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第6話 探索メンバー
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船内放送で指定されたカジノフロアに到着した。
指定時刻まではまだ十五分ほどあるが、現時点では日本人は俺とホタルだけだった。
クルーの人達は船長の他に二十名程が既に集まっており、俺達が到着するとドリンクのオーダーを聞いて来た。
俺はコーヒー、ホタルは紅茶を頼む。
『パーフェクトディフェンダーズ』のメンバーは全員来ている。
他は外国人の乗客が二十名程だが、やはり全員かなりの年配の方々だ。
ホタルはその中に会話をしたことがある人を見付けたようで声を掛けていた。
少なくとも英語ではない、俺には理解不能な言葉で会話をしている。
「ホタル、何を喋ってたんだ?」
「あの人は退役軍人の方で、フランスの外人部隊の大佐まで経験したんですって。退役後は武器のブローカーをやってたんだって。まだまだ若いもんに負けないって言ってたよ」
「ってどう見ても七十過ぎてるだろ?」
「うん。七十五歳って言ってた」
「部隊の指揮をするとかなら、頼りになりそうだけど、少人数で自分で行動するとかだと厳しいだろ?」
「先輩はどうなんですか? 腕っぷしは自信あったりしますか?」
「全くない!」
「予想通りです‼」
定刻を迎え、船長が話しを始めた。
「お集まりくださった方々へ感謝いたします。まず今回の偵察行動に関わらず私の立場と致しましては、この船が存在する限り無事に元の世界の港へ皆様をおろすまで、船外へ出る事は致しません。よって船外活動においては、作戦リーダーは『パーフェクトディフェンダーズ』のアンドレ隊長にお願いします」
「アンドレです。よろしくお願いいたします」
挨拶をして俺達に頭を下げる姿を、(軍人っぽく無いよな)という感想を抱きながら見ていた。
船長が話しを続ける。
「今回の偵察の人数が六名となったのはヘリが八名乗りで、パイロットには送り届けた後ですぐに帰還して貰うからです。現地人と敵対する可能性もある以上、虎の子のヘリを現場に残してはおけないですから。それとハンディタイプの無線機を偵察隊には貸与します。これがあれば五十キロメートル以内であれば、この船との通話も可能です。最後に偵察隊に希望をされた方々は、希望された理由とアピールをお願いします。全ての方の希望を伺った上で、私とアンドレ隊長でメンバーを決めさせていただきます」
船長の言葉が終わった後で、ホタルが手を挙げた。
指名されて、喋り始める。
「まず、アンドレ隊長は実際に偵察部隊に加わるのですか?」
「勿論参加します。お嬢さん」
「自己紹介が遅れてすいません。ホタル・アララギです。アンドレさんの理解言語は何でしょうか? またそれによって選ぶメンバーは変わるのでしょうか?」
今の質問は英語で行われている。
「鋭いねホタルさん。勿論、理解言語は作戦遂行上大きなポイントになる。メンバー選定は原則メンバー全員の共通言語がある事が前提条件だ。その上で私の理解言語は。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、日本語だ」
「え? 日本語喋れるんですか?」
「私は日系三世でね祖父が、コロンビアの農園でコーヒー豆を栽培してたんだが、祖父の出身地は函館だよ」
そう自己紹介をした言葉は、若干イントネーションは違うが聞き取れる日本語だった。
「私も日本語は得意ですよ! 他は英語、フランス語、スペイン語、北京語、広東語、韓国語、ロシア語を理解します。私は勿論参加したいですけど、私が選んでいただける場合は、私のパートナーも一緒に選んでいただけることが条件となります。パートナーは日本語しか理解できませんが……」
「そうですか、考慮しましょう。では、そのパートナーの方は、この危険な作戦に参加したい理由はあるのですか」
そう問いかけられて俺は返事をした。
「小栗東です。俺も皆さんに確認しておきたい事があります」
俺の喋る日本語を理解できる人は集まったメンバーでは少数なので、ちゃんと意味が伝わる様に、俺の発言に合わせてホタルが同時通訳で英語で皆に伝えている。
「皆さんは異世界転移という意味を理解しているのでしょうか? 日本ではサブカルチャーとして、異世界転移という現象に対しては大多数の人が知識を持っていると言っても過言では無いです。そしてその中で起こるであろう様々な状況に対して、判断材料を提供できるのではないかと思います。恐らくですが、地球ではあり得ない現象である魔法が使えたり、モンスターと呼ばれる生物が現れたりすると予想できます。その場合あらゆるパターンを当てはめて、より効果の高い対処方法を考える事が出来るのではないかと思います」
「なるほど、魅力的な提案だ。では他の方々の自己ピーアールをお願いしましょう」
その後、探索部隊を希望する人々が、それぞれ何故希望したのかを語り、最終的な判断を船長とアンドレ隊長が下した。
乗客からはホタルとドイツ人で四十代前半の男性で、元サッカー選手だというカールさんという男性が選ばれた。
クルーからは、シェフのアダムさんと言うフランス人男性と、一等航海士のダニエルさんと言う黒人男性、そして、『パーフェクトディフェンダーズ』からは、アンドレ隊長とミッシェルさんという白人女性が選ばれた。
あれ? 俺、落選しちゃってる……
と、思ったがアンドレ隊長が続けて喋り始めた。
「最初に、定義を決めて置いたので六名のメンバーには共通理解言語である、英語が喋れることを条件に選定させて頂きました。しかし、定員八名のヘリでパイロット一名を除きもう一名分のシートがあります。ここにホタルのパートナー『アズマ』に座って貰おうと思います」
他の集まった人たちからのクレームも出なかったので、なんとか探索班に混ざる事ができた。
俺はまだ幸運が続いているのか?
いや、異世界転移に巻き込まれた時点で幸運ではない気がする……
指定時刻まではまだ十五分ほどあるが、現時点では日本人は俺とホタルだけだった。
クルーの人達は船長の他に二十名程が既に集まっており、俺達が到着するとドリンクのオーダーを聞いて来た。
俺はコーヒー、ホタルは紅茶を頼む。
『パーフェクトディフェンダーズ』のメンバーは全員来ている。
他は外国人の乗客が二十名程だが、やはり全員かなりの年配の方々だ。
ホタルはその中に会話をしたことがある人を見付けたようで声を掛けていた。
少なくとも英語ではない、俺には理解不能な言葉で会話をしている。
「ホタル、何を喋ってたんだ?」
「あの人は退役軍人の方で、フランスの外人部隊の大佐まで経験したんですって。退役後は武器のブローカーをやってたんだって。まだまだ若いもんに負けないって言ってたよ」
「ってどう見ても七十過ぎてるだろ?」
「うん。七十五歳って言ってた」
「部隊の指揮をするとかなら、頼りになりそうだけど、少人数で自分で行動するとかだと厳しいだろ?」
「先輩はどうなんですか? 腕っぷしは自信あったりしますか?」
「全くない!」
「予想通りです‼」
定刻を迎え、船長が話しを始めた。
「お集まりくださった方々へ感謝いたします。まず今回の偵察行動に関わらず私の立場と致しましては、この船が存在する限り無事に元の世界の港へ皆様をおろすまで、船外へ出る事は致しません。よって船外活動においては、作戦リーダーは『パーフェクトディフェンダーズ』のアンドレ隊長にお願いします」
「アンドレです。よろしくお願いいたします」
挨拶をして俺達に頭を下げる姿を、(軍人っぽく無いよな)という感想を抱きながら見ていた。
船長が話しを続ける。
「今回の偵察の人数が六名となったのはヘリが八名乗りで、パイロットには送り届けた後ですぐに帰還して貰うからです。現地人と敵対する可能性もある以上、虎の子のヘリを現場に残してはおけないですから。それとハンディタイプの無線機を偵察隊には貸与します。これがあれば五十キロメートル以内であれば、この船との通話も可能です。最後に偵察隊に希望をされた方々は、希望された理由とアピールをお願いします。全ての方の希望を伺った上で、私とアンドレ隊長でメンバーを決めさせていただきます」
船長の言葉が終わった後で、ホタルが手を挙げた。
指名されて、喋り始める。
「まず、アンドレ隊長は実際に偵察部隊に加わるのですか?」
「勿論参加します。お嬢さん」
「自己紹介が遅れてすいません。ホタル・アララギです。アンドレさんの理解言語は何でしょうか? またそれによって選ぶメンバーは変わるのでしょうか?」
今の質問は英語で行われている。
「鋭いねホタルさん。勿論、理解言語は作戦遂行上大きなポイントになる。メンバー選定は原則メンバー全員の共通言語がある事が前提条件だ。その上で私の理解言語は。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、日本語だ」
「え? 日本語喋れるんですか?」
「私は日系三世でね祖父が、コロンビアの農園でコーヒー豆を栽培してたんだが、祖父の出身地は函館だよ」
そう自己紹介をした言葉は、若干イントネーションは違うが聞き取れる日本語だった。
「私も日本語は得意ですよ! 他は英語、フランス語、スペイン語、北京語、広東語、韓国語、ロシア語を理解します。私は勿論参加したいですけど、私が選んでいただける場合は、私のパートナーも一緒に選んでいただけることが条件となります。パートナーは日本語しか理解できませんが……」
「そうですか、考慮しましょう。では、そのパートナーの方は、この危険な作戦に参加したい理由はあるのですか」
そう問いかけられて俺は返事をした。
「小栗東です。俺も皆さんに確認しておきたい事があります」
俺の喋る日本語を理解できる人は集まったメンバーでは少数なので、ちゃんと意味が伝わる様に、俺の発言に合わせてホタルが同時通訳で英語で皆に伝えている。
「皆さんは異世界転移という意味を理解しているのでしょうか? 日本ではサブカルチャーとして、異世界転移という現象に対しては大多数の人が知識を持っていると言っても過言では無いです。そしてその中で起こるであろう様々な状況に対して、判断材料を提供できるのではないかと思います。恐らくですが、地球ではあり得ない現象である魔法が使えたり、モンスターと呼ばれる生物が現れたりすると予想できます。その場合あらゆるパターンを当てはめて、より効果の高い対処方法を考える事が出来るのではないかと思います」
「なるほど、魅力的な提案だ。では他の方々の自己ピーアールをお願いしましょう」
その後、探索部隊を希望する人々が、それぞれ何故希望したのかを語り、最終的な判断を船長とアンドレ隊長が下した。
乗客からはホタルとドイツ人で四十代前半の男性で、元サッカー選手だというカールさんという男性が選ばれた。
クルーからは、シェフのアダムさんと言うフランス人男性と、一等航海士のダニエルさんと言う黒人男性、そして、『パーフェクトディフェンダーズ』からは、アンドレ隊長とミッシェルさんという白人女性が選ばれた。
あれ? 俺、落選しちゃってる……
と、思ったがアンドレ隊長が続けて喋り始めた。
「最初に、定義を決めて置いたので六名のメンバーには共通理解言語である、英語が喋れることを条件に選定させて頂きました。しかし、定員八名のヘリでパイロット一名を除きもう一名分のシートがあります。ここにホタルのパートナー『アズマ』に座って貰おうと思います」
他の集まった人たちからのクレームも出なかったので、なんとか探索班に混ざる事ができた。
俺はまだ幸運が続いているのか?
いや、異世界転移に巻き込まれた時点で幸運ではない気がする……
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