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第29話 取り巻く環境(別視点)②
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(アメリカ大統領『バイソン・メンデス』)
「ジーザス……」
私の夢枕に神が立たれた。
「私はオグリーヌ。あなた方とは別の世界で神たる存在です。一週間後に全地球上において海面が上昇をします。私が選定した地球のリーダーたる方々に一斉にお知らせしています。世界が協力をしあい海面上昇に伴う死者が出ないように導きなさい。聞き入れればその働きに応じた祝福もあることでしょう。全ては見届けます」
こんな冗談のような一方的な話を信じろというのか?
だが……『ダービーキングダム』の事件が報告されたばかりだ。
あの事件での乗員乗客はすべて明確に、異世界転移を体験したと語っている。
実際に上陸をした者は、そのまま異世界へ取り残されてしまってるようだが、あれだけの人数の社会的地位も高い人々が、口裏を合わせて嘘をつく理由がない。
私はすぐに、主要各国の首長へと連絡を取った。
やはり、女神の伝えてきたとおりに主だった国の首長の枕元へとオグリーヌと名乗る女神は現れていた。
信じるしかない……該当する各国への連絡を急ぎ、国連主導で周辺国への避難を行わせた。
近年、海面水位の上昇は顕著である程度の対策は考えられており、一メートルの上昇であればなんとか対応は可能ではあった。
しかしながら、世界中のビーチはその九十パーセントが海底へと姿を消してしまう事になる。
ビーチリゾートが主要産業であった地域では、経済被害は莫大なものになるであろう。
翌日さらにお告げがあった。
今度は私のもとにだけのお告げであった。
太平洋のど真ん中に、オーストラリア大陸と同等の大陸が出現するというお告げだった。
偶然なのか、必然なのかこの海域にはほぼ人口は存在せず、喪失する陸地は極めて少ない。
そこに、大陸が現れるなら経済損失は逆にプラスへと転じるのか?
そう思ったが……
「現れるカージノ大陸へは地球文明と違う理を持った知的生命体が、その理の中で生活をしています。争いなどを起こさぬようにお願いします」
「女神様。地球が負った被害の回収は、新大陸から行うのが筋道ではないでしょうか?」
「その辺りは私は関与いたしませんが、もし争そうことを手段として選ぶのであれば、地球の被害は広がるだけですよ? あなたが、それでも争う事を選ぶ愚かな人間でないことを願います」
それだけを伝えて消えて行った。
どうしろというのだ。
再び各国へ連絡を入れてみたが、今回のお告げを聞いたのはどうやら私だけのようだ。
女神とやらも解っているな。
世界はこの、バイソン・メンデスの号令の下に動くべきなのだ。
新大陸出現予定地域の避難誘導は、アメリカだけで責任をもって執り行う。
それにより、新大陸関係の利権は我がステイツを介してしか手に入れる事ができないと世界は認識するだろう。
友好的に接するか、かつてこのアメリカ大陸を支配した時のように、高圧的に出るべきか?
ファーストコンタクトで舐められることだけは避けなければならないな。
しかし、いきなり争うことは避けるべきであろう。
待てよ……
この情報を各国へ流さなければ、少なくともロシアや中国は占領しようと動くのではないだろうか?
やらせてみて占領されそうなら、アメリカが『ホワイトナイト』として新大陸を助け恩に着せる。
逆に、ロシアや中国が負けるようであれば、そんな野蛮な国と付き合わないでアメリカと友好的に付き合いましょうと提案する。
それならば、わが国には恩恵しか無いのではないか?
そうするべきだな。
◇◆◇◆
(中国国家主席『モウ・チェン』)
「太平洋に新大陸が現れただと? 我が中国の土地であると世界に向けて発表しろ」
「上陸部隊はどうされますか?」
「そんな事は後でいい。先に新大陸は我が国の所有物であると発表する事が大事なのだ。どこよりも早くだ。そして我が国の土地に勝手に上陸するなと世界に対して呼びかけておけばよい」
「実際の支配はされないのですか?」
「向こうから何か言ってこない限り放っておけばよい。ただ他国に利権を持っていかれることだけは許してはならぬ」
「解りました」
◇◆◇◆
(日本国内閣総理大臣『藤堂晃』)
「新大陸の出現に関しては、わが国が積極的に関与する必要は無い。アメリカの主張に合わせて賛成意見を出して置けばそれで構わない。それよりも問題は我が国の国民が二名行方不明になっている事だ。拉致被害の問題のようになってしまえば、色々と面倒が起こる。状況はどうなっているのだ」
「はい。現時点では小栗さん蘭さんの両名の消息は解っておりませんが、『ダービーキングダム』の船長の証言通りに本人達が希望して上陸捜索班に参加したとの事ですので、国が責任問題に問われる事は無いと思います」
「国外の二名の乗員が新大陸からの生還者として帰還しているが、彼らの発言はどうなっている?」
「現在、直接話を聞けるのかどうかを、二名を保護したアメリカ第七艦隊に確認中です」
「どうなのだ? 実際は生存して新大陸にいるのか?」
「公式発表ではありませんが……おそらく新大陸で生存しているのは間違いないかと」
「彼らの親族に連絡を取り、もし何らかの連絡があった場合は必ず国へ報告をする様に、お願いしなさい」
「了解しました。担当省庁は外務省で構いませんか?」
「まだ、正式に国であると認めたわけでは無いから、外務省ではないだろう。内閣官房が直接担当しなさい」
「それでは、連絡要員は警察庁警備局から派遣して貰う形で構いませんか?」
「そうだな。米海軍との連絡も密接に取り扱う必要があるので、海自から交渉にたけた人員も供出して貰いなさい。窓口が海軍だと警察組織とはあまり折り合いがつかないだろうから」
「解りました。それでは私の直接担当で当該問題の即応部署を立ち上げます」
「よろしく頼むぞ、島官房長官」
「はい」
新大陸か……日本にとって果たして吉と出るか凶と出るのか……新たな時代が始まるのかもな。
それよりもだ。
国内の砂浜がほぼ喪失してしまった問題が大きい。
日本の国土は六千八百五十二の島から成り立ち、海岸線が国内では三万四千キロメートルに渡っていたからな。
防波堤が整備されていた部分においてはそれほどでもないが、砂浜はほぼ失われてしまった。
これによる経済損失はかなりの額になるし、漁業組合の特に貝類などを主要産物にしていた従事者たちの保障がどれ程のものになるか……困ったものだ。
◇◆◇◆
「あ、親父か? 俺だ」
「どこの俺俺詐欺だ。まだそんなのに騙される程もうろくする年じゃ無いぞ」
「東だよ。まだ国から何も言って来てないか?」
「言ってきてるが、本当にお前のことだったのか? なんで派遣社員のお前が世界一周なんてしてるんだ? そんな金ある訳ないから別人だろ? と言って置いたぞ」
「あー、連絡してなかったのは悪かったが、仕事辞めたんだよ。まとまった金が手に入ったからな」
「なにか悪い事にでも手を染めたんじゃないだろうな?」
「確かに良い事とも言えないけど、親父も好きだろ? 競馬で当てたんだ。WIN5。二か月ほど前の競争で配当六億のがあっただろ? 覚えてるか」
「ああ、毎週WIN5は買ってるからな。まさかお前あれ当てたのか?」
「そうだよ。その金で、とりあえず世界一周に出かけたら、色々巻き込まれたんだ。でもさ、大丈夫だから心配しないでくれ。色々国から聞かれたりする事があっても、知らんで通して欲しい。絶対面倒な事になるから」
「解った。こっちから連絡付ける方法はあるのか?」
「Eメールで送って要件を送ってくれたら一日一回くらいは確認するから、それで構わないか?」
「アドレスは前のが使えるのか?」
「ああ、大丈夫だ。お袋にも心配するなって伝えてくれ」
「横に居るから、ちょっと声だけ聞かせてやれ」
「お袋? 親父にも言ったけど、心配しないでいいからな」
「東、そう言えば司法書士の斎藤さんって男性から連絡はいってたけど、なにかやったのかい?」
「あー……それも含めて、また連絡入れるよ」
うちの両親は……流石というか、あまり心配してなかったみたいだ。
だが、マンションの家賃収入の事とか、きちんとして置かなきゃ色々面倒な事になりそうだし、日本円はそれなりに必要だもんな。
このままじゃ、俺の金を使うだけのことでも、いつ制限されても不思議じゃないし。
信用できる仲間は必要だな。
「ジーザス……」
私の夢枕に神が立たれた。
「私はオグリーヌ。あなた方とは別の世界で神たる存在です。一週間後に全地球上において海面が上昇をします。私が選定した地球のリーダーたる方々に一斉にお知らせしています。世界が協力をしあい海面上昇に伴う死者が出ないように導きなさい。聞き入れればその働きに応じた祝福もあることでしょう。全ては見届けます」
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やはり、女神の伝えてきたとおりに主だった国の首長の枕元へとオグリーヌと名乗る女神は現れていた。
信じるしかない……該当する各国への連絡を急ぎ、国連主導で周辺国への避難を行わせた。
近年、海面水位の上昇は顕著である程度の対策は考えられており、一メートルの上昇であればなんとか対応は可能ではあった。
しかしながら、世界中のビーチはその九十パーセントが海底へと姿を消してしまう事になる。
ビーチリゾートが主要産業であった地域では、経済被害は莫大なものになるであろう。
翌日さらにお告げがあった。
今度は私のもとにだけのお告げであった。
太平洋のど真ん中に、オーストラリア大陸と同等の大陸が出現するというお告げだった。
偶然なのか、必然なのかこの海域にはほぼ人口は存在せず、喪失する陸地は極めて少ない。
そこに、大陸が現れるなら経済損失は逆にプラスへと転じるのか?
そう思ったが……
「現れるカージノ大陸へは地球文明と違う理を持った知的生命体が、その理の中で生活をしています。争いなどを起こさぬようにお願いします」
「女神様。地球が負った被害の回収は、新大陸から行うのが筋道ではないでしょうか?」
「その辺りは私は関与いたしませんが、もし争そうことを手段として選ぶのであれば、地球の被害は広がるだけですよ? あなたが、それでも争う事を選ぶ愚かな人間でないことを願います」
それだけを伝えて消えて行った。
どうしろというのだ。
再び各国へ連絡を入れてみたが、今回のお告げを聞いたのはどうやら私だけのようだ。
女神とやらも解っているな。
世界はこの、バイソン・メンデスの号令の下に動くべきなのだ。
新大陸出現予定地域の避難誘導は、アメリカだけで責任をもって執り行う。
それにより、新大陸関係の利権は我がステイツを介してしか手に入れる事ができないと世界は認識するだろう。
友好的に接するか、かつてこのアメリカ大陸を支配した時のように、高圧的に出るべきか?
ファーストコンタクトで舐められることだけは避けなければならないな。
しかし、いきなり争うことは避けるべきであろう。
待てよ……
この情報を各国へ流さなければ、少なくともロシアや中国は占領しようと動くのではないだろうか?
やらせてみて占領されそうなら、アメリカが『ホワイトナイト』として新大陸を助け恩に着せる。
逆に、ロシアや中国が負けるようであれば、そんな野蛮な国と付き合わないでアメリカと友好的に付き合いましょうと提案する。
それならば、わが国には恩恵しか無いのではないか?
そうするべきだな。
◇◆◇◆
(中国国家主席『モウ・チェン』)
「太平洋に新大陸が現れただと? 我が中国の土地であると世界に向けて発表しろ」
「上陸部隊はどうされますか?」
「そんな事は後でいい。先に新大陸は我が国の所有物であると発表する事が大事なのだ。どこよりも早くだ。そして我が国の土地に勝手に上陸するなと世界に対して呼びかけておけばよい」
「実際の支配はされないのですか?」
「向こうから何か言ってこない限り放っておけばよい。ただ他国に利権を持っていかれることだけは許してはならぬ」
「解りました」
◇◆◇◆
(日本国内閣総理大臣『藤堂晃』)
「新大陸の出現に関しては、わが国が積極的に関与する必要は無い。アメリカの主張に合わせて賛成意見を出して置けばそれで構わない。それよりも問題は我が国の国民が二名行方不明になっている事だ。拉致被害の問題のようになってしまえば、色々と面倒が起こる。状況はどうなっているのだ」
「はい。現時点では小栗さん蘭さんの両名の消息は解っておりませんが、『ダービーキングダム』の船長の証言通りに本人達が希望して上陸捜索班に参加したとの事ですので、国が責任問題に問われる事は無いと思います」
「国外の二名の乗員が新大陸からの生還者として帰還しているが、彼らの発言はどうなっている?」
「現在、直接話を聞けるのかどうかを、二名を保護したアメリカ第七艦隊に確認中です」
「どうなのだ? 実際は生存して新大陸にいるのか?」
「公式発表ではありませんが……おそらく新大陸で生存しているのは間違いないかと」
「彼らの親族に連絡を取り、もし何らかの連絡があった場合は必ず国へ報告をする様に、お願いしなさい」
「了解しました。担当省庁は外務省で構いませんか?」
「まだ、正式に国であると認めたわけでは無いから、外務省ではないだろう。内閣官房が直接担当しなさい」
「それでは、連絡要員は警察庁警備局から派遣して貰う形で構いませんか?」
「そうだな。米海軍との連絡も密接に取り扱う必要があるので、海自から交渉にたけた人員も供出して貰いなさい。窓口が海軍だと警察組織とはあまり折り合いがつかないだろうから」
「解りました。それでは私の直接担当で当該問題の即応部署を立ち上げます」
「よろしく頼むぞ、島官房長官」
「はい」
新大陸か……日本にとって果たして吉と出るか凶と出るのか……新たな時代が始まるのかもな。
それよりもだ。
国内の砂浜がほぼ喪失してしまった問題が大きい。
日本の国土は六千八百五十二の島から成り立ち、海岸線が国内では三万四千キロメートルに渡っていたからな。
防波堤が整備されていた部分においてはそれほどでもないが、砂浜はほぼ失われてしまった。
これによる経済損失はかなりの額になるし、漁業組合の特に貝類などを主要産物にしていた従事者たちの保障がどれ程のものになるか……困ったものだ。
◇◆◇◆
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「言ってきてるが、本当にお前のことだったのか? なんで派遣社員のお前が世界一周なんてしてるんだ? そんな金ある訳ないから別人だろ? と言って置いたぞ」
「あー、連絡してなかったのは悪かったが、仕事辞めたんだよ。まとまった金が手に入ったからな」
「なにか悪い事にでも手を染めたんじゃないだろうな?」
「確かに良い事とも言えないけど、親父も好きだろ? 競馬で当てたんだ。WIN5。二か月ほど前の競争で配当六億のがあっただろ? 覚えてるか」
「ああ、毎週WIN5は買ってるからな。まさかお前あれ当てたのか?」
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「解った。こっちから連絡付ける方法はあるのか?」
「Eメールで送って要件を送ってくれたら一日一回くらいは確認するから、それで構わないか?」
「アドレスは前のが使えるのか?」
「ああ、大丈夫だ。お袋にも心配するなって伝えてくれ」
「横に居るから、ちょっと声だけ聞かせてやれ」
「お袋? 親父にも言ったけど、心配しないでいいからな」
「東、そう言えば司法書士の斎藤さんって男性から連絡はいってたけど、なにかやったのかい?」
「あー……それも含めて、また連絡入れるよ」
うちの両親は……流石というか、あまり心配してなかったみたいだ。
だが、マンションの家賃収入の事とか、きちんとして置かなきゃ色々面倒な事になりそうだし、日本円はそれなりに必要だもんな。
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