴンがゼピュロス村に降り立つ。
エルフたちはドラゴンが1体増えたのにビックリしている様子だ。

「フウタ様! レッドドラゴン様! お帰りなさい」
「アンジェ! 戻ったよ。皆で迎えてくれてありがとう」

フウタ様が2体のドラゴンと共に戻られた! 
レッドドラゴン様と一緒にいることだけでもすごいことなのに、ドラゴンがもう1体増えている。 
一体どうなっているのだろう?

ドラゴンの背を見ると、獣人たちが乗っている。
よく見ると獣人たちの服はボロボロだ。

デラザで、いったい何があったのでしょう?
獣人たちは、どうしたのでしょうか?

ホワイトドラゴンが人族の姿になる。
白い髪に金色の目だ。顔は超ハンサムだ。
エルフたちが、ボーと眺めている。

ホワイトドラゴンはドラゴンオーラの漏れ出しを、きっちり抑えていてくれているようだ。
親しみやすそうなドラゴンだ。

「ホワイト! ゼピュロス村まで獣人たちを運んでいただいて、ありがとうございました」
「前にも言ったが、そんなに畏まらなくていいぞ! ここがお前の村なのか?」

「できたばかりの村で、住人はエルフたちが50人住んでいます。彼女たちはゴザリア軍から助け出しました。ここは荒地ですが、魔法の種によって美味しい野菜や果物を収穫することができるのです」

「美味しい野菜や果物とは羨ましいな。ドラゴンヒルでは野菜や果物を収穫することはできないからな。野菜や果物をドラゴンヒルに持ってきてくれれば、肉と交換するがどうだ。旨い肉を用意しておくぞ!」

「ありがとうございます。是非よろしくお願いします」

「アンジェ! 聞いていたな。それとエメットもこちらに来てくれ」

聞いていたなと言われても……ドラゴンヒルはドラゴン族の聖地なのよ! 
どうやって私が持っていくのよ! 

野菜や果物を運んで下さいとか、レッドドラゴン様に、怖くてお願いできないわよ!
美形イケメンドラゴンとも気楽に話をされているけど、なんであんなに仲良く話しができるのかしら?

アンジェとエメットが俺のところにやってくる。

「アンジェ! ここに連れてきた獣人たちは、ゴザリア国の王宮に囚われていた者たちだ。彼らの村もここに作ろうと思う。エメットが獣人族の代表だ。エルフ族と獣人族で仲良く暮らしてほしい。それとな、アンジェにとてもいい知らせがあるぞ……聞きたいか?」

「はい! なんでしょう!」
いい知らせと聞いてアンジェが笑顔になる。アンジェの笑顔はさらに魅力的だ。

「ドラゴン王に、ゴザリア国の王宮の屋根を粉々にしてもらったのだ。見事に吹き飛んだぞ! ただし、城全てを廃墟にするのは止めていただいた。ゴザリア国の人が全て悪いとは思えないからだ。それで良かったよな!」

「ありがとうございます。私たちも、ゴザリア国の人がすべて悪いとは思っていません」

「お礼は、レッドとお兄さんのホワイトにしてくれないか。俺はレッドの背に乗って一緒に行っただけだぞ。アンジェとエメットは、エルフ族と獣人族の皆に、レッドとホワイトに感謝するように伝えてくれないだろうか?」

アンジェとエメットの呼びかけで、エルフ族と獣人族が集まってきた。
全員が頭を深々と下げている。

「ゴザリア国の王宮から救い出していただき、誠にありがとうございました」と、獣人族を代表してエメットが感謝を伝える。

「私たちを苦しめているゴザリア国に、鉄槌を下していただきありがとうございました」と、エルフ族を代表してアンジェが感謝を伝える。

「アンジェ! ホワイトと獣人族たちの歓迎会の準備をエルフ族で頼む。ホワイト! 今日はこの村に泊まっていってくれませんか?」

「もちろんいいぞ! こんな形でエルフ族や獣人族と食事をするのは始めてだな」

「アンジェ! 結婚式は今日でいいかな?」

「2体のドラゴン様に、結婚式を立ち会っていただくなんて最高です!」
アンジェにウエディングドレスを渡す。

「楽しい結婚式にしよう」
「はい! ドレスをありがとうございました」

エルフたちが料理を作り始める。
俺はエルフたちにワインや頼まれていた日用品を渡す。
獣人族の日用品がないから、デラザにまた行かないといけないな。

「エメット! 獣人たちにも準備を手伝ってもらうよう伝えてくれないか。一緒にやる方がいろいろ話をするきっかけになると思う。もちろん疲れているものは休んでもらって構わないからね」

「ぜひお手伝いさせて下さい!」

フウタ様はいったい何者なのだろうか? どうやってドラゴン族に、ゴザリア国の王都を攻撃させることができたのだろうか? 
しかも、レッドドラゴン様やホワイトドラゴン様と仲間のように話をされている。

ドラゴン族が人族と、こんなに親しげにしていたことなど聞いたことがない。
フウタ様は人族の姿をされているが、人族ではないのかもしれないな!

なんにしても私たち獣人は、フウタ様に命を助けていただいた。
この方に助けてもらわなければ、奴隷としてゴザリア国のどこかで朽ち果てていたはずだ。
私はこの方に仕えることで、恩返しなければならない。

日が落ちてきた。結婚式が始まる。

今日はワインもたくさんあるからね。きっと盛り上がると思う。
酒を飲んで話をして、エルフ族と獣人族が仲良くなってくれればいいな。

「フウタ様とアンジェ様! 結婚おめでとうございます! 末永く幸せに! カンパーイ!」と、エメットが乾杯の音頭をとってくれる。

フウタが結婚か! 結婚することは別にいいのだが……
そうなると、フウタのそばにいるのがアンジェになってしまうではないか!
それは面白くないぞ……フウタは……私が一番そばで見ていたいのだ。

あんな面白い男はいないからな!
どうしよう? このままでは……

俺たちの結婚式を見ていたレッドが変なことを言いだした。
「私も結婚することに決めたぞ……」

「おめでとうございます! ですが……どなたと結婚されるのですか?」
「フウタ! お前に決まっているではないか! ドラゴンの寿命はほぼ永遠なのだ。お前と結婚している時間は、ドラゴンの寿命に比べれば一瞬の出来事だ。お前と一緒にいれば、この先もいろいろな面白い事がありそうな気がするのだ! 兄上、良いであろうか?」

「いいぞ! 父上に伝えておく」

そんな軽く承諾していいのかよ? お兄さんでしょ!
俺とレッドが結婚したら、ドラゴン王が怒らないのかな? 
怒らしたら……怖いどころではないのだよ……

「あの……人族とドラゴンは結婚できるのですか?」
「問題ないぞ。しかし子はできないと思う」

まさかドラゴンと結婚することになるとは……
「レッド! 妻として俺を支えて下さい。よろしく頼みます」

「これでお前と俺は兄弟だな。仲良くやろうぜ、弟よ!」
「はい、よろしくお願いします。お兄さん!」

「固いな……よろしく頼む……みたいな感じでいいぞ。オヤジもお前の事を気に入っていたぞ」

ドラゴン王が、俺のことを気に入ってくれていた……そうなのか? 
怒っていると思っていたのだが、気に入られていたのか。
安心したぞ!

何かありえないようなことが、さらりと進んでいくのだが……これでいいのか……

「俺とレッドの結婚は、ここにいる全員が立会人となってほしい。全員で祝って下さい。お願いします」

「ではもう一度。フウタ様とレッド様! 結婚おめでとう! カンパーイ!」と、エメットが場を盛り上げてくれる。エメット、ありがとう。

「エルフ族と獣人族たち! これからこの村をさらに発展させていこう。この村には人族、エルフ族、獣人族、それにドラゴンが一緒に暮らすことになるが、楽しく仲良く暮らしていこう!」

全員の大歓声が聞こえる。良かったな。
なんか幸せな気分だ。

この荒地が、どんどん幸せな場所になっていく。
女神様聞こえますか?
のんびりと幸せに暮らせるに、段々近づいてきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...