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デラザ4
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『こんな荒地に住むのか……』などと、街の現状を良く知りもしないでがっかりしていたが。
マジックバックの話を聞いたら、貴族とかいう奴らにいいように扱われたり、盗賊に狙われたりと、そんな物騒な街に住んだりするよりも荒地のほうがずっと平和でましな気がしてきた。
楽しそうな表情の住民が少ないのも気になる。
きっと俺の知らない嫌なことが、いっぱいあるのだろう。
街の実情を知ると、引き籠もり荒野サバイバル生活も良いかもしれないという気になる。
嫌な事はしばし忘れ、中世の街並みを楽しもう。
マーベリックさんの屋敷に向かっている途中、我が物顔で街路を行進する軍隊に遭遇する。
どれどれこの世界の軍隊も、しっかりと観察しておこうかな!
厄介事を避けるため、さっさと軍隊に道を譲ることにする。
俺は道端に立って軍隊を観察中だ。
他の人たちも同じように道を譲って、道端に立っている。
街の人たちの表情がさらに暗くなっている。
なぜだろうか?
行進の先頭は騎士団だ。200人はいるな。高そうな金属製の鎧を着用して馬に乗っている。
騎士団が馬上から、道を譲ってくれた人たちを眺めている。
その表情は、デラザの住民を見下しバカにするものだった。
なんか嫌な感じだな! バカにする理由があるのかな?
その後ろに続くのが兵士たちだ。1000人はいるかも! 馬に牽引された馬車の荷台に、兵が向かい合って座っている。
1台の馬車に20人ぐらいが詰め込まれていて、50台の馬車が長い行列を作っている。
兵士たちは、騎士のような鎧は身に付けていない。
手に小さな木製の盾と槍を持っているだけだ。
臨時で徴兵された農民たちかな?
その馬車の後ろには、檻のついた荷馬車が2台続く。
2台の檻には、計50人ぐらいの人が、ぎっしりと詰め込まれている。
詰め込まれている人は、全員が女性のようだ。小さい子供も混じっている。
その後ろに荷馬車が続く。
戦利品らしきものが、無造作に荷台に積み上げられている。
積み荷は、鎧とか剣、槍、弓といった武具類だ。
戦争でもあったのかな?
連行される女性たちは諦めの気持ちなのか、うつむき加減で死んだような目をしている。
「檻に入れられている人たちは、いったい何をしたのですか……戦争でもあったのでしょうか?」と、マディさんに聞いてみた。
「あの兵士たちはゴザリア国の兵士です。エルフが住む村を襲撃したのだと思います。エルフは美人が多いので、王都で奴隷として競売にかけられるのでしょう。彼女たちを購入するのは、王都の貴族や有力商人たちだと思います」
「ゴザリア国というのは、どのような国なのですか?」
「ゴザリア国は大国です。王都はデラザの街よりもさらに北にあります。王都周辺部も含めて5万人ぐらいの住民が住んでいます」
「デラザから王都までの街道はある程度整備されていますが、それでも王都に行くには、馬車の移動に最低でも10日は必要です」
「ゴザリア国を一言で言い表すなら軍事国家でしょうか。いろいろな国に戦争を仕掛け、それに勝利することで小さな国から大きな国になっていきました。ここデラザの街も、数年前は別の国の王族が治めていた街なのです」
「エルフの村を襲撃した理由は何なのでしょうか? エルフ族と人族で戦争でもしているのですか?」
「この世界には人族、エルフ族、獣人族、魔族が住んでいます。数年前までは、この街では人族とエルフ族、獣人族の3種族が、仲良く暮らしていました。異なる種族間で結婚した者もいたぐらいなのですよ」
「しかしゴザリア国の王が、人族以外は下等な種族であり、下等な種族は奴隷としても構わないという法令を発布してしまいました。いきなりですよ!」
「その後、兵士たちによる奴隷狩りを始めたのです。この地で暮らしていたエルフ族や獣人族は、スラムや森に逃げ込みましたが、多くが捕らえられ奴隷にされてしまいました」
「この余りに無茶苦茶な法令に、反対する常識ある貴族や有力商人たちもいました。しかし身分に関係なく、全て国王に粛清されてしまいました」
「そうなのですか。教えていただきありがとうございます。嫌な話ですね! しかし力のない庶民が、どうこうできる問題ではありませんね」
「捕まえられたエルフたちは可哀想だと思います。助けてあげたいとも思います。しかし商人の娘に国に逆らう力などないのです」
マディさんの表情が暗い。
街の人たちの表情が暗かった理由はこれか! 街に住むのは絶対嫌だな!
そんな話をしたせいで、俺は少し気持ちが沈んでしまった。
荒地ではなく、人の街に住めばいいではないかと思い始めていたから尚更だ。
マディさんも黙り込んでいる。
「そろそろ屋敷に着きますよ。歓迎の用意をしていますので楽しんで下さいね!」
マディさんが気持ちを切り替えようと、明るく振る舞ってくれる。
そうだな。せっかく招待してもらったのだ。楽しまないと悪いよな!
マーベリックさんの屋敷前に到着する。
立派な屋敷だ。このあたりは屋敷街なのかな?
周囲にも大きな屋敷が建ち並んでいるようだ。
マディさんの侍女が我々の到着を知らせるため、急いで屋敷の中に走っていく。
いくらもしないうちに、マーベリックさんが屋敷の中から飛び出してくる。
我々の訪問を歓迎してくれているみたいだ、ありがたいことだ。
「どうぞ! 屋敷の中に! まずは今夜泊まっていただくお部屋に案内させますね!」
さっきの侍女が俺たちを、今晩泊まる部屋に案内してくれる。
今夜泊まる部屋のドアを開けると、ベッドが2つ並んでいる。あれ同じ部屋なの?
レッドと俺はそういう関係に見られているのかな?
あり得ないのだけどな!
侍女に部屋のことを言おうとすると「私は構わない」と、レッドが止める。
『ドラゴンとそういう関係になる訳ないよな! レッドを怒らせようものなら、俺が瞬殺どころか、この街が消滅だよ!』とか思いながら2人で部屋の奥に入っていく。
「食事の準備ができましたら、ドアをノックさせていただきます」と、言い残して侍女が去っていく。
部屋は綺麗に掃除し、片付けられている。
置いてある調度品も洒落たものが揃えられている。
気持ち良く寝られそうだ。
ソファーに2人で向かい合って座る。
「今日はいろいろありがとう。人の住む街にくることができて本当に助かった。お陰でいろんなことが分かったしね。レッドはゴザリア国のことを何か知っているの?」
「ドラゴン族は、ほぼ無限の命がある。我らにとって人族の国などは、あっという間に生まれ、あっという間に滅亡してしまう存在でしかないのだ。ゴザリア国もその中に1つだ。つまり時間の感覚がお前たちとは違うのだ。ドラゴンが人族の国などに興味を持つことはないと思うぞ」
「それもそうだね。ところでデラザとあの荒地は、どれくらい離れているのだろうか?」
「あの森の中に真っ直ぐ街道が整備されていて、尚且つ魔物がいないとして、馬車で最低5日というところかな。実際には、あの魔物が住む広大な森を人族が移動するのは無理だろうけどな!」
「そんなに離れているのに飛行時間は短かったね。ドラゴンの飛行はすごく速いのだね!」
「ドラゴンを鳥と一緒にしたらダメだぞ。ドラゴンは魔力で飛行するのだ。使う魔力量によりいくらでも速く飛べる。ついでにいうと、重いものも筋力を使わないで、魔力で持ち上げることができるぞ。だから重い魔物を掴んだままで飛行することができるのだ」
馬車は1日で何キロ移動するのだろう? 俺には分からないな! この街まですごく遠いことは分かったし、あの荒地に誰も来そうにないことも分かった。それでいいや。
「すごい速さで飛んでいたのに、よく背中から落ちなかったものだと思うよ」
「それは大丈夫だぞ。飛行する時には、私の周囲に魔法で防御シールドができている。だからフウタにも風が当たらなかったろう?」
「魔力で飛行するのはすごいね。ところでドラゴンという種族はどれくらい強いの?」
「言葉でいうのは難しいが、分かりやすく言うなら、城の1つぐらいは簡単に破壊できるぞ」
「俺なんか一捻りだね。荒地で殺さいないでくれてありがとう」
「フウタに興味を持ったからな」
命拾いをしたのは私の方かもしれない。あの化け物のような日本刀で切られたら、私もただでは済まなかったはずだ。本当にこいつは、なにも分からないで言っているのか?
「人族の姿で、人族の街を歩いたことはあるの?」
「ないな、上空から見られるからな。前にも言ったが人族に興味などない。興味を持ったのは、おまえだけだぞ」
「俺は普通の人族なのに、興味を持ってくれてありがとう」
「おまえは、普通ではないと思うぞ!」
「そういえば、フウタの剣技は面白いな。騎士たちが使う剣技とは違うぞ!」
「前世のことは覚えていないけど、日本刀という言葉が頭に浮かんできた。日本という言葉も、何のことかわからないけどね。剣技の方は頭ではなく、体が覚えているみたいだ。前世では、相当鍛錬したのかもしれないね」
「森の中の速く移動できるのもそうかもしれないぞ」
前世では、森の中を速く走る鍛錬をしていたのかもしれないな。
俺は前世で何をしていた人なのかな?
マジックバックの話を聞いたら、貴族とかいう奴らにいいように扱われたり、盗賊に狙われたりと、そんな物騒な街に住んだりするよりも荒地のほうがずっと平和でましな気がしてきた。
楽しそうな表情の住民が少ないのも気になる。
きっと俺の知らない嫌なことが、いっぱいあるのだろう。
街の実情を知ると、引き籠もり荒野サバイバル生活も良いかもしれないという気になる。
嫌な事はしばし忘れ、中世の街並みを楽しもう。
マーベリックさんの屋敷に向かっている途中、我が物顔で街路を行進する軍隊に遭遇する。
どれどれこの世界の軍隊も、しっかりと観察しておこうかな!
厄介事を避けるため、さっさと軍隊に道を譲ることにする。
俺は道端に立って軍隊を観察中だ。
他の人たちも同じように道を譲って、道端に立っている。
街の人たちの表情がさらに暗くなっている。
なぜだろうか?
行進の先頭は騎士団だ。200人はいるな。高そうな金属製の鎧を着用して馬に乗っている。
騎士団が馬上から、道を譲ってくれた人たちを眺めている。
その表情は、デラザの住民を見下しバカにするものだった。
なんか嫌な感じだな! バカにする理由があるのかな?
その後ろに続くのが兵士たちだ。1000人はいるかも! 馬に牽引された馬車の荷台に、兵が向かい合って座っている。
1台の馬車に20人ぐらいが詰め込まれていて、50台の馬車が長い行列を作っている。
兵士たちは、騎士のような鎧は身に付けていない。
手に小さな木製の盾と槍を持っているだけだ。
臨時で徴兵された農民たちかな?
その馬車の後ろには、檻のついた荷馬車が2台続く。
2台の檻には、計50人ぐらいの人が、ぎっしりと詰め込まれている。
詰め込まれている人は、全員が女性のようだ。小さい子供も混じっている。
その後ろに荷馬車が続く。
戦利品らしきものが、無造作に荷台に積み上げられている。
積み荷は、鎧とか剣、槍、弓といった武具類だ。
戦争でもあったのかな?
連行される女性たちは諦めの気持ちなのか、うつむき加減で死んだような目をしている。
「檻に入れられている人たちは、いったい何をしたのですか……戦争でもあったのでしょうか?」と、マディさんに聞いてみた。
「あの兵士たちはゴザリア国の兵士です。エルフが住む村を襲撃したのだと思います。エルフは美人が多いので、王都で奴隷として競売にかけられるのでしょう。彼女たちを購入するのは、王都の貴族や有力商人たちだと思います」
「ゴザリア国というのは、どのような国なのですか?」
「ゴザリア国は大国です。王都はデラザの街よりもさらに北にあります。王都周辺部も含めて5万人ぐらいの住民が住んでいます」
「デラザから王都までの街道はある程度整備されていますが、それでも王都に行くには、馬車の移動に最低でも10日は必要です」
「ゴザリア国を一言で言い表すなら軍事国家でしょうか。いろいろな国に戦争を仕掛け、それに勝利することで小さな国から大きな国になっていきました。ここデラザの街も、数年前は別の国の王族が治めていた街なのです」
「エルフの村を襲撃した理由は何なのでしょうか? エルフ族と人族で戦争でもしているのですか?」
「この世界には人族、エルフ族、獣人族、魔族が住んでいます。数年前までは、この街では人族とエルフ族、獣人族の3種族が、仲良く暮らしていました。異なる種族間で結婚した者もいたぐらいなのですよ」
「しかしゴザリア国の王が、人族以外は下等な種族であり、下等な種族は奴隷としても構わないという法令を発布してしまいました。いきなりですよ!」
「その後、兵士たちによる奴隷狩りを始めたのです。この地で暮らしていたエルフ族や獣人族は、スラムや森に逃げ込みましたが、多くが捕らえられ奴隷にされてしまいました」
「この余りに無茶苦茶な法令に、反対する常識ある貴族や有力商人たちもいました。しかし身分に関係なく、全て国王に粛清されてしまいました」
「そうなのですか。教えていただきありがとうございます。嫌な話ですね! しかし力のない庶民が、どうこうできる問題ではありませんね」
「捕まえられたエルフたちは可哀想だと思います。助けてあげたいとも思います。しかし商人の娘に国に逆らう力などないのです」
マディさんの表情が暗い。
街の人たちの表情が暗かった理由はこれか! 街に住むのは絶対嫌だな!
そんな話をしたせいで、俺は少し気持ちが沈んでしまった。
荒地ではなく、人の街に住めばいいではないかと思い始めていたから尚更だ。
マディさんも黙り込んでいる。
「そろそろ屋敷に着きますよ。歓迎の用意をしていますので楽しんで下さいね!」
マディさんが気持ちを切り替えようと、明るく振る舞ってくれる。
そうだな。せっかく招待してもらったのだ。楽しまないと悪いよな!
マーベリックさんの屋敷前に到着する。
立派な屋敷だ。このあたりは屋敷街なのかな?
周囲にも大きな屋敷が建ち並んでいるようだ。
マディさんの侍女が我々の到着を知らせるため、急いで屋敷の中に走っていく。
いくらもしないうちに、マーベリックさんが屋敷の中から飛び出してくる。
我々の訪問を歓迎してくれているみたいだ、ありがたいことだ。
「どうぞ! 屋敷の中に! まずは今夜泊まっていただくお部屋に案内させますね!」
さっきの侍女が俺たちを、今晩泊まる部屋に案内してくれる。
今夜泊まる部屋のドアを開けると、ベッドが2つ並んでいる。あれ同じ部屋なの?
レッドと俺はそういう関係に見られているのかな?
あり得ないのだけどな!
侍女に部屋のことを言おうとすると「私は構わない」と、レッドが止める。
『ドラゴンとそういう関係になる訳ないよな! レッドを怒らせようものなら、俺が瞬殺どころか、この街が消滅だよ!』とか思いながら2人で部屋の奥に入っていく。
「食事の準備ができましたら、ドアをノックさせていただきます」と、言い残して侍女が去っていく。
部屋は綺麗に掃除し、片付けられている。
置いてある調度品も洒落たものが揃えられている。
気持ち良く寝られそうだ。
ソファーに2人で向かい合って座る。
「今日はいろいろありがとう。人の住む街にくることができて本当に助かった。お陰でいろんなことが分かったしね。レッドはゴザリア国のことを何か知っているの?」
「ドラゴン族は、ほぼ無限の命がある。我らにとって人族の国などは、あっという間に生まれ、あっという間に滅亡してしまう存在でしかないのだ。ゴザリア国もその中に1つだ。つまり時間の感覚がお前たちとは違うのだ。ドラゴンが人族の国などに興味を持つことはないと思うぞ」
「それもそうだね。ところでデラザとあの荒地は、どれくらい離れているのだろうか?」
「あの森の中に真っ直ぐ街道が整備されていて、尚且つ魔物がいないとして、馬車で最低5日というところかな。実際には、あの魔物が住む広大な森を人族が移動するのは無理だろうけどな!」
「そんなに離れているのに飛行時間は短かったね。ドラゴンの飛行はすごく速いのだね!」
「ドラゴンを鳥と一緒にしたらダメだぞ。ドラゴンは魔力で飛行するのだ。使う魔力量によりいくらでも速く飛べる。ついでにいうと、重いものも筋力を使わないで、魔力で持ち上げることができるぞ。だから重い魔物を掴んだままで飛行することができるのだ」
馬車は1日で何キロ移動するのだろう? 俺には分からないな! この街まですごく遠いことは分かったし、あの荒地に誰も来そうにないことも分かった。それでいいや。
「すごい速さで飛んでいたのに、よく背中から落ちなかったものだと思うよ」
「それは大丈夫だぞ。飛行する時には、私の周囲に魔法で防御シールドができている。だからフウタにも風が当たらなかったろう?」
「魔力で飛行するのはすごいね。ところでドラゴンという種族はどれくらい強いの?」
「言葉でいうのは難しいが、分かりやすく言うなら、城の1つぐらいは簡単に破壊できるぞ」
「俺なんか一捻りだね。荒地で殺さいないでくれてありがとう」
「フウタに興味を持ったからな」
命拾いをしたのは私の方かもしれない。あの化け物のような日本刀で切られたら、私もただでは済まなかったはずだ。本当にこいつは、なにも分からないで言っているのか?
「人族の姿で、人族の街を歩いたことはあるの?」
「ないな、上空から見られるからな。前にも言ったが人族に興味などない。興味を持ったのは、おまえだけだぞ」
「俺は普通の人族なのに、興味を持ってくれてありがとう」
「おまえは、普通ではないと思うぞ!」
「そういえば、フウタの剣技は面白いな。騎士たちが使う剣技とは違うぞ!」
「前世のことは覚えていないけど、日本刀という言葉が頭に浮かんできた。日本という言葉も、何のことかわからないけどね。剣技の方は頭ではなく、体が覚えているみたいだ。前世では、相当鍛錬したのかもしれないね」
「森の中の速く移動できるのもそうかもしれないぞ」
前世では、森の中を速く走る鍛錬をしていたのかもしれないな。
俺は前世で何をしていた人なのかな?
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