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第23話 墜落
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「オグリーヌ。今獲得しているスキルは、地球でも使えるのか?」
「私も一緒に行きますので使えますよ?」
「まじかよ……地球には魔法やモンスターなんて存在しないんだけど大丈夫なのか? この大陸の人間が地球の他の国を制圧しようとか考えないとも言えないだろ?」
「この大陸の王族や貴族たちは地球の資源を欲しがらないのではないでしょうか?」
「そうかもな、わざわざ戦争をする必要もないか……でもテレビや家電などは、この世界では見たことないから、それは欲しがるんじゃないのか?」
「そうですね、便利な家電品は需要があるかも知れませんが、それは買えばいいだけの話です」
「逆に地球の他の国から攻められた場合はどう対処するんだ?」
「地球の核兵器程度では結界を突破できないでしょう」
「俺に何を求めているんだ?」
「さすがに私が表立って地球人類との交渉をするわけにも行きませんのでアズマは私の代理ですね。勿論この大陸の支配者になれというわけでもありません。あなたに特別なスキルオーブを渡します。そのスキルを身につければ、この国の王族もあなたを無下に扱ったりはしませんし、協力的になるでしょう。勿論地球の為政者たちに行ったように、この国の王の夢枕に立ち、あなたの存在を告げましょう『伝説の勇者が現れこの国を良き相談相手になる』と」
「なぁオグリーヌ。この大陸のモンスターってさ他の島や大陸に現れたりはしないのか?」
「海洋生物のモンスターは先に転移させてしまった、クラーケン以外は連れて行きませんし、あとは飛行系のモンスターですが……これは移動は可能です。ただし、他の大陸には魔素が存在しませんので、進んでカージノ大陸の外を目指すモンスターは出て来ないはずです」
「はずって……絶対じゃ無いんだ」
「竜種などは、魔素がなくとも一年は平気で活動できますので……それでも賢い生物ですからわざわざ住みにくい所に行かないでしょう」
「さっき特別なスキルオーブと言ってたけど、どんなオーブなんだ?」
「それは【勇者】と【聖女】の二つです」
「勇者は、カードランクをSSに上げて固有スキル『スキル吸収』を使えます。それとアクティブスキルの数の制限がなくなります。聖女はカードランクをSに上げて、固有スキルとして聖魔法レベル十が最初から使えます。アクティブなスキル枠は十二個です。スキルはアズマの持つスキルの中からコピーをして設定できます。アズマのパートナーに与えて下さい」
「オグリーヌ。これから先も俺は競争を当て続けてスキルを増やせるのか?」
「表彰式は中止にしようかしら?」
「ひでぇな」
「今アズマが所有するスキルで乗り切れないような困難はないと思いますが、それでも不安であるならば増やし続けて行けばいいのでは? 私は別に制限をかけたりはしません」
「そっか、そういえば本来この部屋で売っているスキルってなんなんだ?」
「この部屋では『ユニークスキル』と『エクストラスキル』の二種類が販売されています」
「ユニークスキルは、アズマの【予知】やホタルの【言語理解】のような通常現れないスキルです。これは同じものは存在しない『オンリースキル』となります。『エクストラスキル』は『オンリースキル』ではレベルアップが不可能なので、それをレベルアップするためのスキルです。当然他のスキルのレベルアップにも使えます」
「値段は? どうなんだ」
「それぞれ十億ゴルですね。今のアズマには難しい金額ではないでしょ?」
「簡単でもないよ……俺のスキルを売れるなら話は別だけど」
「スキルの買取は全てを手放す時にだけ行います」
「それは……無理だな」
「そうですね、週に一度ここを訪ねて来て下さい。私がお仕事を依頼します。報酬はユニークスキルか、エクストラスキルを一個差し上げます。破格の条件ではないでしょうか?」
「何でそんな大事な事を、俺に任せようとした? 【予知】だって偶然じゃないんだろ?」
「この世界はギャンブルが支配するカージノですから、私も賭けてみたのです。何のヒントも無く自力で使い方を見つけてここまで辿り着けるものなのかをね。そしてアズマは想像以上に迅速に答えにたどり着き、私の前に現れました。この世界の民が地球で新たな暮らしを始める事に対して最高の人選であったと思っていますよ?」
「何で疑問形なんだ……あのさ、この世界にオグリーヌが居るように地球にも神様っているのか?」
「地球にも当然存在しますが、管理を失敗してしまったので力を無くして現れることも出来ないのです」
「どういうことだ?」
「元々、神は世界に一柱なんですが、人々の信仰が薄らいで新たな信仰を立ち上げてしまえば、新たな神が生まれます。その新たな神は最初は一人だったその世界の創造神から枝分かれしてしまうのです。当然その分創造神は力を失うことになります」
「じゃぁこの世界はオグリーヌだけが神様なのかい?」
「そうですね。使徒たちを使って世界中を見守っていますから」
「ん? じゃぁフローラたちも奴隷と言いながら、俺の監視なのか?」
「新たな神の誕生以外には口を挟む事はしませんから、気にしなくて大丈夫です」
「地球にオグリーヌが行ってしまうと、地球の神様たちと争いになったりしないのかい?」
「今なら私の方が圧倒的に力が上なので。六億年ほど間借りさせてくれと頼めば聞いてくれるでしょう。勿論私は大陸の外には出ませんし普段はこの部屋に居ますし、この星の状況も定期的に確認しなければならないので……」
「俺達、後一週間をどうすればいいんだよ。今の話を広めたほうがいいのか何も言わない方がいいのかすらも判断がつかないぞ」
「それも、アズマが思うように行動すればいいです。期待してますよ勇者アズマ」
「ちょっと待て、勇者って過去にこの世界に居たことはあるのか?」
「初代ギャンブリー王国の国王が持った力が【予知】でした。彼もその力を使い勇者となり、この国を興したのです」
「何年前の話だ?」
「三千年程ですね、今は王国歴二千九百九十八年ですから」
「ちなみに、私の旦那さまでした」
「あ、その情報いらなかった」
「今の王族ってオグリーヌの子孫?」
「そうですね。二人の子供が生まれ父親に似た息子がこの国を継ぎ、私に似た娘が神殿を作りスキルの管理をすることで他の信仰が起こる事を防いだのです」
「オグリーヌってさ、人の姿になれるの? その下半身も……」
「不謹慎な事を想像しましたね? 必要に応じて人の姿を取る事もあります」
「そっか……」
「それでは地球でのことはよろしくお願いしますね」
「なにも出来ないかもしれないけど、出来る範囲で頑張って見るさ」
俺はオグリーヌと別れ、王都の神殿から転移を使ってギャンブリーの自宅へと戻った。
すぐにホタルを呼んで、今起こった事を伝えた。
「マジですか? 先輩。じゃぁ地球には帰れるんですね。『ダービーキングダム』も無事に地球にもどってたのかぁ。良かったです」
「だが……クラーケンと一緒にだぞ? 無事だと思うか?」
「心配ですけど、この世界の海底に沈んでいる状況よりはよっぽどいいじゃないですか」
「まぁな。それでだが話の流れとして解るよな? この【聖女】のスキルホタルが使え」
「あー……無理です。そんなの使ったら私も自由がなくなっちゃいそうだし、もっと気楽に通訳の仕事をした方がいいので」
「ひでぇな。ホタルが嫌がったら誰に使うのがいいんだろ」
「焦らなくてもいいじゃないですか。必要な状況が起こるまで、大事に持っていたほうがいいですって」
「そっか」
「他の五人に、勇者とか聖女の話は抜きに地球に戻れることは教えたほうがいいと思いますよ」
「そうだな。どう思う? この星の滅亡の事は話した方がいいのか?」
「だって、大陸ごと転移させちゃうんでしょ? 言った方がいいと思いますよ。どうせわかるんだから」
「そうだよな……」
その日のディナータイムに、みんなに話をした。
「そうか……戻れるんだな。良かった。『ダービーキングダム』も無事に戻っているならば、安心……ではないな。モンスターが一緒に転移したのなら……無事で居て欲しいが」
一等航海士のダニエルさんが本当に嬉しそうな表情で返事をする。
だけどアンドレ隊長は、みんなが聞きたいけど聞かなかったことを、突っ込んで来た。
「なぁアズマ。今更だが何でアズマはその情報を知ったんだ」
「それは……まぁ色々込み入った事情で……」
「まぁいい。俺達の敵でないことは確かなんだし、だがアズマはどの立ち位置になるんだ? 地球に戻ったらこの国の味方なのか? それとも地球や、アズマの出身国の日本の味方をするのか」
「解りません。お互いが不干渉を貫けるのであれば、それに越した事は無いでしょうが」
「それは、はっきり言って無理だな。一メートルの海面上昇を引き起こす大陸の転移に対して、地球の各国は必ず保証を求めたり無理難題をふっかけて来るぞ」
「でも、アンドレ隊長。魔法のある世界に地球の戦力が単純に勝てると思いますか? 下手に刺激して竜種を解き放ったりされたら、それこそ世界が滅茶苦茶になりませんか?」
「アズマの方が正論だが、各国がメンツをかけてなんとか取り込もうとして来るのは間違いがない」
「アンドレ隊長は、国際法に詳しい弁護士とか知り合いはいますか?」
「傭兵関連の仕事をずっとしているから『パーフェクトディフェンダー』社から紹介して貰う事は出来るが、この国の王族がどういう立場をとるのか次第だな」
「隊長たちは今後どうされるのでしょうか?」
「そうだな。俺とミッシェルは今のハンターという仕事を気に入っているが、カールはどうなんだ」
「私は地球に戻れるなら、バロンドールを狙いますよ」
「圧倒的でしょうね……」
「アダムさんは?」
「俺か、この世界というかこの国の人達との生活が結構気に入っている。地球に戻れるならスパイスも問題無く手に入れる事ができるし、この国に地球の食文化を根付かせるのも悪く無いな」
「ダニエルさんはどうですか?」
「『ダービーキングダム』が無事なら、この大陸と地球の主要都市との間の定期航路を提案して、カージノ観光ツアーを成功させたいもんだな」
「でも、この世界普通にモンスター居ますから、それは難しくないですか?」
「なにか手段を考えてみるよ。スキルの取得ツアーとか実現すれば間違いなく稼げそうだからな」
それぞれの思いはあるが、一週間がすぎた。
この星を周回する二つの月のサイズが、あり得ないほどに大きく見えていることに、知ってはいたが心臓がドキドキする。
俺達は屋敷の庭からみんなでその様子を眺めている。
街中の人々もみんな外に出て不安そうな表情で月を眺めていた。
月が大気圏に突入した瞬間に真っ赤に燃え上がった。
「大丈夫なのか? オグリーヌ」
それから五分程の時間で月が海面に墜落した、衝撃波が大陸に襲い掛かり、追いかけるように海水が高さ二千メートルほどの津波になってこの大陸を飲み込もうとした瞬間に、視界がブラックアウトした。
「私も一緒に行きますので使えますよ?」
「まじかよ……地球には魔法やモンスターなんて存在しないんだけど大丈夫なのか? この大陸の人間が地球の他の国を制圧しようとか考えないとも言えないだろ?」
「この大陸の王族や貴族たちは地球の資源を欲しがらないのではないでしょうか?」
「そうかもな、わざわざ戦争をする必要もないか……でもテレビや家電などは、この世界では見たことないから、それは欲しがるんじゃないのか?」
「そうですね、便利な家電品は需要があるかも知れませんが、それは買えばいいだけの話です」
「逆に地球の他の国から攻められた場合はどう対処するんだ?」
「地球の核兵器程度では結界を突破できないでしょう」
「俺に何を求めているんだ?」
「さすがに私が表立って地球人類との交渉をするわけにも行きませんのでアズマは私の代理ですね。勿論この大陸の支配者になれというわけでもありません。あなたに特別なスキルオーブを渡します。そのスキルを身につければ、この国の王族もあなたを無下に扱ったりはしませんし、協力的になるでしょう。勿論地球の為政者たちに行ったように、この国の王の夢枕に立ち、あなたの存在を告げましょう『伝説の勇者が現れこの国を良き相談相手になる』と」
「なぁオグリーヌ。この大陸のモンスターってさ他の島や大陸に現れたりはしないのか?」
「海洋生物のモンスターは先に転移させてしまった、クラーケン以外は連れて行きませんし、あとは飛行系のモンスターですが……これは移動は可能です。ただし、他の大陸には魔素が存在しませんので、進んでカージノ大陸の外を目指すモンスターは出て来ないはずです」
「はずって……絶対じゃ無いんだ」
「竜種などは、魔素がなくとも一年は平気で活動できますので……それでも賢い生物ですからわざわざ住みにくい所に行かないでしょう」
「さっき特別なスキルオーブと言ってたけど、どんなオーブなんだ?」
「それは【勇者】と【聖女】の二つです」
「勇者は、カードランクをSSに上げて固有スキル『スキル吸収』を使えます。それとアクティブスキルの数の制限がなくなります。聖女はカードランクをSに上げて、固有スキルとして聖魔法レベル十が最初から使えます。アクティブなスキル枠は十二個です。スキルはアズマの持つスキルの中からコピーをして設定できます。アズマのパートナーに与えて下さい」
「オグリーヌ。これから先も俺は競争を当て続けてスキルを増やせるのか?」
「表彰式は中止にしようかしら?」
「ひでぇな」
「今アズマが所有するスキルで乗り切れないような困難はないと思いますが、それでも不安であるならば増やし続けて行けばいいのでは? 私は別に制限をかけたりはしません」
「そっか、そういえば本来この部屋で売っているスキルってなんなんだ?」
「この部屋では『ユニークスキル』と『エクストラスキル』の二種類が販売されています」
「ユニークスキルは、アズマの【予知】やホタルの【言語理解】のような通常現れないスキルです。これは同じものは存在しない『オンリースキル』となります。『エクストラスキル』は『オンリースキル』ではレベルアップが不可能なので、それをレベルアップするためのスキルです。当然他のスキルのレベルアップにも使えます」
「値段は? どうなんだ」
「それぞれ十億ゴルですね。今のアズマには難しい金額ではないでしょ?」
「簡単でもないよ……俺のスキルを売れるなら話は別だけど」
「スキルの買取は全てを手放す時にだけ行います」
「それは……無理だな」
「そうですね、週に一度ここを訪ねて来て下さい。私がお仕事を依頼します。報酬はユニークスキルか、エクストラスキルを一個差し上げます。破格の条件ではないでしょうか?」
「何でそんな大事な事を、俺に任せようとした? 【予知】だって偶然じゃないんだろ?」
「この世界はギャンブルが支配するカージノですから、私も賭けてみたのです。何のヒントも無く自力で使い方を見つけてここまで辿り着けるものなのかをね。そしてアズマは想像以上に迅速に答えにたどり着き、私の前に現れました。この世界の民が地球で新たな暮らしを始める事に対して最高の人選であったと思っていますよ?」
「何で疑問形なんだ……あのさ、この世界にオグリーヌが居るように地球にも神様っているのか?」
「地球にも当然存在しますが、管理を失敗してしまったので力を無くして現れることも出来ないのです」
「どういうことだ?」
「元々、神は世界に一柱なんですが、人々の信仰が薄らいで新たな信仰を立ち上げてしまえば、新たな神が生まれます。その新たな神は最初は一人だったその世界の創造神から枝分かれしてしまうのです。当然その分創造神は力を失うことになります」
「じゃぁこの世界はオグリーヌだけが神様なのかい?」
「そうですね。使徒たちを使って世界中を見守っていますから」
「ん? じゃぁフローラたちも奴隷と言いながら、俺の監視なのか?」
「新たな神の誕生以外には口を挟む事はしませんから、気にしなくて大丈夫です」
「地球にオグリーヌが行ってしまうと、地球の神様たちと争いになったりしないのかい?」
「今なら私の方が圧倒的に力が上なので。六億年ほど間借りさせてくれと頼めば聞いてくれるでしょう。勿論私は大陸の外には出ませんし普段はこの部屋に居ますし、この星の状況も定期的に確認しなければならないので……」
「俺達、後一週間をどうすればいいんだよ。今の話を広めたほうがいいのか何も言わない方がいいのかすらも判断がつかないぞ」
「それも、アズマが思うように行動すればいいです。期待してますよ勇者アズマ」
「ちょっと待て、勇者って過去にこの世界に居たことはあるのか?」
「初代ギャンブリー王国の国王が持った力が【予知】でした。彼もその力を使い勇者となり、この国を興したのです」
「何年前の話だ?」
「三千年程ですね、今は王国歴二千九百九十八年ですから」
「ちなみに、私の旦那さまでした」
「あ、その情報いらなかった」
「今の王族ってオグリーヌの子孫?」
「そうですね。二人の子供が生まれ父親に似た息子がこの国を継ぎ、私に似た娘が神殿を作りスキルの管理をすることで他の信仰が起こる事を防いだのです」
「オグリーヌってさ、人の姿になれるの? その下半身も……」
「不謹慎な事を想像しましたね? 必要に応じて人の姿を取る事もあります」
「そっか……」
「それでは地球でのことはよろしくお願いしますね」
「なにも出来ないかもしれないけど、出来る範囲で頑張って見るさ」
俺はオグリーヌと別れ、王都の神殿から転移を使ってギャンブリーの自宅へと戻った。
すぐにホタルを呼んで、今起こった事を伝えた。
「マジですか? 先輩。じゃぁ地球には帰れるんですね。『ダービーキングダム』も無事に地球にもどってたのかぁ。良かったです」
「だが……クラーケンと一緒にだぞ? 無事だと思うか?」
「心配ですけど、この世界の海底に沈んでいる状況よりはよっぽどいいじゃないですか」
「まぁな。それでだが話の流れとして解るよな? この【聖女】のスキルホタルが使え」
「あー……無理です。そんなの使ったら私も自由がなくなっちゃいそうだし、もっと気楽に通訳の仕事をした方がいいので」
「ひでぇな。ホタルが嫌がったら誰に使うのがいいんだろ」
「焦らなくてもいいじゃないですか。必要な状況が起こるまで、大事に持っていたほうがいいですって」
「そっか」
「他の五人に、勇者とか聖女の話は抜きに地球に戻れることは教えたほうがいいと思いますよ」
「そうだな。どう思う? この星の滅亡の事は話した方がいいのか?」
「だって、大陸ごと転移させちゃうんでしょ? 言った方がいいと思いますよ。どうせわかるんだから」
「そうだよな……」
その日のディナータイムに、みんなに話をした。
「そうか……戻れるんだな。良かった。『ダービーキングダム』も無事に戻っているならば、安心……ではないな。モンスターが一緒に転移したのなら……無事で居て欲しいが」
一等航海士のダニエルさんが本当に嬉しそうな表情で返事をする。
だけどアンドレ隊長は、みんなが聞きたいけど聞かなかったことを、突っ込んで来た。
「なぁアズマ。今更だが何でアズマはその情報を知ったんだ」
「それは……まぁ色々込み入った事情で……」
「まぁいい。俺達の敵でないことは確かなんだし、だがアズマはどの立ち位置になるんだ? 地球に戻ったらこの国の味方なのか? それとも地球や、アズマの出身国の日本の味方をするのか」
「解りません。お互いが不干渉を貫けるのであれば、それに越した事は無いでしょうが」
「それは、はっきり言って無理だな。一メートルの海面上昇を引き起こす大陸の転移に対して、地球の各国は必ず保証を求めたり無理難題をふっかけて来るぞ」
「でも、アンドレ隊長。魔法のある世界に地球の戦力が単純に勝てると思いますか? 下手に刺激して竜種を解き放ったりされたら、それこそ世界が滅茶苦茶になりませんか?」
「アズマの方が正論だが、各国がメンツをかけてなんとか取り込もうとして来るのは間違いがない」
「アンドレ隊長は、国際法に詳しい弁護士とか知り合いはいますか?」
「傭兵関連の仕事をずっとしているから『パーフェクトディフェンダー』社から紹介して貰う事は出来るが、この国の王族がどういう立場をとるのか次第だな」
「隊長たちは今後どうされるのでしょうか?」
「そうだな。俺とミッシェルは今のハンターという仕事を気に入っているが、カールはどうなんだ」
「私は地球に戻れるなら、バロンドールを狙いますよ」
「圧倒的でしょうね……」
「アダムさんは?」
「俺か、この世界というかこの国の人達との生活が結構気に入っている。地球に戻れるならスパイスも問題無く手に入れる事ができるし、この国に地球の食文化を根付かせるのも悪く無いな」
「ダニエルさんはどうですか?」
「『ダービーキングダム』が無事なら、この大陸と地球の主要都市との間の定期航路を提案して、カージノ観光ツアーを成功させたいもんだな」
「でも、この世界普通にモンスター居ますから、それは難しくないですか?」
「なにか手段を考えてみるよ。スキルの取得ツアーとか実現すれば間違いなく稼げそうだからな」
それぞれの思いはあるが、一週間がすぎた。
この星を周回する二つの月のサイズが、あり得ないほどに大きく見えていることに、知ってはいたが心臓がドキドキする。
俺達は屋敷の庭からみんなでその様子を眺めている。
街中の人々もみんな外に出て不安そうな表情で月を眺めていた。
月が大気圏に突入した瞬間に真っ赤に燃え上がった。
「大丈夫なのか? オグリーヌ」
それから五分程の時間で月が海面に墜落した、衝撃波が大陸に襲い掛かり、追いかけるように海水が高さ二千メートルほどの津波になってこの大陸を飲み込もうとした瞬間に、視界がブラックアウトした。
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