上 下
69 / 104

第69話 バトルロイヤル④

しおりを挟む
 俺に向かって来た、一般参加者たち10名に対して俺はフォーク十本を腰のベルトから取り出し構える。

 俺を取り囲み、襲い掛かる寸前の猫獣人たちに対して、両手に持ったフォーク10本を一気に投擲した。

 そのフォークは全員の太ももを貫いた。
 それでも、半分程は突き刺さったフォークを物ともせずに、突っ込んで来たが、スピードは無い。

 全員に魔法の鞄から取り出した、タバスコを振りまいた。
 足に傷を負ってる上に、猫獣人はとても嗅覚が鋭い。

 全員がその場で悶絶して、勝負ありだ。
 観客の猫獣人たちも、痛さと匂いが伝わった様で、相当嫌そうな表情をした。


 ◇◆◇◆ 


(レオネア)

 僕は勝つ気満々だったのに、メーガンを相手に気を取られた一瞬の隙を、カインにやられちゃったよ。

 生活魔法も精霊魔法も多重起動は出来ないから甘く見てたんだけど、やっぱパーティプレーって便利だよね。

 シュタット爺ちゃんでさえ、チュールちゃんにやられちゃうとか、パネェよね。

 そして残ったステージ上のメンバー。
 カイン! 僕たちに勝ったんだから中途半端に負けたら承知しないんだからね!!


 あー、あれがカインの本来の戦いのスタイルなのか。
 
 フォーク…… 痛そうだね……
 で…… タバスコだって? ヤバイよ僕のサキュバス攻撃よりも悪辣だよ。

 絶対痛い。
 てか普通に泡拭いて気絶してる人居るし……
 獣人だから、匂いにも敏感なんだろうね…… ご愁傷様だよ。

 ジュウベエはどうなってるのかな?


 ◇◆◇◆ 


「ここは、バトルロイヤルルールだから、悪いがパーティで勝たせて貰う」
「おう。やれるもんならやって見ろ」

 正面からジュウベエだけを見据えて、サイダーを筆頭に突っ込んで来た。
 ジュウベエは腰を低く落とし八双の構えで迎え撃つ。

 甘いなどっちも……
 レオン。
 てめぇ今自分で言ったばかりだろ。

 これはバトルロイヤルだ。

 俺はサイダーが突っ込んできてジュウベエがタワーシールドに激しく打ち込もうとした瞬間を見計らって、生活魔法の【穴掘り】を発動した。

 魚鱗陣の量端に位置した、ロデムとミャーラの二人は飛び上がってからの空中軌道攻撃を行う予定だったみたいで、穴に落ちなかったが、ジュウベエ、タイガ、レオン、サイダーの4人は足場が崩れて4m程下へと、落ちて行った。

 魔法剣士のロデムが空中から魔法剣を俺に向けて放つ。
 闇属性の飛斬だ。

 俺は、背中の鍋蓋を素早く左手で構えて受け流す。

 攻撃は出来ても空中で避けるのは難しいだろ?
 右手にステーキナイフを4本程持って、ロデムに投げつけた。

 剣を持つ右手に全て命中して、剣を取り落とした所で、ロデムはリタイア。

 その隙にミャーラが双剣で俺に斬りかかって来た。
 その時だ。

 ジュウベエ達が落ちた穴から、凄まじい咆哮が聞こえて、穴から三人飛び上がって来た。

 ジュウベエ、タイガ、レオンの三人だ。
 しかも…… タイガとレオンの二人が獣化してた。

 体も大きくなり全長3m程もあるライオンと虎だ。
 ジュウベエは満足そうに頷き、再び刀を構えると迷わずレオンとタイガに…… では無く俺に攻撃してきやがった。

 しかもジュウベエの絶壊刀は炎のエンチャントをしてあり真っ赤に燃えあがる様な刀身は、一振りで5m位の射程を持ってやがる。

 ヤバイな。
 だが、火の扱いなら俺の方が長けてるぞ! 料理人なめんなよ。

 俺が取り出したのは、特注の中華鍋だ。
 この鍋は、チタンをベースに、オリハルコンとヒヒイロカネも使った合金だから、どんな高温でも溶けねぇ。

 錬金を使わない限りはな。

 俺はジュウベエの攻撃を中華鍋で受け続け、鍋はいい具合に熱せられた。

 そこで、魔法の鞄に仕舞いこんである、オークジェネラルのラードと炊き立てのご飯と卵を取り出して、チンチンに熱せられた中華鍋を使い一気にチャーハンを作り上げる。

 醤油とごま油を鍋に回し入れると最高にいい匂いが、ステージ上を支配した。

 嗅覚に優れた獣人たちは、一瞬で俺の中華鍋に釘付けだ。
 コショーで味を調える振りをしながら、生活魔法の【送風】を使い、ジュウベエとレオン達の方向に、派手にコショーと普段は使わないが特別にパウダー状の調味料を撒き散らかした。

 盛大にクシャミを始めた瞬間に、中華お玉を使って出来立て激熱のチャーハンをタイガとレオンの口に放り込んだ。

 クシャミで大口広げてたし、獣化で的がデカかったから楽勝だ!

「「あっちいいいいいいいいいいいいいいいいいい」」

 タイガとレオンは口の中を火傷して、リタイアだ。

 どんなに体を鍛えても、口の中は中々鍛えられないからな。

 残すはジュウベエとミャーラだけだ。
 
 ジュウベエがくしゃみをしながら突っ込んで来た。

「チャーハンに唾が入ったらキタネエだろうが!」

 俺がジュウベエにそう言い放った隙に、ミャーラが飛びかかって来て……

 チャーハンに顔を突っ込んだ。
 やっぱり…… 効果は抜群だったか……

「おい? 熱くないのか?」

 俺は余りにも勢いよくチャーハンに突っ込んで来た、ミャーラを逆に心配した。

「ウニャァ。幸せニャ」

 うっとりした表情でミャーラは俺から鍋を奪い取り、チャーハンを一気食いしてる。

 だが…… まだ勝負はついてなかった。
 俺がミャーラの心配をした瞬間に、ジュウベエが六角棒形体の絶壊刀を振り抜くと、俺達はまとめて場外に弾き飛ばされた。

「それまで!」

 ミケーラ男爵が終了を宣言した。
 
「勝者ジュウベエ殿」

 ステージには穴の中にサイダーも残っていたが、自力で出れないから敗者扱いだ。

「ねぇカインあのチャーハンってどんな作戦なのよ……」
「フィル済まん。ミャーラの食いつきが凄すぎて、油断しちまった」

「カインーいい匂いがするー」

 普段よりも甘えた感じのチュールが俺に引っ付いて来た。

 そう、俺がチャーハンにコショーと共に加えたのはマタタビの粉末だった。

 ミャーラはステージの下でまだうっとりしてる。

「カイン…… あんた僕のサキュバスとやってる事変わんないじゃん」
「ああ。あれを見て思いついたんだからな」

「そっか」
「でも最後にジュウベエに持ってかれたな」

「僕ならジュウベエとタイマンなら、100%勝てたんだけどね」
「そうなのか?」

「うん」

 ジュウベエには賞金が渡されて、漸くバトルロイヤルも終了し、アケボノへ向かおうと思った時だった。

 俺は大事な事を忘れていた。
 この場に居る観客の殆どは、猫獣人だと言う事を……

 ミケーラ男爵が俺の側にやって来た。

「カイン殿。非常に頼みにくいのだが、その、さっきのチャーハンを私達にも振舞ってもらえないか…… 勿論材料はこちらで用意するので……」

 観客たちも勝負の結果よりも、チャーハンの香りに心を奪われて俺から目を離さない……

「どうしよう……」
「美味しいチャーハンを作って上げたらいいんじゃない? 嫌では無いでしょ?」

「ああ。そうだな」

 それから俺は、日が暮れるまでチャーハンを作り続けて振舞った。
 9000人分のチャーハンはパネェな。

 メーガンやジュウベエ達もみんなで飯炊きを手伝い、みんなの幸せそうな顔が見れたからまぁ満足かな。

 だが…… 腕がパンパンだぜ!
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~

榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。 彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。 それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。 その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。 そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。 ――それから100年。 遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。 そして彼はエデンへと帰還した。 「さあ、帰ろう」 だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。 それでも彼は満足していた。 何故なら、コーガス家を守れたからだ。 そう思っていたのだが…… 「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」 これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...