荒野で途方に暮れていたらドラゴンが嫁になりました

ゲンタ

文字の大きさ
上 下
13 / 57

村の建設3

しおりを挟む
エルフたちの能力は高い。力仕事も繊細な仕事もなんでもこなせるのだ。
家を建てるという力仕事も平気みたいだ。
櫓を建てたり、足場を作ったりする作業も手際がいい。動きに無駄がない。

もうね、職人さん集団だよ。外見は華奢な女性なのに、どこからそんな力が出るのだろう? 
重そうな丸太も軽々と運んでいる。

魔法の種から成長した大木は、枝を切り落としてもすぐに枝が伸びてくる。
これなら木材不足になることもなさそうだ。

住宅建設用の木材を、エルフたちがどんどん加工して積み上げていく。
建設に使うのは、生木は乾燥させる必要がある。

どうやっているのか聞いてみた。
水分をコントロールできるスキルを持ったエルフがいるようだ。

鋸を使い住宅の部材を加工し、家の形がどんどん出来上がっていく。
いや~、家づくりは見ているだけでも楽しいね。建設はエルフたちにお任せしよう。

エルフ……頼りになるな……彼女たちがいれば、どこでも暮らしていけるな!
不足する日用品だけを、随時購入しておけば、十分村としてやっていけそうだ。

俺は住宅建設エリアから家に戻ってきた。

これからレッドに頼んで、上空からこの近辺の偵察をする予定だ。
ここで暮らすのに、周りがどうなっているか知らない訳にはいからね!
周辺を含めた簡単な地図ぐらいは作っておこうと思う。

ゴザリア国みたいな国が、近くにあっても困るしね。
ついでに森で、家畜になりそうな魔獣を生け捕りしたいと思っている。
もちろんレッドにお願いしてね。俺には生け捕りは無理だ!

マジックバックを持って『紙と鉛筆出てこい』と念じる。
マジックバックに手を突っ込んでつまみ出すと紙と鉛筆が出てくる。

鉛筆はこの世界にあるのだろうか?
マジックバックには、女神様が別の世界から仕入れてくれた物も入っているのかな。

そうなると、マジックバックに何が入っているのか気になるな……
何が入っているか分からないと、やはり不便だ。

俺はレッドの背に乗せてもらい、上空から周囲の地形を確認している。
何となく近隣の地形が分かってきた。紙に鉛筆で地図を書き込んでいく。

偵察が終わった後に、レッドに頼んでホワイトバッファローを、生きたまま捕まえてもらった。
レッドが上空から威圧すると、ホワイトバッファローは観念して動かなくなるのだ。
地上に降りて、ホワイトバッファローを掴んで飛び立てば、怪我させることなく捕まえることができる。

村に戻った。

ホワイトバッファローを牧場の柵の中に降ろす。
ホワイトバッファローが、柵の中でのんびりしている。
ホワイトバッファローは大人しい魔物だったのかな?

いや違うな、おそらくドラゴンが近くにいるから怖くて動けないのだと思う。

牧場を担当するエルフに、ホワイトバッファローの世話をお願いした。
レッドにお願いしてホワイトバッファローを、あと数頭捕まえてきてほしいとお願いしておいた。
ホワイトバッファローを、家畜として増やせればいいのだが。

村の建設もかなり進んできたな。これだと、数日で村らしくなりそうだ。
エルフが加わって、荒地での暮らしが楽しくなってきた。
話し相手が増えたからね。

文化度も上がってきた。

家に戻って簡単な地図を作成しよう。
調査して分かったが、この荒野は1辺が20kmの四角形ぐらいの広さがある。結構広い。
といっても正確に測ったわけではないから、あくまでも俺がそう思ったということに過ぎないけどね。

レーザ測距儀みたいなのが、マジックバックに入っていないかな? 
まあいいや、この魔法の世界で正確な距離とか、細かいことを気にしても意味がないしね。
地図に東西南北を書き込む。東西南北は太陽らしきものの位置からの推測だ。

エルフたちがここに来てから20日が経った。
やっと村らしきものが、完成しつつある。エルフたちの暮らす家も何棟もできてきた。

この村でエルフたちと、のんびり楽しく暮らしていけたら、もうそれで満足だな。
女神様に希望したことは、叶えられたことになる。

いずれにしても平和だ。やっとのんびりと暮らせそうだ。エルフたちも楽しそうだ。

村の建設が一段落してきた。一区切りついたし、皆でお祝いをしよう。
料理をいろいろ準備して、全員でお祝いのパーティだ。

エルフたちに伝えると、俺と同じことを考えていたのか楽しそうに返事をしてくれた。
こういう幸せがいいよね。

エルフたちはホワイトバッファローの肉で、いろいろな料理を作ってくれている。
マーベリックさんにもらったレシピも渡してあるから完成が楽しみだ。
ワインも少しはマジックバックに入れているからね。

焚火の横には、全員が座れるテーブルと椅子が用意してある。

料理ができ上がったので、全員が席についた。
俺とレッドのテーブルは、少し大きめのテーブルになっているようだ。

「フウタ様。やっと全員が安心して住める村ができました。全てフウタ様とレッド様のおかげです」と、隣に座るアンジェがお礼を言ってくれた。

「これまで、いろいろ辛いことがあったね。すぐに忘れられるものでもないと思う。しかしこの村では安らかな気持ちで暮らしていこうよ。皆で美味しいものを食べて、のんびりと暮らそう」

「フウタ様。村の名前を決めて下さい」
「そうだな、ゼピュロスにしよう。心地良い豊穣の風いう意味だ。フウタのフウも風という意味だしね」

「心地良い豊穣の風ですか。ゼピュロス、いい名前だと思います」
「ではゼピュロス村で決定だ」

「それともう一つお願いがあります。私をフウタ様の妻にしていただきたいです! いかがでしょうか?」

「勘違いしているかもしれないので言っておくけど、俺の妻にならなくてもこの村にずっといて良いのだよ!安らかな気持ちで、いつまでこの村で暮らしてもらって構わないよ。そういうことは気にしないいいからね」

「この村で暮すために、エルフの誰かが犠牲になるという話ではありません。まだ20日間ぐらいしか、フウタ様と一緒に過ごしていませんが、ここにいるエルフ全員がフウタ様に惹かれているのです。全員で話し合い、代表して私が妻にということになったのです」

「ありがとう。いや、勘違いしてごめんなさい。アンジェは素晴らしい女性だと思います。それに美しい」

「しかし、結婚をするかしないかの話に入る前に、確認したいことが2つあります。それと伝えておきたいことが1つあります。大事なことです」

「確認したい事の1つ目は、ゴザリア国のことです。この国はあなたにとって憎い相手だと思います。俺も大嫌いな国です。その憎い相手に恨みを返すことを、残りの人生の大きな目的だと考えているのであれば、結婚はしない方がいいと思う」

「結婚は幸せになるためにするものだからです! 恨みを忘れろという意味ではありませんよ」

「私の考えは、フウタ様と同じです。恨みを忘れることは生涯ありませんが、恨みに囚われて生きようとは思いません。私たちを命懸けで守って死んでいった人たちは、私たちが幸せになれない生き方をすることを望んでいないと思います」

「分かりました。確認したい事の2つ目は、私だけが知らないだけで、変な質問なのかもしれません……人族とエルフ族は結婚してもいいのですか? 子どもどうなるのですか?」

「結婚することに問題はないです。過去に人族と結婚した女性もいます。子供もできますよ。問題といえば、人族に比べてエルフ族が何百年も長く生きることでしょうか!」

「分かりました。伝えておきたいことは、俺が別世界からの転生者だということです。俺は別世界で人として死に、この世界に人として生まれ変わりました。この世界に転生する時に女神様から、マジックバックと魔法の種、何にでも変形する万能棒をもらいました」

「フウタ様は、神のご加護を受けた方なのですね。いろいろ普通ではない人族の方と思っていました」

「アンジェ、俺が転生者であることに問題がないのであれば、寧ろ俺の方が結婚してほしいぐらいです」
「フウタ様、よろしくお願いします」

「俺の方が早く死ぬかもしれませんが、この場所で幸せに暮らしていきましょう。レッド、俺たちの結婚を立ち会ってくれないか?」
「ドラゴンの名において、2人の結婚の証人となろう」

「ありがとう、今日は皆で美味しいものを食べて、婚約の祝いをしよう!」
エルフたち全員が大喜びだ。

「明日、俺はレッドとデラザの街に行こうと思う。結婚式に必要なものを買うつもりだ。どんな物を買えばいいのかな? アンジェ、後で教えてね。それとゴザリア国についての情報収集もしてこようと思う」

「私も行きたいです」

「それは止めておいた方がいいだろう。アンジェだけではない。今、エルフがデラザに行くのは危険すぎる。デラザでは、結婚式に必要なものだけでなく、エルフの皆が必要な日用品とか道具類とかも買ってくるつもりだ。リストを作ってくれると助かるよ」

「それと俺たちが返ってくるまでに、レッドの家を建てておいてくれないか。俺の家にはアンジェと住むことになるからね。頼む!」

翌日、俺はレッドの背に乗ってデラザの街に向けて飛び立つ。

1時間もしない内に、デラザの街付近の森に到着した。前回来た時と同じ場所だ。そこからデラザの街に向かって歩いた。

デラザの街にはすぐに到着する。門番に街への入場料銀貨2枚を払う。

前回と変わらないデラザの街だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...