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第103話 タコパ
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クラーケンの粘液を回収した後の足を、「シンセングミ」のメンバー達が捌いて行く。
巨大な鍋にお湯が沸かされていて、一口大と言うよりも、もっと小さな角切りにされたタコの身が、お湯をくぐらせる。
霜降り以上、ボイル未満という具合の湯通しだな。
湯引きと言う調理法だ。
ブランチングとも言う。
それを、たっぷりの氷が入ったタライに移し、中心迄冷めた物は、どんどん笊に打ち上げて行ってた。
他の人間は、これもまた大きな風呂釜の様な入れ物にたっぷりの小麦粉と水、いや、香りが漂うなこれはカツオだしか。
を、混ぜ合わせ、大量の溶き卵も投入した。
甲板の上には屋台が二軒ほど用意されており、どちらにも鉄板が置かれている。
何だこの鉄板は? 丸い穴が半球状に規則正しく並んでる、見た事も無いような鉄板だった。
十分に熱せられたその鉄板に。油を敷き、てんぷら衣と言うにはユルユルの生地を注ぎ込む、片方の屋台では細かく切った紅ショウガを入れて行った上にブランチングされたクラーケンの身を三切れずつ放り込む、中々の早業だ。
もう一方の屋台では、紅ショウガいは入れていないが、同じように液とクラーケンを半球状の穴に入れて行った。
料理人が千枚通しを手に持ち、固まり始めた生地を器用に四分の一回転させ、更に液を注ぐ。
見ていて楽しい。
チュールとフィルも屋台で焼かれて行くその料理に見入っていた。
10分程で最初の物が焼きあがって来た。
コンドウがドヤ顔で俺達の前に、薄い杉板を組んで作った、木製の舟形の入れ物に入れた物を持って来た。
上にはこげ茶色のドロッとしたソースが掛けられ、更に青のり、マヨネーズ、鰹節が掛けられている。
「熱いから気を付けろよ!」と言って竹串と共に俺達に渡して行った。
早速食べてみる。
一口で頬張れそうなサイズだったので、竹串で突き刺し口の中に放り込んだ。
「アッチイイイイイイイイ」
中が滅茶苦茶熱かった。
口を半開きにして空気を取り込み、「ハフハフ」言いながら味わった。
ちょっと口の中がひりひりする。
だが美味い!
これは有りだ!
他のみんなは、俺の様子を見てちゃんと先に息を吹きかけ、少し冷ましてから口に運んでいた……
ジュウベエが声を掛けて来た。
「どうだ。オオサカ名物のたこ焼きだ」美味いだろ?
「ジュウベエは知ってたのかよ!」
「そりゃ、俺はこの国の人間だからな。こいつらが人をもてなす時は、いつもこの『タコ焼き』と『たまごやき』の二品なんだ」
「たまごやき? そんなの作ってたか?」
「アカシ以外の場所では 、『明石焼き』と呼ばれるんだが、ここでは『たまごやき』と呼ぶそうだ。
同じように見えるが、こちらはどんぶりに入っていて、上から醬油ベースの出汁がかかっていた。
コンドウが、たっぷりの大根おろしを掛けるのがお薦めだと言うので、たっぷり乗せて刻んだ葱も入れて食べた。
「こいつは美味いな!」
「そうだろ‼」
どんどん焼き上がって行き、みんなが笑顔でクラーケンのたこ焼きとアカシ焼きを手に、酒を飲んでいた。
焼き手も次々交代していて、みんなが楽しんでる。
「うちのクランの入隊資格は、タコ焼きが焼ける事だからな。週一でタコパをやってるんだ」
「たこ焼きパーティ。なんだな…… てか入隊資格がタコ焼きとか意味わかんねぇよ」
「それは、それとしてだ。俺達はこのアケボノでもっと上を目指したいが、お前たちと対戦してみて、そして今日のクラーケン狩りを見させて貰った上で全然、別次元に居る事が良く解った。それでな、一つ頼みがある」
「ん? なんだ」
「オキタを一緒に連れてってくれないか? こいつはまだ歳も若くて、才能は俺達の中でも抜き出てると思うんだ。お前たちと一緒に行動すれば必ずもう一つ上の存在に成れる筈だ。頼む」
コンドウが頭を下げて来たが、俺は一応みんなに意見を聞いてみた。
「って言う話なんだけど、どう思う?」
「俺達は別に構わないぞ。これから先の探索を考えれば、腕の立つ奴は是非欲しいしな。カインに一撃浴びせれる奴なんて、そうそう居ないと思うぞ?」
「私も構わないよ。カインお兄ちゃんがいいんなら」
「チュールはどうだ?」
「ライバルがまた増える……」
「えっ? チュール。オキタだぞ? 男だぞ」
「オキタさん女の子」
「えええええええええええええええええ?」
チュールの言葉で、コンドウに確認してみた。
「コンドウ。オキタって女の子なのか?」
「ああ。そうだ。良く解ったな」
「匂いが違う……」
「そうなんだ…… 確かに線も細いし、美形すぎるとは思ってたが、本人はいいのか?」
「はい、私が局長にお願いしました。ジュウベエ殿の剣に追いつき追い越したいと思っています」
「俺には勝てないよ。クソつぇえからな」
「レオネアには負けるくせにか?」
「それを言うな」
「レオネアさんって、ジュウベエ殿より強いんですか?」
「相性もあるからねぇ。オキタさんはセンスはあると思うから頑張ってね」
「はい」
こうして新たな仲間を加えて、魔国の古代遺跡を目指す事になる。
巨大な鍋にお湯が沸かされていて、一口大と言うよりも、もっと小さな角切りにされたタコの身が、お湯をくぐらせる。
霜降り以上、ボイル未満という具合の湯通しだな。
湯引きと言う調理法だ。
ブランチングとも言う。
それを、たっぷりの氷が入ったタライに移し、中心迄冷めた物は、どんどん笊に打ち上げて行ってた。
他の人間は、これもまた大きな風呂釜の様な入れ物にたっぷりの小麦粉と水、いや、香りが漂うなこれはカツオだしか。
を、混ぜ合わせ、大量の溶き卵も投入した。
甲板の上には屋台が二軒ほど用意されており、どちらにも鉄板が置かれている。
何だこの鉄板は? 丸い穴が半球状に規則正しく並んでる、見た事も無いような鉄板だった。
十分に熱せられたその鉄板に。油を敷き、てんぷら衣と言うにはユルユルの生地を注ぎ込む、片方の屋台では細かく切った紅ショウガを入れて行った上にブランチングされたクラーケンの身を三切れずつ放り込む、中々の早業だ。
もう一方の屋台では、紅ショウガいは入れていないが、同じように液とクラーケンを半球状の穴に入れて行った。
料理人が千枚通しを手に持ち、固まり始めた生地を器用に四分の一回転させ、更に液を注ぐ。
見ていて楽しい。
チュールとフィルも屋台で焼かれて行くその料理に見入っていた。
10分程で最初の物が焼きあがって来た。
コンドウがドヤ顔で俺達の前に、薄い杉板を組んで作った、木製の舟形の入れ物に入れた物を持って来た。
上にはこげ茶色のドロッとしたソースが掛けられ、更に青のり、マヨネーズ、鰹節が掛けられている。
「熱いから気を付けろよ!」と言って竹串と共に俺達に渡して行った。
早速食べてみる。
一口で頬張れそうなサイズだったので、竹串で突き刺し口の中に放り込んだ。
「アッチイイイイイイイイ」
中が滅茶苦茶熱かった。
口を半開きにして空気を取り込み、「ハフハフ」言いながら味わった。
ちょっと口の中がひりひりする。
だが美味い!
これは有りだ!
他のみんなは、俺の様子を見てちゃんと先に息を吹きかけ、少し冷ましてから口に運んでいた……
ジュウベエが声を掛けて来た。
「どうだ。オオサカ名物のたこ焼きだ」美味いだろ?
「ジュウベエは知ってたのかよ!」
「そりゃ、俺はこの国の人間だからな。こいつらが人をもてなす時は、いつもこの『タコ焼き』と『たまごやき』の二品なんだ」
「たまごやき? そんなの作ってたか?」
「アカシ以外の場所では 、『明石焼き』と呼ばれるんだが、ここでは『たまごやき』と呼ぶそうだ。
同じように見えるが、こちらはどんぶりに入っていて、上から醬油ベースの出汁がかかっていた。
コンドウが、たっぷりの大根おろしを掛けるのがお薦めだと言うので、たっぷり乗せて刻んだ葱も入れて食べた。
「こいつは美味いな!」
「そうだろ‼」
どんどん焼き上がって行き、みんなが笑顔でクラーケンのたこ焼きとアカシ焼きを手に、酒を飲んでいた。
焼き手も次々交代していて、みんなが楽しんでる。
「うちのクランの入隊資格は、タコ焼きが焼ける事だからな。週一でタコパをやってるんだ」
「たこ焼きパーティ。なんだな…… てか入隊資格がタコ焼きとか意味わかんねぇよ」
「それは、それとしてだ。俺達はこのアケボノでもっと上を目指したいが、お前たちと対戦してみて、そして今日のクラーケン狩りを見させて貰った上で全然、別次元に居る事が良く解った。それでな、一つ頼みがある」
「ん? なんだ」
「オキタを一緒に連れてってくれないか? こいつはまだ歳も若くて、才能は俺達の中でも抜き出てると思うんだ。お前たちと一緒に行動すれば必ずもう一つ上の存在に成れる筈だ。頼む」
コンドウが頭を下げて来たが、俺は一応みんなに意見を聞いてみた。
「って言う話なんだけど、どう思う?」
「俺達は別に構わないぞ。これから先の探索を考えれば、腕の立つ奴は是非欲しいしな。カインに一撃浴びせれる奴なんて、そうそう居ないと思うぞ?」
「私も構わないよ。カインお兄ちゃんがいいんなら」
「チュールはどうだ?」
「ライバルがまた増える……」
「えっ? チュール。オキタだぞ? 男だぞ」
「オキタさん女の子」
「えええええええええええええええええ?」
チュールの言葉で、コンドウに確認してみた。
「コンドウ。オキタって女の子なのか?」
「ああ。そうだ。良く解ったな」
「匂いが違う……」
「そうなんだ…… 確かに線も細いし、美形すぎるとは思ってたが、本人はいいのか?」
「はい、私が局長にお願いしました。ジュウベエ殿の剣に追いつき追い越したいと思っています」
「俺には勝てないよ。クソつぇえからな」
「レオネアには負けるくせにか?」
「それを言うな」
「レオネアさんって、ジュウベエ殿より強いんですか?」
「相性もあるからねぇ。オキタさんはセンスはあると思うから頑張ってね」
「はい」
こうして新たな仲間を加えて、魔国の古代遺跡を目指す事になる。
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