美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第85話 世界樹の島へ到着!

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「ナディア。世界樹の小枝ユグトゥイグを頼む」
「はい。かしこまりました」

 ナディアが取り出したユグトゥイグは、真北を示した。
 ナヴィゲート通りに北を目指す、オメガの中ではガンダルフが大騒ぎをしていた。

「凄い。凄いぞおおおおおぉおおおおおおお!!!」

 船を見て叫び。
 中に入って叫び。
 アルファたちを見て叫び。
 そして目録と、魔法陣の辞典を見て溜息を吐いた。

「この文字を解読し、全て読まなければ、古代文明の深淵を理解できないと言うのかぁああ」
「ガンダルフ。少し静かにしろ。シュタット爺ちゃんが読んで、フィルが書き写したのが少しだけはあるから、そこから手を付ければ良いじゃ無いか?」

「わ、解った」

 取り敢えずは、メーガンの無振動馬車をガンダルフの前に出すと、目を輝かせて触り始めた。

「ガンダルフ。触るのは良いけど分解とかするなよ?」
「解っておるわい。これと同じものを作り上げてから入念にやるわい」

「最終的には、この方舟みたいな飛行船とか作れるか?」
「それは、是非やり遂げたい! いや、やり遂げる。世界中を飛空船が飛び交う、新しい世界を実現してみせるぞ!!」

「そいつは楽しみだな。期待しとくぞガンダルフ」


 ◇◆◇◆ 


 ガンダルフとアイシャを加えて、今まで以上に騒がしくなったオメガの船内ではあるが、順調に飛行は続き、遂にユグイゾーラへと辿り着いた。

「カイン様。おかしいです。先ほどまで北を示していた『ユグトゥイグ』が現在は、南を示しています」
「それって、行き過ぎちゃったって事か?」

「それらしい物は見えなかったよな?」

 そんな会話をした途端だった。

「見なさい。カイン。あれが『ユグイゾーラ』よ」

 メーガンの声に振り返ると、山が動いていた。

「すげえな。山が動くのかよ。どうなってんだ?」
「よく見たら解りますよ」

 チュールが声を上げた。

「大きな亀さんだぁ!」

 そこには全長500mを超える巨大な亀が四本足で動き回る姿があった。
 その背中の上は木が生い茂り、ぱっと見では山にしか見えないが、このオメガから、俯瞰で見れば確かに頭の部分も確認できる。

 尻尾に当たる部分は箒か筆の様な長い毛が生えている事も確認できる。

「おい、メーガン。あんなのが街とかにぶつかったら、大惨事じゃねぇのか?」
「彼はとても優しい生き物です。人の街や動物の森は破壊しないように移動します」

「それにしても、凄いな。肝心な世界樹が見えないのは何でだ?」
「世界樹は誰にでもその姿を現すものではありません。ユグイゾーラに降り立ち、そこに住むハイエルフに、認められた者だけがその姿を目にする事が出来ます」

「なぁ? オメガで直接着陸しても問題無いか?」
「全体は結界に覆われていますので、不可能かと…… 後方の筆状の部分に掴まり登らなければなりません。その際にその毛が悪意を排除します。心に邪な部分があると判断されれば、上陸は叶いません」

 メーガンの話を聞き、俺達はオメガを着陸させるとみんなでユグイゾーラと向かった。

 ガンダルフだけは、残って馬車を調べたいと言ったから、置いていったけどな。

 側に近づいて見れば、ユグイゾーラの巨大さに改めて驚愕する。

「ジュウベエとか普通に上陸できそうにねぇな」
「なんでだ?」

「邪な気配がビンビンだからだよ!」
「俺の様に綺麗な心をしている男に失礼だな」

「顔が凶悪なんだよ」
「喧嘩売ってるのか?」

「くだらない事言ってないで、さっさと行くよ? ジュウベエもし上陸できなかったら、僕に近づかないでね? 危険認定しちゃうから」

 一抹の不安を抱きながら、次々とユグイゾーラの毛の部分に掴まり登り始める。

 メーガンとナディアとケラは掴まるとほぼ同時に、巻き上げられて上陸して行った。

依怙贔屓えこひいきだよね……」

 他のメンバーも登り始めると、フィル、チュール、アイシャと次々に巻き上げられる。

「なんで僕ら三人は、巻き上げられないんだろ?」
「解らんが…… まだ判断中なのか?」

 そう言ってるとレオネアは巻き上げられた。

「くっ…… カインと二人だけになっちまったか。自力で登り切ってやる」
「なんか。これは負けたらダメな気がする…… 先に行く」

 俺とジュウベエは巻き上げられる事無く、自力で登り切った。
 ほぼ同着だった……

「そこでは、みんな揃って声援を贈ってくれていたが、なんか納得いかねぇ」

「大丈夫ですよ。弾き飛ばされなかったんですから」

 メーガンはそう言うが、扱いの違いは何なんだよ……

 俺達がみんな登り切った場所の広場に揃うと、三本足のカラスが現れて、俺達を促すように、ゆっくりと飛び始めた。

「ハイエルフ様のお使いをしている、ヤタガラスです。彼に付いて行けば迷うことなく辿り着きます。くれぐれも途中で勝手に採取をしたり、住み着いてる動物たちを殺さないようにね?」
「もし動物を殺すとどうなる?」

「この島を支えるテラバイトタートルTB亀の首が襲ってきます」
「こええな……」

「ねぇメーガン。シュタット爺ちゃんは一人でこの島に来たの?」
「そうですね。坊やは知識欲が凄かったけど、人間性は解りませんでしたから、ここに一人で辿り着きハイエルフ様に出会えるなら、認めてあげると言ったら、頑張ってクリアして来たわ」

「メーガン…… 結構スパルタだね。普通だと99%死ぬじゃんそれ」
「そうですね」

「その一言で済ますんだ……」
「可能性のない子にユグトゥイグを貸し与えたりしませんから、最終試練みたいな物ですよ」

 広場に到着すると、ハイエルフ? なのか、白い神様のような衣装をまとった7人の男女が現れた。

「よく来たな。メーガン、ナディア、ケラ様」

(えっ…… 三人だけ? しかもケラは様付けだし)

「従者たちもご苦労であった。此度は何の用である」

「ミカエル様。おひさしゅうございます。この者達は従者でなく仲間ですので、お見知りおきを」
「そうであったか、済まぬな。メーガンよ。そろそろお主はこの地へ住みハイエルフとしての試練を受けるべきである」

「私はまだ、未熟でございます。今暫くの時をお与えください」
「ふむ。何か興味を引くような事があるのか?」

「今の旅の仲間であるこの者達を見届けたいと思います」
「そうか……」

 なんて言うか…… ハイエルフ達って人間離れしてるって言うか、神様っぽい雰囲気を持った人たちだった。
 メーガンは次のハイエルフ候補なんだな……

 俺達は、アイシャとナディアの古代エルフ語の修行を頼むと、ミカエルと言うリーダーっぽい人が杖を振るった。

 すると、今まで見えて無かった、世界樹が目の前に姿を現した。

「この世界樹のウロの中で、世界樹と語り合うのじゃ。才能があれば覚える事もある」
「あの? 少し質問しても良いですか? シュタットガルドはどれくらいの期間で覚えたのですか?」

「あやつは、人の子としてはとても優秀であったな。わずか二年程で身につけたぞ」

(げっ…… 絶対記憶を持つ爺ちゃんで二年とか…… アイシャとナディア大丈夫なのか?)

「どうするナディア。アイシャ。嫌だったら辞めても良いんだぞ」
「私はカイン様の為に学びます」

「私もお父様を超えるために、必ず身につけます」

 二人とも…… ノリが重い! とか少し思ったが、それが頑張る理由であれば、いいのかと思って任せる事にした。
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