WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

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第3話 どこだよここ

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 横浜港から出港した『ダービーキングダム』は国内では瀬戸内海を経由して、最初の寄港地である博多港へと向かった。

「先輩、凄いですよねぇこの船。一生の思い出になります」
「だろうな! 俺も誘ってもらってよかったと思ってるよ。一人じゃ世界一周の船旅なんて発想には絶対にならなかったからな」

「でも、ドレスまで買ってもらって本当にありがとうございます」
「まぁ俺もタキシードなんて着た事も無かったから、ついでだよ」

 この豪華客船では、毎晩のディナータイムにドレスコードが設定してあり、【スマートカジュアル】と【フォーマル】の二通りの衣装が必要だった。
 食事のため、だけでだ!

 しかも三か月以上の期間を、いつも同じ服って言うのも格好がつかないし、それぞれ三着ずつは用意しておいたんだ。

 当然ホタルにはそんな服装を揃える余裕もなかったので、俺が立て替えた。
 まぁ一応は立て替えたとは言っているが、この旅に掛かる費用をホタルに請求しようなどとは思ってもいない。
 伝えてもいないけどな。

 あの日、競馬場での偶然の出会いを運命だと思えば、それもまたよしだ。
 博多港へ寄った後は東シナ海へと抜け、次の寄港地の台湾を目指す。
 日本の領海を抜け公海へ出ると俺が楽しみにしていた、カジノ施設が解禁される。
 法律上は外国船籍の船の場合陸地から十二カイリ(約二十二キロメートル)以上離れたら国外とみなされるらしい。
 お酒やたばこも免税価格になる。

 ホタルは語学の上達の為に、積極的に外国人の年配のご夫婦に話しかけていた。
 なぜか浴衣姿だ。
「日本人だって分かりやすいじゃないですか?」と言っていたが、まぁ確かにそうだな……

 成人式で着たという振袖も用意していると言っていた。
 着物はフォーマルのディナーでも許可されるそうだ。
 今は日本では七月で夏の盛りだが、これから進む航路では赤道を超え南半球に向かうので、そちら方面では今は真冬だし着る機会もあるのだろう。

 外国語の堪能なホタルは誰にでも愛想よく接して、この客船のクルーたちからもとても評判がいい。
 だが二千人の乗客のうち百人弱ほど居る日本人とは、あまり話していないようだ。
 目的が外国語の上達であるからそれはそれで正しい選択肢なのかな?

 俺は一人でカジノのラウンジに向かいスロットマシンで楽しんでいた。
 なぜスロットマシーンなのかって?

 ディーラーがいるような遊戯だと、言葉が解んないと面白く無いからだよ!
 という事で日本のパチスロとはだいぶ装いの違うスロットマシーンで楽しんでいた。

 博多を出航して三日目には台湾へ到着した。
 午前中に港に入り、夜には太平洋に向かって出航する。
 台湾では、昔の日本の四号機と呼ばれたスロットマシーンが現役で遊べるという情報を貰って、ホタルと二人で楽しんだ。
 四時間程プレーした後は、台湾屋台で食べ歩きも楽しめた。

 なんていうかこの国の活気は凄いと思う。
 日本人に対して友好的なのも気に入った。
 店員さんなんか、結構日本語で挨拶してくれるんだよね。

 船に戻ると次のマーシャル諸島の、マジュロまでは四日程の航路になる。

 台湾を出て二日目のディナータイムのことだった。

 今日のディナーはドレスコードがフォーマルだったので、俺はタキシード姿で、ホタルもカクテルドレス姿だ。
 鮮やかなワインレッドのカクテルドレスには同色の、踵の高さが十センチメートルを超えるようなピンヒールの靴を合わせている。

「ホタル、その靴って歩きにくく無いのか?」
「基本ディナータイムに歩き回りませんから!」

「まぁそうだろうな……」
「先輩、女性にそんな事いうと、もてませんよ? 女の子はこんな場所では精一杯あがいて、その場に相応しくありたいと思ってるんですから」

「そっか、ごめんな。まるで優雅に泳ぐ白鳥が水面下では必死で足掻いてるような感じなのかな?」
「ほら! それが余計な一言ですからね」

 軽口を叩きながらも船の外を窓から見ると 昼過ぎまではベタ凪で、どこまでも広がる青い空と海を満喫出来ていたが、ディナータイムが始まる直前辺りから、急激に風雨が強まってきた。

「先輩、やばくないですか?」
「ああ、ちょっと不安だな」

 そう言った直後のことだった。
 悪い予感は的中し『ダービーキングダム』号に雷が直撃した。

 二、三度照明が明滅し、その直後に全長三百メートル、横幅三十二メートルもある乗客二千名、クルー二百名の見事な船体は海中深くに引きずり込まれるようにその姿を消した。

 ◇◆◇◆ 

 海に飲み込まれたと思った直後には、もう日が落ちかけていたはずなのに、太陽が燦々と照り付ける海上だった。

 確かに海中に飲み込まれたような気がしたんだが……
 おかしい? 一体何が起こったんだ。
 俺の横には、カクテルドレスを着たままのホタルが居る。
 俺も、あまり似合ってるとは言えないタキシードに蝶ネクタイのフォーマルファッションのままだ。

「ホタル! 大丈夫か?」
「あ、先輩。はい大丈夫です。一体どうなっちゃったんでしょう」

「場所的には赤道にほど近いけどマーシャル諸島まではまだ距離があるって感じだったかな?」
「どうでしょう? 海しか見えてなかったから全然解りませんよ」

 辺りを見回してみたが、ディナーで集まっていた千人以上の乗客たちは、みんな無事では有る様だが、みんな身近な人と外の様子を見ながら騒がしくしている。

 俺達がいるメインダイニングにマイクの声が響く。

「乗客の皆さま。本船『ダービーキングダム』の船長ジョンソンです。現在この船に起こった不思議な状況を調査中です。どうぞ、慌てず焦らずこのままディナーをお楽しみください。ひょっとしたら、ランチになってしまったかもしれませんが」

 そう、落ち着いた声でゆっくりと乗客に告げると余裕のある年配客が多いのでそこまでの混乱もなく、船長の最期のジョークに笑顔で反応する人もいた。
 後を追うように、主要言語で同じ内容を繰り返して放送している。

 俺には、勿論ホタルが同時通訳で教えてくれた。
 俺はホタルと一緒に取り敢えずデッキに出てみる。
 三百六十度どの方向をを見ても海しか見えない。
 これじゃ何もわからないな……

「先輩、やはり……おかしいです」
「どうしたホタル?」

「これを見て下さい」

 ホタルが差し出したのは衛星対応のスマホだ。

「アンテナは勿論たってませんが、位置情報はGPSで確認できていたのにまったく反応しません。それどころか船内はWIFIで使えてたのにそれも駄目ですね。先輩? そもそも……ここ地球でしょうか」
「あー、地球じゃない可能性も半分以上だな。とりあえずそんな走り難そうな靴だと、いざっていう時に困るから、動きやすい服に着替えて、手荷物をすぐ持ち出せるように整理しておいたほうがいいかもな」

「なんか先輩……意外に冷静ですね」
「だてにラノベ読み漁ってないからな。ホタルもラノベ知識はばっちりなんだろ? 翻訳したいって言ってるくらいだし」

「そうですね……でも結構読むジャンルが偏ってるかも?」
「どんなの読んでんだ?」

「まぁそれはいいじゃないですか、ちょっと急いで着替えますね」
「ああ、解った」

 それから一時間が経過した頃に、再びジョンソン船長からの船内放送が流れた。

『船長のジョンソンです。現在『ダービーキングダム』が置かれている状況のご報告をさせていただきます。この艦には最新鋭の人工衛星と連動したレーダー座標システムが搭載してありますが、現時点で当船の所在地は不明です。お客様方は不安に感じていらっしゃると思いますが、非常事態のために情報を秘匿することは不誠実であると判断し、正直に置かれた状況をお伝えいたします。しかし、ご乗船中のお客様とクルーの安全を守る事は私の使命でもあります。お客様が私ジョンソンを信じてくれる限り、私はこの命を懸けてお客様方の安全を守る事をお約束いたします。お客様方もこの非常事態において、無事に家に帰る事が出来るよう、ご協力をお願いいたします。なお、現在目視において前方二十カイリに陸地が視認出来ました。陸地のサイズは巨大で大陸クラスの大きさと思われますが、私やこの船の優秀な航海士たちの知識の中には、存在しえない大陸だということが判明しております。現在地より大陸の側まで近づき反応を確かめたいと思います。また、お客様方にも意見を伺いたいと思いますので、これから三十分後に甲板上でミーティングを行いたいと思います。参加を希望される方はデッキにお集まりください』

 その船内放送を聞いた俺は、着替え終わったホタルと船室で話していた。
 ちなみに、俺達の船室はスイートになっていて、リビングを挟んでベッドルームが二部屋あるような作りだ。
 豪華客船とはいえ流石に一日当たり十万円を超える料金を取るだけはある。

「ホタル、当然ミーティングには参加だよな?」
「うん。でも日本からの参加者は百人近くいたけど、私と先輩以外はみんな最低でも六十代は超えてる感じなので、もしここが異世界で魔物とか居る世界だったなら、どうしたらいいんでしょうね……」

「そうだな……今の所ステータスオープンって叫んでも何も変わらないから、魔物を倒して見ないと何もわからないな。せめて王様とか王女様とか出て来て『この世界をお救い下さい勇者様』とか言われたなら方向性は見えるんだが」
「まだ、ここが異世界ではない可能性もあるし、地球の反対側に出ただけかも知れないから、考えは柔軟に持ちましょうね先輩」

 俺はホタルと二人で、ジーンズに白いTシャツという、動きやすい格好で甲板へと向かった。
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