WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

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第36話 帰国②

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 ――グラグラグラと激しく揺れる。
 これは、このアヒルがわざと揺らしているのだろう。
 そのせいで、水が中にどんどん入ってきて、徐々に身体が沈んでいく。

「やっ、やだ! なんで? 私を助ける為に、来てくれたんじゃないの!?」
『グァ"ア"ア"ーーグァァゲゲゲッ! グァア"ア"ゲゲゲッッ!!』

 笑っている。いや、これは……嘲笑っている。

「そんな……! あなたは、自由に浮けるからいいじゃないっ! 私はそうじゃないの! 可哀想に思わないの!? 出来る人が、出来ない人を助けるのが当たり前じゃないっ!!」

 大きく口を吊り上げ、嗤い、嗤い、嗤われる。

 その嗤い顔や、声を聞きたくなくて。私は耳を押さえ、下を向く。

(嫌だ。こんなの……嫌、嫌、嫌。誰か、誰か、助けて……誰か……――)

 その時――脳裏に、未来ちゃんの温かな笑顔が浮かぶ。

 私は、凜々花たちにいじめられているのをいつも庇ってくれる、未来ちゃんにお礼を言ったことがあった。
 すると――『そんな、お礼なんてしなくていいよ。あっ! でも、もし……私が悲しい時があったら一緒にいて欲しいな。それが、一番嬉しいよ』と未来ちゃんは、温かな笑顔を浮かべていた。

「あ……。悲しい、時に…………」

 未来ちゃんは、泣いていた。ずっと、ずっと、悲しそうに泣いていた。
『一緒にいて欲しい』という、ささやかな願いすら……私は叶えてあげることが出来なかった。


 ――未来ちゃんが、私の代わりになると言ってから。凜々花たちに言われるまま、私は未来ちゃんから自然と離れていった。

 未来ちゃんは傷ついたような、悲しそうな顔を浮かべて私を見ていたのに……。私はそれを分かっていて、見て見ぬふりをした。

 何かを言い返すことは出来なくても。凜々花たちの指示を聞くことをせずに、未来ちゃんと一緒にいることは出来たはずだ。
 2人なら、苦しいことも半々になったかもしれないし、助け合えただろう。

 そもそもは、未来ちゃんは私のせいで辛い思いをすることになったのだから、そうすることは当たり前なことなのに――。

 私は、私をずっと助けてくれた未来ちゃんを、ひどい方法で裏切ったのだ。


「ぁっ、あああああーーー!! 未来ちゃん、未来ちゃん、未来ちゃんっ!!」

 今さら、今さらなことなのに……時間を戻してやり直したい。

 なんで、今になって大事なことに気が付くのだと。むしろ、気が付きたくなかったと――苦しい胸を強く押さえながら、泣きわめく。


 うるさいというように、グワリと足元が傾き。勢いよく水中に放り出された。


「ゲホッ、ゲホッ……!」

 水が鼻に入り、ツンとする。

 しかし、それが治る前に――身体が、強い流れに引っ張られる。
 ゴゥゴゴゴゥウ……! と雷鳴に似た音。
 私が引っ張り込まれた場所。そこは、渦潮の中であった。

 ブクブクブクブクとたくさんの泡が視界を占めている。もみくちゃに回転して、浮上することなど到底無理だろう。

 泡の隙間から顔を覗かせた、白いアヒルが『ギャボッ、ギャボッ、ギャボッ!!』と大きく口を開けて嗤っている。
 口の中は、サメの歯のような何重にもなっている鋭い歯が、ビッシリと生えていた。

 その白いアヒルに、ガブリと肩を齧られ。鋭い歯が、肌にめり込む――そして、じわじわじわと何かを体内に入れられている。

(……っ、いっ、痛っ、痛い、痛い、痛いぃ"い"い"!!)

 身体中が焼けるように痛い。
 体内を、ぐちゃぐちゃに掻き回されているような痛さだ。
 そして直ぐに、私の身体がドロドロと溶けていく。

 それを、悪い視界の中でも理解し。恐怖に叫ぼうと息を吸い込んだことで、ガボガボガボと水を大量に飲み込んでしまった――。


(助け……て、未来ちゃ……――)


 私が、助けを求めた人物は――無情にも、己が裏切り、既にこの世を去ってしまった哀れな女の子であった。


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