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第35話 帰国①
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「陛下、俺とリュシオルはエストとしてこの国で活動しやすい様に小栗東《おぐりあずま》と蘭蛍《あららぎほたる》としては一度、正式な手段で日本へと戻ります。その間、二週間程は顔を出せなくなりますので心配はしないでください」
「ふむ、ポーラの話では随分と進んだ文明を持っているようだな。我々も取り入れていける部分は取り入れたいと思うので、今後も相談にのってくれよ」
「はい、了解しました」
「エスト伯爵、早く戻ってきてくださいね。次はいつ連れて行って貰えるのですか?」
「ポーラ王女、そうそう気軽に出かけていると、バレた時が面倒なので、あまりおすすめはできないです」
「えー。それではスイーツが足りなくなってしまいます」
「王女? あのスイーツはお土産だったのでしょう?」
「私に対してのお土産でもあるのです」
「……まぁスイーツくらいなら今度来るときに、たくさん買ってきますので、それで我慢してください。それよりも重要な部分をしっかりと纏めて置いて下さいね。この国に取り入れたいと思った事などです」
「はい、一番重要なのは……おトイレですね。あの快適なトイレは早急にわが国でも導入するべきです」
「確かに……あれは一度使うとこの国のトイレでは、我慢できないですね……でも、そのトイレを導入するだけでも電力などは必要になりますので、簡単な話ではありません。簡単に発電をしようと思うと発電機などを使用することになりますが、長い目で考えれば化石燃料を使う発電機などは導入するのを避けたいですし」
「なんとかなりませんか?」
「考えては見ましょう」
そんな会話をした後に、俺とホタルはギャンブリーの街の屋敷へと戻った。
「アンドレ隊長。戻りました」
「アズマ、『パーフェクトディフェンダーズ』社を通して、第七艦隊にアズマとホタルの帰国を頼んでおいたぞ、受け入れはいつでもいいそうだ」
「ありがとうございます」
「国交を開くための対話をする手段をつけられないかと、頼まれているがどうする?」
「そうですね。隊長はどうするのがいいと思われていますか?」
「窓口は作るべきだろうな」
「でも。侵略戦争が起こったりしませんか?」
「必ず海岸線の減少に伴う賠償の話を持ち出す国も出てくるだろう。それを踏まえた上での、扱いになるので厄介ではあるが、ずっと閉じこもったままというわけにもいかないのではないだろうか?」
「江戸時代の日本に在った出島のような、外交を専門に行う地域を作るのはどうでしょうか?」
「それはエスト伯爵領に作るという事か?」
「勿論そうなりますね。完全に隔離された地域を準備して、そこでのみ外交を行うという形ですね」
「それが一番現実的だが、その海岸線ですらエビ型やカニ型のモンスターが闊歩しているのが心配ではあるな」
「その隔離地域の中は、モンスターが居なくなるように俺がなんとかしますよ。俺ではどういう形で作るのが良いのか決められないので、隊長は『パーフェクトディフェンダーズ』社と相談して青写真的な物を準備してもらえませんか?」
「解った。その件はすすめておこう」
そして、その日の午後にはホタルと一緒にアンドレ隊長とミッシェルに送られて船で結界の外に停泊する第七艦隊の空母へと送り届けられることになった。
当然髪の毛は黒髪に戻し、コンタクトも外している。
「ミスターオグリ、ミスアララギ、空母『ラン・フォー・ザ・ローゼス』へようこそ」
「お世話になります。アズマ・オグリとホタル・アララギです」
「先輩……知ってますか? この船の名前……ケンタッキーダービーの別名ですよ」
「まじか……つくづく競馬に縁があるな」
「私はこの艦の艦長をしているバーン大佐だ。『ダービーキングダム』のジョンソン船長は昔の同僚だよ」
「あ、そうなんですね。ジョンソン船長は元気にしてらっしゃるんですか?」
「あいにく私はまだ直接会うことは、かなって居ないのだが、電話では話をさせて貰った。元気そうだったよ」
「そうですかそれは良かったです」
「君たち二名についてだが、一刻も早く日本へ戻りたいだろうとは思うが、こちらでも色々と聞かせていただきたい事情は理解して貰えるかな?」
「はい、ある程度のことは覚悟してきました。ただし俺とホタルはアンドレ隊長たちのように積極的な、ハンティングなどもして無いですし、有益な情報はあまりないと思います」
「ふむ、カールさんとダニエルさんから伺った話だとミス・アララギは語学の天才だとか? 二か月近くも滞在をしたのなら、ある程度のこの大陸の言語を理解されているのでは?」
「あ、あー、そうですね。ホタルも俺も日常的にかわす挨拶や、買い物に困らない程度は理解できてきたと思っています」
「それは、今後この国との交渉を行っていきたい、我がアメリカにとっても非常に役に立つのですが、ご協力をお願いできませんか?」
「あーなんて言うか、俺達はあくまでも日本人ですから、アメリカに協力するとは言えないです。だからと言って日本政府に協力をしたいとも思っていませんが」
「ふむ、帰国までは一週間を目途にしていただきたいと思います。その間出来るだけ我々の疑問に答えていただけることを期待していますよ」
「あの? カールさんとダニエルさんはまだこの艦にいるんですか?」
「いや、彼らは巡洋艦でグアムの基地へと向かっている。アメリカ政府が直接話を聞きたいという事でね。あとはそうだね、君たち二人と口裏合わせで間違った情報を流される可能性も否定はできないので、別々の場所で質問をさせてもらうことにしたんだ」
「そうだったんですね」
「ミスターオグリ、まず単純に私の素朴な疑問に答えて欲しいな」
「なんでしょう?」
「私がダニエル、カールの両名から聞いた情報では、アズマは日本語しか話せないという事だったのに、今私と話しているミスターオグリは、随分達者に英語を話している。目をつぶって話せば米国人と話しているとしか思えないほどにね」
「あ……」
「先輩……駄目じゃん」
「いえ、これは我々の七人の中では共通語が英語だったので、必死で勉強したんです」
「必死で勉強したら二か月でネイティブに英語を話せるのなら、当然現地語もネイティブに話せているのではないのですか?」
「そこは、その、我々はほとんど一緒に居ましたし、現地人との交流は少なかったので……」
「まぁいいでしょう」
それから一週間を空母内で滞在させられ、俺達が知っていると思われる、カージノ国の情報を色々と聞かれることになった。
質問内容は、カージノ王国の体制や文化、モンスターやダンジョンの事など様々な内容に及んだが、やはり一番興味を持たれたのは、お告げカードの存在だった。
「それでは、この大陸内でモンスターを倒せば、我々でもそのお告げカードと言うものを手にして、能力が芽生えるという事なのか?」
「どうでしょう? 所在している星が違いますので、そのまま今まで通りのルールなのかどうかは断言できません」
「我々が、結界の内部に入るためにはどうすればいいのだね?」
「ギルドと教会で聞いた話ですと、お告げカードを持った人間でないと結界を通り抜けることはできないそうです」
「すると、君と一緒ならどうだね?」
「わかりません。カージノ大陸では成人すればみんなモンスターを狩りに行って、お告げカードを持っている事が当たり前でしたので、そんな検証をすることはありませんでしたから」
「どうすれば、カージノ王国の政府と連絡が付けられるのか、ヒントのような物は無いのかね」
「今回の大陸転移によって、新たに海岸線に領地を貰ったエスト伯爵という人物が居らっしゃるようですから、その方にアンドレ隊長経由でアポイントを取ってもらうのが、確実なのではないでしょうか?」
「ふむ。概ね君たち二人の話している内容は、グアムのカールさんとダニエルさんの話した内容と相違点も無いようだね。ご協力ありがとう。沖縄基地に明日輸送機で送り届けよう。そこからは日本政府担当官に身柄を引き渡すことになる」
「ありがとうございます」
「カールさんとダニエルさん、拘束は終了するのですか?」
「あー、彼らも君たちと同じで出身国の質問を受けた後に解放される予定だよ」
「そうですか、短い間ですがお世話になりました」
俺達が輸送機で沖縄の米軍基地へと移送されると、そこには内閣官房長官の島さんという大臣が待ち受けていた。
「いやぁ小栗さん、蘭さん無事に帰国されて我々としても一安心です。お帰りなさい」
「お出迎えありがとうございます。まさか国の大臣さんに迎えられるなんて思っても無かったです」
「これからの日本。これからの世界を考えて行く上で、新大陸であるカージノ王国との関係を抜きに考える事はできないですから、今は日本政府としても新大陸の情報を集めることは、最優先課題です」
「そうなんですね。ですが我々の知り得る情報だけでは、外交政策までは立てられないかと、ただの難民でしたから」
俺は必死で役に立たないアピールを行った。
「そう謙遜される事もありませんよ。我々もできる限りこの問題に関してはアメリカとも協力し合って取り組む事を決定していますので、ある程度の情報は伺っています。まるで異世界転移のラノベのようなステータスアップやスキルの獲得。魔法まで存在しているそうじゃないですか。日本人の小栗さんや蘭さんがそういう物が存在する世界で、何も行動せずに何も身につけていなかったとも思えません」
「それは何故でしょうか?」
「小栗さんのおっしゃるように、大した能力も身につけていなかったのであれば、最初にカージノ王国から戻ってこられた、カールさんやダニエルさんと一緒の時に帰国を選択したのではないでしょうか? それが、ある程度の日本や世界での反応を見極められてから戻って来られているのは不自然です。それともう一つ。日本の警察の捜査能力は極めて優秀なのです。小栗さんがカージノ王国に滞在し続けたとされる期間に『小栗東』さん。貴方名義のクレジットカードがたびたび使用されています。そして当然我々は調べさせていただきました。使用された店舗の防犯カメラには、小栗さんや蘭さんにとてもよく似た人物が映っていました」
「な、そ、それは……」
「この事実はまだアメリカ側には連絡していません。ダニエルさんやカールさんはそのような特殊能力は所持されて無いんじゃないですか? 小栗さんと蘭さんのみが、身につけている特殊な能力でしょう。どうでしょうか? 私の予想は間違っていますか?」
「参りました。官房長官。その通りです。ただし能力を持っているのは私だけで、ホタルは何も持っていません。拘束をされるのであれば俺は官房長官がご指摘された能力を使ってカージノ王国に戻り、以降日本と絶縁する選択肢もあります」
「……小栗さん。日本国はあなたの敵ではありません。新しい世界を築いていくために、お互い協力できないかとの相談です。拘束をするようなことも、小栗さんの能力を知った以上は無意味だと理解できます。その上でこの国に出来る限り協力して欲しいと思うのですが、いかがでしょうか?
今日は、久しぶりの日本を楽しんでいただくために、東京で和食を用意してありますので、このまま一緒に那覇空港から戻りましょう」
「解りました」
いきなりのネタバレに俺とホタルは少し焦ったが、どうやらこの官房長官は切れ者ではあるが、俺達に対しての悪意は今の所無いようだと感じた。
「ふむ、ポーラの話では随分と進んだ文明を持っているようだな。我々も取り入れていける部分は取り入れたいと思うので、今後も相談にのってくれよ」
「はい、了解しました」
「エスト伯爵、早く戻ってきてくださいね。次はいつ連れて行って貰えるのですか?」
「ポーラ王女、そうそう気軽に出かけていると、バレた時が面倒なので、あまりおすすめはできないです」
「えー。それではスイーツが足りなくなってしまいます」
「王女? あのスイーツはお土産だったのでしょう?」
「私に対してのお土産でもあるのです」
「……まぁスイーツくらいなら今度来るときに、たくさん買ってきますので、それで我慢してください。それよりも重要な部分をしっかりと纏めて置いて下さいね。この国に取り入れたいと思った事などです」
「はい、一番重要なのは……おトイレですね。あの快適なトイレは早急にわが国でも導入するべきです」
「確かに……あれは一度使うとこの国のトイレでは、我慢できないですね……でも、そのトイレを導入するだけでも電力などは必要になりますので、簡単な話ではありません。簡単に発電をしようと思うと発電機などを使用することになりますが、長い目で考えれば化石燃料を使う発電機などは導入するのを避けたいですし」
「なんとかなりませんか?」
「考えては見ましょう」
そんな会話をした後に、俺とホタルはギャンブリーの街の屋敷へと戻った。
「アンドレ隊長。戻りました」
「アズマ、『パーフェクトディフェンダーズ』社を通して、第七艦隊にアズマとホタルの帰国を頼んでおいたぞ、受け入れはいつでもいいそうだ」
「ありがとうございます」
「国交を開くための対話をする手段をつけられないかと、頼まれているがどうする?」
「そうですね。隊長はどうするのがいいと思われていますか?」
「窓口は作るべきだろうな」
「でも。侵略戦争が起こったりしませんか?」
「必ず海岸線の減少に伴う賠償の話を持ち出す国も出てくるだろう。それを踏まえた上での、扱いになるので厄介ではあるが、ずっと閉じこもったままというわけにもいかないのではないだろうか?」
「江戸時代の日本に在った出島のような、外交を専門に行う地域を作るのはどうでしょうか?」
「それはエスト伯爵領に作るという事か?」
「勿論そうなりますね。完全に隔離された地域を準備して、そこでのみ外交を行うという形ですね」
「それが一番現実的だが、その海岸線ですらエビ型やカニ型のモンスターが闊歩しているのが心配ではあるな」
「その隔離地域の中は、モンスターが居なくなるように俺がなんとかしますよ。俺ではどういう形で作るのが良いのか決められないので、隊長は『パーフェクトディフェンダーズ』社と相談して青写真的な物を準備してもらえませんか?」
「解った。その件はすすめておこう」
そして、その日の午後にはホタルと一緒にアンドレ隊長とミッシェルに送られて船で結界の外に停泊する第七艦隊の空母へと送り届けられることになった。
当然髪の毛は黒髪に戻し、コンタクトも外している。
「ミスターオグリ、ミスアララギ、空母『ラン・フォー・ザ・ローゼス』へようこそ」
「お世話になります。アズマ・オグリとホタル・アララギです」
「先輩……知ってますか? この船の名前……ケンタッキーダービーの別名ですよ」
「まじか……つくづく競馬に縁があるな」
「私はこの艦の艦長をしているバーン大佐だ。『ダービーキングダム』のジョンソン船長は昔の同僚だよ」
「あ、そうなんですね。ジョンソン船長は元気にしてらっしゃるんですか?」
「あいにく私はまだ直接会うことは、かなって居ないのだが、電話では話をさせて貰った。元気そうだったよ」
「そうですかそれは良かったです」
「君たち二名についてだが、一刻も早く日本へ戻りたいだろうとは思うが、こちらでも色々と聞かせていただきたい事情は理解して貰えるかな?」
「はい、ある程度のことは覚悟してきました。ただし俺とホタルはアンドレ隊長たちのように積極的な、ハンティングなどもして無いですし、有益な情報はあまりないと思います」
「ふむ、カールさんとダニエルさんから伺った話だとミス・アララギは語学の天才だとか? 二か月近くも滞在をしたのなら、ある程度のこの大陸の言語を理解されているのでは?」
「あ、あー、そうですね。ホタルも俺も日常的にかわす挨拶や、買い物に困らない程度は理解できてきたと思っています」
「それは、今後この国との交渉を行っていきたい、我がアメリカにとっても非常に役に立つのですが、ご協力をお願いできませんか?」
「あーなんて言うか、俺達はあくまでも日本人ですから、アメリカに協力するとは言えないです。だからと言って日本政府に協力をしたいとも思っていませんが」
「ふむ、帰国までは一週間を目途にしていただきたいと思います。その間出来るだけ我々の疑問に答えていただけることを期待していますよ」
「あの? カールさんとダニエルさんはまだこの艦にいるんですか?」
「いや、彼らは巡洋艦でグアムの基地へと向かっている。アメリカ政府が直接話を聞きたいという事でね。あとはそうだね、君たち二人と口裏合わせで間違った情報を流される可能性も否定はできないので、別々の場所で質問をさせてもらうことにしたんだ」
「そうだったんですね」
「ミスターオグリ、まず単純に私の素朴な疑問に答えて欲しいな」
「なんでしょう?」
「私がダニエル、カールの両名から聞いた情報では、アズマは日本語しか話せないという事だったのに、今私と話しているミスターオグリは、随分達者に英語を話している。目をつぶって話せば米国人と話しているとしか思えないほどにね」
「あ……」
「先輩……駄目じゃん」
「いえ、これは我々の七人の中では共通語が英語だったので、必死で勉強したんです」
「必死で勉強したら二か月でネイティブに英語を話せるのなら、当然現地語もネイティブに話せているのではないのですか?」
「そこは、その、我々はほとんど一緒に居ましたし、現地人との交流は少なかったので……」
「まぁいいでしょう」
それから一週間を空母内で滞在させられ、俺達が知っていると思われる、カージノ国の情報を色々と聞かれることになった。
質問内容は、カージノ王国の体制や文化、モンスターやダンジョンの事など様々な内容に及んだが、やはり一番興味を持たれたのは、お告げカードの存在だった。
「それでは、この大陸内でモンスターを倒せば、我々でもそのお告げカードと言うものを手にして、能力が芽生えるという事なのか?」
「どうでしょう? 所在している星が違いますので、そのまま今まで通りのルールなのかどうかは断言できません」
「我々が、結界の内部に入るためにはどうすればいいのだね?」
「ギルドと教会で聞いた話ですと、お告げカードを持った人間でないと結界を通り抜けることはできないそうです」
「すると、君と一緒ならどうだね?」
「わかりません。カージノ大陸では成人すればみんなモンスターを狩りに行って、お告げカードを持っている事が当たり前でしたので、そんな検証をすることはありませんでしたから」
「どうすれば、カージノ王国の政府と連絡が付けられるのか、ヒントのような物は無いのかね」
「今回の大陸転移によって、新たに海岸線に領地を貰ったエスト伯爵という人物が居らっしゃるようですから、その方にアンドレ隊長経由でアポイントを取ってもらうのが、確実なのではないでしょうか?」
「ふむ。概ね君たち二人の話している内容は、グアムのカールさんとダニエルさんの話した内容と相違点も無いようだね。ご協力ありがとう。沖縄基地に明日輸送機で送り届けよう。そこからは日本政府担当官に身柄を引き渡すことになる」
「ありがとうございます」
「カールさんとダニエルさん、拘束は終了するのですか?」
「あー、彼らも君たちと同じで出身国の質問を受けた後に解放される予定だよ」
「そうですか、短い間ですがお世話になりました」
俺達が輸送機で沖縄の米軍基地へと移送されると、そこには内閣官房長官の島さんという大臣が待ち受けていた。
「いやぁ小栗さん、蘭さん無事に帰国されて我々としても一安心です。お帰りなさい」
「お出迎えありがとうございます。まさか国の大臣さんに迎えられるなんて思っても無かったです」
「これからの日本。これからの世界を考えて行く上で、新大陸であるカージノ王国との関係を抜きに考える事はできないですから、今は日本政府としても新大陸の情報を集めることは、最優先課題です」
「そうなんですね。ですが我々の知り得る情報だけでは、外交政策までは立てられないかと、ただの難民でしたから」
俺は必死で役に立たないアピールを行った。
「そう謙遜される事もありませんよ。我々もできる限りこの問題に関してはアメリカとも協力し合って取り組む事を決定していますので、ある程度の情報は伺っています。まるで異世界転移のラノベのようなステータスアップやスキルの獲得。魔法まで存在しているそうじゃないですか。日本人の小栗さんや蘭さんがそういう物が存在する世界で、何も行動せずに何も身につけていなかったとも思えません」
「それは何故でしょうか?」
「小栗さんのおっしゃるように、大した能力も身につけていなかったのであれば、最初にカージノ王国から戻ってこられた、カールさんやダニエルさんと一緒の時に帰国を選択したのではないでしょうか? それが、ある程度の日本や世界での反応を見極められてから戻って来られているのは不自然です。それともう一つ。日本の警察の捜査能力は極めて優秀なのです。小栗さんがカージノ王国に滞在し続けたとされる期間に『小栗東』さん。貴方名義のクレジットカードがたびたび使用されています。そして当然我々は調べさせていただきました。使用された店舗の防犯カメラには、小栗さんや蘭さんにとてもよく似た人物が映っていました」
「な、そ、それは……」
「この事実はまだアメリカ側には連絡していません。ダニエルさんやカールさんはそのような特殊能力は所持されて無いんじゃないですか? 小栗さんと蘭さんのみが、身につけている特殊な能力でしょう。どうでしょうか? 私の予想は間違っていますか?」
「参りました。官房長官。その通りです。ただし能力を持っているのは私だけで、ホタルは何も持っていません。拘束をされるのであれば俺は官房長官がご指摘された能力を使ってカージノ王国に戻り、以降日本と絶縁する選択肢もあります」
「……小栗さん。日本国はあなたの敵ではありません。新しい世界を築いていくために、お互い協力できないかとの相談です。拘束をするようなことも、小栗さんの能力を知った以上は無意味だと理解できます。その上でこの国に出来る限り協力して欲しいと思うのですが、いかがでしょうか?
今日は、久しぶりの日本を楽しんでいただくために、東京で和食を用意してありますので、このまま一緒に那覇空港から戻りましょう」
「解りました」
いきなりのネタバレに俺とホタルは少し焦ったが、どうやらこの官房長官は切れ者ではあるが、俺達に対しての悪意は今の所無いようだと感じた。
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