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ハンドルのある運転席から、借りている駐車場に停止したままの車の前のガラスから、夜空を見ると、夜の空に星が見える。
慣れてしまうと中々いい、いつもの眺めだ。

娘が現在自立していて、20歳。
ざっくり言うと18、19は専門学校。
16、17、18は高校生。

高校受験を控えている時代の当時娘は中学を13、14、15とすると、15歳。
だから車中泊をしていたのは現在から5年前。


夜勤の前日夜ふかしをして、夜勤の日の早朝4時に寝る。
午後12時ぐらいに起きる。
14時半ぐらいには家を出て、出勤するのが夜勤の時の俺の日課。

隣りの部屋からもれる光が邪魔なのと、ごそごそといつまでも聞こえて来る生活音が邪魔。
と、娘は母親に涙ながらに訴えたらしい。

「夜ふかしをするなら出て行って」
と妻に言われて、車中泊をし始めたのが5年前の俺。

特にすることもなくやれることもなく寒い。
結婚前に買った高級羽毛かけ布団。
車のシートを倒して、羽毛かけ布団でミノムシみたいになっていると、
車のフロントガラスから夜空が見える。

フロントガラスごしの景色の夜空はまるで映画の画面を見ているかのようだ。

夜空には小さく星が見えて、小さくとも光っている。
光って見えて、手に届かないモノ、それは手を伸ばしても叶わない夢。
星は夢のようだと感じた。

マンガ家になるという夢。

叶わないからこそ光って輝いて見える夢。

小さくとも光って輝く星、輝いて見えるのは手が届かない、得られない、俺自身のモノにならない魅力的な美人の女性のようなモノなのだろう。
などとも思う。

夢は叶ってしまうと夢は夢のままではなくなり、夢だったモノはキビシイ現実となる。

いつもニコニコしていた看護婦さんは、付き合う前と付き合っていたころまでで、結婚してからはいつもブスッとした顔して怒っている、文字通りブスの顔つきの、いつもブスブスと怒っているだけの、ブスの俺の奥さんになってしまったのだ。

ブスの顔つきに変えてしまったのは、俺のせいだろうか?
だとしたら俺の何がいけなかったのか?
どうしてこうなってしまったのか?

いつもニコニコとしていたあの顔は、
ヘヴィーメタル界の帝王、
メタリカの期間限定発売の
メタリカボックスだったとでもいうのか?

それとも幼い時に見た超合金の箱…
欲しくても得られなかった超合金ロボ…

あるいは得られたとしてもパッケージと中身は多少異なる場合があります。
という文字をも、
あのニコニコとした顔には注意書きが書いてあったとでも言うのだろうか⁉︎

書いてあったのだとしても、当時の俺にはニコニコとした顔の注意書きなんて、読めなかった。

『期間限定』
の文字と、
『パッケージと中身は多少異なる場合があります』
の文字。


ニコニコとした笑顔には、もっと色々な注意書きが書いてあったのかもしれない。

『結婚して苗字が夫と同じになると変身します』
とか、

『子どもが産まれるたびに、愛する順番が変更されて、いつしか夫は最下層に落とされます』
とか、

『もし海で子どもと夫がおぼれていたら、私は子どもを助けます』
『夫は自力で何とかしなさい』
とか…。


洗濯物のたたみ方が悪かったのだろうか?
生かわきだったのにたたんだのがいけなかったのか?
「誰だたたんだ馬鹿は、2度手間だ」
と妻の大声とともに妻の帰宅を知る日もあった。

たたんでいないでいると、
「ヒマ人が1人いたはずなのに何もしていねぇ」
とかの別バージョンもあった。


車中泊をして夜空を見ている。
上記のような思いを巡らせていることもある。
星は小さいながらも光っている。

車を停めている駐車場の場所の先に真っ直ぐ横に線路が存在している。
夜ふかしをするのが目的なのに、
ついウトウトとうたた寝をしてしまう。

ふと目を覚ますと、右から左へ電車が行き過ぎる。

再び夜空を見ているうちに、
ついウトウトとうたた寝をしてしまう。

再びふと目を覚ますと、今度は左から右へ電車が行き過ぎる。

するとやがて朝が来て1回の車中泊は終わる。


別日は別日で、また毎回毎回くり返し、車中泊をする。
車のフロントガラスは、いつものように、いつもと変わりなく、夜空と電車の走り去る光景を映し出す。

ほぼ1年か1年半だったか…
けっこう長い期間、車中泊をした。

「どこに居るの?」
と妻がめずらしく聞いて来たから、
「車ん中」
と俺は答えた。

妻と子どもたちが出勤や学校に行った時間を見計らって、7時40分に賃貸の自宅に戻るのだ。
それでワインを飲んで12時まで寝る。
14時半に出勤する。
そういう車中泊を続けてた日々もあった。

いつしか…
「家で寝て」
と、言われるようになった。

ここ数年車中泊はしてない。

しかしおかしなもので、車中泊に慣れてしまうと家で寝て居るのが落ち着かない。
慣れとは怖いものだ、いや、便利なものだ。

娘の受験勉強の期間が過ぎたからたろう。
家で寝ることになった。
















































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